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志田未来、『美食探偵』は“禁断の果実”? キャリアを重ねた今だからこそ増す、感情の重み

リアルサウンド

20/5/17(日) 6:00

 『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)で、連続殺人鬼・マリアファミリーの一員を演じる志田未来。気がつけば、その名を轟かせた『女王の教室』(日本テレビ系)から15年が経つ。『女王の教室』、『14才の母』(日本テレビ系)、『小公女セイラ』(TBS系)とダークな背景・設定を持つ役が多かった志田。マリアファミリーの一員は、キャリアを重ねた今だからこそできる役だと感じる。
 
 志田は、12歳のとき、悪魔のような鬼教師と小学6年生の子供たちの戦いを描いた『女王の教室』で民放連続ドラマ初レギュラー出演を果たし、平和主義の女子生徒・和美を好演。自分に自信がなく、常に周りを気にしている目線や、友達を庇うために涙を流し、必死に先生に訴える演技など、芝居でほかの出演者を圧倒。ただ感情を強調するのではなく、感情が先走って畳みかける口調や、気持ちが高ぶり言葉が詰まるような間があったりと、12歳にして完成された演技を見せる。

 その後は研音に所属事務所を移籍、2006年に『14才の母』で連続ドラマ初主演を飾る。これまでも未成年の妊娠・出産をテーマにするドラマはあったが、志田は当時、神木隆之介主演の『探偵学園Q』(TBS系)や、伊東美咲主演のフジテレビ系月9ドラマ『サプリ』など人気ドラマに出演した直後に、妊婦役を演じる衝撃。自ら重い運命を背負う覚悟の演技だけでなく、普通の中学生から回を増すことにどんどん顔つきが変わっていくのが印象深く、出産後の母親の顔になるのは本当に驚かされた。子供にして志田の演技にリアリティを感じるのは、当時、志田は現場に台本を持っていかないという話が有名で、「セリフを考えてお芝居すると、自分の中でセリフを追ってしまって、お芝居に集中できない」(2013年に出演した日本テレビ系『アナザースカイ』より)と語っていて、志田の心の底から訴えてくるような演技の理由が分かる。

 2009年の2度目の主演ドラマ『小公女セイラ』は、秀才でお金持ちのお嬢様から一転、無一文となり、使用人として学院で下働きする話。当時の記者発表で、セイラを目の敵にする院長役の樋口可南子が「未来ちゃんは、いじめればいじめるほど、色っぽい表情になる」とコメントしたように、クラスメイトからイジメを受け、それでも前向きに生きる姿が、お嬢様のときよりも逆にいきいきしているようで、志田は不幸が似合う女優だと改めて実感させた。

 『美食探偵』では、彼氏の浮気相手の殺害をマグダラのマリア(小池栄子)に依頼する、純朴なりんご農家の娘・古川茜/林檎を演じる。単に浮気だけなら殺害に至らなかっただろうが、彼女の人生そのものと言えるジャムを浮気相手に食べられる悔しさ。また自分が送ったものは腐らせるのに、ホテルのものを食べて死ぬ彼は、茜にとっては浮気以上の裏切り行為。そのことを涙を流しながら噛みしめるように告白するその悔しさが伝わり、最後に「愛してたから殺した。女ってそういうもんです」と、悔しさを超えて、安堵したような表情を浮かべる。普通ならここで反省して終了だが、マリアファミリーとなって、連続殺人の手助けをすることに。

 志田が『女王の教室』から今でも一貫してキャラがブレないのは、見た目や与えられる役もそうだが、感情表現の演技が変わらないこと。ただ、キャリアと年齢を重ねたこともあるのだろう。若さゆえの暴走ではなく、責任と、周りの声があるのを分かった上で、覚悟を決めての行動だと想像できる演技の重みがあるのだ。そうした背景が見える年齢になったからこそ、茜の感情がより伝わってくる。今回振り返って気づいたのは、志田の演じる役柄は、どんな不幸やアドバイスがあっても自分の意思は絶対曲げないこと。要は頑固者と世間との戦いだったように思うが、マリアはそれを受け入れるところが面白く、意思を曲げずに殺人を成就したその先は、これまで志田が演じたことのない未知の領域、まさに禁断の果実。悪役や殺人役を演じた印象がない志田が、マリアファミリーでどういった心情で明智たちと対峙するのかに注目だ。 (文=本 手)

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