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『きみセカ』キム・ジェヒョン演じるミンジュンの最期 響と等々力の関係はどう展開する?

リアルサウンド

21/3/1(月) 11:20

 「これからはワクチンを奪い合う時代が来る」。現実ではなくドラマの話だ。『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)第7話では、ウイルスの脅威から人類を救うはずのワクチンが新たな争いの火種を生み出した(以下、ネタバレを含む)。

 引っ越し屋のアルバイトだったミンジュン(キム・ジェヒョン)は、響(竹内涼真)の右腕としてグループを支えてきた。テコンドーの使い手で気遣いのできるミンジュンは心強い相棒であり、殺伐とした本作にあって視聴者に癒しを与えてくれる安心要素だった。そのミンジュンが逝ってしまった。

 横須賀駐屯地の地下で琴子(臼田あさ美)と対面した響。ゴーレム化した母親に以前の面影はなく、混乱した響は鎖を切断して琴子を解き放つ。一方、目の前で愛奈(新津ちせ)が殺される様子を目にした勝利(田中奏生)は、ミンジュンと佳奈恵(飯豊まりえ)に襲いかかる。そこに来美(中条あやみ)が現れ、勝利を守るためにミンジュンを刺す。

 ナイフを持って向き合う来美と佳奈恵。佳奈恵はミンジュンを連れてその場を逃がれるが、今度は琴子が2人を襲う。ミンジュンは琴子に噛まれながらもとどめを刺した。ウイルスに感染したミンジュンを助けたい姉のジアン(玄理)は響にワクチンの提供を申し出て、響はその要求を受け入れる。だが、冷凍保存装置の中にワクチンはなかった。

 首藤(滝藤賢一)に従順に見えたジアンが、ミンジュンのために危険を冒すのはやや意外だった。ゴーレムになった琴子を逃がす響の行動も、理屈では説明がつかない。極限状態で他の全てを上回ってしまうのが肉親の情なのかもしれない。弟を救おうとして生き残ってしまったジアンの悔恨には胸を衝かれた。

 救いがあるとすれば、ミンジュンが、憎まれるのではなく惜しまれながら死んでいったことだ。ミンジュンが琴子を殺したことを懺悔し、それを聞いた響がゴーレム化したミンジュンに刃を突き立てる場面は、形だけ取れば、響が母親のかたきを討っているようにも見える。悲劇であることに変わりはないが、響にはミンジュンを憎む気持ちはなく、苦渋の決断で親友にとどめを刺した。琴子に関しても、もしミンジュンが仕留めなければ、後々まで響を苦しめていたかもしれない。響はミンジュンを、ゴーレムでも母の命を奪った相手でもなく、人間として葬ろうとした。涙をためながらもミンジュンから目を背けなかったのは、責任感の強さだけではなく、何度も自分たちを守ってくれた友への感謝の思いもあったはずだ。

 響や佳奈恵、甲本(マキタスポーツ)、紹子(安藤玉恵)と結月(横溝菜帆)に支えられながら「なんだか家族みたいだ」とつぶやいたとき、ミンジュンは何を願っていたのだろう。子どもの頃、1人で眠るのが怖かったミンジュンは「ゴーレムの世界になった地獄だけど、1人で眠らずにいられて良かった」と最期を看取った仲間たちに感謝する。終末世界で人間らしさを失わなかったミンジュン。その思いはむなしく、憎しみの連鎖は続く。響はミンジュンを刺した女に、それが来美であるとは知らずに復讐を誓い、妹を殺された勝利の憎しみは来美にも伝染する。疑似家族のような響たちは、家族の憎しみも背負うことになった。

 ふたたび響の前に現れた等々力(笠松将)は、銃口を向けて「小笠原(来美)のことはもう探さないのか?」と訊ねる。かつての友は大事なことを思い起こさせる存在で、響とのライバル関係がSeason1終盤でどのように展開していくか注目したい。余談だが、琴子役・臼田あさ美は、これまでに登場したゴーレム中でナンバー1の迫真の演技だった。特殊メイクもさることながら、虚ろな表情で視線をさまよわせ、うめき声を上げて襲ってくる挙動から、人間性を喪失した得体の知れない恐怖が伝わってきた。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『君と世界が終わる日に』
Season1(全10話):日本テレビ系にて毎週日曜22:30〜放送
Season2(全6話):Huluにて、3月配信開始
出演:竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、大谷亮平、笹野高史、マキタスポーツ、安藤玉恵、横溝菜帆、鈴之助、キム・ジェヒョン、滝藤賢一
脚本:池田奈津子
音楽:Slavomir Kowalewski A-bee
主題歌:菅田将暉「星を仰ぐ」(Sony Music Labels Inc.)
制作:福士睦、長澤一史
チーフプロデューサー:加藤正俊、茶ノ前香
プロデューサー:鈴木亜希乃、鬼頭直孝、伊藤裕史
協力プロデューサー:白石香織
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ、HJ Holdings,Inc.
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kimiseka/
公式Twitter:@kimiseka_ntv
公式Instagram:@kimiseka_ntv

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