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白石聖の主演抜擢は大正解の人選! 『恐怖新聞』をナチュラルに“真実”にさせる実力

リアルサウンド

20/9/12(土) 6:00

 つのだじろうの1970年代の名作ホラー漫画『恐怖新聞』(東海テレビ・フジテレビ系)が、ジャパニーズホラーの巨匠・中田秀夫監督×小説家・乙一のタッグにより、「オトナの土ドラ」枠でドラマ化されている。

 実写化と聞いて、まずイメージした人物は、ダウンタウン・浜田雅功だった。『夢で逢えたら』(フジテレビ系、1988年~1991年)のコントの中で、白髪白塗り・着物姿で抱っこをせがむ「うしろの百太郎」を演じていたことと、つのだじろうのキャラデザに近いルックスであることから。現在であれば、泉澤祐希あたりが適役じゃないかと思っていた。

 しかし、実際に主演に抜擢されたのは、本作が連ドラ初主演となる白石聖だ。「そう来たか!」と唸らされる。主人公を女性に変更したこともさることながら、つのだじろうの作画タッチよりも、楳図かずおの描く美少女の方に近い白石聖。しかし、結論から言うと、これは大正解の人選である。

 京都の大学に通う女子大生・小野田詩弦が、念願の一人暮らしを始めた途端、どこからともなく「恐怖新聞」が届くように。そこにはこれから起こる事件や事故が掲載されていて、1日読むたびに100日ずつ寿命が縮んでいく――。

 ともすればトンチキ感溢れる設定と、摩訶不思議なセリフを、この現代においてナチュラルに「真実」にさせることができる白石聖という存在。

 そこには、中田監督ならではの演出効果ももちろんあるけれど、彼女の劇画調の整いすぎた顔面力による部分も大きいと思う。

 「濡烏」のような髪ならぬ、真っ黒で重たそうな艶のある睫毛。大きく、ちょっと虚ろな目。濃い陰影を与える豊かな涙袋。真っすぐ通った鼻筋。小さいのに、妙にぽってりと厚ぼったい、官能的な唇。額の薄い皮膚に浮かび上がる静脈。横顔はモノクロの絵画のように美しくも妖しい。

 それでいて、整いすぎた顔が、決して「お人形さん」にはならない。「目だけ」「口元だけ」のアップは、美しいのに、どこか不穏な空気を醸し出す。特殊メイクなどしていないのに、ホラー漫画特有の顔に走る縦線すら見える。

 青白い肌には血しぶきが非常に映えるし、恐怖にゆがめる顔には、恐ろしさと同時に、どこかユーモラスさもあり、ホラー漫画の見開きカットのような物々しさがあるのだ。

 また、立ち姿や動き方も、なんだか独特だ。第1話では、父の事故死を止めるべく、神社にダッシュする姿が映し出され、その走り方がヘンテコで迫力あることから、SNSでは「ワンパクダッシュ」などと呼ばれていた。

 また、第2話で電車の中、ぼんやりと立っている姿は、中途半端に開いた脚が、無防備な幼女のようにも見えて、不安を掻き立てられる。

 2019年に同枠で放送された『絶対正義』では、何よりも正しさを求める母に育てられたことで、法律に基づく「正義」だけを妄信する高規範子(山口紗弥加)の高校生時代を演じていた。

 綺麗に上がった口角と、何かに憑かれたような真っすぐで虚ろな目で問いかける「私、何か間違ったこと言ってる?」は純粋な恐ろしさを漂わせていた。そんな少女パートがあっという間に終わってしまい、残念だと思っていたところ、終盤では範子の娘として再登場。見た目はソックリなのに、明らかに「別人」に見える娘の歪みぶりは、確かな実力を感じさせられるものであった。

 また、森下佳子脚本のNHKのよるドラ『だから私は推しました』では、桜井ユキ演じる主人公の「推し」となる、歌もダンスもダメダメな地下アイドルを演じていた。「かわいいけど、鈍くさくて暗くて、人見知りで、ちょっと挙動不審」なハナちゃんは、あまりにリアル。さらに、後半で見えてくる、注目を浴びるための虚言などの痛々しさ・闇は、「偶像」を超えたハナちゃんの生々しさを強く印象付けるものだった。

 かと思えば、映画『PRINCE OF LEGEND』では、王子たちの憧れの存在で、真っすぐで潔く、内に秘めた熱さ、芯の強さを持つヒロインを魅力的に演じていた。

 ちなみに、バラエティ番組『スクール革命』(日本テレビ系)では、女子生徒の一人として、素の顔を見せているが、独特の不思議な「間」と、理解不能な思考回路で、すっかり「団体芸」となっているレギュラーメンバーの中にすんなり馴染みつつも、他の誰ともカブらない強烈な個性を放っている。

 特に彼女の女優としての資質に惹かれてからは、「素」の部分もまた面白く、気になって仕方ない存在となっている。

 怖いくらい整った顔なのに、全身から立ち上る不思議なアンバランスさ、不安定さ。それはホラーでも、バラエティでも、視聴者の視線を釘付けにし、ワクワクさせてくれる物語性を孕んでいる。

 むしろ『ゼクシィ』CMで見せている、どこにもアンバランスさのない爽やかな美人ぶりが、ちょっと奇妙に思えるほどに、美人なのに“ひっかかり”だらけの個性派女優なのだ。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
オトナの土ドラ『恐怖新聞』
東海テレビ・フジテレビ系にて、毎週土曜23:40〜放送
出演 :白石聖、佐藤大樹、駿河太郎、横田栄司、片山友希、坂口涼太郎、猪野学、黒木瞳
企画:市野直親(東海テレビ)
原作:つのだじろう『恐怖新聞』
シリーズ構成:乙一
脚本:高山直也
音楽:兼松衆
プロデューサー:後藤勝利(東海テレビ)、小松貴子、齋藤寛之、竹内絵唱(松竹株式会社)
協力プロデューサー:松本圭右(東海テレビ)
演出:中田秀夫、服部大二、井上昌典
制作:東海テレビ放送、松竹株式会社
(c)東海テレビ
公式Twitter:https://twitter.com/tokaitv_dodra
公式Instagram:https://www.instagram.com/dodra_tokaitv/

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