Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

リアルタイムだからこそ楽しめるサプライズも! 『MIU404』で考えさせられたそれぞれの“分岐点”

リアルサウンド

20/7/11(土) 6:00

 録画に、見逃し配信に……いつでも観られる時代だからこそ、リアルタイムで観るしかないと思わせてくれるドラマとの出会いは貴重だ。金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)第3話は、まさにリアルタイム推奨。まだ観ていないという人は、これ以上情報が流れ込んでくる前に、この記事の画面もすぐ閉じて、ぜひ映像から楽しんでほしい。

参考:野木亜紀子作品は“副題”にも注目! 『MIU404』第1話と第2話でまったく色合いの違う物語に

 第3話のタイトルは「分岐点」だった。「ルーブ・ゴールドバーグ・マシンって知ってる?」。新米の九重(岡田健史)に、志摩(星野源)は目の前の割り箸やコップを使ってピタゴラ装置を作りながら、そんな話を持ちかける。

 「たどる道はまっすぐじゃない。障害物があったり、うまく避けたと思ったら、横から押されて違う道に入ったり……」。目の前でスルスルと転がるパチンコ玉についての話かと思いきや、「そうこうするうちに、罪を犯してしまう」と人生の話へと移っていく。

 父親が警察庁刑事局長という生まれながらのエリートである九重に、きっと「障害物の数は人によって違う」という志摩の言葉の真意は深く届かなかっただろう。「誰と出会うか、出会わないか」その“分岐点”が人の生き様を大きく変えていくことを。

 4機捜のメンバーは、西武蔵野署管内で頻発している虚偽通報のヘルプに向かう。犯人は、元陸上部の高校生たちだった。彼らが出会ってしまったのは、ドラッグの売人をしていたという先輩たち、そしてその事実を隠蔽しようと画策する大人たちだった。「連帯責任」の一点張りで、陸上部の存在ごと抹消した校長。まっすぐに伸びるはずだった青春の道が、大きく歪み、その行き場のないエネルギーが虚偽通報へと走らせた。

 足の速さに自信のあった伊吹(綾野剛)は、かけっこ競争を楽しむ勢いで彼らの挑戦を待ち受ける。これまで、4人リレー形式で警察から逃げ切っていた犯人たち。伊吹は激走の末に、主犯格である成川岳(鈴鹿央士)と勝俣奏太(前田旺志郎)を追い詰めると、彼らは2手に分かれた。それこそが、まさに“分岐点”。

 伊吹は、勝俣を追いかける。そこに入ってきたのは虚偽の通報をしていた元陸上部のマネージャー・真木カホリ(山田杏奈)の本物の通報。伊吹は勝俣に、その事実を伝え「逃げるか来るか、今決めろ」と、“自分の意志”で選択するように促すのだった。勝俣は涙を流して自分の犯した罪を悔い、更生を誓う。

 一方、成川を追ったのは九重だった。真木の状況を伝えずに、踵を返して捜査に戻った九重。結果として、成川はそのまま逃走。この歴然とした差に、志摩が九重に離した「正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる」という言葉がよぎらずにはいられない。

 同時に、桔梗(麻生久美子)の「救うべきところは救おうというのが、少年法」「私はそれを、彼らが教育を受ける機会を損失した結果だと考えてる」「社会全体でそういう子どもたちをどれだけすくい上げられるか」「5年後、10年後の治安は、そこにかかってる」という言葉も。

 罪を犯してはいけない。それは社会で生きるために守らなければならないルールだ。だが、私たちは1人ひとり生まれながらに出くわす障害物の数が違う。ときに、理不尽な強い圧力を受けることもあれば、昨今の新型コロナウイルスの影響のように得体の知れないものによって道を曲げられることも。今年は、実際に青春のすべてをかけてきた大会を、諦めなければならなかった学生もたくさんいたに違いない。

 それぞれが直面する絶望の深さは、その人でなければわからない。それでも出会う人やものによって、私たちはまっすぐに歩む強さを持つことができると信じたい。運命のイタズラで私たちの人生は、パチンコ玉のように簡単に落ちるのだから。落ちた先に待っているのが私的制裁の恐怖だけではなく、自分の意志で自分を取り戻せる世界であってほしい。その“分岐点”にまさに今、私たちは立っているのではないか。そんなことも考えさせられる回だった。

 さて、ここまで読み進めているということは、リアルタイムのサプライズを楽しんだ方だということを信じて……。第3話では、犯人役でシンガーソングライターの岡崎体育、桔梗の息子を世話する謎の女役で黒川智花、そしてドラッグ事件に関与していると見られる素性の知れない男役で菅田将暉が登場。まさかのゲスト続きでネット上は大いに盛り上がった。

 この楽しさを最大限に味わえるかどうかも、リアルタイムで観るかどうかという“分岐点”に立ち、自分の意志で決めた結果。そう考えると、次回も夜10時にテレビの前にスタンバイする、一択だ。

(文=佐藤結衣)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む