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Big Hit Labels、初の合同コンサートで示された現在地 アーティストの魅力とITテクノロジーの共存で見せたステージ

リアルサウンド

21/1/11(月) 12:00

 2020年12月31日、Big Hit Labels初の合同コンサート『2021 NEW YEAR’S EVE LIVE』が開催された。新型ウイルスの再流行に伴いステージは事前収録でオンラインのみでの開催となった。

 『I−LAND』に出演したHANBINによる「I&credible」のプレステージの後には11月にデビューしたばかりのENHYPENとデビュー2年目のTOMORROW X TOGETHERがフレッシュなステージで序盤を飾り、Big Hitのシンガー、イ・ヒョンとPLEDIS Entertainmentでほとどの所属アーティストのプロデュースを担当しているプロデューサー兼歌手のBUMZUがベテランらしいしっとりと希求力のあるステージを見せた。

 2021年にはデビュー10年目を迎えるNU’ESTも華麗なステージを披露し、GFRIENDは様々なコンセプトを多彩な舞台で楽しませてくれた。年をまたぐ前後のクライマックスにはBTSが登場し、スティーブ・アオキとの「MIC Drop (Steve Aoki Remix)」、Lauvとの「Make It Right (feat. Lauv)」、Halseyとの「Boy With Luv (feat. Halsey) 」など、過去の客演陣とのリモートでの共演ステージを含む6曲をパフォーマンス。「Make It Right」と「Life Goes On」のステージでは肩の手術後療養中のSUGAも姿を見せ、7人の完全体での舞台を見せてくれた。

 SOURCE MUSICやPLEDIS Entertainmentなど複数の中堅事務所を買収後初のレーベル名義のコンサートだったが、「レーベルメイト」としてアーティストたちが共演したのは「CONNECT Stage With Sin Haechul」のみだった。シン・へチョルはバンド・無限軌道やN.EX.Tなどで活躍し、2014年に医療事故で急逝した大物ロックミュージシャンで、ラジオDJや社会運動家としても名を知られる存在だ。

「私たちが歩んできた道には数多くの正解と誤答、幾多の夜も眠れなくさせる果てしない疑問が刻まれています。そしてここに、その問いかけに惜しみなく答えてきた人がいます。熱く、そして熾烈に私たちを慰めた音楽によってです」

 というSUGAの紹介とともにスクリーンに映し出されたシン・ヘチョルの楽曲の歌詞は、「君の夢をあざ笑う者をいちいち相手にするな」「僕たちみんな消えない質問の答えを求めて歩いている」など、どこか初期のBTSを彷彿とさせる内容だった。

 シン・ヘチョルの代表曲「君に」と共にステージのスクリーンにAIホログラムで再現されたシン·ヘチョルが現れ、NU’ESTのBAEKHO、GFRIENDのYUJU、TOMORROW X TOGETHERのTAEHYUN、ENHYPENのHEESEUNG、BUMZUと共に歌い、共演した。続くNU’ESTのREN、TOMORROW X TOGETHERのHUENINGKAI、ENHYPENのJAYによる「君が本当に望むものは何だ」は未完成楽曲で、今ステージで初めて世に披露されたという。

 また、「君が本当に望むものは何だ」では国楽歌手のチャン・ソユン、「君に」ではプンムルペ(農楽隊)とプクチョン獅子舞が一緒に登場するなど、伝統音楽・文化との融合を目指した舞台となった。このステージは「私たちはつながっている」という今回の公演のテーマを多角的に表現するしようとしたと言える。それぞれ異なる所属のアーティスト達同士、AIやホログラムといったテクノロジーと伝統文化、故人と生者など、異なる属性のもの同士の共演ということだろう。

 Big Hitが上場した時に「競合相手」として名前を挙げたのは芸能事務所ではなくKakaoやNaverといったIT系の企業だったというが、その通りに多角的なテクノロジーを提供する企業を目指すという方向性が窺えるライブだと感じた。各グループごとのM&G(MEET & GREET)などイベントコーナーも設けられていたが、これは分割画面上でライブと同時進行で見られるようになっていた。AIやホログラムで「故人を蘇らせる」ライブは2012年『Coachella』での2Pac、2014年の『Billboard Music Awards 2014』でのマイケル・ジャクソンのステージ、日本では2019年の『NHK紅白歌合戦』でのAI美空ひばりなど、賛否両論ありながら試みられているテクノロジーのひとつだが、AIを使った既存アーティストのホログラムライブ自体は、すでに何年も前からSM ENTERTAINMENTやYG ENTERTAINMENTがCOEXやKliveといった常設会場で行って来ているものだ。Big Hitのアーティスト自体はまだホログラムライブを披露したことはないが、2020年末の『2020 MAMA』のステージでは肩の療養中のSUGAをホログラムで登場させたり、BTSのコンサート会場ではAR技術でメンバーと写真を撮ることができるブースも登場するなど、「アイドルとの仮想現実」という近年の流れを感じる動きはあった。過去にはキム・ジェジュンのように入隊中にホログラムコンサートを行ったアーティストの例もあることを考えると、「CONNECT Stage With Sin Haechul」は、この先の会社としての展開を色々と伺わせる試みと要素が詰まっていたステージと言って良いのではないだろうか。

 アーティストの魅力をそのまま見せたライブパフォーマンス部分と、AR・VR/XR技術やドローンによる花火空撮のフィナーレまでITテクノロジーを披露して見せた部分が共存するところが今の「Big Hitらしさ」なのかもしれないと感じたレーベルコンサートだった。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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