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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

シネマハウス大塚ー大島渚監督作品主演の経験もある後藤和夫館長が新作ドキュメンタリーを製作・監督・公開!

隔週連載

第34回

20/4/12(日)

映画館を作ったんだから、映画も作りたい ──。JR山手線・都電荒川線の大塚駅から徒歩約7分の多目的ホール「シネマハウス大塚」は唯一無二の“映画館”だ。都立高校の同級生6人が「自由な表現のためのスペースを」と2018年4月にオープンして丸2年。元テレビプロデューサーの館長、後藤和夫さんは全編パレスチナ・ロケによるドキュメンタリータッチの映画『傍観者あるいは偶然のテロリスト』(5月公開)を監督・主演し、配給、上映する。

大塚・折戸通りのマンションの1階にある「シネマハウス大塚」は厳密には映画館ではなく、映画上映もできる多目的ホール。学生運動が盛んだった1968年〜70年まで都立竹早高校(東京都文京区)で映画と青春の日々を過ごした同級生の男女6人が2015年の新年会で再会し、「表現の自由が危機に直面している」と意気投合。トントン拍子に話がまとまって、高校時代のたまり場だった大塚に“映画館”を作った。

120インチのスクリーンに、最大56席のミニシアター。上階はマンションのため、分厚い防音壁に、厚さ3センチ以上ある防音ドアを設置。フロント、リアスピーカーのほかに、ウーファーもあるという本格的な上映施設。シネマハウス大塚として、大島渚監督の特集、撮影監督・篠田昇さんの特集、ドキュメンタリー作家・三上智恵監督の沖縄三部作などを上映配給・興行する一方、レンタルスペースとして貸し出し、映画上映、演劇、学習会、シンポジウムなどさまざまなイベントが行われている。

座席は56席だが、現在新型コロナ対策で31席にしている

創設メンバーは後藤さんらが立ち上げた高校の映画サークル「グループ・ポジポジ」を中心とした仲間。卒業直前の1970年3月には、その製作作品が、高校生映画祭に来場した大島渚監督の目に留まった。大島監督は高校生たちとのコラボを企画。原正孝(映画監督、後に原將人と改名)さんが作った映画で遺書を残した学生の物語というストーリー案が採用され、『東京战争戦後秘話』(战は簡体字、1970年)として映画化。後藤さんは風景フィルムを残して自殺した男の足跡を追う主人公を務めることになった。

メンバーの進路は不動産業、出版界、テレビ界などとバラバラ。スーパーバイザーを務める橋本佳子さんは制作会社「ドキュメンタリージャパン」所属の現役プロデューサー。『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(2012)、『フタバから遠く離れて』(2012、2014)、『FAKE』(2016)、三上智恵監督の『沖縄スパイ戦史』(2018)などをプロデュースしている。

館長の後藤和夫さん

後藤さんはテレビ界に進み、テレビ朝日「報道ステーション」を始め、報道やノンフィクション番組のディレクター、プロデューサーを務めた。アフガン、北朝鮮、パレスチナなどでの取材経験を綴ったノンフィクション『目撃者と傍観者のはざまで』や、サスペンス小説『新天国と地獄』などの著書もある。

『傍観者あるいは偶然のテロリスト』は、フリーランスのテレビジャーナリストとして駆け巡った取材経験が基になっている。「私は20年前にパレスチナを初めて訪れ、3年間で都合14回、パスポートサイズのソニー製カメラを持って、取材に訪れました。そのビデオテープは200本にもなります。私が昨年構想した映画のシナリオ『偶然のテロリスト』をもとに、パレスチナにロケハンに行くというセルフ・ドキュメンタリーです。昨年5月に私はパレスチナの各地を再訪し、過去の200本のテープを編集し、過去と現在のパレスチナを主人公の“私”が旅をするという作品です」と後藤さん。

『傍観者あるいは偶然のテロリスト』のチラシ

20年前のパレスチナは、占領側のイスラエルに対してパレスチナ人が激しく民衆闘争を繰り広げた「第2次インティファーダ」(アラビア語で蜂起、反乱の意)の真っ最中だった。後藤さんは銃声の音を聞きつけては、その闘争の様子を生々しくレポートし、テレビのニュース番組に売っていた。劇中では、パレスチナの民衆の激しい抵抗、イスラエル側による破壊を捉えた映像が挟み込まれる。

「劇映画として企画した脚本『偶然のテロリスト』というのは、日本人ジャーナリストが自爆テロを行ったというニュースが流れ、かつての仲間だったジャーナリストがその真実を追い求めるという国際サスペンスなんです。でも、そのまま映画にするのはお金もかかるし、今どき、そんな映画に金を出す映画会社もないだろうと思い、今の形を思いついたんです。ジャーナリストは目撃者なのか、単なる傍観者なのか、これは自分の長年のテーマでした」。製作費は後藤さんが全額出資。カメラマンだけを同伴し、約2週間パレスチナロケを敢行。過去のビデオテープを整理し、編集するのに、膨大な時間がかかったという。後藤さんにとっては『東京战争戦後秘話』出演後、自ら監督した自主映画『ハードボイルドハネムーン』以来の映画監督作品となる。

また、シネマハウス大塚では、「ロスナイ」という換気システムを導入するなど新型コロナウイルス対策を講じながら、営業を続けている。

『傍観者あるいは偶然のテロリスト』上映予定
5月15日(金)15時, 18時
5月16日(土)15時,18時
5月17日(日)12時半,15時,18時
6月13日(土)〜19日(金)12時半,15時,18時

映画館データ

シネマハウス大塚

住所:東京都豊島区巣鴨4-7-4-101
電話:03(5972)4130
公式サイト: シネマハウス大塚

『傍観者あるいは偶然のテロリスト』
公式サイト:https://nipponpopkyo.wixsite.com/palestine
予告編:https://youtu.be/jGWvYCbuZt8

プロフィール

平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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