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立川直樹のエンタテインメント探偵

360°シアターでの来日公演『ウエスト・サイド・ストーリー』はその時代のニューヨークへと連れていってくれる

隔週水曜

第33回

19/9/18(水)

『ウエスト・サイド・ストーリー』(Photo by Jun Wajda)

8月19日にあの360°シアターで開幕した来日ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が実によく出来ている。22日のプレミアの日に会場に来ていた、映画版でベルナルド役を演じ世界的大スターになったジョージ・チャキリスをはじめとする著名人たちのコメントが並ぶ新聞広告を含め、かなり大々的に宣伝作戦が繰り広げられているが、舞台総製作費35億円という今回の『ウエスト・サイド・ストーリー』はそうした宣伝に見合うだけの価値と魅力がある。

脚本家アーサー・ローレンツの右腕で、スティーヴン・スピルバーグ監督で制作される映画版リメイクでもコンサルタントを務めるデイヴィッド・セイントのオーソドックスではあるが、ツボをしっかり押さえた演出。マリアを演じるソニア・バルサラを筆頭に華のある出演者たちのパフォーマンスもこなれているし、美術と映像も見事な作りで本当にその時代のニューヨークへと連れていってくれる。

『ウエスト・サイド・ストーリー』(Photo by Jun Wajda)
『ウエスト・サイド・ストーリー』(Photo by Jun Wajda)

でも、改めて思うのは20世紀のアメリカが生んだ最も才能あふれる音楽家の1人と称されているレナード・バーンスタイン作曲による音楽の素晴しさ。幕が開いた瞬間からそのただならぬ響きに圧倒され、その感動が最後まで続いていく。大詰めの近くでアイルランドやコソボ、デトロイト……とここ何十年間か世界中で繰り返されている数え切れないほどの民族闘争の場所の文字が映し出されたのもよかったが、その1週間ほど後に毎回おもしろいネタを扱っている深夜のテレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS)で取り上げられていた川崎が生んだHIP HOPクルー、BAD HOPがそこに重なっていったのは偶然以上のものがあった。

その翌週も含めて2週に渡って特集されたBAD HOPは元ギャングの8人組ラッパーで「川崎で有名になりたきゃ人を殺すかラッパーになるか」という経験を基にした衝撃的な歌詞と抜群の音楽的センスで、自力で武道館公演まで実現させてしまったという強力な連中で「HIP HOPに出会わなかったら刑務所の中にいるかも知れない」と平然と話す様がテレビに映し出されているのも見るのは中々おもしろかった。

BAD HOP

度肝を抜かれた松尾スズキの映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』。是枝裕和監督の新作『真実』は傑作!

『108~海馬五郎の復讐と冒険~』(C)2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

また、映画でも松尾スズキ監督・脚本・主演の『108~海馬五郎の復讐と冒険~』はR-18指定は当然の超怪作で、これにはちょっと度肝を抜かれた。制作にも絡み、配給・宣伝をしているのはファントム・フィルム。8月29日の『108…』の試写の2日前にも玉城ティナがキレまくっているPG-12指定の『惡の華』を観たが、これもファントム……。とにかく『108…』の“女の海”のシーンはフランス人もかなわないぐらいのエロいものだったが、よくここまで……と素直に感服できた。

そして映画と言えば10月11日に公開される是枝裕和監督の話題の新作『真実』が掛け値なしに素晴しかった。(水先案内でも紹介するが、まず第1報!)正直に言って『万引き家族』には全くノレなかった僕だが、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュ共演の『真実』には満点がつけられる。ドヌーヴ圧巻の演技と最高によく出来た脚本ときめの細かい演出。文句のつけどころが一切なく、映画が映画だった時代の名作と較べても全くひけをとらない傑作だろう。

『真実』(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA / photo L. Champoussin (C)3B-分福-Mi Movies-FR3

とにかく最近は映画がゲーム化の傾向をたどりアトラクション化。俳優の稼ぎ高ランキングを見ても、演技のうまさとかとは全く正比例していないのが嫌になってしまうが、偶然テレビで再見したボブ・ラフェルソン監督の1981年版『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のジャック・ニコルソンとジェシカ・ラングの芝居の凄さや『ラストエンペラー』のスケールの大きさはもう望むべくもないのだろうか。実写版というウタイ文句にひかれて行った『ライオン・キング』が何とフルCGで作られていたのにもびっくりさせられた。

あとは展覧会もけっこうでかけたが、スぺースに限りもあるので次回でまとめて書くことにする。でも、国立西洋美術館で開催中の『松方コレクション展』は9月23日までなので、絶対に行った方がいい!と書いておこう。

開催情報

<来日公演>ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』
日程:2019年8月19日~10月27日
会場:IHIステージアラウンド東京
音楽:レナード・バーンスタイン
作詞:スティーブン・ソンドハイム
演出:デイヴィッド・セイント

『クレイジージャーニー』
放送日:2019年8月28日、9月4日
TBS

『夏の魔物2019 in SAITAMA 2DAYS』
日程:2019年9月28日~29日
会場:東武動物公園
※BAD HOPは9月28日に出演

『108~海馬五郎の復讐と冒険~』(2019年・日本)
2019年10月25日公開
配給:ファントム・フィルム
監督・脚本:松尾スズキ
出演:松尾スズキ/中山美穂/大東駿介/土居志央梨/栗原類/LiLiCo/福本清三/乾直樹/宍戸美和公/堀田真由

『真実』(日=仏)
2019年10月11日公開
配給:ギャガ
監督・脚本:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク/リュディヴィーヌ・サニエ

『国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展』
会期:2019年6月11日~9月23日
会場:国立西洋美術館

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき) 

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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