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七海ひろき、アルバム『KINGDOM』で表現する“新しい世界”「みんなが温かく支えてくれるから今の私がある」

リアルサウンド

20/4/15(水) 12:00

 昨年3月に宝塚を退団し、8月にミニアルバム『GALAXY』でアーティストデビューを果たした七海ひろきが、1stフルアルバム『KINGDOM』をリリース。今作では七海自身が全曲の作詞、「愛し君へ」では作曲も手がけており、アーティストとしてまた一歩前進した作品になった。今作の制作にあたり、ある王国の双子の王子の物語を創作したという七海。今作に込められた物語とメッセージ、そしてファンへの思いとは? そして“七海キングダム”はどんな王国を目指すのか?(榑林史章)

「KINGDOM」は双子の王子の物語

ーー先日の生配信でもお話をされていましたが、宝塚退団から1年が過ぎ、声優の仕事も着実に増え、舞台にも出演しましたが、改めてどんなお気持ちですか?

七海ひろき(以下、七海):この1年は中身がとても濃かったので、あっという間でした。この1年に出会ってくださったさまざまな方たちへの、感謝の気持ちでいっぱいです。それと同時に2年目となる2020年はとても大事なタイミングだと思っているので、もちろん以前から応援してくださっている方との時間や共有してきたものを大切にしながら、七海ひろきをもっと知ってもらえるように、いっそう頑張っていこうという気持ちです。

ーーそんな2年目のスタートを切るのが、今回のフルアルバム『KINGDOM』で、今作では全曲の作詞もされています。曲調はバラエティに富んでいて、歌詞も物語性のあるものや、メッセージ性のあるものなどさまざまです。作品として、どんなものにしたいと思いましたか?

七海:フルアルバムで11曲あるので、いろいろな曲があったほうが楽しく聴いていただけると思って、ノリの良い曲もあればバラードもあって。頑張っていこう、盛り上げていこう、漕ぎだしていこうといった曲もあり。ときには和むような曲で癒やされて欲しいと思って「QQ」という曲も入れました。1曲1曲がひとつの作品であり、その1曲1曲が集まって『KINGDOM』というアルバムになるよう目指しました。11曲全て作詞をさせていただいたので、完成したときは達成感があったと同時に感無量でした。

ーー『KINGDOM』というアルバムタイトルは、どんなイメージで付けたのですか?

七海:直訳の通り“王国”をイメージしています。前作は“みんなで銀河を見に行こう”というイメージで付けました。今回は、現在応援してくださるみなさんやこれから出会う方々と一緒に楽しく笑って過ごせる素敵な国を作りたいという想いで付けました。

ーーまずリード曲の「花に嵐」についてですが、ビッグバンドジャズのサウンドでミュージカルっぽさもありますね。歌詞を書くときに『ロミオとジュリエット』もイメージされたそうですが。

七海:昔のシェイクスピアではなく、現代版の『ロミオとジュリエット』のようなイメージです。最初に曲を聴いたときに、ドラマティックな曲調でミュージカルっぽい雰囲気を感じました。そこで出会ってはいけなかったふたりが出会ってしまった、禁断の恋のストーリーにしたいと思いました。

ーー「花に嵐」という言葉には、どんな意味があるのでしょうか。

七海:于武陵(ウ・ブリョウ)の「勧酒」という漢詩に出てくる言葉です。寺山修司さんなどいろいろな小説家が訳されているのですが、私はそのなかでも井伏鱒二さんの訳詩が好きで、そこに「ハナニアラシノタトヘモアルゾ “サヨナラ”ダケガ人生ダ」という一節が出てきます。それが学生時代から好きで、いつか自分で歌詞を書くときがきたら使いたいなと思っていたのが、今回ついに叶いました。歌詞には〈月に叢雲〉という言葉も出てくるのですが、それも故事に出てくる言葉で、どちらも「美しい花も嵐がくれば散ってしまう、人生とは儚いものだ」といった意味です。限られた時間のなかでどう生きるか、ということをメッセージとして込めたいと思って書きました。

七海ひろき -「花に嵐」 [MUSIC VIDEO]

ーー情熱的な恋愛のシーンもイメージさせる曲で、前作の歌詞はファンへのメッセージが多くて、こういう恋愛の物語を歌詞にしたものはなかったですよね。

七海:そうですね。今回は『KINGDOM』というタイトルからひとつの物語をイメージして、そこから派生して生まれた別の世界線の恋愛物語が何曲かあります。これはあくまでも私の想像の世界なのですが、『KINGDOM』という物語の主人公は王族の血を引く双子の王子で、初回盤ジャケット写真に写っている、黒いシャツを着ているのが弟くんで物語の主役。ちょっとヤンチャだけどみんなのリーダーでもあり、人を惹きつける魅力を持った人気者です。通常盤の白いシャツを着ているほうがお兄さんで、ちょっと病弱だけど心優しくて、弟のことをいつも気に掛けています。そういうふたりの物語が浮かんで、ジャケット写真もこのようにしました。

ーーラストに収録されている「KINGDOM」という曲の歌詞が、その双子の王子の物語を歌ったものですね。

七海:そうなんです。1番は弟くん、2番はお兄さんをイメージして書きました。また4曲目の「ラビリンス」という曲も同じ世界線の物語で、あまり私から答えを出しすぎて、みなさんの想像を邪魔しても良くないのですが……「ラビリンス」は、弟くんが辛い思いをしたときの気持ちを想像して作詞をしました。

ーー「ラビリンス」には、〈自分の存在価値を 探しながら生きていた〉、という歌詞も出てきますが、七海さん自身もそういうことを考えたことがありましたか?

七海:上手くいかないことは、宝塚時代にもありましたし、日常でもなかなか上手くいかなくて悩むことはあります。誰しもが迷ったり、悩んだりすることがあると思うので、そういうときに聴いてもらえたらと思います。無理に頑張れとか、立ち上がれというのではなく、気持ちに寄り添えるような曲を作りたいなと思いました。

宝塚の経験も含めた新しい七海ひろきの世界

ーー「ラビリンス」や「KINGDOM」には物語性があって、もともと漫画やアニメがお好きな七海さんであればこその歌詞ですね。子どものころから、いろいろな物語を妄想されていたんですか?

七海:物語を考えることが本当に好きで、思い返すと学生時代に自分で絵本を作ったこともありました。今作を作る上でも、『KINGDOM』の主人公の設定などをスタッフさんに熱弁して制作を進めました。ただ歌詞や物語の設定について、これ以上細かくお話をするのはやめておこうかなと思います。そのほうが聴いた人の数だけ物語が広がりますし、聴いてくださった方々で「私はこう思う」ということを語り合ってもらえたら嬉しいので。

ーー2曲目の「君の未来日記」はEDM調でスケールの大きな楽曲ですが、Dメロの歌詞に、花、月、雪、星、宙と、宝塚の組の名前が出てくるところが泣かせますね。

七海:宝塚の後輩たちに向けて、応援ソングを作りたいと思って入れました。どこに入れようか迷っていたんですけど、Dメロがちょうど5行になる形だったので、「ここだ!」と思って。宝塚の後輩に限らず、受験生や、新生活を始める方たち、何かを頑張っている人へ、「自分の未来日記は自分で作れば良いんだよ」という気持ちを伝えたくて作りました。

ーーまた「Rainy day」は、冒頭はセリフで始まって、後半に「君が好きだよ」というセリフが出てきます。全体的にドラマのワンシーンを描いていて、ミュージカルのようです。

七海:セリフのところは、聴いてときめいてもらえたら嬉しいです。この曲は、もともと雨の日の歌が歌いたいと思って作っていただきました。雨の日って憂鬱な気持ちになるけど、そういうときでも一緒にいたら良い日になるねっていう感じの曲にしたくて。私のなかで主人公の女の子は雨女で、どこかへお出かけしようとすると、いつも雨が降っちゃうんです。でも雨が降ったことは残念なんだけど、一緒にいられたら、雨でもすごく幸せだよっていう気持ちを歌っています。雨の日に聴いたら、きっと気分が晴れるんじゃないかなって。

ーー宝塚がオマージュとして出てくる「君の未来日記」、ミュージカルを彷彿とさせる「花に嵐」や、セリフが入った「Rainy day」と、ふと宝塚時代の七海さんを想像させる曲も収録されています。それは自分のなかで宝塚の七海ひろきというものに対してひと区切りつけられているということなのだろうなと思いますが、それについてはどうですか?

七海:今作は、宝塚にいた経験も含めて今の七海ひろきが作れるものを作りたいと思って制作しました。私はもともとお芝居が好きだから、歌のなかにも芝居性が入れられたら、より私らしさが出るのではないかと。それに同じミュージカル調ではあっても、宝塚の舞台では役を通して表現する形でしたが、今は七海ひろきとして伝えたいことがたくさんあって、それを元に自分で作詞をして、台本ではなく自分の言葉として伝えています。物語の人物を演じるような部分もありますけど、それはあくまでも自分のなかから出てきたものなので、宝塚で演じていた役とは明確に違うと思っています。きっとファンの方は、アルバムで表現した私の世界観を楽しんでくれるだろうと思っています。

ーー宝塚とは違った七海ひろきを今は表現できているというこでとすね。「QQ」という曲は、まさしくそういった1曲で、NHK『みんなのうた』に流れても良さそうな可愛いらしい楽曲です。タイトルの「QQ」は何を意味しているのですか?

七海:私はアザラシが好きで、アザラシの泣き声が”キューキュー”なので(笑)。歌詞は、アザラシの国の王子様をイメージして書いています。ちなみにQという文字の形は、丸くてしっぽがちょこっと出ている感じで、アザラシの形にも見えませんか? アザラシを好きになったきっかけがアニメ『少年アシベ』のゴマちゃんなんです。いつもキューキュー鳴きながらアシベと遊んでいる姿が可愛くて。もともと白くて丸っこいものが好きなこともあって、ひと目で好きになりました。

ーー好きなもので曲を作ろうと思ったきっかけは?

七海:こういう自分の好きなものを曲のテーマにしているアーティストさんって、結構いらっしゃって。好きな食べ物をモチーフにする方も多いですよね。私も、大好きなもので曲を作りたいと思っていたんです。

ーーアーティストの素顔が垣間見えてファンは嬉しいですね。

七海:そう思ってもらえたら嬉しいです。ファンの方は、私がアザラシ好きなのは知っていると思うのですが、世界中にいらっしゃるアザラシが好きな方にも聴いてもらえたら嬉しいなと思っています! あと、アザラシをモチーフにした曲を聴いたことがなかったので、無いなら自分で作ってしまおう、と。

七海ひろきが目指す“KINGDOM”の姿とは

ーーそして「愛し君へ」は、ピアノで始まり胸を熱くさせるバラードナンバー。昨年開催されたライブ『One-man LIVE 773“GALAXY”』のアンコールで歌われた曲です。もともとどういったことをイメージして作ったのですか?

七海:この曲は、私が初めて作詞作曲を手がけた楽曲です。この曲はまず1番の歌詞をブワ〜ッと書いて、その日の夜に、書いた歌詞を見ながら鼻歌を歌っていたら、何となくメロディが降りてきたので、それをレコーダーで録って。それを元にサウンドアレンジをしていただきました。

ーー歌詞に〈俺〉や〈お前〉と出てくるところがイケメンですね(笑)。

七海:前作『GALAXY』に「片思いの君へ」という曲を収録していて、その曲とリンクさせて作っています。「片思いの君へ」は、〈僕〉で歌う片思いのラブソングだったので、今度は〈俺〉で歌う両想いのラブソングが作りたいなと思って。どちらも同じ世界線にあって、対になる曲になれば良いなと思いました。だからどちらもタイトルに「〜君へ」と付いているんです。

ーーラブソングですけど、ファンの方は「私たちに向けたメッセージ」と受け取っても。

七海:そう受け取っていただいてかまいません。一緒にいられたら幸せだよという気持ちに、変わりはないので。

七海ひろき -「片思いの君へ」 [MUSIC VIDEO]

ーー前作では銀河に行き、今作は王国を築き上げたわけですが、今後もいろいろなことがあるでしょうね。

七海:そうですね。きっといろんなことがあると思います。私が思う“KINGDOM”(王国)は、何かが起きたときはみんなが一丸となって立ち向かい、良いことがあったら一緒に喜ぶ、そんな王国です。楽しむときも一緒、悲しむときも一緒、何をするにも一緒に、いろいろな思い出を作っていくものだと思っています。

ーーでも国政を間違えるとデモが起きたり謀反が起きたりしますけど、七海キングダムは大丈夫ですか?

七海:大丈夫です! ファンのみなさんという強い味方が大勢いますから。そもそも私自身がすごく強いわけではないし、例えばカリスマ性があって何でもできてしまうような人だったら良いんでしょうけど、ぜんぜんそんなことはなく不器用なので。それをみなさんが温かく支えてくださっているからこそ、今の私があると思っています。

ーー宝塚の男役出身と聞くと、何でもできるカリスマのようなイメージを勝手に持たれてしまいがちですよね?

七海:ぜんぜんそんなことはないです! 不器用なので、上手くいかないことばかりで、「ううう〜」となることはしょっちゅうです(笑)。技術的なことでも、上手くできなくて歯がゆさを感じることもあるし。思いはすごくあるんだけど、それを言葉にするときに上手く表現できなくなってしまうこともあるし。毎日反省会です。もっとヒーローみたいになれたら良いんですけど……。いつも目指しているんですよ、ヒーローになりたいって。でもそれが、なかなか難しくて。

ーーそういう人間味溢れる七海さんだからこそ、応援したいし支えたいと思ってくれるんでしょうね。ときには涙してしまうこともありますか?

七海:この間動画配信をしていた時、この1年のいろんな気持ちがこみ上げてきて、ウルッときて泣きそうになったのを堪えました。いや、泣いていたかも(笑)。退団当初、初めてのことをやるときに少し不安になったり、迷子になった自分もいて。そういう部分をさらけ出しても、みなさんがいつも受け止めて応援してくれたので、私自身ありのままでナチュラルにいられました。受け止めてくれるみなさんの優しさを感じます。『KINGDOM』の王子たちは、まだ王様ではありません。成長過程の王子たちと一緒に、良い国を目指していきたいです。

■リリース情報
『KINGDOM』
発売日:4月15日(水)

初回限定盤 KICS-93910 ¥3,500+税
通常盤 KICS-3910 ¥2,500+税
<CD収録楽曲>
M1. 花に嵐
M2. 君の未来日記
M3. もう一度…
M4. ラビリンス
M5. QQ
M6. Rainy day
M7. Special summer
M8. Trust
M9. Never too late
M10. 愛し君へ
M11. KINGDOM

初回限定盤のみ
DVD:「花に嵐」MV、
メイキング映像収録

■関連リンク
七海ひろき 公式サイト
インスタグラム
オフィシャルファンクラブ「7seas+」
キングレコードアーティストページURL

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