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I Don’t Like Mondays.に聞く、“マイナスな感情”を音楽で表現する意義「優しい言葉を歌われても僕自身は何も響かない」

リアルサウンド

20/9/30(水) 16:00

 I Don’t Like Mondays.が現在行っている5カ月連続配信リリース。その第2弾となるのが、9月23日に配信された「MR.CLEVER」だ。踊れてアガれる、思いっきり「今」にジャストなポップチューンとなっていながらも、歌詞にはシニカルでシリアスな「どう生きるか」というテーマが込められている。「え、アイドラってこんなこと歌うんだっけ?」とちょっとびっくりするような新曲である。

I Don’t Like Mondays. / MR.CLEVER (Produced by STY)

 昨年9月にエイベックス移籍後初となるアルバム『FUTURE』をリリースし、新章のスタートを切った彼ら。ツアーでさらなる手応えを掴み、2020年、ここからさらに攻勢をかける……本来であれば彼らはそんなプランを組み立てていたはずで、そのタイミングで新型コロナウイルスの影響で活動を制限せざるを得なくなってしまったというのは残念といえば残念だが、そんななかでも彼らは新しい武器を磨き、今だからこそぶちかませる新しいI Don’t Like Mondays.を作り上げてきた。今年に入って次々とリリースされる新曲たちを聴けば、その片鱗がはっきりと見えるだろう。

 自分たちのパブリックイメージや実際にこれまで表現してきた世界観をある意味逆手に取って、今I Don’t Like Mondays.はさらなる進化を遂げようとしている。以下のメンバー4人へのインタビューからも、バンドの現在の充実ぶりが伺い知れるはずだ。(小川智宏)

自粛期間に訪れた音楽に対する考え方の変化

ーーアルバム『FUTURE』から約1年、いろいろな挑戦があったり、コロナで想定外の事態が起きたり、様々なことがあったと思いますが、みなさんにとってはどんな時間でしたか?

YU(Vo):今年の2月まで『FUTURE』のツアーをやって、その後自粛期間で家に籠もらなきゃいけなくなって……その中で自分と向き合う時間もメンバーそれぞれ今までよりも多くなったんですけど、僕自身も個人として、アーティストとして、どういうものをI Don’t Like Mondays.でやっていけるかなっていうのをゆっくりじっくり考えられた時間だったかなと思っています。

SHUKI(Dr): この1年、大きかったのは、移籍したことでチームが変わるわけじゃないですか。チームとして何を押し出していくのかというところでも、僕らはどういうものかって自分自身で振り返る時間がすごく大切で。そういうことをいろいろ考えてくうちに、この「MR.CLEVER」みたいな曲も生まれてきたんですよね。

KENJI(Ba):曲作りは続けてきたし、新しいものというか僕たちがやりたいものを作り続けるってことは変わってないんですけど、その中でもこの時期だからこそできたインプットだったりとかもあって。そういう意味で2020年、新しいものを身につけた僕らが発信できることを、どんどんやっていきたいなと。この5カ月連続配信シングルっていうのはそれが詰まったものになってるんじゃないかなと思いますね。

CHOJI(Gt):うん。自分としてはたとえばクラシックギターをまた勉強したりもしましたし、また新しいI Don’t Like Mondays.のサウンドにできればなと思ってやってました。

ーー音楽的な成長というか、新たな武器みたいなものも手に入れることができたわけですね。

YU:僕もピアノを買ったんですよ、緊急事態宣言直前に。今までもトライしたかったんですけど、まとまった時間がないと新しい楽器を始めるって難しいんで。今だとYouTubeとかでいろんなレッスン動画もあるので、それでこの期間、籠ってやれたのが大きかったなと。それは今後のミュージシャン人生においても、そういうことをひとつ新たに手に入れることができたのはいいタイミングだったなと思っています。作品のクオリティの面では、確実に、この期間で段違いによくなった。

ーー自粛でライブができない状況とはいえ、I Don’t Like Mondays.はコンスタントに新曲のリリースを続けてきましたよね。その曲たちを聴いていると、本当に自由度が広がったという感じがします。

YU:うん。もちろんサウンド面でトライしている部分もあるんですけど、やっぱり歌詞の世界観がバンドのキャラクターを担うかなり大きなポーションでもあると思うんですね。その部分でかなり自由を手にしたんですよ、僕が。

ーーほう。それはどういう意味合いでですか?

YU:今まで僕が歌詞を曲に乗せるときに一番大事にしていたのは、4人で作ったサウンドをいかに綺麗に響かせるか、そのサウンドの世界観をいかに広げられるかっていうところだったんです。だから人間の陰と陽があるのであれば陽の部分をフォーカスしてきたんですけど、僕らのサウンドに人間のちょっとエグい部分、ドロドロした部分っていうのをこのサウンドに乗せたらどうなるのかなって。そうやって人間らしさ、人間臭さみたいなものを大事にしようって決めたらすごく解き放たれたというか、自由になったんですね。今までだったらアイドラっぽくないとか、意味が出てきすぎるからとか、いろいろ削ぎ落とす作業をしてたんですけど、そうじゃなくなった。そういう意味ではすごく変わりつつありますね。

ーーそれはこのコロナの状況に影響を受ける中で生まれた変化なんですか?

YU:受けてないっていうのは嘘になるので、たぶん受けていると思うんですけど、次のチャレンジは何だろうって考えているときに、この状況が後押しになったというか。今だったら、世の中が劇的に変わっている中で僕らも同じように変わっても許されるなと思って。だったら思い切ってやってみちゃおう、みたいな。他にもたとえば、自粛期間中にインスタ(Instagram)でカバーをお届けしようというときにも、今までだったら絶対洋楽をカバーしていたんですよ。でも邦楽のほうがよくね? っていう。「好きなものをやってみよう、今ならよくない?」っていうのがあったりして。それはすごく小さいことなんですけど、それもこういう期間だからこそなのかなって。

ブレブレなところもI Don’t Like Mondays.のカラー

ーーいや、そのカバーの話はすごく重要だなと思います。まさにおっしゃった通り「これをやったらI Don’t Like Mondays.っぽくないんじゃないか」みたいなことって、やっているときは気づかないじゃないですか。でもこういうタイミングで振り返ってみると、自分で自分を縛ってたようなところもあったなっていうことですよね。

YU:まさにそうですね。

ーー本当に最近の曲は何でもありだなっていう感じがするんですよ。それはもちろん歌詞もですけど、サウンドも。曲や音の部分での変化についてはどうですか?

YU:僕らって結構メンバー全員、かなりこだわりが強いので、たとえば今回の「MR.CLEVER」だったらSTYさんっていうプロデューサーの方に入っていただいたんですが、僕らはいつも、プロデューサーの方に入っていただいても9割5分くらい自分たちでやっちゃうんですよ。でもそれが自分たちで壁を作っちゃってるっていうか、そこに限界も感じてきたし、同時に自信も生まれてきて。今は「いったんこれ、5割ぐらいでとどめてお願いしてみたらどうなるんだろうね」って感じなんです。そういう余裕が出てきたのかなって。「MR.CLEVER」も5割とは言わないまでも、6割5分ぐらいまで自分たちが作って、そこからはプロデューサーさんと一緒にやってみようっていう流れになって。それで新たな化学反応ができたのかなと。

SHUKI:去年末ぐらいかな、僕らのことをずっと見てくれてるEIGOさんっていうプロデューサーの方がいるんですけど、彼がこれからの僕らは「もうちょっと粗さを残していったほうがいいんじゃない?」というアドバイスをくれて。そこから、レコーディングでもとことん突き詰めるよりは人間味をだしたりとか、ミックスの面でもちょっと粗さを残したりとか、不完全さを残すことによって僕らの特徴とかを探していくということもしてきましたね。やりすぎないようにするっていう。結果そっちの方が余力が出たり、おもしろいものになることもあるんです。

KENJI:それはあるね。昔はレコーディング前にガチガチに作り込みすぎてた。でも何枚か出してみて、やっぱ自分たちのスタイルっていうのもちゃんとできてきたので、ここらで他の人に任せて新しい化学反応を起こそうよ、みたいな感覚になれたんです。「Sunflower」もGreat Good Fine Okっていう海外のアーティストとやらせていただいたんですけど、それもうまくいったし。すごく肩の力抜いてできているのかなと思います。

CHOJI:だから、いつものI Don’t Like Mondays.には入らなさそうなギターのサウンドとかーーワウギターだったり、ショートディレイだったり、そういう細かい話なんですけど、そういうのもどんどんトライしていっていいのかなって。結構自由にやってますね。『FUTURE』にはギターを入れない曲とかもあったんですけど、逆にスペースがない、不自由な中で自分がどれだけギターを残すかみたいな。結局ライブでは弾くわけですから。

ーーどうしてそこまで自由にやれるようになったんでしょうか。まあ、I Don‘t Like Mondays.はもともとジャンルをクロスオーバーさせながら音楽を作ってきたバンドではありますけど。

YU:前回のツアーが成功したことである程度自信もできて。今までだったらこんなにブレブレで大丈夫かっていうのもあったんですけど、こんなにブレブレでやってきてもこんなにファンがついて、おもしろいって言ってくれる人たちもいる。だったらそれを思い切りやってもいいのかもみたいな。今まではちょっと様子を見ながらやっていたことが、それが僕らのカラーだって言えるようになったんですよね。

自分たちらしさを試行錯誤して生まれた「MR.CLEVER」

ーー「MR.CLEVER」はどういうふうにできた曲なんですか?

SHUKI:最初は、今年の僕らのブランディングをどうするっていう話から、とっかかりとしてはビジュアルのイメージ、スーツを着たいよねとか、やっぱりシュッとしてる感じだけど、綺麗すぎない感じでとか、そういう話をしていたんです。そこから、そういう僕らがやっていて一番ハマる曲って何だろうって結構話し合ってできた曲ですね。そのために10パターンぐらいデモを作って「僕らっぽいって何なんだろう」と試行錯誤して。わかりやすく言うとたとえばBメロがラップっぽいところとかは普通のバンドっぽくなくてひねくれてるし、そこにこの歌詞が乗って、余計ひねくれてるっていうか。けど聴いた感じはポップだから、何も考えずに聴けば楽しい感じに聞こえる。そういうのが今の僕ららしいのかなって。

YU:あとはめちゃくちゃダンサブルで踊れるってわけじゃないんですけど、ノれるサウンド、踊れるサウンドっていうのは僕ら好きだし、そのエッセンスは入れたいなと。ライブで盛り上がるのも間違いないし。

KENJI:こういう期間なのでリモートで作っていったんですけど、意外とよかったよね? 作りやすかったです。普段よりもアイデアが出て。なんでだろうって思ったんですけど(笑)。

SHUKI:はははは。

KENJI:面と向かってないぶん出しやすいのかな。いい感じでしたね。

YU:SHUKIも言ってたんですけど、Bメロのところは、最初は普通に流れで作ってるデモもあったんです。でもなんかもうワンスパイス足りないなあっていう。この曲で今年を表すっていうテーマを先に決めていたので。決めていなかったらこのまま進めようってなっていたと思うんですけど、もっとやれるところってどこなんだろうみたいな試行錯誤はしましたね。

ーーこの曲が今年のI Don’t Like Mondays.を象徴するんだとしたら、これは結構攻めるっていうことなんだなと思うんですが。

YU:確かに(笑)。まあ、今年のアイドラというか、そもそも僕らの性格を曲で表したらどんな曲なんだろうっていう感じですよね。

SHUKI:わりとデビュー以来、一部では僕らのことを「シティポップバンド」ってわかりやすく形容する人たちがいるなかで、個人的にはそのシーンにちょっと片足かけつつ、笑顔で中指立ててるみたいな曲を作りたいと思っていたんです。意識はもちろんしてますけど、迎合するわけでもない。僕らってちょっとそういうひねくれた部分だからこそいろんな曲ができたりする部分があるので、そういうキャラクターが濃く出てるかな。

ーーそうそう。でもちゃんとポップっていう。

YU:だからサラッと聴けるっちゃ聴けると思います。

SHUKI:でも、じつは苦労しましたっていう(笑)。

KENJI:最初の種を作る段階が一番苦労したかもね。「DO YA?」もそうだったんですけど、「今年どうしようか」というところを決めるのが一番大変で。新しい部分をどういうところで見せていく? みたいな話の中で「これでいこう」ってなるまでが結構大変。でもプロデューサーのSTYさんともすごく相性がよかったですし、僕らのやりたいこともすごく汲んでくれたんで、そういう意味でも、かなりやりやすかったですね。

CHOJI:(「MR.CLEVER」は)リハでも何回かやってるんですけど、結構ライブ化けしそうな曲ですね。ドラムもすごく楽しくパターンやれるし、ベースもグイグイ来るし、ギターもいろいろ自由にやれる余地がある曲だと思ったので、楽しみですね。ライブでやるのが。

YU:うん、トラックだけ聴くとエレクトロポップなイメージがあるんですけど、意外と骨子にバンドサウンドがあって。俺もやるまではちょっと不安だったんですけど、やってみたらやっぱりライブでもやれそうだって思います。

マイナスを無理にプラスに変えようとすると逆効果

ーーで、やっぱりYUさんの歌詞ですよね。サウンドはとにかくメインストリームポップな感じで明るくて聴きやすいんですけど、歌詞はシリアスというか、皮肉がきいていて。

YU:僕の中のテーマっていうのは抉りにいきたいというか、自分のダメなところとか嫌いな部分、普通は声を出して言えないようなことを、こういうサウンドの中にぶち込みたいなっていうのがいちばんにあって。それこそさっきSHUKIが言ってたけど、シティポップをやられている方々じゃ言わないようなこと、隠したくなるようなところっていうのが、やっぱり僕の中にはあるから。それをI Don’t Like Mondays.では言いたいなと思ったんです。だから、本当に普段思っていることをつらつら書けばいいだけだったんで、ある意味大変ではなかったですね。

ーーここに歌われているのはYUさんの正直な気持ちだと。

KENJI:うん、一番YUだよね。YUという人間。

ーーこういう時期だから、優しい言葉とかあたたかい言葉を書きたくなるけど、そうじゃなくて、どんな時代でも俺はこうやって生きていくんだっていう意思表示をするような歌詞ですよね。

YU:だから、自分に向けて書いたということなのかもしれない。それを聴いて共鳴した人が「あの人もそうなんだ」って思って、それで救われればいいなと思ってますね。僕自身ひねくれているので、優しい言葉とか歌われても、僕自身は何も響かないんですよ。「また綺麗ごと言ってるわ」みたいに思っちゃうんですよね。なぜか性格悪くなっちゃって(笑)。そうやってマイナスを無理にプラスに変えようとすると逆効果だから、マイナスをマイナスのまま提示することで、結果共鳴を呼んで聴く人にとってプラスになるんじゃなかなって。

ーーこのポップなサウンドだからこそ、そういう歌詞を書けたというのもある?

YU:それもありますね。これで「ヘイ、踊ろうよベイビー」みたいなのは違うなと(笑)。心の中の結構深い部分を歌を書くように心がけたという感じですね。実際歌詞にも書いてあるんですけど、俺は言いたいことは極力言いたいし、言えるような環境作りにしたい。でもそれって常にできるわけじゃないじゃないですか。人の目があったりとか、世間の目があったりするから。でもみんな思ってるんじゃないの?って。

ーーうん。そういう歌詞がこのポップなサウンドに乗って流通していくというのがまたおもしろいですよね。

YU ですよね。メジャーレーベルからこういう曲が出るっておもしろいなと思ってます。

ーーそれがI Don‘t Like Mondays.というバンドの基本姿勢なんでしょうね。SHUKIさんは「ひねくれてる」と言っていましたけど。

YU:反骨ですよね。反骨というか怒りかな。そのマイナスな感情を大事にしてますね、最近は特に。人にフォーカス当ててるというか、自分が自分に歌うために何を言えばいいかなって。あまり他の人のことは考えてないんですよ。

ーーそういう彼のモードチェンジみたいなものって、3人からすると、ある日突然訪れた感じなんですか?

KENJI:いや、でも少しずつあったんですよ。こういう時期を機にそこにトライするというのはすごくおもしろいことだと思うし。YUは結構心変わりをしていく人間なので、どこまでこういうモードかっていうのはわからないですけど、その変化はサウンドにもいろいろ影響しているし、おもしろいものなので、僕らもやれるところまで一緒に今のモードでやっていきたいなっていう感じです。もともとあるけど出してこなかった部分だと思うんで、どんどんやってみたらって思ってます。

YU:前回の「モンスター」でファンもみんなどよめいていたので(笑)、この曲でまたどう反応するのか楽しみですね。

KENJI:キャラ変だもんね(笑)。

YU:ライブに来てるお客さんだと、僕はMCでも結構喋るので、「すごくYUっぽいな」ってなると思う。でもまだライブまで足を運んだことがない人も結構いると思うので、そういう人は驚くんじゃないかな。

ーーこのあとも連続リリースが続いていくわけですが、なにか一貫性というか、連続性みたいなものはあるんですか?

KENJI:マジでないですね(笑)。

YU:ライブのセットリストみたいな感じでーー。

KENJI:「次はこれがきたらおもしろい」みたいな。

YU:そう、1年通して、次どの曲がきたらおもしろいかっていう。期間がある程度あるので、途中で差し替えることもできて。1年通したセットリストみたいな考え方でやっていますね。

■配信情報
I Don’t Like Mondays.「MR.CLEVER」
9月23日(水)リリース 配信はこちら

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