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和田彩花の「アートに夢中!」

DOUBLE FANTASY -John & Yoko(ダブルファンタジー ジョン&ヨーコ)

月2回連載

第50回

20/11/10(火)

ジョン・レノンとオノ・ヨーコという、最もクリエイティブなカップルの物語を、彼ら自身の言葉や作品でたどる展覧会、『DOUBLE FANTASY -John & Yoko』2021年1月11日(月・祝)まで)が現在、ソニーミュージック六本木ミュージアムにて開催中されている。同展は、2018年5月〜2019年11月にジョンの故郷イギリス・リバプール博物館で開催され、70万人を動員。その巡回となる今回は、ジョンの生誕80年、そしてその生涯を閉じてから40年となる節目に、ヨーコの故郷である東京で開催される展覧会。ジョンとヨーコが生み出し、ともに歩んだ音楽とアート、映像作品のほか、本邦初公開作品、東京展のみ出品の作品が会場に並ぶ。1994年生まれの和田さんは、ジョンとヨーコに何を思うのか。

ジョン&ヨーコとの出会い

展示風景

私がジョン・レノンを意識したのは、小学生のとき。アイドル研修生時代のダンスレッスンの中で、先生に創作ダンスを考えるように言われたんですが、そのときの課題曲が「イマジン」だったんです。でもその当時の私はポップソングで踊ることが普通で、レッスンでもヒップホップダンスや、ジャズダンスばかりだったので、創作ダンスをしなさいと言われて、すごく恥ずかしかったことを覚えています。なんでやるのか、ということもよくわからなくて。でも先生は、創作ダンスを自分で考えることによって、自分の感情を表現する、心を大事にするということを覚えてほしかったみたいなんです。

展示風景 ジョンによる「イマジン」の手書きの歌詞

それに「イマジン」は平和の曲だから、平和とは何かということを自分で考えなさい、調べてみなさ いと。でもそれでも自分にとってまず「平和」というのもが何か、ということはわからないし、それをダンスにするなんてもっとわからなくて。だからジョン・レノンついても、このときはほとんど意識していませんでした。

でもそれがどんどん大人になり、そして音楽というものに深く関わるになるにつれて、音楽で自分が表現したいこと、できることを考えるようになりました。そしてその中で、「平和」や「愛」についてもすごく考えるようになって。そうしたときに「イマジン」に改めて行き着いたというか。大人になって聞いてみると、なんて素晴らしい音楽なんだろうって思い、それからジョンの音楽をたくさん聴き、映像なんかも見るようになりました。

ヨーコさんと出会ったのは、2015年に東京都現代美術館で開催された『オノ・ヨーコ 私の窓から』です。この当時はまだ私もそこまで現代アートに興味を持っていなくて、見ておこうぐらいの気持ちで行ったんです。だからこの当時はヨーコさんがどういう芸術家か、というのはよくわかっていませんでした。

なので、この頃からジョンとヨーコのことは大好きでしたし、いくつかのエピソードなんかも知ってはいたんです。でもここ2、3年、どんどんジョンの音楽を聴き、調べていくと、そこには絶対「オノ・ヨーコ」という存在がある。でもこの二人の真の関係性はいったいどういうものなんだろう、と思っていて。それが明確になったのが今回の展覧会。知らなかったこともたくさん知ることができ、そして日本との関係性にも焦点が当てられ、展示も盛り沢山でした。それに改めてヨーコさんの芸術家としての功績や立ち位置、そして活動の意味がわかるようになりました。

神聖化していた二人を身近に感じる

今回は年代を追って、二人がどう生き、時代を乗り越えていったのかがわかる展覧会になっています。年譜や二人の言葉も展示されていて、その言葉がとても大事なものだなと感じました。私がただ勝手に想像していた伝説的なジョンとヨーコの、葛藤や不安、喜びといった生の声が刻まれています。

それを見ながら会場を回ることで、いままで自分が二人を神聖化していたんだな、とも気づかされました。今までその存在にどこか現実味がなかったから展示物を見て「え、これ本物? 本物が目の前にある!」という不思議な感覚に陥っちゃって。もしかしたらそれは二人の活動そのものであったり、生活感のあるものや身につけていたものなども展示されていたからかもしれません。世界的なアーティストであり、数多の伝説を持つスターだけど、自分たちと変わらない人間なんだということに気づいた感じもあります。

展示風景

あとはやっぱり二人の活動そのものが素晴らしいものだなと改めて思いました。例えば《ベッド・イン》。白いベッドの上で、二人がシーツに包まれている写真は、ほとんどの人が見たことがあるのではないでしょうか。

展示風景

これは1969年3月20日に、ジブラルタルで結婚式を挙げた二人が、その5日後にアムステルダムのホテルで世界平和のための行ったパフォーマンスです。自分たちに注目が集まるタイミングで、ホテルを訪れる記者や世の中の人々に愛とユーモアと二人の知名度で持って、平和を訴えました。自分たちの存在意義や知名度を計算しての活動です。自分たちの価値を知りながら、うまくそれを使い訴える。しかしそこには押し付けがましい感じがないんですよね。

展示風景

自分たちが訴えていることの意味を、受け手側にも考えるよう促した上で、何をすればいいのかを一緒に考えましょう、一緒に行動しましょうと手を差し伸べている感じがします。それにこの活動や写真がいまもずっと平和のアイコンになり、受け継がれていることが、二人の活動の成功を物語っているな、とも思いました。

オノ・ヨーコという人

展示風景

今回、ヨーコさんという人についてすごく気づかされた点もたくさんありました。ヨーコさんって、いまも昔もとっても強い女性って思われていると思うんです。自己顕示欲が強くて、恐妻家だとか、ビートルズを解散させる原因を作った魔女だとか、ジョンを堕落させたとか。実際に展示されているインタビュー映像でも、インタビュアーが好き勝手に本人に向かって言っているんですよね。「そう言われているけどどう思うか?」とか。でもそれに応えるヨーコさんはとても聡明で、落ち着いている。もちろん苛烈なところもあると思いますが、それはほんの一部だけ。実際の彼女はとても繊細で、弱さもあり、ジョンを支え続けた、我慢強く、縁の下の力持ちだったんだなと。どれだけ勝手にイメージが作られてきたのか、その経緯もよくわかりました。

それにヨーコさんの作品ですが、見る側にあまり主張しないんです。コンセプトはしっかりしているけど、どこか曖昧というか。参加して、一緒に考えさせることを目的としているというか。

展示風景

例えばジョンと初めて出会ったインディカ・ギャラリーでの個展『Unfinished Paintings and Objects(未完成の絵画とオブジェ)』。今回それを再現しているのですが、その中でも特に《天井の絵》(1966年)という作品は、一見アートかどうかわからない。天井に小さく書かれた「YES」という文字を脚立を登って、虫眼鏡で見るという体験型の作品。確かに見るという行為は提示していますが、そこから何を感じるか、というようなことはいっさいこちらに押し付けてはこないんですよね。

ただ、そこには登る、虫眼鏡を使うという行為は求められています。一見静かな作品に見えて、作品と関わることは実は求めている。静と動がうまく混在した作品づくりをされているなと思いました。

この時代に二人の活動にふれる意義

私はずっと「らしさ」というものに疑問を持ち続けてきました。性差や国籍、年齢などで、いろいろと区別、差別されることが多く、ルールを課せられるのが当たり前というか。そこに私は息苦しさを感じているのですが、二人の活動に触れると新しい空気を吸えるような、呼吸が楽になるような気持ちになります。

そして今回の展覧会を見終わって思ったのが、二人の思いや訴えてきたこと、やってきたことって、ものすごくいまの世界ともマッチしているし、先鋭的だったということ。例えばジョンが主夫になり、ヨーコさんが働くとか。平和を訴えることももちろんこれまでされてきましたが、そのやり方が政治的なものというよりは、もっとみんながある意味楽に、もっともっと身近なものとして考えられるように提示してきた、その姿勢が美しいなと思いました。

いまこんな時代だからこそ、改めてジョンとヨーコが何を考え、何を訴えてきたのか、その真意をたくさんの人に知る機会になればいいなと思います。そして行動に起こす意味も。二人から学ぶことはまだまだ多そうです。

構成・文:糸瀬ふみ 撮影(和田彩花):源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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