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歴史的大快挙の『パラサイト』 週末には276スクリーンに拡大

リアルサウンド

20/2/13(木) 13:00

  1月第2週の本コラム(https://realsound.jp/movie/2020/02/post-502256.html)を「主要賞を含む6部門にノミネートされた米アカデミー賞の発表も控えていてる『パラサイト』。天井の見えない興行は、まだ始まったばかりだ」と締めたが、ご存知の通り、今週月曜(日本時間)に開催されたアカデミー賞授賞式で『パラサイト 半地下の家族』は作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞するという歴史的快挙を達成。アカデミー賞(特に作品賞)受賞がもたらす国内興行への宣伝効果については毎年のように本コラムでも触れてきたが、アジア初どころか外国語映画初の作品賞受賞、さらに公開からちょうど1ヶ月で作品認知が一般層にも広がっている(いわゆる「キャズム」を超えたところ)タイミングと、現在の『パラサイト』を取り巻く国内興行は前例のない好条件が揃っている状況だ。

参考:『パラサイト』はなぜオスカーを受賞できたのか? 日本映画にはなかった韓国の“長期的視点”

 1月10日に公開された『パラサイト』のこれまでの動員ランキングの推移は、5位→5位→4位→3位→4位。一見すると高水準で安定しているだけのように思われるかもしれないが、これは独立系配給、全国131スクリーンで公開がスタートした作品としては、ほぼそのキャパシティの上限をずっとキープしているということ。連日の大盛況を受けて、先週末の時点で全国の上映スクリーン数は190まで拡大。それでも、月曜日のアカデミー賞の発表以降は各劇場で満席が続いている(当然のようにウィークデイは連日デイリーで1位を独走している)。配給のビターズ・エンドに確認したところ、今週末には公開時の2倍以上となる276スクリーンまで一気に拡大するという。

 さて、そうなると気になってくるのは「一体どこまで『パラサイト』は伸びるのか?」ということだ。現時点で配給が見据えている目標は、日本国内における韓国映画の興行記録更新とのこと。具体的に言うと、それは2005年に日本公開された『私の頭の中の消しゴム』の最終興収30億円ということになる。改めて、同作の興行が日本で30億円に到達していたことに不意を突かれたが、今から15年前の2005年といえば、ちょうど日本で韓流ブームのピーク期。逆に言うと、そうした追い風がないところで(というか、近年の国際政治状況を踏まえれば逆風の中で)、そしてアカデミー賞受賞によるブーストがかかる前の先週末の時点で、既に動員100万人を突破して17億円近く稼いでいた『パラサイト』の興行的なポテンシャルがいかに高いかということでもある。

 前回『パラサイト』を取り上げた時に触れたように、昨年末のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホのプロモーション来日も今作のヒットには大いに貢献した。実はその来日時に、配給元はポン・ジュノ&ソン・ガンホと「日本で必ずヒットさせる」との約束を交わしていたという。今回、アカデミー賞受賞直後という両者の人生で最も忙しいはずの時期に異例中も異例とも言えるポン・ジュノ&ソン・ガンホのプロモーション再来日(2月下旬予定)が決定したのは、その約束が果たされたことへの感謝の証でもあるのだろう。

 アカデミー賞席巻に続いて、まさかの監督&主演俳優のプロモーション再来日が実現する『パラサイト』。もう一つ重要なのは、本格的な春休み興行が始まるまで、強力なライバル作品がないということ(だからこそ、ここにきての拡大公開も可能となったのだろう)。おそらく、今週末に達成する276スクリーンもまだ上限ではないはず。それらを踏まえると、『私の頭の中の消しゴム』の持つ30億円という日本国内における韓国映画の興行記録更新まではあっという間で、40億円突破、さらには50億円突破の大台さえあり得るのではないか。前回予想した通り、『パラサイト』は文字通り「天井の見えない興行」となった。(宇野維正)

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