政治難民としてパリへ逃れたバングラデシュ出身の少年が幾多の困難を乗り越えチェスのチャンピオンを目指すという実話を基にしたサクセスストーリーです。共に知恵を振り絞って闘う頭脳的競技の駆け引きも魅せますが、国籍や年齢の違いを越えて紡ぎ出される子弟の絆や親子の愛、さらに友情の物語は感動を呼ばずにはおきません。 少年ファヒムと父親は家族を残してパリに来ます。強制送還の脅威にさらされながら、政治的保護を求める一方で、チェスの才能を持つファヒムは優秀なコーチのシルヴァンに出会い友情を育んでいきます。そんな折り、チェスの国内大会が始まります。しかしファヒムに強制送還の手が……。不安定な身分を変える唯一の方法は彼がフランス王者になることでした。 ファヒム役のアサド・アーメッドも凛々しく適役ですが、モデルになったファヒム・モハンマドは落ち着いた声で話す沈着冷静な青年。ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル監督は本人に会って一目で映画化を決意しました。ファヒム青年自身は映画化を喜ぶだけでなく、映画が難民に対する世間の目を変えることに貢献することを願っているそうです。難民問題を考える上でまた新たな視点を得られるかもしれない作品です。