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Jewel、結成10周年記念ライブで見せた夢を追い続ける姿勢 自身最大規模ワンマンを振り返る

リアルサウンド

20/12/15(火) 7:00

 昨年6月にJ☆Dee’Z(ジェイディーズ)から改名したJewelが12月8日に結成10周年記念ライブ『Jewel Anniversary LIVE 2010-2020 THIS IS ME』を有観客で開催し、同時生配信も行った。

 今回の会場となったのはキャリア最大規模となるTSUTAYA O-EAST。本来は結成記念日である6月に行われる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。「メジャーデビュー以降にリリースしてきた全48曲を披露!」と予告していたアニバーサリーライブが半年も延びたこともあり、メンバーは3カ月に及ぶ入念なリハーサルを行い、気合い十分で挑んでいた。

 開演時間になると客電が暗転し、インダストリアルなビートが鳴り響く中、黒い衣装で統一されたバンドメンバーが登場。続いて、メンバーがメンズライクなビックサイズのジャケットにパンツルックでステージに現れると、電光掲示板に“Jewel”という文字が輝き、フロアからは久しぶりの再会の喜びとライブへの期待感を表すような大きな拍手が沸き起こった。

 オープニングを飾ったのは、Wリーグの公式応援ソングとして制作された「あと一歩」。彼女たちは笑顔でクラップを煽り、〈もう負けたくないから名前呼んで〉と歌いかけ、右手を高々と掲げて人差し指をあげ、1番というポーズを作った。夢を追いかける人の背中を押す彼女たちらしいエールソングの後に選んだのは、Jewelにしか歌えないアーバンファンク「I’m with You」。女性らしいボディラインを生かしたダンスに彼女たちが重ねてきた年月を感じる。結成当初は8〜10歳のキッズダンサーだった彼女たちは、18〜20歳の大人の女性となり、表現の幅が広がっているのは間違いない。

 2014年にリリースされたダブルA面仕様のメジャーデビュー曲「Let the music flow」では歌詞の言葉、一つひとつが真っ直ぐに胸に飛び込んできた。今、この瞬間を大事にしながら、自分らしいストーリーを描いていこうという信念。どんな困難があっても、夢に向かって乗り越えていくんだという強い意思。〈歌い続けるよ/踊り続けようよ〉という約束。その身をもって体現し、6年後の今、このステージで歌い、踊ってる彼女たちの説得力といったらない。そして、3人で〈いま飛び立て/未来〉と声を重ね、美しいハーモニーを奏でた「未来飛行」以降、スタンドマイクを使って歌った「アシタノアタシ」からは、怒涛のメドレーに突入。ディスコやファンクナンバーを1番だけで繋いでいき、メンバーが「人間になる前の曲で当時のリリースイベント以来やっていない」という「No.ニャイン」や「ニャゴニャゴジャンケンのうた」ではNonoが猫の手で指揮をしながらアカペラやチャーミングなセリフも披露。もう1つのメジャーデビュー曲「Beasty Girls」では牙や爪をむき出しにして踊り、コブシをあげて会場と画面ごしの観客を盛り上げた。

 さらに、8月29日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行われたワンマンライブ『このまま終われない~Road to THIS IS ME~』でも披露されたマッシュアップメドレーを3パターンも用意。Jewelとしてのスタートの曲でもあるクールなフューチャーベース「前へ」から始まり、「Boy friend」や「明日も、世界は回るから。」がミックスされた“Part1”を経て、ピアノとビートを基調に「いますぐに会いたい」や「全部好き。」などのラブバラッドを集めた“Part2”、Wリーグ公式応援ソング第3弾「夢が夢じゃなくなる日まで」や名曲「Melody」を盛り込み、次第に高揚感をあげていった“Part3”へとなだれ込み、最後は再び「Boy Friend」や「いますぐに会いたい」、「前へ」と戻るという壮大かつ繊細なタペストリーを編み込み、観客を感嘆させた。このマッシュアップを音源化して欲しいという気持ちもあるが、ライブでしか聴けないというスペシャル感も取っておきたい気もする。

 ここまでで、マッシュアップメドレーの17曲を含め、すでに31曲。amiが「私たち自身がパフォーマンスと向き合うようになったきっかけの曲」と語った「ひとひらの涙」に続き、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」は3人でアカペラで一小節だけハモり、Nonoがピアノ伴奏のみで池田綾子「明日への手紙」を歌うと、MOMOKAがアコギのみで「代わりにこの唄を」で引き継ぎ、amiがピアノとアコギと3人でオリジナルの「初恋」を切々と歌い上げ、3人で卒業ソング「三月」をエモーショナルに歌唱。それぞれの歌声や表現の個性に焦点を当てながら、今一度、3年前に5日間の共同生活で作り上げた「ひとひらの涙」へと戻っていった。この3年間、数多くのステージに立ち、ハーモニーワークを駆使したカバー動画などをアップしてきた彼女たちの“これまで”の日々が感じ取れる構成となっていた。

 ギターとベースも一緒に踊った「Fun Time Funk!!!」からバンドによるインストナンバーの演奏を挟み、オーロラのように光るシルバーの衣装にチェンジ。何度つまづいても、〈「もう1回」前へ/踏み出していくんだ〉という決意を込めたポップロック「Shoes」、彼女たちが生歌とハモリを追求する最初の一歩となった「Dream Arch」、タオル回しで盛り上がった「swing swing swing」、レーザー光線が煌めく中でソロのダンスパートも盛り込んだ「君にStrike」、新たにメロウなアレンジを加え、歌とハーモニーだけではなく、ダンスのシンクロ度も格段に増した「だいすき」、電光掲示板に“JUMP”という文字が浮かび上がった「カラフルジャンプ」と、多彩なアレンジと演出でオーディエンスを沸かせた。さらに、ニューヨークでの路上トライブ修行で磨き上げた「Answer」ではボディパーカッションを繰り出し、Wリーグ公式応援ソング第2弾のピアノバラード「Jewel」では〈君となら届きそうだ/あと一歩〉〈夢は夢のまま終わらせたりしない〉というフレーズを語りかけるように歌い、2番では原石だった彼女たちが本物の宝石を見つけた瞬間を歌声の輝きで表現した。

 ここで、MOMOKAが「本来、6月にやる予定だったライブでお客さんが1000人入らなかったら解散しようって、みんなで決めてました。それはマイナスな話じゃなくて、入るって信じてるからこその決断でした。コロナがなければ、路上ライブをしたりとか、いろんな形で私たちのことを知ってもらって、この会場を満員のお客さんで埋めようよっていう気持ちで頑張ってました。だからこそ、48曲やることに決めてたんです。10周年ということもあったけど、今までのことを全部さらけ出したライブをしたかったから」と衝撃の事実を伝え、本編のラストナンバーとして、4月にデジタルシングルとしてリリースした「このまま終われない」を全力で届けた。光を抑えた照明の中で歌われたパートはまるで心の声をそのまま吐き出したような語り口で、最後に3人は目を合わせ〈終わらせない〉と声を重ねて締めくくった。

 大きな拍手を受けてステージに戻ってきた3人は椅子に座って49曲目となる新曲「横浜メモリーズ」を初披露。横浜を散歩しているかのような温かなムードで会場を満たし、マッシュアップメドレーに盛り込まれていた「夢が夢じゃなくなる日まで」をファンとともに歌い、踊り、〈立ち上がるよ 何度でも 自分を信じて Try Again & Again〉というフレーズを全ての観客の心に置いて、10年間の集大成を存分に見せつけたステージを後にした。10年前に、キッズダンサーだった彼女たちが歌に目覚め、ハーモニーを重ねる楽しさに没頭していく中で、ここまで質の高いパフォーマンスを獲得することを想像していた人がどれだけいただろうか。当然、ここから10年後、彼女たちがどうなっているのかなんて誰もわからない。しかし、彼女たちはきっと、夢の扉が開くまで歩みを止めないはずだと信じている。

■永堀アツオ
フリーライター。音楽雑誌「音楽と人」「MyGirl」、ファッション雑誌「SPRiNG」「Steady」「FINEBOYS」などでレギュラー執筆中。「リスアニ!」「mini」「DIGA」「music UP’s」「7ぴあ」「エンタメステーション 」「CINRA」「barks」「EMTG」「mu-mo」「SPICE」「DeVIEW」などでも執筆。

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