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TWICE、ベストアルバム『#TWICE3』日本語バージョンの群を抜いて高いクオリティ 「21:29」筆頭に込められたファンへの思い

リアルサウンド

20/9/28(月) 6:00

 グローバルな人気を誇るガールズグループ・TWICEが2020年9月16日、日本で『#TWICE3』をリリースした。グループ名にハッシュタグを付けたこのアルバムは、韓国で発表した楽曲の日本語バージョンを紹介するシリーズのひとつで、本作が第3弾となる。

 アルバムを出すたびに好成績を残しているグループだが、特にこのシリーズは人気があるようで、『#TWICE3』もリリース直後にオリコンやタワーレコードのデイリーチャートで1位を獲得。9月28日付週間アルバムランキングでも1位に。今までに出した日本リリース作はすべてプラチナ(25万枚以上)の認定を受けているが、本作も早い段階でこの記録に到達するのは間違いないだろう。

 今回収録されたのは計12曲。『The year of “YES”』(2018年)から「The Best Thing I Ever Did」、『FANCY YOU』(2019年)から「FANCY」「STUCK IN MY HEAD」、『Feel Special』(2019年)から「Feel Special」「21:29」、『MORE & MORE』(2020年)から「MORE & MORE」と、4枚のミニアルバムからセレクトされており、どの曲も韓国語のオリジナルと日本語の2バージョンが収められている。

 韓国語の楽曲を聴くと痛感するのが発音の違いだ。韓国語は英語の発音と共通点が多いためか、リズミカルなサウンドに乗せやすい。その利点を生かした曲作りをしているため、新たに日本語の歌詞を付けることはかなりむずかしく、下手をすればオリジナルの良さを損なってしまう。ところが本作の収録曲はいずれも原曲の内容を的確に翻訳しながら、リズムにもしっかりなじむような歌詞に仕上げており、数ある日本語バージョンの中でも群を抜いてクオリティが高い。

 本作リリース前に先行公開された「STUCK IN MY HEAD -Japanese ver.-」はLINE MUSICの週間トップ100チャートで1位となったが、ヒットして当然の内容であった。原曲の歌詞は恋の駆け引きをスリリングに描いたもの。日本語バージョンも基本は同じだが、韓国特有の表現を無理に訳さずに別の言葉に置き換えたことで、日本のリスナーの共感を得ることに成功している。

TWICE 「STUCK IN MY HEAD -Japanese ver.-」 Promotion Video

 例えば「オルムテン」。これは日本の鬼ごっこに似た韓国の遊びだが、そのまま訳すことなく、〈鬼さん コチラ 手の鳴る方〉とわらべうた風の言い方にして、うまくリズムに乗せている。本作はこのように工夫を凝らした表現が多く、さらにメンバーの日本語による表現力の向上が加わったおかげで、オリジナル曲の世界観がしっかり再現されているのが最も評価すべきポイントだろう。

 収録曲の中で特に注目したいのは「21:29 -Japanese ver.-」だ。タイトルは歌詞が完成した時間を指し、「2=TWICE」「1=ONCE(TWICEのファン)」「9=メンバーの人数」という意味も込められている。メンバー全員で作詞したこの曲はファンに向けたもので、感謝の気持ちがストレートに伝わってくる美しいバラードだ。日本語詞の内容は原曲とほぼ同じであるものの、修飾語をできるだけ削り、〈君のおかげ〉や〈君がすべて〉といった風に、ひとつひとつの言葉の意味と響きを重視したと思われる表現が目立つ。

「21:29 -Japanese ver.-」

 また、「21:29 -Japanese ver.-」の歌詞にはオリジナルにはないメッセージが含まれているのが興味深い。原曲では「小さいプレゼントだけど受け取ってほしい」とファンに語りかけるが、日本語バージョンでは〈膨らんでいく 思い詰めて〉という言葉も添えている。日本での活動が思うようにできない現在のメンバーたちの心境を反映しているようだ。

 今年の夏に行われたオンラインコンサート『Beyond LIVE – TWICE : World in A Day』でもファンとの交流が印象的であった。全世界から集まったONCEの中からひとりの女性が選ばれ、「一度も公演に行ったことがなかったけど、オンラインのおかげでようやく参加することができて本当に嬉しい」とコメントしたところ、メンバーは大喜び。そのやりとりを通じて、常にファンを最優先にする気遣いを感じ取った人は多いはずだ。

 新型コロナウイルスの影響で今まで当たり前のようにやってきたことができなくなってしまったものの、それゆえにTWICEと日本のファンの絆はさらに強くなった、だからこれからも安心して応援してほしい――。「21:29 -Japanese ver.-」を筆頭に『#TWICE3』の日本語バージョンにはそんな熱いメッセージが込められているような気がしてならない。

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。

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