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のっちはゲームがしたい! 第8回 ついにヨコオタロウさんと対面!「ニーア」シリーズ開発の裏側をたっぷり聞いてきました

ナタリー

のっちさんと新宿の街並み。

ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回は2021年4月22日に発売された「NieR Replicant ver.1.22474487139...」の開発に携わった株式会社トイロジックを訪問し、クリエイティブ・ディレクターのヨコオタロウさん(株式会社ブッコロ)、プロデューサーの齊藤陽介さん(株式会社スクウェア・エニックス)、ディレクターの伊藤佐樹さん(株式会社トイロジック)にいろいろなお話を聞いてきました。

「NieR Replicant ver.1.22474487139...」は2010年4月発売のアクションRPG「NieR Replicant」のバージョンアップ版となる作品。2017年2月にリリースされ、累計出荷・ダウンロード販売本数が600万本を突破したシリーズ2作目、「NieR:Automata」の世界が形成されることになった始まりの物語が描かれます。この「NieR:Automata」はのっちさんがもっとも好きなゲームの1つ。とても思い入れの強い作品ということもあり、今回はこれまで以上に時間をかけてボリュームたっぷりのトークを繰り広げました。

※この取材・撮影は5月下旬に感染対策を講じたうえで行いました。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 文 / 橋本尚平(取材後記は除く) 撮影 / 上山陽介 ヘアメイク / 大須賀昌子 題字 / のっち

目次

3Dモデルの作り方を教えてもらいましょう

ヨコオさんや齊藤さんの熱烈なファンで、出演するトーク配信などをすべてチェックしているというのっちさん。この日は心なしかいつもよりも緊張した面持ちでした。

インタビューの前にまずは、トイロジックのオフィスを見学させてもらいます。コロナ禍のためトイロジックは大部分のスタッフがリモートで開発作業をしているそうで、取材当日もオフィスに出社している人はわずかでした。

ここは主に3DCGキャラクターのモデリングなどの作業をするデスク。イラストレーターの吉田明彦さんからキャラクターデザインが届くと、それを見ながらキャラモデルチームの皆さんがここで3Dモデルを起こします。ちなみにオフィス内の天井は、光が画面に当たると色が正確に把握できなくなるため、この作業をしているスペースの蛍光灯は半分以上が外されています。最初に見せてもらったのは、カイネというキャラクターの3Dモデルでした。

「イラストからポンと3Dになるわけではないじゃないですか。この3Dはどうやって作り始めるんですか?」というのっちさんの質問に答えるため、スタッフさんが見せてくれた3Dモデルの最初の状態は、なんとただの四角い箱。のっちさんは思わず「ええっ! これがこれになったんですか!?」と驚きの声を上げました。

この箱に線を入れ、その線を少しずつ少しずつ動かしていくという地道な作業を長い時間かけて行うことで、ただの四角い箱がリアルなキャラクターへと変貌していくそう。顔のアップを見ると、髪の毛1本1本までかなり細かく調整されているのがわかります。

3Dモデルは、ある程度のたたき台ができたらヨコオさんがチェックし、フィードバックがあれば修正。それを繰り返すため、すべての主要キャラができるのにだいたい1年くらいかかっているそうです。また、イベントシーンに合わせての微調整は最後の最後まで続き、このゲームは4月発売だったのに3月になってもまだ3Dデータを触っていたんだとか。それを聞いたのっちさんは「こういう作業って、時間があればあるだけ、いつまでもやっちゃいますよね」と共感していました。

人の形ができあがると、別のソフトを使って質感を表現するテクスチャーを表面に貼り、色を乗せます。キャラクターを拡大して、実際のゲームプレイ中はあまり見ることができないくらい細かい部分まで見せてもらったのっちさんは「うわすごい! ちゃんと生地!」と目を丸くしていました。

衣装は表面だけでなく裏面も描かれていないと、何かの拍子で裏面が見えてしまったときなどに、その部分が透明になってエラーが起きてしまいます。そのため、プレイ中は見ることができなくても、服にはすべて裏地が設定されているそうです。こちらはエミール(実験兵器7号)の3Dモデル。エミールの服の裏地を見せてもらったのっちさんは「裏地なんて意識したことなかった!」。

テクスチャーを書き出したら、次は素材ごとの光の反射具合などを設定し、質感を出していきます。目は左右それぞれのハイライトの位置を動かせるようになっていて、特にイベントシーンなどでは瞳の輝きに細かい調整が施されます。3Dモデルを作る作業はここまで。これにモーションデータを流し込めば、キャラクターが動き出します。

モーションアクターの演技を見せてもらいましょう

キャラクターを動かすモーションデータは、アクターの演技をキャプチャーして作成しています。今回その撮影時の映像を特別に用意していただいたとのことで、それを聞いたのっちさんは「ええっ、うれしいです!」と震え声。映像を流しながらスタッフの方が「カイネの動きを演じているのは、『オートマタ』でも2B役でモーションアクターを務めていた川渕かおりさんで……」と解説し始めると、のっちさんは前のめりに「好きです!」と即答しました。

見せていただいた映像には、主人公ニーアの汎用モーションを演じている杉口秀樹さんの姿も。今回の「レプリカント」は2010年版「レプリカント」から大幅に作り直しているため、すべてのプレイヤーアクションに加えて、いくつかのイベントシーンも新規にモーションキャプチャー収録しています。ゲーム内のキャラクターを生き生きと動かすモーションアクターたちの演技を見せてもらえて、のっちさんはうれしそう。「すごい! 重そうに武器を持ってる! 実際は全然重くないのに!」「これもアクターさんがやってるんだ。人間にはできない動きだと思ってたのに、ちゃんと人間が演じてたなんて驚き……」「すご……うま……。へえー(深い溜息)」などと言いながら、食い入るような目で映像を見つめていました。

モーションアクターの撮影は、プレイ中のアクションもイベントシーンも、すべて撮り終わるのに終日スタジオに入って2、3日くらいかかります。アクションとイベントを別のアクターが演じることもよくあるそうで、今回カイネ役はアクションもイベントも川渕さんが演じましたが、ニーア役は杉口さんがアクションのみで、イベントシーンは山﨑勝之さんが演じています。

のっちさんは映像を観て「あ、セリフもちゃんと言うんですね!」と、演技中のアクターの口元が動いているのを発見。イベントシーンは映画やドラマのように、ディレクターが描いた絵コンテに合わせて演技をしているそうです。

次にのっちさんが見せてもらったのは、開発版にのみ搭載されている、いろいろな“ズル”ができるデバッグモード。「これで何ができるかというと……」と言ってスタッフさんがコントローラーを握ると、ゲーム画面はフィールドを上から見下ろすように上昇していきます。のっちさんは「えっ、空を飛んでるんですか?」とビックリ。これはプレイヤーの視点だけを自由自在に動かせるモードで、これを使ってあらゆる角度からゲーム中の状況をチェックしているそうです。

そのほかデバッグモードには、一撃で敵を倒せるコマンドも搭載。敵を倒さないと見ることができないイベントなどをチェックするときに、毎回敵を倒していると時間がかかりすぎるため、このモードが用意されています。ゲーム会社は発売までに何十回と通しプレイしなければいけないので、こういう機能は必須。さらに、「放置したまましばらく待つ」というチェックをするときに役立つ、触った相手がすべて死んでいく“スーパーマンモード”や、釣りたい魚を指定して釣るモードなどもあるそうです。それを聞いたのっちさんは「くぅー! いいなあ! 釣りは大変です」とうらやましがっていました。

その後の説明に入ろうとしたスタッフさんは、のっちさんに「ちなみに今回の『レプリカント』はどこまで進みましたか?」と質問。のっちさんが「Bエンドまでです」と答えると、その先の新コンテンツに関するネタバレに触れる話をしてくれるつもりだったらしく、スタッフさんは「……わかりました(笑)」と微笑み、残念ながらここでレクチャーは終了。「えー! でも、それで見れないのなんか悲しいんですけど……!」「来月また来てもいいですか?」「早く続きがやりたい……!」と、のっちさんは悔しがりながらデスクをあとにしました。

ネタバレを聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちになり、早くゲームの続きをしたくてたまらなくなってしまったのっちさん。そんな思いを抱えながら、これからいよいよヨコオタロウさん、齊藤陽介さん、伊藤佐樹さんへのインタビューが始まります。

皆さんはなんでゲームを作る人になったんですか?

ヨコオタロウ 「のっちさんがニーアのファンらしい」って話はずいぶん前に伺っていたので、この連載が始まったときに「ウチに来るかな?」と思ったら全然来ないから、「もう僕たちの時代は終わったんだ」って思ってました(笑)。

のっち いや違うんですよ。連載の企画会議のときに「ニーアが好き」って話をしすぎて、ニーアチームに会いに行くと連載が終わっちゃうくらいの大ボス感が出てしまったので(笑)。でも今回「レプリカント」のバージョンアップ版が発売されたから、いいタイミングだったのでお伺いさせていただきました。ヨコオさんは今回のバージョンアップにどんなふうに関わってるんですか?

ヨコオ 全然関わってないです。

齊藤陽介 めちゃくちゃ関わってたから(笑)。もっとお気楽なバージョンアップの予定だったのに、蓋を開けてみたら当初の予定よりめっちゃリッチになってて恐ろしいことに……。

ヨコオ 例えば伊藤さんはディレクターなので、現場でプログラマーさんやデザイナーさんに細かく指示するんですけど、僕はクリエイティブ・ディレクターと言いまして、スタジオに入らず会議とかで伊藤さんにああしてこうしてと言うのが仕事なんです。あとはいろんな座組……例えばゲームの移植をトイロジックさんにやってもらったり、音楽を前のシリーズに引き続きMONACAの岡部啓一さんにお願いしたり、細かいシナリオを追加するためにスクエニの中にニーアシナリオ班を作ったりというのを決めて。その3つのチームを糊付けするような役割をしてました。うわ、こんな真面目に仕事の話をしたのは初めて(笑)。

のっち ははは(笑)。まずそこから気になっていました。

齊藤 スクエニはスクウェアとエニックスという2社が合併してできた会社なんですが、エニックス側って昔から開発部が社内にないプロデューサーチーム的な会社で、いろんなデベロッパーさんと一緒にゲームを作ってきたんです。例えば「ドラクエ」に関わっている堀井雄二さん、鳥山明先生、すぎやまこういち先生も、誰もエニックス社員ではなかったし。

のっち あー、なるほど。

ヨコオ ゲーム業界のことはのっちさんはご存じないかもしれないですけど、昔のエニックスは開発会社を叩いて安くする地獄の会社で……。

齊藤 そんなことないよ!(笑)

ヨコオ 会社というかほとんどバイキングですね。目の前に現れた奴は殺す、みたいな(笑)。そんな中でも齊藤さんはわりとまともなほうだったんですよ。マイルドバイキング。

齊藤 バイキングではあるんだ(笑)。

のっち (笑)。皆さんはなんでゲームを作る人になったんですか?

齊藤 もともとオモチャを作りたくて、新入社員の頃は「ドラゴンクエスト バトルえんぴつ」という鉛筆の生産部門にいたんです。そして当時のゲーム開発の部長に「ゲームを作らないか?」って誘われて。ゲーム開発はグッズ生産よりも花形部門だったので断るわけにもいかず。ゲームも好きだったけど、好きなものの中で一番じゃなかったんですよ。だってオモチャとかぬいぐるみのほうがかわいいし。

のっち オモチャを作る仕事ぶりを認められたんですかね。今やこんな名プロデューサーになられて……。

伊藤佐樹 僕はもともと話を作るのが好きで、小説とかを書いてたんです。でも「ゲームなら文章だけに留まらず、いろんな手段を使ってお話を語ることができる」と気付いて。

のっち 確かに文字で読むのと自分でプレイするのとでは違いますもんね。そっか、物語を作る人だったんだ。

伊藤 作りたい人、ですね。ゲーム開発ではまだ物語作りに深く携わったことはないので。もちろん小説は小説でいいところはあるんですが、物語の世界について想像を巡らせてもらうときに、アクションや音楽が加わると感じ方が変わってきますよね。

のっち 伊藤さんはゲーム業界に入って、やりたかった物語作りを最初からできてたんですか?

伊藤 これまでは「Happy Wars」っていう自社のマルチプレイアクションゲームに携わったり、発表されなかったアクションゲームを作ったりしてたんですけど……。

のっち 発表されない?

ヨコオ なんで発表されなかったの?

齊藤 まずはどこのメーカーだったのか聞こうか。俺の予想では●●●●じゃないかなと思う。

ヨコオ あー、なるほどねえ。

伊藤 推理やめてください(笑)。そういういろんなプロジェクトで「テキスト書かせてくださいよ」ってお願いして、説明文とかキャラクターのセリフとかを書かせてもらってました。

のっち もともと原作の「レプリカント」がお好きだったんですよね? 自分が開発に関わるって、どういう気持ちだったんですか?

伊藤 最初はうれしかったんですけど、ネタバレなしでプレイしたかった気持ちが強いです(笑)。

のっち その気持ちはわかる(笑)。

ヨコオ のっちさんはもう「レプリカント ver.1.22」をクリアしてるんですか?

のっち ゆっくり遊んでるので、まだAエンドとBエンドまでしかやってなくて。今日のオフィス見学でも、ネタバレ防止でいろんな話を聞けなくて後悔しています(笑)。

齊藤 内容を全部話しましょうか?

のっち 嫌! 絶対やめてください!(笑)

慣れてる人と初心者、両方のお客様に満足していただくのは難易度が高いんですよ

のっち ヨコオさんは何がきっかけだったんですか?

ヨコオ 僕は伊藤さんと真逆で、お話には興味なかったんですけど、中学生くらいのときにゲームセンターで「グラディウス」っていうゲームをやって驚いたんです。「インベーダーゲーム」みたいなそれまでのゲームは、敵が出てきたら倒して次の面に行って、の繰り返しだったんですけど、「グラディウス」は先に進むにつれてステージの要素がどんどん変わる。それが映画みたいだなって思ったんですよね。それで「コンピュータはすごいスピードで進化しているから、すぐに映画に追い付くだろう。ゲームこそが未来のメディアだ」って思って。あれから40年経ちましたが、特にそうなりませんでしたね(笑)。

齊藤 話に興味ないのにシナリオ書いてるんだね(笑)。

ヨコオ ゲームっていろんなことができるから、イコールいろんなものを作らなきゃいけないのが大変で。やらなきゃいけなくなったからシナリオを書いてる感じで、あんまり興味はなかったです。

のっち デザインもやられてますよね。

ヨコオ キャラクターデザインそのものではなく、見た目全体のディレクションが多いですね。例えば「背景の空の色味をこうしてほしい」とか、「地面に物があるときに接地面に影がないと浮いて見えるから、もう少し影を落としてほしい」とか。

のっち ニーアチームの配信を観て、初めてUI(ユーザーインターフェイス)というものの大切さを知ったんですよ。ボタンとかもちょっとした色味や大きさの違いで、プレイヤーのわかりやすさが全然変わってくるとか。そこにそんなにこだわってると思ってなかった。

ヨコオ UIにこだわってるのには理由があって。最初に「ドラッグ オン ドラグーン」というゲームを作ったときに、ゲームさえできればいいだろうと思ってたら、テストプレイで誰もメニュー画面を操作できなかったんです。「ゲームが面白いとか面白くないとか以前に遊べないって……これはなんとかしないと」と反省して、そこから努力してUIを学んでいった感じです。UIの良し悪しは受け手によって異なるっていう問題があって、「慣れてる人はこっちのほうが使いやすいけど、初心者の人はこっちのほうがわかりやすい」みたいなことがあるので、両方のお客様に満足していただくのはけっこう難易度が高いんですよ。

齊藤 UIデザイナーってちゃんとしたジョブとして存在するんですけど、なかなかなり手がいないし、優秀な人も少ないイメージがあるので、今からゲーム業界を目指す人はそこを狙うと入りやすいかもしれない。

のっち へー! めちゃくちゃ大事なことなのに。

ヨコオ 学校にUI学科みたいなのはないですしね。普通のデザイン学科を卒業した人とか、DTPやWebデザインをしてた人がやることが多い仕事です。

伝えたのは子豚みたいなイメージだったんだけど、上がってきたイラストは恐ろしい化物で

のっち 先ほどオフィス見学でキャラクターの3Dデータとかをいろいろ見せていただいたんですけど、2Dのイラストで描かれたキャラクターデザインが、どういう過程を経て3Dになるのかが気になりました。

ヨコオ 「レプリカント ver.1.22」はだいぶ迷走しましたね。

のっち えっ、なんで迷走するんですか?

齊藤 ヨコオさんの強いこだわりゆえですね(笑)。

ヨコオ キャラクターの3D化ってけっこう難しいんです。この連載で前に訪問してた「龍が如く」のスタジオみたいに、実際の人物を3Dスキャンしてモデリングするというのも、リアルなキャラクターを作るには1つの方法なんですが、すべてのゲームのキャラクターがリアルになればいいかっていうとそういうわけではなくて、プロポーションを強調したり目を大きくしたりというアニメ的な要約が必要で。でも例えばマンガで、同じページ内に違う作家さんの絵が並んでたらおかしいじゃないですか。ゲームも同じで、その微妙な違いが目立つんですよね。

伊藤 できあがった3Dを見て「なんか変だな」って違和感を覚えることはあるんですが、その微妙な差を言語化するのは難しくて。熟練の専門家が見てようやく「ここの構造がおかしい」みたいなことがわかったりします。

のっち イラストレーターさんにキャラクターデザインを発注するときは、どんなふうにお願いしてるんですか? 例えばエミールの実験兵器7号とか。

齊藤 今回の「レプリカント」でキャラクターデザインを担当してもらったのは吉田明彦さんですが、11年前はD.Kっていう韓国のイラストレーターにお願いしてて、7号を描いたのはD.Kですね。

ヨコオ 最初に伝えたのは子豚みたいなイメージだったんですけど、上がってきたイラストは不気味な化石みたいな、恐ろしい化物になってて。

齊藤 でも俺たち2人とも一発OKだったよね。これいいじゃん!って。

のっち かわいい子豚でお願いしたのに(笑)。そういうことってよくあるんですか?

ヨコオ イラストレーターさんに「こういう感じで」ってお願いしても、自分のイメージ通りのものはほとんど上がってこないんです。でも、それを直してもらう時間があったら新しい絵を描いてもらいたいので、基本的に僕はリテイクを出さず、それを使ってなんとかしています。

のっち 「この服のこの部分、もうちょっとこうして」みたいに細かく指示してるのかと思ってました。

ヨコオ そうやってこだわっていると間に合わなくなるので(笑)。安く早くあげないと、そんなことやってたらバイキングにぶっ飛ばされる(笑)。

伊藤 今回は青年期の主人公で苦戦してましたね。

ヨコオ ああ、確かに時間かかったな。

伊藤 カイネとエミールは「オートマタ」に2Bと9Sというリファレンスが一応あるんですが、青年期の主人公は「オートマタ」には近しいキャラがいないので「何が正解なの?」って感じでした。

「どれからやったらいいんだろう?」という質問は、どれでも不正解です

のっち そういえば、さっきオフィス見学をしていたときに3Dモデラーの方が、「ヨコオさんが今回の『レプリカント』でどのシーンが好きなのか知りたい」っておっしゃってました。

ヨコオ のっちさんがまだ見てない追加のシーンなんですけど、今から懇切丁寧に説明しましょうか?

のっち やめてください(笑)。

ヨコオ どのシーンも自分で考えたものだし今までもさんざん観てるから、新鮮味がないし、なんならもう観たくないんですけど(笑)、追加した新しいところはまだ多少新鮮な気持ちで観れるので。

齊藤 のっちさんは「レプリカント」だと好きなキャラクターは誰ですか?

のっち カイネと7号がめちゃくちゃ好きです。あとは仮面の王とフィーアの関係も最高ですね。

齊藤 あ、カイネと7号が好きならもうこれ以上は話せないですね……。

のっち その時点で私にとってはちょっとしたネタバレ言ってるようなもんですよ(笑)。

ヨコオ ネタバレで言えば、今回の「レプリカント」はもうすでにお話の全体像を知っているお客様が多くて、最初からネタバレしているゲームを作るようなものだから、作ることにあまりポジティブな気持ちにはなれなかったんですよね。でも「オートマタ」から入ってくださったお客様がけっこういるなら、そういう方に届ける意味はあるのかもしれないなって思って。11年前に最初の「レプリカント」が出たときに遊んでくださったファンの方って、そんなに多くないんです。でもそのお客様が情熱を持って支えてくださった結果「オートマタ」を作れることになって、「オートマタ」がヒットしたことで「レプリカント」のバージョンアップ版を作ることができて……お客様が支えてくれた11年間の結果が今回の追加要素になったと考えると、すごくジーンと来るんですよね。昔からプレイしてくれてる方は同窓会に来ているような感覚なんじゃないかって。のっちさんはまだご覧になってないと思いますけど(笑)。

のっち だから今まで「ニーア」をプレイしたことがない人たちから、今回めちゃくちゃ聞かれましたね。「どれからやったらいいんだろう?」って。

ヨコオ どれでも不正解です(笑)。順番はない。どこからやっても大丈夫に作ってある、というか、正確に言うとどこから遊んでも迷うように作ってあるんで。

齊藤 時系列で言うと当然「レプリカント」のほうが昔ですけどね。

のっち 私は「オートマタ」をやっている途中で「このキャラは『レプリカント』に出てきたみたいだし、先に『レプリカント』をやっておいたほうが絶対楽しいんだろうな」と思って、原作「レプリカント」とPlayStation 3を買って、それをクリアしてから「オートマタ」のエンディングを観たので、すごくよかったです。

齊藤 わざわざそのためにPS3を買っていただいたの、申し訳ないですね(笑)。

のっち PlayStation Now(定額プランでさまざまなゲームタイトルを遊べるサービス)でも配信されてたんですけど、うちのネット回線が終わってて(笑)、とてもゲームできる挙動じゃなかったから結局PS3を買っちゃったんです。

齊藤 そのときに「レプリカント」のバージョンアップ版を作ればよかったね(笑)。「オートマタ」があんなに売れるなんて思ってなかったんですよ、本当に。

のっち 600万本売れたんですよね。

ヨコオ 初代「レプリカント」は世界で50万本売れたから、「オートマタ」はその1.5倍の75万本目指しましょうって話してたんです。一般的に続編って売上が落ちるものなので、75万本は無理だろうとも言われてたんですけど。で、それを齊藤さんに話したら「100万いかないと赤字だ」って言われて。「50万の続編を作って100万行かないと赤字って、ビジネスとしておかしいでしょ」って笑ってたんですよ。まさかそんなに売れると思わなかったから。

伊藤 SNSで皆さんの感想を見てると、今回の「レプリカント」を遊んでから「オートマタ」にも手を出した人をけっこう見かけたので、作った甲斐があったなと思いました。「オートマタ」をやったら「レプリカント」の後半の意味がわかった、みたいなことを書いてたりして、それはそれでいい楽しみ方だなって。

「なんでこんなことになったんだ?」って不思議に思うようなことは、だいたいお金が理由です

のっち 「オートマタ」ではスクエニとプラチナゲームズの社長とも戦いました(笑)。

齊藤 あれもめちゃくちゃですよね(笑)。DLC(ダウンロードコンテンツ)を何か作ろうって話は初めからしてて。

ヨコオ 最初はコスチュームをチェンジしようって話をしてたんですけど、かかる費用が思いのほか高くて。「なるべく安く作れてバリューが出せるコンテンツはなんだろう」って考えてたら、ちょうどその頃「ファイナルファンタジーXV」の発売記念特番のためにお遊びで作った、スクエニの松田洋祐社長のモデルがあったので、「このモデルを借りよう」って(笑)。プラチナゲームズの佐藤賢一社長は、たまたま顔の3Dスキャンデータがあったんです。

のっち なんでたまたまあるんですか(笑)。

ヨコオ つまり、予算内でやれる範囲でやった結果ああなったっていうことです。

伊藤 今回の「レプリカント」でも、DLCでトイロジックの社長を出そうかって話に一瞬だけなったんですよ。

ヨコオ 言ってもらえれば出したのに。

齊藤 今からでもいいよ?

のっち まさかDLCがああいう内容だとは思いませんでしたね(笑)。だからDLCが出るってなったら、めちゃくちゃワクワクするんですよ。

ヨコオ ニーアで「なんでこんなことになったんだ?」って不思議に思うようなことは、だいたいお金が理由ですね(笑)。前の「レプリカント」でDLCとして追加コスチュームを作ったときも、時間もあんまりないし手が空いてるスタッフも限られてるけど、なるべくお金をかけないようにデザインとかも全部現場に任せることにしたんです。僕のチェックも必要ないから、とにかく急いで作れるもの作ってくれって。そしたらエミールが鯉のぼりみたいなコスプレしてて(笑)。「なんだこれ」って思ったんですけど、リテイクする時間はないし、これはこれで味があると思ったので、それでいきました。

ゲームの音楽演出って、まだ発展の途中だと思うんです

のっち 音楽へのこだわりも感じます。

ヨコオ 「ニーア」では“BGMのレイヤー分け”っていうのをやっているんです。例えば、戦闘中はリズムパートの音数が多いけど、戦闘が終わったらストリングスだけが鳴っている、みたいな。そういう曲を作ってもらうのはけっこう大変なことなんですが、そんな無理難題を聞いてくれるのがMONACAの岡部啓一さんなんです。岡部さんはお金さえ払えばどんな曲でも笑顔で作ってくれる素晴らしいコンポーザーなんで(笑)。

のっち 「オートマタ」を初めてやったときにビックリしたのは音楽を使った演出なんです。例えば原作の「レプリカント」でも、広場で歌ってるデボルに近付くとだんだんその声が聞こえてきて、インストだったBGMがボーカル入りになるとか。あとイベントクエストのあとに余韻に浸るように曲がずっと流れ続けてたり、そういう音楽の使い方に感動して。

ヨコオ ゲームの音楽演出って、まだ発展の途中だと思うんです。ドラマの劇伴とかと違って、丁寧に流れを組み立てるのが難しいんですよ。プレイヤーが次にA地点に行くのかB地点に行くのかわからないから、基本的には場面が切り替わったら曲も切り替えるようにしないと、想定外のプレイをされるとバグが発生してしまう。悲しいことが起きた直後に明るい曲が流れても気持ちが付いていかないから、そういうときはフィールドに画面が変わっても悲しい曲を継続して鳴らしたいんですけど、そうするとおかしなことが起きやすいんですよ。

のっち あー、システム的に難しいことをしてるんですね。

齊藤 ヨコオさんはシナリオが世界的に評価されてますけど、どこでどんなBGMが入るかっていう音楽演出のこだわりが一番うるさいかも。

伊藤 僕は前の「レプリカント」を当時やっていて、シーンに合わせてリアルタイムでBGMのトラック数が増えたり減ったりすることに衝撃を受けたんです。「ゲームってこんな表現もできるんだ」って。それがゲーム業界に来た理由の1つなんです。

ヨコオ 今の話は初めて聞きました。最初に言ってくれてたらいいのに(笑)。

伊藤 ずっと秘めてた思いです。

のっち 秘めてたんですね(笑)。BGMってゲーム内の時間帯によってもアレンジが違いますよね?

伊藤 そうですね。晴れてるときは元気なボーカルが流れるけど、曇ってるとボーカルが消えてしめやかな雰囲気になるとか。プレイヤーの置かれてる状況や気持ちに合わせて細かく変えてます。

齊藤 そんなに手間かけてるのに、ろくにその機能を宣伝してないっていう(笑)。

のっち だからヨコオさんのゲームはいつも「あー、なんか知らないうちに心を操られてるんだろうな」って思いながらやってます。

ヨコオ すごい嫌な言い方しますね(笑)。

みんなの質問、のっちが代わりに聞いてきますのコーナー!

のっち 今回も皆さんへの質問がTwitterでたくさん届いてます。まずはこちら。

ニーアシリーズは一度クリアするごとに物語の全体像が掴める作りになっているのが特徴的ですが章で分けたりするのではなく、周回プレイにこだわる理由は何故なのでしょうか?

齊藤 お金がないからですね。

ヨコオ 最初の「レプリカント」を作ってた頃、「スクエニでRPGを作るならボリュームが必要だ」って言われていたんです。プレイ時間が多ければ多いほど正義、みたいな。

齊藤 当時はそういう時代だったんです。RPGなら40時間くらい遊べなきゃ、という考えが一般的で。

ヨコオ ゲームを作るうえで一番お金がかかるのは、ステージを増やすことなんです。背景を作るのにもお金がかかるし。だから背景をなんとか使い回せないかってことで、同じステージを周回してもらうことにしたんです。

のっち えっ、本当ですか……?

ヨコオ 本当です。お金さえあれば全部違うステージが作れたんですよ。あと、武器を使っているとレベルが上がって解放される“ウェポンストーリー”も、予算がない中でお金を使わずにプレイヤーさんの時間を奪うための策だったんです。文章を書くだけなら一晩あれば書けるので。すべては貧乏ゆえの工夫ですね(笑)。

のっち そうなんだ……。でもすごいアイデアですよ。周回していくたびに、同じ景色を見ているのに認識が変わっていって、世界のルールが少しずつ見えてくるので、最初はすごくビックリしましたもん。

ヨコオ ただゲームって、いろんな遊び方をされるお客様がいるので、1周だけ遊んで満足してもらえないものはダメだと思うんです。でも周回するごとに情報が増えていく作りにしちゃったから、「1周だと最後まで体験したことにならない」みたいに思われるようになって。「全部やらなきゃいけない」という押し付けみたいになってるのは、反省してるんですよ。

のっち じゃあ次はこちら。同じ方からの質問をもう1つ。

ニーアシリーズのスピンオフ作品を作りたいという思いはありますか? その場合ゲームのジャンルは何で作りたいですか?

のっち これは私も気になります。アナザーストーリーとかスピンオフとか観たいです。「私立レプリカント高等学校」っていう学園モノが入ったドラマCDありましたよね。

ヨコオ 例に出すのがそれって(笑)。僕はお金をいただければなんでも作りますよ。MONACAと一緒。

のっち 舞台や音楽劇はどういう経緯でやることになったんですか?

ヨコオ 舞台はどっちかというと僕からやりたいって言いました。普段デジタルものばっかり作っているので、生のものをやってみたくなって。

齊藤 ゲームの現場には女性が少ないから、現場に女性がいっぱいいる舞台をやりたいんですって。

ヨコオ いや、あの世界はそんな簡単じゃないですよ(笑)。舞台は会場でパッと観て終わる感じが儚くてすごく好きなんです。

のっち ゲーム内の出来事がほかのコンテンツで補完されていくのは面白い体験でした。

ヨコオ 「ゲームのことはゲームで全部語れ」ってお客様によく怒られるんですけど、舞台とかコンサートをやるならゲームをそのまま再現するのではなく、お客様にお土産を持って帰ってもらいたいんです。そのために毎回新しい設定を考えてるんですけど「情報を出し惜しみするな」みたいに言われちゃうんですよね。「違うんです! その都度考えてます!」というのは言っておきたい。

齊藤 朗読劇(「人形達ノ記憶 NieR Music Concert」)なんて、花江夏樹くんから前日に「スケジュールが空いたから行きます!」って連絡があったから、台本に花江くんのパートを急遽書き足して、リアルタイムでお話が変わったんですよ。

のっち それきっと、私が生配信観ながら家で大号泣してたやつですね。めちゃくちゃ救われた気持ちになりました。

齊藤 俺とヨコオさんも泣いてましたよ。「自分で書いた話なのにヨコオさんなんで泣いてるの」って思いながら(笑)。

ヨコオ 花江さんのスケジュールが空いてよかったです。花江さんがいなかったらバッドエンドで終わる話だった(笑)。

のっち 私、もっとコンサートをやってほしいんですよ。チケットを買ったのに行けなかったりもしたので。Billboardのライブは行けたんですけど。

齊藤 言ってくださいよ! チケット買わなくていいんで!

伊藤 Billboardは僕も行きました。すごく楽しかったです!

齊藤 あなたはチケット買ってください(笑)。

好きな建築物や都市・街はありますか?また、そういった人工物から何かインスピレーションを受けたりもするのでしょうか?

ヨコオ 栃木県に大谷石という石材の採掘場があって、山の中で石を切り出していった結果、巨大な四角い空間が並んでるんですよ。そこがすごくRPGっぽくて。見学に行っていっぱい写真を撮ってきて、開発スタッフに「こんな感じにして」とお願いしてできたのが、「レプリカント」に出てくる砂の神殿です。

のっち 実際にいろんな場所に行ってインスピレーションを受けることがあるんですね。

ヨコオ そうですね。あとは、ヨーロッパの建築は面白いものが多いので、趣味で教会を巡ったりしてます。

齊藤 「オートマタ」が発売されたときに、メディアの取材を受けるために1週間で4カ国くらい回る欧州ツアーをしたんですが、1日だけあったオフの日にお城巡りをしたんですよ。早朝から夜までいろんな古城をひたすら歩いて。ヨコオさんは楽しそうに写真を撮ってたけど「どこを見ても同じじゃね?」って思ってた(笑)。

ゲームに限らず、他の方の作品に対して「やられた!」とか「くやしい!」と嫉妬してしまうことってあるのでしょうか?そういった作品があれば、是非教えていただきたいです!

伊藤 僕は「ウマ娘 プリティーダービー」です。AI同士を自動で戦わせるゲームは以前から僕もいつかやりたいと考えていたので、「やられたな」と思いました。「レプリカント ver.1.22」を作っている間に、ちょっとの差で追い越されてしまった(笑)。

ヨコオ 全然ちょっとじゃないでしょ(笑)。たぶん世の中のクリエイター3000人くらいが「俺も同じこと考えてたのに」って思ってるよ。だいたい、「ウマ娘」のリリースが発表されたのは3年前だからね(笑)。

伊藤 「考えてたのになー」っていうのは開発者あるあるですね(笑)。冗談はさておき、「ウマ娘」は自分がやりたかったことを高いレベルで実現させていたので、「よくやってくれた」という気持ちが大きいです。毎日ログインしてますよ。

齊藤 君は「NieR Re[in]carnation」をやれよ(笑)。

ヨコオ 僕はクリエイティブに関しては嫉妬しないんです。素晴らしいものを観たら「うれしい」「楽しい」、つまらないものを観たら「自分には合わなかった」と思うだけで、悔しいという感情は起きなくて。例えば「田浦さん(『オートマタ』の開発に携わったプラチナゲームズの田浦貴久氏)はなんでイケメンなんだろう」みたいな、この世界がもたらす理不尽に対しては悔しさや怒りを感じてますが。

のっち 私もヨコオさんと似たタイプかも。例えばアイドルとか、歌って踊る女の子たちがものすごくいいパフォーマンスをしていたら、嫉妬するよりも好きになりますね。嫉妬するとしたら、イケメンに対してかな。

齊藤 どういうことですか(笑)。

のっち 昔からそうなんですけど、イケメンが例えば音楽とか自分のやりたいことをやれていて、それで女の子にキャーキャー言われたりしてると「うらやましいな」って気持ちになるんですよ(笑)。自分はそうはなれないからだと思いますね。

ヨコオ まさか「イケメン死すべし」で気が合うとは思いませんでした(笑)。

齊藤 嫉妬とは違うかもしれないけど、川村元気さんと新海誠さんの関係は「すごいな」と思ってますね。プロデューサーという立場で見たときに、川村さんは素晴らしいです。「君の名は。」の大ヒットでプレッシャーも大きい中、「天気の子」でもしっかり結果を出してますしね。

のっち 私たちも最近、まさにそういう話をしてたんですよ。私たちの場合は新海誠さんと野田洋次郎さん(RADWIMPS)なんですけど。あんな関係性を作れるのはいいよねって。じゃあ、次はこれを聞いてみていいですか?

制作チームへの質問です。レプリカントの「神話の森」は色々な意味で印象に残りますが、どうして文字のみの表現の形にしたでしょうか。

ヨコオ お金がなかったからです(笑)。

のっち ははは(笑)。

ヨコオ のっちさん、そう答えてほしくてその質問を選びましたよね?(笑)

のっち そう言うだろうなって気はしてました(笑)。じゃあ最後。

クリエイター横尾太郎とエミールヘッドのメディアキャラクターヨコオタロウのギャップに苦しむことはありますか?

ヨコオ そのギャップは特にないんですけど、基本的に僕はメディアに出たくないんです。年寄りが表に立つより若い人が出たほうが絶対にいいので。だからインタビューとか断りたいんですけど、齊藤さんに出ろって言われるんです。あんまり他人事みたいにしてると、ちゃんと仕事やってないように見えて誤解されるぞって。

齊藤 本当に制作にタッチしてないんだったらそれはしょうがないけど、まあまあやらかしてるくせに出てこないのはおかしいでしょ。

のっち 確かに、ヨコオさんが出てこないと「今回あんまり関与してないのかな?」「このゲームを作るのにあんまり前向きじゃなかったのかな」って思っちゃうかもしれないですね。私はヨコオさんがメディアに出てくるのを楽しみにしてますよ。ヨコオさんから語られる、周りのスタッフさんのエピソードがすごく好きで。

ヨコオ 僕は常に真実しか言わないので。

齊藤 嘘ばっかだよ(笑)。

ヨコオ これからも周りのみんなの本当の姿を暴き続けていきます。

齊藤 ゲームの話は一切しない気か(笑)。

ヨコオ そもそも、クリエイターが作品についていろいろ説明するのって、僕自身は好きじゃないんです。それにメディアからのインタビューって「苦労された点はどこですか?」とか、だいたい似たような質問で。同じことを言ってるうちに自分で飽きてくるんですけど、追っかけてくれてるファンのことを考えると毎回できるだけ新鮮な回答をしなきゃと思っちゃう。そしたらどうしても開発者の人間性を深掘りしたトークをせざるを得ないんです。齊藤さんが離婚した話とか(笑)。

のっち (笑)。自分で飽きてくるのはわかります。

ヨコオ 「オートマタ」でヨーロッパのメディアツアーに行ったときに、どうせ同じ質問が繰り返されるから嫌だなと思って「なるべくユニークな質問をしてください」ってお願いしたんです。きっとメディアさんも「こういうことを聞かないと失礼になるんじゃないか」と遠慮してる部分もあるんだろうけど、もっと踏み込んでめちゃくちゃにしていいですよって。そしたら変わった質問いっぱいされましたよ。「人類の未来についてどうお考えですか?」とか(笑)。

のっち じゃあそれ、次のナタリーさんの取材で言ってみます(笑)。まだまだしゃべりたいことがたくさんあるんですけど、そろそろ時間ですね。今日はお会いできてうれしかったです。私は皆さんのセンスを信じて生きているので、出ていただけるような連載になっててよかったなって思いました。

齊藤 こちらこそです。

ヨコオ 取り上げてくださってありがとうございました。

のっち ヨコオさんが前に配信の締めの言葉で「世界が大変な状況になって、自分のゲームの設定に追いついてしまったので、もっとひどい話を作ります!」のようなことをおっしゃってたんですが、それを聞いてめちゃくちゃカッコよくて涙出たんですよ。「そういう考え方のクリエイターがいるって救いだな」って思って。

ヨコオ 今の褒め言葉はぜひ記事に書いてください。あまねく知らしめたい。

のっち 「ひどい話を作る」っていうのはヨコオさんなりの愛だなって感じたので、これからもひどい話のゲームを作っていってください。

齊藤 その発言、Perfume的には大丈夫なんですか?

のっち 大丈夫です(笑)。そういえば、「ニーア」ってどういう意味なんですか? どこかで言ってるのかもしれないけど、聞いた記憶がなくて。

ヨコオ いい意味ではないですね(笑)。

のっち そうなんだ(笑)。うちの猫がニアちゃんっていうんです。私は名前を付けるときにいろんな意味を込めるのが好きで、ニアちゃんだと英語で「近く」の意味だし、猫の鳴き声「ニャア」にも似てるしかわいいなと思ったんですけど、名付けてから「そういえばニーアにも似てるな」って気付いて。

ヨコオ 名前の由来は知らないほうがいいと思います(笑)。今日しゃべった話もだいたい知らないほうがいいことでしたね。質問のうち半分の回答が「お金がないから」ですからね(笑)。

のっちさんの取材後記

こんにちは、のっちです。


あ~あ。涼しい部屋で過ごす夏さいこー。


でかいTシャツ一枚で昼間っからぬるいビール片手にスマホゲームの水着イベントを周回するのが最っ高におれの夏。

FGOの夏イベントと共に私の夏も、はじまる。

だから今年はまだ夏はじまってない。

はじまってもなければ、ゲームもあんまやれてない!!

やれてはないが、もしかしたら今が楽しいかも!!

大きなプロジェクトを終えてちょっとだけ時間と頭の余裕ができて、次やるゲームが特に決まってる訳でもなく、何やろっかな~と目の前がひらけてる今!!
めちゃめちゃに、気分が、いい!!!!

気分がいいので網戸の掃除とかしちゃおっかな。ふふん。


さて!
今回は、トイロジック様にお邪魔しました。

大きなモニターが1人1人のデスクにずらァっっと並ぶオフィスに「ゲーム開発の現場や……」と圧倒されましたが、お話してみると、優しくてキュートな方ばかりでほっこりしました。

3Dモデルを見せて貰って。
キャラクター達の細かい布の生地や肌の質感、瞳に映る景色。とっても綺麗だった。アップにして見せて貰うまで気付かなかった部分だったけど、おうちに帰ってプレイして、改めてキャラクターを見てみたら、今まで見てこなかった布や肌の質感がちゃんと目で見えてました。
カイネかわいい!と言いながらも「画面に映るカイネの服は生地から縫われたものじゃなくてデータだし」と心の奥で思いながら見てたのだと思い知りました。はっとした。

想像しただけで気の遠くなるような、モデリング作業のおかげで「カイネの衣装なんかツルンとしてんなぁ」「光源どこやこれ」みたいな曲がったことが浮かぶ隙無く(笑)瑞々しくプレイやストーリーにのめり込めてたんだなあ。


対談では。
面白い大人達、なんでも答えてくださるもんだから。「予算の都合」だと答えてもらうのが癖になっちゃって!
と同時に、「だから無理」にしなかった、「だったらこうしよう」の連続で出来上がってたんだなぁ~と、数々の工夫に唸ってました。

縛りや制約、全部を利用して新しく面白く生み出すのが、クリエイティブだよなあと。
プレイしていてここが魅力だ!と思う、尖って見えてくるところほど、制約から生まれてたのがとっても興味深かったし、なんか嬉しかったです。

ヨコオさん齊藤さんのナイスコンビ。本当に好きだ笑

偉そうなこと言えないんであれですけど、齊藤さんの、コンサートが無観客開催になったときの出演者に対する激励の言葉とか、ヨコオさんの時代が追いついた云々の話だったり、ものづくりへの考え方とかこだわりとか。
自分に向けた言葉ではないけど、勝手に救われたり鼓舞されたり、じゃあ自分はどうする?何ができる?みたいな事を考えさせてもらってますいつも。

楽しかったなあ~!
前回の予告通り、はちゃめちゃに緊張しました!!!

ヨコオさん、齊藤さん、伊藤さん。
ほんとうにお忙しい中で、お話聞かせていただきましてありがとうございました!!!
これからもファンです!!!!!


対談後。
無事「ニーア レプリカント」バージョンアップ版の追加要素までクリアしました。
口空いたまんま最後までいきました。
追加されたストーリーの怒涛の展開と驚きに、口を閉じる暇がなかった……ガチ……。
こんなサプライズ!!! 言ってよ!!笑
よく宣伝でネタバレせずにいられますね!!!
いやびっくりしちゃった。。
2010年版からのファンの方々はどんな思いでっ……!
ってことは、アレはアレに繋がって……って事?なの?いやなんもいえねえよ!
皆さんも頑張ってここまで来てください……。


さあ次回は、堀井雄二さんに会いにゆきます。
えっ!? ま???!!!
まじです。
どんなお話になるだろう! お楽しみに!!!
Twitterにて、堀井さんへききたいこともお待ちしてます! どしどし!

次回予告

大好きなニーアチームの皆さんと思う存分トークをして、大満足ののっちさん。次回はスクウェア・エニックスを訪問し、第1作発売から今年5月で35周年を迎えた国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズについて、その生みの親であるゲームデザイナーの堀井雄二さんにいろいろなお話を伺う予定です。

この連載では、訪問相手に聞いてみたいことをTwitterで募集中。ハッシュタグ「#のっちはゲームがしたい」を付けてツイートされた堀井さんへの質問を、のっちさんが代わりに聞いてくれるかもしれません。ぜひ質問をツイートしてください。

募集期限は9月1日(水)まで。1つのツイートに書き込む質問は1つだけにするようにお願いいたします。

Perfume最新情報

Perfumeは9月22日に新作「ポリゴンウェイヴEP」をリリース。この作品はAmazon Prime Videoにて9月3日から配信される番組「ザ・マスクド・シンガー」のテーマソング「ポリゴンウェイヴ」の世界観で構成されており、番組にはPerfumeもパネリストとして参加します。また今年秋には、コンセプトライブ「Reframe」がツアーとして5都市で開催されることも決定しています。

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