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『Dr.STONE』石神千空が示す、新時代のジャンプヒーロー像 天才科学少年の熱い信念

リアルサウンド

20/5/31(日) 8:00

 『週刊少年ジャンプ』にて連載中の『Dr.STONE』(原作:稲垣理一郎、作画:Boichi)は、文明崩壊後の世界に、科学の力で文明「再起動」をはかるクラフトアドベンチャーだ。本作は、次にくるマンガ賞2018のコミックス部門で2位に入賞し、2018年度の第64回小学館漫画賞少年向け部門でも受賞した。2019年にはアニメ化もされて、現在第2期のアニメ化も決定している。

参考:『Dr.STONE』はコロナ禍の今こそ読みたい“科学漫画”

 ある日突然、謎の光が全人類を石化したことで文明は崩壊。3700年後の日本では体力自慢の高校生・大木大樹の石化が解け、彼は同級生の天才科学少年・石神千空と合流。千空の方は大樹より半年以上前に目覚め、文明「再起動」のための準備をしていた。以降、千空が中心となり、科学的知識・知見を活かしながら、地道に「再起動」を進めて、石化や復活の原理も突きとめていく。原始時代に戻ったような世界で、千空はそのときの状況に応じて、突飛な閃きと理系マインドから自分や周囲に課したミッションをクリアしていくのだ。

 序盤では、「マンパワーを上げる」ことを目標に、石化した人間を解いていく。そのために硝酸とエタノールから工業用の腐食液ナイタールを生成する。硝酸は洞穴に棲むコウモリの糞をもとに、エタノールは森で収穫したブドウを発酵したワインをもとにする。ナイタールを完成させた後、千空は石化前の世界で「霊長類最強の高校生」とうたわれた獅子王司や、大樹の片想いの相手であった小川杠をよみがえらせた。

 本作の大筋は、「文明を再起動しつつ石化の謎や復活の原理を突きとめていく」であり、その壮大なスケールと予測不可能な内容がキモだ。物語の詳細をのべるのは極力控えた上で、世界観や主人公・石神千空の魅力を紹介していきたい。

 作中に繰り返し描かれているのは、科学を基点とした人類史へのオマージュだ。たとえば、ある展開のなかで、こんな描写がある。文明崩壊前に存在していた世界的ポップスターの歌唱音源が発掘され、それを聞いた者たちが感動のあまり涙を流すシーンだ。彼らに向けて、千空は「音楽だけじゃねぇ ゲーム テレビ 漫画 映画 どいつもこいつも 科学の進歩で作れるようになったエンタメどもだ」、「現物は消えちまったが 全人類の記憶ん中に残ってる! テメーらにも全部見してやるよ」と文明「再起動」のための士気を高めた。登場人物たちに何度も、人類が培ってきた歴史への敬意と、それが失われたことへの悲しみ、文明「再起動」への決意を語らせているのが、『Dr.STONE』の大きな特徴の一つだ。

 本作は、徹頭徹尾、科学的マインドで描かれる。そのマインドを貫くのは、本作の中心にいる石神千空の視点だ。

 彼のキャラ造形は非常にフレッシュで魅力的。人類史へのオマージュという壮大なテーマの中で、少年ジャンプ的な「友情・努力・勝利」を実行させている。作中でも再三いわれてるような「ヒョロガリ」の肉体でありながらスケールの大きなヒーローなのだ。

 石化中に何千年も秒数を数えてきたというのも破格の情熱だが、たとえば第1話で大樹が復活したときのセリフはいかにも少年ジャンプ的。「ずっと待ってた 大樹テメーを 100億%生きてるって分かってたからな! 杠に(好きだと)言うって決めた 男が志半ばで たかだか数千年ぼっちふんばれねえような んなタマじゃねえだろテメーはよ!」というものだ。

 千空は、何千年という時を超える「友情・努力・勝利」というマインドも持ち合わせている。千空は登場人物たちに科学的なロジックだけでなく、科学的希望に導かれる精神の強さも説くのだ。千空は修行で強くなるわけではない。しかし、勝利に向けて強靭な意志で1つ1つの課題をクリアしていく姿は、今のような時代だからこそ求められるヒーロー像だと言えるだろう。

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