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ムロツヨシが求められる理由は“調和力”にあり 『大恋愛』『今日俺!!』に共通する演技アプローチ

リアルサウンド

18/11/16(金) 6:00

 金八先生? ムロツヨシが演じる『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の椋木先生の風貌は、一見そんな風にも見えるもののそのキャラクターは大分異なる。ドラマ版オリジナルの登場人物となる椋木先生は、コミカルなシーンで頻繁にお茶の間の笑いを誘う。翻って、金曜22時。『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)では、記憶を失う恐怖と隣り合わせでありながらも、懸命に生きていこうとするヒロインを全力で支える男性役として出演している。両作品の世界観は正反対と言っても過言ではないだけに、そんなムロの出演が方々で話題になっている。

参考:ムロツヨシ、戸田恵梨香に伝説的プロポーズ 『大恋愛』たどり着いた幸せの先にあるもの

 そこにはいわゆる“カメレオン俳優”なる言葉だけでは語り尽くせないムロの魅力があると言えよう。これまで数多くの作品に出演し、変幻自在に様々な役をこなしてきただけにその演技は熟練のものである。ただ、それだけではない。『今日俺』の椋木先生であれ、『大恋愛』の間宮真司であれ、観ている者が自然と共感を抱くことができるのは、何よりもムロの芝居が周りの役者陣の芝居との“調和”あるいは“協調”を基盤にしているからだ。

 『今日俺』における三橋(賀来賢人)や職員室の教員たちとの掛け合い一つとっても、ムロの芝居自体の面白さはもちろんのこと、その周囲との絶妙なコラボレーションにとにかく惹きつけられる。例えば、第5話での理子(清野菜名)の父・哲夫(佐藤二朗)との漫才さながらのシーンでも、椋木先生の言動そのものも笑いを誘う一方、哲夫の振る舞いと“協調”して出来上がる作中のおかしな雰囲気にも面白さが滲み出る。ただ単にムロ自身が突拍子もない台詞を口にしたり、コミカルに振る舞ったりするだけではなく、それらに対する周りの役者陣の演技との“掛け算”があるのだ。周りの演技を殺すことなく特有の存在感を見せる。もちろんこれはムロツヨシに限らず多くの役者の演技にも見られることかもしれないが、彼の芝居や振る舞いに多くの人々が自然と好感を抱き、これだけの支持を獲得できているのは、ひとえにムロの力量を物語っているようにみえる。

 それは『大恋愛』においても同じことが言える。誠実で、まっすぐな人柄の真司の尚(戸田恵梨香)に対するひたむきな接し方は、確かに刺さるものがある。尚と部屋でじゃれ合ったり、語らい合ったりして幸せな一時を噛み締めるとき、あるいは不安に怯える尚に真摯に向き合うとき。いずれの場合でも『大恋愛』では、ムロの温かな佇まいと穏やかな語り口がその和やかな世界観に自然と溶け込む。ただ、その包みこむような在り方は、真司の独特な存在感が尚の存在感を圧することなく、“調和”しているからこそ作り上げられるものである。真司だけが真司なりのカッコよさや優しさだけを見せつけるのではなく、記憶に残る2人のシーンはいつだって尚のあり方を尊重しているのが実によく感じられるのだ。

 今期の両作品に限らない。ムロツヨシの芝居の多くは、むやみに自身の存在を見せつけるものではなく、しばしば同じシーンで共演する役者たちとの共同作業の側面に人一倍重きが置かれているように見える。今やドラマや映画で頻繁に目にする役者の1人であるムロツヨシの人気の秘訣は、きっとそんなところにあるのではないか。それは恐らくムロが幅広いジャンルの作品でニーズがあることともつながっているのかもしれない。(國重駿平)

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