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映秀。/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

僕の楽曲が考え直したり、立ち止まる機会になれば。19歳のシンガーソングライター・映秀。が2ndアルバム『第弐楽章 -青藍-』を語る

特集連載

第24回

音楽作るの楽しいぜ!っていう気持ちになることが大事なんじゃないかな

── 1stアルバム『第壱楽章』から8カ月でのリリースとなりました。2ndアルバム『第弐楽章 -青藍-』の構想は、どのあたりからあったのですか?

映秀。 『第壱楽章』を作っている最後の方だったかな? もうちょっと作りたいなっていう気持ちが自然と芽生えてきました。というのも──ライブがあんまり好きじゃないというか(笑)。いや、好きじゃないわけじゃないんですけど、これだ!っていう手応えがまだなくて。演奏できる曲もまだ少ないですし。それだったらまずは制作を集中してやる方がいいなと思ったんですよね。

── 一方で、制作をしたいというモチベーションをかき立てられる何かがあったわけですよね?

映秀。 それはやっぱり人との出会いですね。コロナ禍だったから余計っていうのもあるんですけど、出会った人たちと一緒に音楽を作りたいって思ったのはすごくあります。作るために出会った人もいますけど、出会ってから一緒に作ろうってなったこともたくさんあるので、そこは創作意欲がかき立てられたところですね。

── 『第弐楽章 -青藍-』は、映秀。さんの内面をより深く掘り下げる内容になったと思います。次のフェーズに進むために、一度しっかりと自分自身に向き合うということは必要でしたか?

映秀。 そうですね。3月に1stアルバムを出して、そこから8カ月なんですけど、その期間の葛藤って結構あって。一番大きかったのは、結果のために音楽をやっているわけじゃないけど、でも結果を出すことは必要でっていう部分。そういうなかで、自分はどんな音楽をやりたいのか、自分のやりたいことを探るっていうところの葛藤はありましたね。

── その葛藤を経て、音楽に対する向き合い方に変化はありましたか?

映秀。 『第弐楽章 -青藍-』を作り終えて、考えすぎちゃいけないなって思いました(笑)。たくさん考えることは必要だけど……なんて言うんだろ、考えて考えて考えてやっていくのも必要だし楽しいんだけど、さっきも言った友達といるのが楽しくて、創作意欲がかき立てられるっていうことが証明しているみたいに、あー音楽作るの楽しいぜ!っていう気持ちに、素直になることが大事なんじゃないかなって、今は思うようになりましたね。

── アルバムのオープニングナンバー「第弐ボタン」のなかに、こんな歌詞が出てきます。〈学ぶほど自分の醜さに打ちのめされるんだよ〉これって創作者の本当に素直な気持ちですし、そこには葛藤もあるし、また喜びもある。で、よくよく考えてみれば、それは創作者に限った話ではなく、どんな人にも当てはまる言葉だなとハッとさせられました。

映秀。 僕が目指しているものは、人のきっかけになることなんです。人が何かを始めるでも、やめるでも変えるでもなんでもいいんですけど、今まで当たり前でなあなあに続けてきたものを、僕の楽曲を聴いて一瞬考え直したり、立ち止まる機会になればなというのをずっと思っていて。だから歌詞でハッとさせられたっておっしゃってくれたのは、僕のやりたかったことができているんだなって実感できて、とてもうれしいです。

── 最後に〈あれ気付けば着いてる いつの間に〉って言ってくれることで、すごく救われるというか。迷いながら何かを達成できた時って案外そんな感じですもんね。乗れなかった自転車にいつの間にか乗れているように。

映秀。 めげずに続けることが大事だし、続けられることってきっと好きなことだから、転びながらも自分の好きなことを追求しているんだなって思いますね。

── この曲を作るにあたってまずイメージしたことは何ですか?

映秀。 僕の思っていることをそのまま書くっていうことです。いつも考えすぎちゃうんですよ。自分のなかに潜ったり俯瞰して見たりとかいろいろして、そうするとだんだん心が疲弊していくし、さっきの歌詞みたいに何かを学んで知れば知るほど自分のちっぽけさを自覚してしまうし。でもそういうことも含めて一回素直に書いてみようと思いました。

── そしてこれは「第弐ボタン」に限らず、アルバム全体を通して感じたことですが、色彩が鮮やかに描かれているように思いました。アルバムタイトルにも「青藍」とある通り、例えば最後に収録されている「喝采」では〈真っ赤に産まれて青く眠るまで〉というように効果的に色が用いられています。

映秀。 そうですね。「明白に黒」もそうですし、「諦めた英雄」でも〈紅〉って言ってるし。「雨時雨」でも〈彷徨う 僕は一人 青〉〈赤 滲んだ空 僕とあなたは〉っていう表現をしていますから、色は音楽に密着してあるものなのかもしれないですね。

僕らはきっと、自由っていう線引きをしないと不安になる

── 今、「喝采」のお話が出たので、この曲についてお話を伺わせてほしいのですが、これが最後にあることによって大団円を迎えることができるというか、今までの映秀。さんが作ってきた曲のなかでもちょっとタイプの違う曲ですよね。

映秀。 この曲について話し始めると長くなってしまいますが(笑)。僕、「喝采」好きなんです。もちろん全曲好きではあるんですけど。この「喝采」という曲は、「笑い話」とつながっているんですよ。

── 『第壱楽章』の最後の曲ですね。

映秀。 はい。具体的に言えば、「笑い話」のアウトロと「喝采」のイントロがつながってるんです、実は。で、物語自体もつながっていて。もともと、「笑い話」よりも先に「喝采」のイントロがあったんですよ。それで先に「笑い話」を作ることになったので、アウトロとイントロをつなげるっていうことにしたんですけど、いざ「喝采」を作ろうってなった時に、ちょっと普通じゃないものにしたいというか。日本独特の手拍子のリズムってあるじゃないですか。

── ゆったりした、間に揉み手が入るようなやつ?

映秀。 そうですそうです。あれをそのままやったらダサいだけで終わってしまうんですけど、そこに立体的なブラックミュージックのビートを取り入れたらどうなるんだろうっていうところから出発しました。それでいろんな友達に連絡したり、セッションをしたり、いろんな曲に触れて、そういうインプットとアウトプットを繰り返しすることによってできた楽曲です。

── 独特のファンクに仕上がっていますよね。どこかに湿り気があるというか。そうしたサウンドと言葉が相まって、希望の見せ方が全面ではなく進んでいった先へあるような、ずっと音楽が続いていくような余韻を残します。

映秀。 「喝采」というのは拍手喝采の「喝采」なんですけど、例えばアンコールを求める時の拍手って、なんか横並び的というか惰性というか、あんまりそこに僕は良い感情がなかったんです。だから最初はそういう行動に対しての、マイナスな気持ちを書こうと思ってた。でもどんどん曲を自分に落とし込んで考えていったら、果たしてそういうことを書きたいのか?ってふと思うようになって。そうじゃないなと。
そこで、上へ上への資本主義社会のなかで誰かが叩き始めた拍手の先に、廃れた未来が待っていませんようにっていう祈りの歌にしようって思ったんです。〈この世を笑えていますように〉っていうワードは皮肉じゃないですか。でも笑う世界すらなくなったら、それこそこの世の終わりですから。だからみんなが目指して行ったその上に、世の中のてっぺんにぶち当たって地球が限界を超えてしまっても、笑える未来がありますようにっていう祈りの曲にしました。

── 会社の売り上げでもなんでもそうなんですけど、目標がずーっと右肩上がりじゃないといけないってどこか矛盾を感じますよね。

映秀。 矛盾っていうことに関しては日々感じていて。「明白に黒」っていう曲は矛盾を歌った内容なんですけど、タイトルがそもそも矛盾していますよね。明らかに白いのに黒って、言葉としては成り立っているのかもしれないけど、どういうこと?って思ってしまうんです。日々生きていると、多かれ少なかれ矛盾を感じることはいっぱいあると思うんですよね。ちょっとした言葉のニュアンスから、「喝采」で描いたような世の中の仕組みまで。

── 「喝采」の前、11曲目に収録されている「共鏡」には、自由というものが檻にもなっているという矛盾を描いていますよね。

映秀。 自由って何だろうっていうことに対して僕なりにすごく考えた曲です。僕らはきっと、自由っていう線引きをしないと不安になっちゃうんだろうなって思ったんですよ。ただ野放しにされたら、どうしたらいいかわからなくなるんじゃないかなって。最初は誰かに縛られて窮屈に感じていたけど、それは誰かが決めたことじゃなくて自分自身で、ここがお似合いだって自由の範囲を狭めてる。自由っていう言葉も、本当の自由があればそんな言葉はないと思うんですよ。最初は「自由」っていうタイトルだったんですが、──知人の助言も受けて──自由っていう言葉に縛られるのは自由じゃないなと思って、合わせ鏡っていう意味の「共鏡」という言葉にたどり着きました。

── 合わせ鏡に映ったたくさんの自分がまるで檻の中にいるようだし。そこからどう脱していくかということで、アルバムのリードトラックになっている「脱せ」と共振していますよね。

映秀。 そうですね。

僕はこうやって生きてるっていうのを示すことが今できる僕のやり方

── MVを拝見して気づいたことなんですけど、「脱せ」と言いながら、自分自身の肉体と精神がひとつに合わさることを訴えているというところが面白いと感じました。

映秀。 確かに(笑)。心だけとか、体だけとか、どちらかがフワフワしちゃってる人ってきっとたくさんいて。SNSが大きな原因なんだと思うんですけど、自分自身でしっかり感じるというのは大切だと思いますね。

── この曲には〈じゃあ自分ってなんだろう〉って言葉がある通り、自分自身を一回深く掘り下げてみないとその先に進めないという感覚があったのでしょうか?

映秀。 そうですね。うん。……背伸びしている自分がいたんです、『第壱楽章』を作った後もそうだったんですけど。大人になろうとしていたというか。そうやって背伸びしている自分もダサいなって感じたし、背伸びせざるを得ない環境にも疑問を感じたし。大丈夫ですって言わざるを得ない環境って絶対にあるんですよ。自分自身を見つめることっていうのは、結局周りもしっかり見ないといけないんだなっていうのは思いますね。

── 大切な感情なり思いを人に伝えようとした時、一回自分のなかに深く潜ってみないことには、伝えられるものも伝えられない──そういう意志というか、マナーのようなものを感じたんですよね、この曲から。

映秀。 人のきっかけになりたいという僕のやりたいことっていうのは、人に寄り添って、大丈夫だよって優しい言葉をかけてあげることで、いつかそういう曲も作っていくかもしれない。でも今は、僕はこうやって生きてるっていうのを示して、19歳のガキがこんな生き方してるんだったら、俺も私もこうしてみようかなっていうふうに、人のきっかけになるのが今できる僕のやり方なのかなって思っています。だから僕がどう生きるかということを書くためには僕自身を知らなければいけないし、僕の周りのことも知らなければいけないなということで、こういう曲になりました。

── 「脱せ」という言葉は最初からあったんですか?

映秀。 ありましたね。惰性で続いているダッセー自分から脱せ、みたいな感じでずっとありました。結果というものに対してすごく悩んでいたんですよね。音楽において満足のいく結果が出てなくて。それを納得しきれない自分がいて。でもそのためにやっているわけじゃないだろ?って言ってる自分もいて。その狭間でずーっと悩んでたんですよね。
でもあるとき親友に、「お前は何やっててもアーティストだよ」って言ってもらえて、そうだ、こんなグダグダ悩んでいる自分から脱さないといけないって、確信持てた時にこの曲ができました。

── インタビュー冒頭で、この2ndアルバムを制作し終わった後に、素直に音楽を楽しみながら作るという方向に向かいたいということをおっしゃっていましたが、そこもまさに「脱せ」ですよね。

映秀。 ははは。たぶん僕の曲のメッセージの根本はシンプルなものが多いと思うんですよ。根っこはシンプルなんだから、もっと素直に曲作りをしてもいいのかなって今は思っています。それは、作詞においても作曲においてもアレンジメントにおいても。だからそこまでの過程を“葛藤の青藍”って呼んでるんですけど(笑)。

── 1曲を作る過程もそうですし、ここまでのアーティストの歩みもそうですし、すべてに“途上”が刻み込まれているという点で、映秀。さんの音楽はリアルな手触りがあると思います。

映秀。 途上……そうですね。音楽ってコミュニケーションだと思っていて、自分を見つけるにあたって、ひとりではできないんですよね。ミュージシャン、エンジニア、アレンジャー、事務所やレコードメーカーの人、そしてリスナーの方たち。みんなと一緒に自分の表現を探しているというか、だからどこまで行っても辛くならないんですよね。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

リリース情報

2ndアルバム『第弐楽章 -青藍-』
11/17(水)リリース
[初回限定盤]5,000円(税込)/UMCK-7149
[通常版]3,300円(税込)/UMCK-1706
収録曲
01.第弐ボタン
02.脱せ
03.失敗は間違いじゃない
04.忘れ物
05.砂時計
06.諦めた英雄
07.影を抱く
08.生命の証明
09.明白に黒
10.雨時雨
11.共鏡
12.喝采

【ライブ情報】
映秀。1stツアー"This is EISYU"
12/8(水)19:00開演 愛知 Zepp Nagoya
12/10(金)19:00開演 福岡 Zepp Fukuoka
12/12(日)17:00開演 大阪 Zepp Osaka Bayside
12/18(土)18:00開演 東京 Zepp Haneda(TOKYO)
12/26(日)17:00開演 北海道 Zepp Sapporo
チケット代:全席指定 5,500円(税込、入場時ドリンク代が必要)
◎来場者特典つき(当日会場渡し)
※詳細は公式サイトで確認を。

プロフィール

映秀
2002年3月17日生まれO型大学1年生。高校時代から作詞作曲を始め、「人のきっかけ」になることを目指す。2020年12月に1stEP『別解』をリリース。2021年、Spotify “RADAR: Early Noise 2021”に選出され、3月に1stアルバム『第壱楽章』、6月にデジタルシングル「雨時雨」をリリース、11月17日には2ndアルバム『第弐楽章 -青藍』を発売。12月より初のワンマンツアーを開催。今日も歌い続ける。

関連リンク

公式サイト:https://eisyu0317.com
Twitter:https://twitter.com/EISYU0317
Instagram:https://www.instagram.com/eisyu0317/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCtHqD5chQk_SrMa9hnyWS8g

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW

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