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『ボイス』が描いた“声に寄り添う”こと 唐沢寿明VSシリアルキラー・伊勢谷友介、ついに決着!

リアルサウンド

19/9/22(日) 12:00

 失われた“声”の数は計り知れないが、ついにその根源である凶悪殺人犯・本郷雫(伊勢谷友介)を確保するに至った樋口彰吾(唐沢寿明)。妻が殺された3年前のあの日から、ずっと正体を探り、ともすれば殺してやろうとまで憎んだ相手だ。彼を捕らえることでストーリーは少しの快感を生みつつも、しかし安易に感動させてはくれない。「自分は普通ではない」と知ってしまった少年が狂気のシリアルキラーに成長するまでの道すじがちゃんと描かれているから、私たち視聴者も一様に雫を遠くに追いやることができないでいるのだ。『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)最終話の一番の見どころは、樋口が憎むべき雫に向かって拳銃の引き金を引くのかどうか、というところにあったと思う。最終的に樋口が出した答えと、本郷親子のたどった悲劇とは……。

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 監禁された透(増田貴久)を探し、雫の別荘へたどり着いた樋口。その地下室では透が無抵抗なままにいたぶられ、生死の境をさまよっていた。彼らの居場所が地下にあるとわかった樋口は、再び雫と面を合わせることに。唐沢寿明と伊勢谷友介の見応えのあるアクションが繰り広げられながら、最終的に優勢をとったのは樋口のほう。拳銃を雫に突きつけ、ついには、引き金を引いてしまう。しかし、その拳銃はすでに空砲だった。樋口は本気で彼を撃とうとしたようにも見えたが、それは運命のいたずらか、雫は生き延び、樋口は殺人を犯さずに済む。この場面での「お前(樋口)は俺と一緒だ」という雫の言葉が不気味に耳に残る。

 ようやく雫を捕らえたものの、彼は父親・本郷辰夫の画策によって逃亡することに成功。樋口とひかり(真木よう子)を追い詰めることを目的とした雫のゲームは、まだ終わりを遂げていなかった。港東署に潜り込み、ひかりを人質にとる雫。しかし、実は樋口のほうが一枚上手で、虚をついて再び雫を窮地に追い込む。そこで鉄アレイを振りかざした樋口だったが、雫を殺そうとするのはあくまでもフェイク。「平凡な日常を生きてみろ」と、雫にとっては死ぬことよりも辛いかもしれないジャッジを下し、一連の事件は終わりを迎えることに。

 全ては終わりを迎えた、ように思われたが、本当の結末はもっと悲劇的なものだった。本郷辰夫が息子である雫を包丁で刺し殺し、さらには自身の腹をも刺して葬ってしまったのだ。

 どうしても思い出されるのは、雫を捕らえる場面でひかりが放った「わたしはあなた(雫)の苦しみに寄り添える」という言葉。加えて、前述した「お前(樋口)は俺と一緒だ」という雫の発言。異常に聴力が発達したひかりも、時折怒りを抑えきれない暴力性が垣間見えた樋口も、雫とは全く別の人間であるとは言い切れない側面がある。凶悪な殺人犯ではあったものの育った環境が違っただけで、雫もやはりひとりの人間だったのだ。それでも、完全に闇に堕ちた雫を誰も救うことはできない。父親でさえも、彼を殺すことでしか、救うことができなかったのだ。

 そんな虚しさに満ちたラストだったが、ECUとして本格始動したメンバーたちは今日も被害者の声に真摯に耳を傾け、早急な事件解決に奮闘している。残虐で、苦しくて、どうしようもない事件を経験しながらも、新たな被害者、もしくは「新たな本郷雫」を救うことを決して諦めていないというのが、見ていてわかるだろう。『ボイス』というドラマが描いてきたのは、世の中にある無数の“声”をすくい上げること。ひとまずは、寝たきり状態である透の無邪気な声が復活することを祈りながら、ECUの今後の奮闘に想いを馳せたい。 (文=原航平)

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