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松岡茉優×鈴鹿央士が明かす、『蜜蜂と遠雷』月夜の連弾シーン秘話 「あの空間全部が好きでした」

リアルサウンド

19/10/9(水) 8:00

 3年に一度、若手ピアニストの登竜門として注目される芳ヶ江国際ピアノコンクールに挑むコンテスタントたちの群像劇を描いた恩田陸の『蜜蜂と遠雷』が実写映画化された。

 本作では4名の天才ピアニストにスポットが当てられる。映画の主人公で、母親の死をきっかけに表舞台から消えていた元天才少女の栄伝亜夜。普段は楽器店で働き、“生活者の音楽”を掲げる最年長の明石。コンクールの大本命で「ジュリアード王子」と注目の的であるマサル。そして、今は亡き著名なピアニスト・ホフマンに送り込まれ、コンクールに嵐を巻き起こす最年少・風間塵。それぞれの想いをかけ、刺激を受け合いながら、音楽と向き合っていく。

【動画】松岡茉優と鈴鹿央士による月夜の連弾シーン

 本作で主人公の天才少女・亜夜を演じた松岡茉優と、“ピアノの神”が遺した異端児・風間塵を演じ、本作でスクリーンデビューを果たした鈴鹿央士にインタビューを行った。

■鈴鹿「この作品がデビュー作で良かった」

ーー完成した作品を見た時、どんな思いでしたか。

松岡茉優(以下、松岡):1カ月半ほどの撮影期間で1シーン1シーンを大事に撮っていたので、感覚的には結構長い映画になるんじゃないかなと思っていたんです。けれど、出来上がった作品を観たら、石川(慶)監督の想定通りの2時間で収まっていて、疾走感のある映画になったんだなと感じました。ポーランドで勉強された監督や撮影監督のピオトル(・ニエミイスキ)によって、日本映画離れした映像美に仕上がっていて、新しい音楽映画ができたんじゃないかなという自信が持てました。

鈴鹿央士(以下、鈴鹿):僕は初めての俳優の仕事だったので、自分が見ていた現場での景色と、カメラを通しての「色」が違うんだというのを知ったことが発見でした。それと台本にあるト書きを読んで、どうやって映像になるんだろうと考えていた部分を実際に見た時の驚きが大きかったです。現場では皆さんが温かく迎えてくださって、本当に居心地のいい空間だなと思いながら撮影していました。

ーースクリーンに自分が写っている姿を見て、どうでしたか?

鈴鹿:気づいたらもう4回も見ていたのですが、初めて見た時は「あぁ、映ってるなぁ」と率直に感じて。ここカットされているな、使われてるな、とか、こういうとこ撮られてたんだとか。そして、やっぱり感動しました。僕が登場しない場面はどんな風に撮影されているのかは知らなかったので、最後の松岡さんが本選で弾くまでのシーンとか、僕がバルトークを弾いてるシーンから繋がるところとか、こういう映像になったんだなと感動して。久しぶりに達成感とか色んなものを感じました。

松岡:何もかもが初体験だもんね。エンドロールに名前が出てきた時は?

鈴鹿:「鈴鹿央士(新人)」って出てきて、「あぁ、新人だ」と思って。

松岡:人生で1回だけだからね。

鈴鹿:この作品がデビュー作で良かったなと思って。作品に関わったんだなと実感が湧いてきたし、率直に「すごい」と思いました。

■松岡「奇跡と偶然が折り重なってその役が出来上がった」

ーー小説では実現できない音楽が、本作の要になりますね。

松岡:それぞれのピアニストたちの役を、世界的なピアニストの方が担当して演奏されているんです。亜夜の奏者を担当した河村尚子さんの収録に立ち会わせていただいたのですが、森や海の原風景が本当に浮かぶような音楽で。これだけの世界的レベルの演奏を、同じ作品で同時に聞けるというのはなかなかないことだと思いますし、楽曲一つ一つとっても楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってます。

鈴鹿:何度観ても、本当に音が綺麗だなと感じるんですよね。僕、昨日映画館に映画を観に行ったんですけど、その時に予告が流れて、大きいスクリーンで見て、より音楽の迫力を感じました。空間を包み込んでくれる音を体感する映画です。

松岡:鈴鹿くんと初めて会ったのが、劇中楽曲のレコーディングの日だったんです。ちょうどエレベーターから降りてくる鈴鹿くんの奏者役である藤田真央さんとすれ違った時に、佇まいが本当に風間塵みたいな方だなと感じて。そのままホールに行って初めて会った鈴鹿君も風間塵みたいだなと思って、驚きでした。4人のキャラクターそれぞれにも言えることなんですが、色んな奇跡と偶然が折り重なってその役が出来上がったんだと、作品を見ても改めて感じました。

ーー原作小説のファンの方もとても期待していると思います。原作の映画化にあたり、意識したことは?

鈴鹿:石川監督とクランクインの前に話す機会があって、「今の顔、その目線、その仕草を現場に持ってきてほしい」と言われて、実践していきました。あと、最初にメールのやりとりで、監督から「自分の中で答えを見つけてください」と言われて。「風間塵は他の誰でもなく央士くんなんだから」という言葉をかけていただいた時には自信がつきましたし、そのあとは自分で答えを見つけようと模索しました。

松岡:鈴鹿くんと初めてお芝居したのが、2人で連弾をする月の光のシーンだったのですが、鈴鹿くんの一言目がもうみずみずしくて。お芝居って、色々な要素があって、音感とか感受性とか、そういうのが揃ってないとセリフが出てこないはずなんです。鈴鹿くんはそれを初日からやっていたので、才能というのはあるんだなぁと思いまいした。(鈴鹿を見て)びっくりした顔してるけどこの話するの2回目だよ?

鈴鹿:毎回びっくりします(笑)。

松岡:だって「これ読んでください」って台本を渡されて自分の言葉みたいに喋れるって才能でしょ?

鈴鹿:(にこにこして頷く)

ーー褒められるの、あまり慣れないですか?

鈴鹿:そうですね。評価される人生じゃなかったので……あ、でも書道で入選とかはありました。

松岡:可愛い(笑)。恩田陸先生が鈴鹿くんのことを、“もう(風間)塵くんだな”って言ってたよ。良かったね。

鈴鹿:嬉しいです。

ーー鈴鹿さんは亜夜と塵の連弾のシーンはどうでしたか?

鈴鹿:僕の1番のお気に入りなシーンです。原作を読んだ時もそのシーンが好きだったのですが、曲もそうだし、月の光とピアノ工房というあの空間全部が好きでした。現場の雰囲気も印象に残っていて、すごく気持ちが入れたというか。監督に「なんでもいいから思ったことをパッと言って」と言われて、初めてアドリブをしたというのも楽しかったです。

■松岡「孤独な天才少女がエンターテイナーになる」

ーー登場人物たちが音楽に向き合うことと、ご自身が芝居に向き合うことで同じだなと感じたことはありますか?

松岡:私が亜夜を演じるにあたり今回掲げていたのが、「孤独な天才少女がエンターテイナーになる」というテーマでした。孤独である種エゴのようなピアノの演奏をして、自分とピアノの対話だけだった彼女が、それをエンタメに昇華して、お客さんに渡してエンターテイナーになる。私も舞台をやらせていただいた時に、最初はお客さんのことも見られないし、自分がその役を演じることで精一杯だったんです。それが公演を重ねてくうちに、お客さんの反応を見てお芝居のニュアンスを変えていくことができるようになって。なので亜夜が本選で初めてお客さんの呼吸を感じて演奏ができるようになったという感覚とは少し近いような気はしました。

鈴鹿:僕は、台本を読んでセリフを覚えて、ピアノを練習したことを、撮影の時にスタッフさんやエキストラさん、共演者の方々の前でやることは、風間塵がピアノを演奏することと重なるなと考えていました。全く一緒じゃないけど、違うものでもないな思って。でも、どうなんだろうな、芝居……まだわからないですね。

松岡:そうだよね。でもこれからの人生、もうピアノを弾く役はないかもしれないし、そういう意味では楽だと思うよ。鈴鹿くんは最初にしてかなり難しいことしたよ。

鈴鹿:でも僕、逆にピアノがあってラッキーだと思いました。

松岡:本当? ほらね、鈴鹿くんはこういうところがあるから。どうして?

鈴鹿:自分を直接出さずにひとつ経由してくれるものがあったから。直接さらけだすのがちょっと恥ずかしくても、表現の選択肢が増えてピアノを通してだったらできるなと思いました。

松岡:それならこれから方言をやるのも楽しいと思うよ。お医者さんとか弁護士さんとか業界用語のある役も面白いし、楽しんでできるね。それを障害じゃなくて楽しいって捉えられるんだと思う。

鈴鹿:楽しみです。

■鈴鹿「生き方を松岡さんたちからすごく感じました」

ーーコンクール中、ピアニストたちが互いに影響を受け合いますが、この作品でお互いに受けた刺激はありますか? 

松岡:最初で最後のデビュー作で、これから羽ばたいていくであろう鈴鹿くんの最初に立ち会えたということは、私にとっても初心を思い出させてくれる瞬間もあって、貴重でした。原作ファンの方もかなり期待していて、風間塵という役は難しい役だったと思います。でも、その壁をひょいひょいと風間塵のように超えて鈴鹿くんが演じてくれたというのが、風間塵にとってもラッキーだったんだろうなって思いました。

鈴鹿:最前線で活躍されている方と一緒にお仕事するとなった時に、僕は今まで、同世代が多い事務所のレッスンなどしか経験していなかったので、やっぱり生で見ないと分からないことがたくさんあるんだろうなとワクワクしていました。実際に、日本の映画界のトップの方々の佇まいとか、生き方を松岡さんたちからすごく感じました。それと、芸能人のオーラって、やっぱり何かが違うんですよね……地球にいないんですよ。

松岡:(笑)。

鈴鹿:同じ惑星にいるはずなのに、宇宙の方にいるなと思って……でもここにいるから……。不思議な人たちだなと思って。

松岡:こっちのセリフだよ(笑)。宇宙人は鈴鹿くんだよ! 

鈴鹿:(笑)。松岡さんたちからは俳優という職業とお芝居が好きという気持ちがすごく伝わってきて、作品に向かう気持ちなども本当に一流のものを見ることができました。僕もそういうのを持たないといけないと刺激を受けたので、今は頑張り中です。

(取材・文:大和田茉椰)

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