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【re:START】キーパーソンInterview

いきものがかり・水野良樹が語る、“国民的グループ”を続ける意味。そして、デジタルフェスを経てリスタートする今後の活動【後編】

特別連載

15-2

20/9/11(金)

いきものがかりはこの4月、デビュー時から所属していた事務所を離れ、自分たちのマネージメント・オフィスを設立して、新しい活動をスタートさせた。が、その矢先、コロナ禍に見舞われ、思い描いていた展望は少なからず修正を余儀なくされただろう。ここでは、リーダーの水野良樹に、この状況下で感じたこと、そして考えたこと、そしてその先に見据えるグループの未来について聞いた。インタビュー後編は、9月19日に開催するデジタルフェスのこと、その先の展望についてお届けする。

── 4月からの活動を振り返ったときに、以前よりもデジタル展開が勢いを増してますよね。

水野 そうかもしれないですね(笑)。

── それは、意識してのことですか。それとも結果的なことですか。

水野 それは、どちらもあります。意識的にやろうと思っていたら、こういう状況になって、よりそこに集中できるようになったという面もありますから。今は、ツアーをやってたはずですが、それがなくなってデジタル展開に注力できるようになって、いろいろトライ・アンド・エラーもできて、それでますます展開できているという感じですね。

── トライ・アンド・エラーを積み重ねるなかで気づいたことはありますか。

水野 やっぱり、すべての層に届くわけではないんだな、ということは感じました。そういうものに慣れている層というか世代があって、でも紙のファンクラブ会報を大事にされている世代もいらっしゃるし。「いきもば」というモバイルのファンクラブも始めたんですが、そこではデザインを変えたりメンバーのメッセージの表示を変えたり、というふうに微修正を繰り返していて、それもやっぱりやってみて気づくことが本当に多いんですよね。

── そういう試行錯誤を積み重ねているなか、9月19日には「いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! 〜リモートでモットお祝いしまSHOW!!!〜」という配信イベントが開催されます。

水野 『BSいきものがかり』という番組をBSフジでやらせていただいていて、BSフジも20周年ということで、同い年が集まっての企画という感じなんですが、デジタルでの配信ライブというのは、もう様々な取り組みが行われていますよね。演出競争みたいな感じになってきてる感じも若干ありますけど(笑)、いろんな演出が展開されるのは素晴らしいことだと思うんです。ただ、その一方には普通にやるライブもあっていいと思うし、僕らが尖ったことをやってもしょうがないという気もするし。オンラインを使うということをテコにして、何か新しいことを考えつくには相当やらないとダメだと思うんです。

── それこそ、トライ・アンド・エラーを重ねることが必要ですよね。

水野 そこが主軸になってないとできない、というくらいのことだと思うので、いきものがかりはそのフィールドで闘うタイプではないんじゃないかなとは思うんです。例えばサカナクションにはなれないと思うから。だから、テレビという間口からスタートしたイベントとして何かひとつ提示できないかなということで、お笑い芸人の方に出ていただいたり、番組に出てくださったアーティストの方々と一緒に演奏してもらったりして、やっていこうかなと思っています。

── デジフェス以降の予定についても聞かせてください。新曲、あるいはニューアルバムのリリースはありそうですか。

水野 とりあえず、秋はどんどん新曲を作っていくことになると思いますよ。年明けに、延期になっているツアーがやれるかどうかというのが大きなトピックにはなるんですが、いずれにしても曲はどんどん作っていこうと思っています。

── ちなみに、YouTubeのオフィシャルチャンネルでは、これまでに発表された全てのミュージックビデオがフルサイズで公開されましたが、このタイミングで自分たちの音楽的な積み重ねを振り返ることになって、いきものがかりの音楽の成長や進化を水野さんは感じるところがありますか。

水野 う〜ん……、あるんですよ。それが進化と言えるのかどうかはわからないですけど……。僕自身は、曲作りについて確実にデビュー当時よりも上手くなってると思うんです。でも、上手いということには功と罪と両方あって、デビュー当時と比べればはるかにできることは増えているから当時は書けなかったような曲も書けると思うけど、逆に当時できないなりにがむしゃらにひねり出したメロディの強さを感じるところもあって、そういうものを今の僕が書けるかと言えば書けないものもあると思うし。つまり、今の僕が持っていない輝きを20代前半の僕は持っていたりもするので、そこがまぶしく見えたりもします。それとは別に、吉岡(聖恵)の歌が力強くなったということがありますよね。

── 曲ごとに歌の表情がどんどん豊かになっているとあらためて思いました。

水野 技術的にもめちゃくちゃ上手くなったと思うし、歌うことに対する覚悟の持ち方もデビュー当時とは全然違うから、確実にシンガーとして成長していると思うんですけど、それだけじゃなくて吉岡の声というものをみなさんに知っていただけたということがすごく重要だと思っているんです。あの声を聴くと、“あっ、いきものがかりだ”と思ってもらえるアイコンになってると思うし、それは作品が伝わっていく上ですごく重要な環境だと思うんですよ。だから、あの声で歌われるメロディを書くということの責任があるということでもあって、それは15年前には感じていなかったことですよね。

── 声を聴くと誰もが“いきものがかりだ”とわかるという、すごいアイコンを抱えてしまったことの困難を感じることはないですか。

水野 ネガティブにはまったく捉えていないですけど、それに見合う曲を書けるのかというプレッシャーは感じています。僕がもっといい曲を書けば、彼女の魅力がもっと伝わるし、いきものがかりという存在ももっと広まるし、多く人に楽しんでもらえるというチャンスを与えてもらっているのに、それに僕は応えられているのか?っていう。吉岡にしても、僕や山下(穂尊)の曲に対してプレッシャーというか責任みたいなものを感じていると思うんです。そういう関係性がお互いにいい緊張感をもたらしているとは思っていて、その緊張感があるからいきものがかりは保っているような気もするんですよ。「もっと別なことをやりたいよ」みたいな、変な色気が出てこないっていう意味で(笑)。僕ら3人よりも、周りの人のほうが“いきものがかり”というイメージをすごく大事にしているから、その人たちと向き合うときのほうがしんどい、という場合もありますね。

── 誤解を恐れずに言うと、という話になるんですが、実はいきものがかりに対して、いわゆる新しさというものをそれほど求めていないんじゃないかと思うときがあるんですが……。

水野 わかります。

── 例えば“15周年は10周年のときより何かが新しく更新されていないといけない、というわけでもないんじゃないか?”とか、“いわゆる新しさを追いかけるのとは違う、キャリアの積み方があるんじゃないか?”とか、そういうことを考えることはありませんか。

水野 めちゃくちゃありますよ。僕も誤解を恐れずに言えば(笑)、いきものがかりというグループよりも、いきものがかりのメンバーのほうがはるかに先を行ってると思います。

── なるほど!

水野 いきものがかりという“場”は多くの方に愛されているし、そこで求められているのは海を照らす灯台のように、ずっと同じ場所で変わらず光を放つということだろうと思っているんです。で、スタンダードを目指すグループというのは、そういう一面を持たないといけないと思うんです。しかも、それを目指せるグループとそれが叶わないグループがあって、目指せるグループというのはすごく幸運だと思うんですよね。だから、それを頑張ることが素晴らしいことであるのを、僕ら3人は誰よりも承知していると思います。それがどれだけ尊いことかというのは誰よりも理解していて、だから頑張っているんですけど、ただメンバーは歳をとっていくので、その過程で経験も増えていくし、視野も広がっていくんですよね。そこで、自分の人生は一度きりしかないから、“これでいいんだろうか?”と思う場面もたくさんあるんですよ。だから、新しいことをやりたいと思ったり、もっと視野を広げたいと思ったりするわけで、そのことといきものがかりをやっていくこととのバランスをメンバーそれぞれがどうとっていくかということが、これからはすごく重要になっていくと思います。

── 独立して新体制になった今は、そのバランスのいいところを探すことを新しく始めて、それが進んでいる状況だということでもあるわけですね。

水野 ホント、何が正解なのかわからないんですけどね(笑)。僕らよりもはるかに「国民的」という形容詞がふさわしいアーティストはたくさんいらっしゃいますよね。そういう方たちのことを「○○も昔はこうだったから」と教えてくださるスタッフの方がけっこういて、僕はそれがすごく嫌だったんですよ(笑)。だって、そういうすごいアーティストの方々と僕らが同じであるはずがないし、時代も違うから見てる景色も違うわけですよね。比べても意味がないし、だから参考にもできない。僕たちは僕たちで自分たちの物語を作っていくしかないから、ずっと未知の物語ではあるんですよね。そこで、試行錯誤しながら、また葛藤もしながらやっていったら、何か違うものが見えてくるのかもしれないですね。やっぱりマンネリだねって、すごく嫌になっちゃうかもしれないですけど(笑)。

── それぞれが自分の人生を生きることが大事、という「きらきらにひかる」のテーマがこれからもずっと意識されることになりそうですね。ありがとうございました。

取材・文=兼田達矢

プロフィール

水野良樹(いきものがかり、HIROBA)
1982年生まれ。神奈川県出身。1999年に吉岡聖恵、山下穂尊といきものがかりを結成。2006年に「SAKURA」でメジャーデビュー。作詞作曲を担当した代表曲に「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。グループの活動に並行して、ソングライターとして国内外を問わず様々なアーティストに楽曲提供。テレビ、ラジオの出演だけでなく、雑誌、新聞、webなどでも連載多数。テレビ朝⽇系⽊曜ドラマ『未解決の⼥警視庁⽂書捜査官』主題歌「きらきらにひかる」を8月31日に配信限定シングルでリリース。

イベント情報

「いきものがかり結成20周年・BSフジ開局20周年記念 BSいきものがかり DIGITAL FES 2020 結成20周年だよ!! 〜リモートでモットお祝いしまSHOW!!!〜」
2020年09月19日(土)18:00〜
※アーカイブは開催終了後から2020年09月20日(日)22:00まで。
チケット購入は https://w.pia.jp/t/ikimonogakari2020/ より



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