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和田彩花の「アートに夢中!」

キスリング展 エコール・ド・パリの夢

毎月連載

第17回

東京都庭園美術館で開催中の、エコール・ド・パリを代表する画家の全貌に迫る『キスリング展 エコール・ド・パリの夢』。ポーランドのクラクフで生まれ、美術学校を卒業後、19歳でパリに出たキスリングは、モンマルトルやモンパルナスで、ピカソ、ジョルジュ・ブラック、モディリアーニ、パスキン等、多くの芸術家と知り合い、影響を受けながらも独自の道を切り拓いた。100年前のパリで「モンパルナスのプリンス」と呼ばれるほど時代の寵児となったキスリング。彼の作品は初見だという和田さんが、同展から感じたその魅力を語ってくれた。

まるで“作って”いるような
立体的な花の描写

私は今回の展覧会で初めて、キスリングという画家を知りました。いつも知らない画家の展覧会に行く時に思うのですが、美術館に入って絵と対峙し、どんな画家なのか、どんな作品なのかと知っていく過程は一種の旅のようです。

そんな中でまず私が驚かされたのが、密集した花たちが描かれた《花》という作品。庭園美術館の大客室だった部屋の、暖炉の上に飾られています。

《花》1933年 サトエ記念21世紀美術館

一目見て、花瓶に生けられたお花を描いているというのはわかりますが、私は、真ん中の黄色い花の塊の部分に違和感を覚えたんです。これは何?って。めしべを誇張したように描き出したのか、ミモザなのか、それとも何か他の花なのか……。なんとも不可思議な造形。

そしてここで皆さんに注目して見ていただきたいのが、絵具なんです。この時代の画家は、絵具の跡もかなり残しているし、人物の描き方もどんどん崩して描いている人たちが多いですよね。ピカソやモディリアーニなんかを想像するとわかりやすいんじゃないでしょうか。でもその中でこの人は、絵具でお花を描くというより、絵具でお花を作っているような印象を受けました。この中央の黄色い花たち、ものすごく絵具を盛り上げて描かれているのがわかります。そして一つ一つバラのように渦を巻いていて、絵の中央を埋め尽くしています。

いったいこの黄色い花たちは何をモチーフに描かれたのでしょうか? なんの花なのか、どれだけ見ていてもわからなかったのですが、周りの実在するであろう花たちとのギャップと、不可思議さ溢れるこの黄色い部分に心惹かれました。

それに色もバランスもとてもいいんですよね。現実的に考えると、この大きさの花瓶にこれだけの花が生けられると倒れてしまうと思うのですが(笑)、絵として描かれることで、造形的でありデザイン的にもなり、見ていて楽しい作品だなと思いました。

実は私、小さい頃からフラワーアレンジメントを自己流でやっていたんです。遊びの延長線みたいな感じで。その自分の経験と花の絵を照らし合わせて考えてみると、リアリティがないんですよね。他にもたくさんの花の絵が展示されていたのですが、実際にこんな生け方したら、色もお花も重なってあまり綺麗じゃないなと思ったり、花瓶の大きさに比べて、異常なほどお花が縦長に生けられている作品もありました。

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