Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

Creepy Nutsはラジオスターの階段を駆け上がるーー中野サンプラザの大盛況イベントを見て

リアルサウンド

20/2/11(火) 8:00

 Creepy Nutsは、着実にラジオスターの階段を駆け上がっているーー2月9日に中野サンプラザで行われた『ニッポン放送「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)『THE LIVE 2020』 ~改編突破 行くぜ HIP HOPPER~ 」』は、音楽だけに止まらない2人の勢いを如実に示すイベントとなった。

(関連:Creepy Nuts『有吉ジャポン』出演 R-指定とDJ松永に聞く、互いの音楽スタイルの凄み

 この日の来場者は、当日来場者が2100人、ライブビューイングで1万人を超える観客が見守り、会場のチケットは即完するなど、プレミアムチケットとなった本イベント。しかし、開催が決定してからこれまで、何度も番組で「どんな企画をやる?」と話題に上がってきたものの、「『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を上映する」以外は決定しておらず、結局、開演と同時に『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が上映され、客席が大爆笑に包まれるなか、イベントがスタートした。

 映画が全編流れるのか、と思ったその瞬間に映像が止まり、舞台裏からR-指定が「あかんやろ!」とツッコミ。松永が「よく止めてくれた。言った手前、後には引けなかった」と感謝し、ひとしきりトークしたところでタイトルトークとともにSEが流れ、二人が登場。松永が「番組が始まって2年弱、ついにイベントをすることができました。ありがとうございます」と謝辞を述べ、R-指定が「ライブビューイングのお客さんは、もう帰ってるかもしれん」と心配しつつセットイジりへ。スタッフの思う“ヒップホップ”が体現されたステージを見たR-指定は「これ、セサミストリートやん。90年代のアメリカのヒップホップのさらに浅い解釈」、松永は「グラフィティがダサいのは致命的」とツッコんだ。

 続けて、松永が「ラッパーだったらそういうやついけるでしょ?」と要求し、R-指定が「中野サンプラザ盛り上がっていけますかー!?」とコール&レスポンスで場の空気を温めると、松永の「いろいろ話した結果、いつものラジオをやることにしました」という一言とともに「ヒップホップニュース」のコーナーへ。

 「ビリー・アイリッシュが『最近のラッパーは嘘つきだ。「俺はAK-47を持ってるぜ」とか、は? 銃持ってないでしょ、みたいな』と言っています」と米『VOGUE』誌のインタビューで発言していたことをネタにトークを繰り広げ、R-指定が「ボースティングなところもありますよね」と話すと、松永は「ボースティングな。俺もやってた。小学生の頃、ミュウ持ってるって言ってたから」とボケ、R-指定から「ラッパーの銃持ってるとお前のミュウ持ってるは違うねん」と韻を踏みながらツッコまれる場面も。

 幕間のVTRでは、番組内で1度取り上げたところ、Creepy Nutsとラジオ周りのSNSを軒並みフォローしたり、音源を送りつけてきたりと、執拗に絡んできたことでおなじみのロサンゼルス在住ラッパー、リル・コーリーに、Creepy Nutsのマネージャーである森氏がTwitterのDMと電話で出演依頼をするも、留守電ばかり……という映像が挟まれた。

 幕間明けには「ラジオHIP HOP!」のコーナーへ。1通目の「くちゃくちゃ音を立てながら食べるクチャラーは嫌われますが、チェケチェケ音を立てながら食べるチェケラーは嫌われますか?」というメールに、R-指定が「2020年にもなって、ヒップホップを『チェケ』でイジるな」と番組ではお決まりのイジられ方に改めて苦言を呈したかと思えば、「松永さんのDMC優勝を見て、DJを始めた初心者なのですが、あれだけ馬鹿にしてた“チュクチュク”の音も出すのが難しいことに気づきました。初心者向けのテクニックはありますか?」というメールには、松永が実際にDJブースに立って「レコードに一旦手を置いて巻き戻し、レゲエホーンを連打する」というテクニックを解説する一幕も。

 ここで、またしても幕間VTRで、リル・コーリーとの対話の続編が。一時はノリノリで出演に応えるも、ノーギャラと聞いた瞬間に掌を返して出演を見送るという、至極当然なオファーの断り方をし、松永も「お金払えよな。これに関してはリル・コーリー に悪い」、R-指定も「弄びすぎやな。そういう使い方よくないよ」とツッコミを入れた。

 中盤では、先週の放送で話題になった「松永チームで闘いたいリスナー、R指定チームで闘いたいリスナーがステージに上がり、フリースタイルでバトルする」という企画『THE・地獄』がスタート。ビートを一回止めてラップさせるという優しい立て付けながら、経験ゼロのリスナー2人がフリースタイルを繰り広げるという地獄のような光景が。松永チームとしてステージに上がった女性リスナーが「松永さんへの愛を伝えます」と話したことで、松永が“贔屓する”という展開もありつつ、結果は両者の健闘を称えてドロー。壇上に上がったリスナーには、Creepy Nutsのサイン入りトートバッグが贈呈された。

 続いて、松永の「デュエリストの血が騒いできた」という一言をきっかけに、この日のグッズとして販売された「メモカード(R-指定の台本へのメモ書きをもとに作ったカードゲーム)」を使った「カードスタイルMCバトル」のコーナーへ。実際の物販では、あまりの売れ行きに他グッズを差し置いて真っ先に完売したが、エンディングで事後通販が行われることもアナウンスされた。

 3回目の幕間では、三四郎の相田周二がR-指定に年越し特番で「バチボコを入れてほしい」「FLOWって言ってほしい」「ウィーアーファイティングドリーマーって言ってほしい」「それらをテレビで叫んだ後、FLOWのボーカルのサングラスを盗んでほしい」など様々な指令を吹っかけ、『COUNT DOWN TV』でしっかり実行するも、「サングラスを取ってくる」というお題がクリアできずに失敗した「ウィーアーファイティングドリーマーチャレンジ」について、マネージャーの森が代わりにFLOWのKOHSHIにサングラスをもらいに行く(そして見事受け取る)映像が流れる。なお、R-指定はスペシャルウィークの『三四郎のオールナイトニッポン』にゲスト出演し、相田にこのサングラスを届ける予定だ。

 後半は、レギュラーコーナーの「大江戸シーラン」へ。いつもは松永がエド・シーラン「Shape Of You」にあわせてネタの歌詞をもとに歌うのだが、今回は中野サンプラザの大舞台で、ピンスポットを浴びてまさかの歌唱。R-指定から「この照明でこの演出は本物のエドやから」とツッコミが入るなか、松永がKOHSHIから貰ったサングラスをかけながら、リスナーからのあるあるメールや、ダブルミーニングが掛かった上手いメールを読み上げたかと思えば、後半はいつも通り下ネタの応酬で、会場が笑いに包まれた。

 終盤にはR-指定の「日本語ラップ紹介」コーナーで、イベントタイトルの元ネタとなった〈一点突破 行くぜHIP HOPPER〉という歌詞が入っている、Zeebra「MR.DYNAMITE」の解説へ。R-指定が「譜割りも(キング)ギドラより簡単にしてたり、広く届くようにしたことで、各地の不良やヤンチャなやつらが自分で言葉を生み出すようになった」と賛辞を送りつつ「こんな人をイジっていいわけがない」と念を押すも、松永は「ジブジブパニック」「ボンバーマン」と過去のイジりを掘り返す。以降もZeebraイジりを継続する2人に「俺のこと、イジんのヤメてくんねー!」と声が届き、Zeebra本人がステージに登場。2人がヘコヘコと頭を下げるなか、そのまま「MR.DYNAMITE」をパフォーマンスするというサプライズに、観客は総立ちで盛り上がった。

 「この曲だってクラシックだし、俺も超ベテランなのに、こんな使い方すんのな!」と吐き捨てつつ、「気分的には安岡力也さんみたいな。俺もそのポジションになったのかなって感慨深いんだけど」と笑いながらZeebraが話すと、R-指定は「異例中の異例でしょ」、松永は「こんな使い方しちゃダメだよ」と恐縮しつつ、ステージから去るZeebraを見送った。

 これを受け、松永も「見せていただいたからには、俺らもやりますか」と語り、そのままCreepy Nutsのライブパートへ。「手練手管」「助演男優賞」「紙様」「阿婆擦れ」「合法的トビ方ノススメ」や、『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』に寄せて書いた「よふかしのうた」を「俺たちとこれからも夜更かしし続けられる人は手を挙げてください」と話して披露すると、ここでZeebraがステージに再登場。R-指定は〈大阪堺の道端〉〈長岡の道端〉とそれぞれの出身地を混ぜ込みながら、3人で「Street Dreams」をパフォーマンスし、ライブが終了した。

 エンディングでは、松永が「まさかステージ上でZeebraさんと『Street Dreams』をやれる日が来るとは」、R-指定が「ただのヘッズに戻った気分」と感慨にふけると、Zeebraは「T-Pablowみたいに勝手に自分のことやってくやつもいるけど、二人は一生手がかかる後輩だから。いつでも呼んでもらえば馳せ参じるんで! 『テキーラの瓶、みたいな感じで超ビンビン!』」と、先日R-指定がフリートークでイジったフレーズでステージを後にし、R-指定は「器がデカすぎる!」と感動。松永は「これで改編突破できれば、イベントがもう一回できるんで! 次のオープニングは『インセプション』流そう!」と伏線を張ったりしつつ、最後はリスナーとの記念撮影で、無事にイベントは幕を閉じた。

 なぜ2人がここまで大きなイベントを成功させることができたのか。それを語るうえで、Creepy Nutsとラジオの相性の良さについて記さずにはいられない。それぞれが音楽、お笑いのラジオを愛し、R-指定は『山里亮太の不毛な議論』、DJ松永は『オードリーのオールナイトニッポン』のヘビーリスナーであり、山里亮太と若林正恭によるバラエティ番組『たりないふたり』にインスパイアを受けたEP『たりないふたり』は、2人の知名度を広める大きなきっかけとなった。

 そんな彼らが初めて『オールナイトニッポン』の敷居を跨いだのは、2016年11月13日に放送された『Creepy NutsのオールナイトニッポンR』でのこと。当時からトークの捻くれ具合やノリの良さは深夜ラジオ向けだったものの、松永の“暴走”が止まらず、R-指定もそれを抑えるのに必死で、オードリーからも「松永のブレーキの足りなさ」を指摘されていた。(参考:https://realsound.jp/2017/09/post-112011.html)

 しかし、以降も2017年1月15日、9月24日、12月23日と積極的かつ異例のペースで『オールナイトニッポンR』に出演し、2018年4月より冠番組『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』がスタート。徐々にグルーヴしていく2人の掛け合いと、深夜ラジオリスナーの悪ノリがマッチし、松永の“吠えれば叶う”ジンクスとともに、音楽活動の充実とも噛み合いながら徐々にステージを上げていき、番組開始2年でチケット入手困難となったこの日のイベント開催まで漕ぎ着けた。

 彼らは、HIPHOPという敷居の跨ぎにくい文化を、音楽ではロックやポップスのリスナーに、ラジオではリスナーにわかりやすく翻訳して届ける咀嚼力があるうえ、それぞれ見えにくかった「DJって何してるの?」「ラッパーって普段何を考えてるの?」といったミステリアスな部分をここまで曝け出して伝える能力も兼ね備えている。トークも松永の早口なオタク喋りの標準語と、R-指定の関西弁が上手くマッチし、絶妙な聴き心地をもたらしているうえ、2年かけて育ててきたフリートークのスキルやリスナーとの掛け合いが、2019年後半以降でさらに上達していることも大きい。

 個人的には、ここまで大きなイベントを成功させ、キャリアとしてもノリにノッているCreepy Nutsの2人は、イベント発表時に心配されていた改編など、難なく突破できるだろう。まだまだ2人の「よふかし」は終わりそうにない。(中村拓海)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む