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『エール』双浦環は音の師匠と呼べる存在に? 喫茶店夫婦の小芝居はさらにエスカレート

リアルサウンド

20/5/26(火) 12:00

 記念公演のヒロイン役最終選考を前に、双浦環(柴咲コウ)に「何も伝わらなかった」と指摘されてしまった音(二階堂ふみ)。憧れの人からの手厳しい評価に音はショックを隠せなかった。

参考:『エール』女給役の入山法子が表情豊かに放つ存在感 中村蒼演じる鉄男との交錯する演技にも期待

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)第42話では、前週の裕一(窪田正孝)に続いて音が自身の表現と向き合う。環の「あなたは何を伝えたいの? どこまで役を理解してる?」という質問は核心をつくものだった。音には恋心を告げずに去るヒロイン・ヴィオレッタの心情が理解できず、恋愛小説を読んでもいまいちピンと来ない。久志(山崎育三郎)たちによる渾身の即席舞台も空振りに終わる。

 音が導き出した解決策は、カフェーの女給として働くことだった。男女の社交場であるカフェーで恋愛の機微を知ることは、今で言えばキャバクラで男女の駆け引きを学ぶようなもの。突拍子もないアイデアだが、木枯(野田洋次郎)に連れられてのカフェー通いがバレてしまった裕一は反対することもできず、不承不承、音を応援することになった。

 早くから裕一という運命の相手にめぐり逢い、夢に向かって歩むリア充な音に悲恋のヒロインの実感が湧かないのも無理はない。少女時代に自分が学芸会の主役であると信じて疑わなかった音である。主人公ならではのぜいたくな悩みだが、「何も伝わってこない」という音の問題は、かたくなに自分の音楽にこだわっていた裕一の姿勢にも通じるものがある。

 音は環に「自分だけが楽しんでいるようではプロとしては通用しない」とたしなめられる。裕一も音も音楽を愛することにかけては誰にも負けないが、その向かうところが自分なのだ。裕一は応援歌を作ることでかろうじて誰かのために音楽を奏でるという実感を得たが、音の場合は聴衆と直接対峙するため問題はより深刻だ。ライバルの千鶴子(小南満佑子)には「観客に喜んでもらえるように」という矜持があり、千鶴子を上回らない限りヒロインの座はない。

 駆け出しの音楽家にプロの厳しさを教える環や小山田(志村けん)は、裕一や音にとって音楽に縁するきっかけをくれた恩人であり、同時に生半可な覚悟では許さないという厳しさと愛情を兼ね備えている。前作『スカーレット』(NHK総合)の大久保(三林京子)もそうだが、主人公を試す枷であり、師匠と呼べる存在をちゃんと描いている『エール』は朝ドラの王道を進んでいると思う。

 エスカレートする一方の「バンブー小劇場」。ヴィオレッタに扮した恵(仲里依紗)は新たに旅芸人の一座にいたことが判明。毎度ご丁寧に驚く保(野間口徹)のリアクションも含め、どうやらこちらはボケ倒す芸風のようだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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