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「お弁当にはスパイス」が新常識? スパイス料理研究家・印度カリー子が伝授する”脱マンネリ術”

リアルサウンド

21/3/16(火) 12:00

 一見難しそうなスパイス料理のハードルを、身近な「お弁当」でグッと下げてくれる傑作レシピ本が誕生した。その名も『一肉一菜スパイス弁当』(印度カリー子/世界文化社)。人気スパイス料理研究家・印度カリー子さん初のお弁当の本である。

「一肉一菜」なら無理なく作れて、毎日おいしく楽しめる

 その名の通り、本書のテーマはピリッとスパイスの効いたおかずを詰めたお弁当。殺菌効果のあるスパイスを用いた料理は、常夏のインドでもお弁当文化の核を成すほど。これから暖かくなる日本のお弁当にもうってつけなのだ。

 この春から初めてのお弁当づくりに挑戦する人や、スパイス使いに不慣れな人もご安心あれ。著者の印度カリー子さんは、スパイス・カレー初心者のためのネットショップを運営し、日頃から料理ビギナーのお手本となるようなプロ中のプロである。

 本書でも、誰もが毎日作りやすく続けやすいよう、3つのルールを掲げて、簡単でおいしいお弁当づくりに導いてくれる。

ルール1:一肉一菜が基本!・・・おかずは一つのメイン(肉や魚)と、一つの副菜(野菜や豆、卵)の二品のみ。あとは主食(パンやごはん)を詰めるだけのシンプル献立。栄養バランスも整えやすい。

ルール2:週末に作りおきする・・・まとめて作って冷蔵・冷凍しておけば、平日の朝は楽ちんコース。冷凍したおかずをそのままポンとお弁当箱に入れられるメニューもたくさん。

ルール3:朝は詰めるだけ!・・・あらかじめ作っておいたおかずを詰めるだけなら、力を抜いてお弁当生活を続けられるはず。

 そう、例え寝ぼけまなこでも、ものの5分でお弁当を作れてしまうのが、カリー子さんが本書で提案するオペレーションの絶妙さ。

 調理自体もフライパン一つで炒めたり和えたりするだけの、ごくごく簡単なものが多い。スパイス料理=手の込んだもの、という概念が覆される有用な一冊となっている。

 さて、どれから作ろう。スパイスおかずからスパイスサンドイッチ、スパイスマフィンなど、全70品のどれもがスパイスまみれで魅力的。『不思議の国のアリス』さながら、本のあちこちから「Eat me!」と聞こえてきそうな悩ましさを感じつつ、4品作ってみたので紹介しよう。

■タンドリーチキンとオクラのポリヤル

 スパイス弁当第一弾は、がっつりお肉! インド料理店でセットについてくるとうれしい、タンドリーチキンを主役にした。さっとマリネして魚焼きグリルでこんがり焼いたチキンはとてもジューシーで、ごはんに合う塩気がたまらない。

 インドでも人気野菜のオクラは炒め料理のポリヤルに。ネバネバ部分にスパイスとココナッツファインがよく絡んだ、優しい味の箸休めだ。一袋のオクラを2日で食べきってしまった。

 ライスは89pの「スパイスおかずに合うご飯」のターメリックライスとバスマティライスを参考に炊いた。お弁当箱の蓋を開けると、まばゆいばかりの黄色にニンマリ。

■キーママタールとシナモンにんじん

 レモンの爽やかな酸味がアクセントの本格的なキーマカレーは、ごはんが進むリッチな味わい。水気がなくなるまで10分間、じっくり炒めた玉ねぎが旨味を底上げする。

 副菜は、にんじんのシナモンソテー。インド風にんじんのグラッセともいえる甘さがコッテリキーマにマッチする。

■さばサンド(スパイスフィッシュ)

 いつも焼き魚弁当で気になっていた塩サバの臭みも、ヨーグルトベースのスパイスマリネ液に漬け込むことでグッと和らぐ。今回はメインおかずのスパイスフィッシュを114pのレシピでバゲットに挟み、一魚一菜の「サバサンド」に仕立ててみた。

 上からぎゅっと押してかぶりつくと、サバの脂がジュワッと口の中に押し寄せ、おいしさ100点満点。サバ&カレー味はパンとの相性が抜群。紙にくるめば洗いものいらずなサンドイッチは、忙しいときや面倒な気分の日にも重宝しそう。

■ストロベリークリームチーズマフィン

「実は、ずっとマフィンが苦手でした」と語るカリー子さん。研究に研究を重ねてオリジナルマフィンのレシピに行き着いたそうだ。苦手を好きに変えて楽しむ、という前向きな生き様が見事に具現化されたマフィンの4つのレシピから、ストロベリークリームチーズマフィンを紹介したい。

  かわいい見た目もさることながら、ターメリック入りの黄色い生地がアルカリ性の重曹と反応することでピンク色になる、というアカデミックなスイーツ系マフィンだ。

 焼き上がるにつれて見事なピンク色に変色していく様が、子どもの頃の化学の実験を思い起こさせ、ワクワク感が募る。好奇心を大いにくすぐられた私は、マフィン刑事か? と思うほどオーブンの前に張り込んで、焼成の様子に見入ってしまった。

 「私のマフィンは、型からまあるく盛り上がるくらいの大きさも特徴」とカリー子さんが言う通り、こんもり膨らんだキノコ型の可愛らしいルックスもポイントが高い。思いがけず巡り逢えたこの絶品レシピは今後の定番になりそうだ。

 魔法のスパイス配合の方程式は、ぜひ本で確かめてほしい。

 紹介した主菜はいずれも冷蔵5日・冷凍1ヶ月、副菜は冷蔵1週間、マフィンは冷蔵4日・冷凍1ヶ月と、一度作ってしまえばかなり日持ちする。ほかにも、お弁当向きに汁気少なめで調整されたチキンカレーやココナッツシュリンプ弁当を作ったが、日替わりであれやこれやとお弁当箱に詰めるだけで一週間のランチを楽ちんかつおいしく取り回せた。もうスパイス弁当に、やみつきだ。

 各レシピで使われる基本のスパイスも手に入りやすいものばかり。すでにインド料理作りに明るい人にはレパートリーを増やすため、イチからスパイスカレーを作ってみたい! という人には入門書として、心からおすすめしたい。きっとすぐに、スパイスたちと仲良しになれることだろう。

■書籍情報
『一肉一菜スパイス弁当』
著者:印度カリー子
出版社:世界文化社
発売日:発売中
定価:1,540円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/4418203214/

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