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SEKAI NO OWARI「Dragon Night」から「Dropout」に至るまで セカオワ流EDM×J-POPの進化を辿る

リアルサウンド

20/4/14(火) 12:00

 今年で活動10周年を迎えるSEKAI NO OWARIの最新配信シングル「Dropout」。この楽曲は、彼らのアニバーサリーイヤーの第一弾リリースであり、放送中のKDDI「au 5G」のCM『「au 5Gその手に」編』のために書き下ろされた楽曲。配信限定曲とはいえ全編英語詞のリリース曲であることや、プログレッシブハウス~フューチャーハウス系のEDMサウンドを大胆に取り入れた楽曲として注目されている。

参考:SEKAI NO OWARI「Dragon Night」から「Dropout」に至るまで セカオワ流EDM×J-POPの進化を辿る

 とはいえ、SEKAI NO OWARIにとって、「EDMの導入」や「全編英語詞の楽曲」は、今回が初めてのことではない。むしろ、この楽曲は過去の様々な活動の延長線上にある雰囲気で、だからこそ、バンドのこれまでの進化が垣間見える楽曲になっている。今回はSEKAI NO OWARIのこれまでの活動を振り返ることで、今回の楽曲に繋がる過程を推察してみたい。

 まず、SEKAI NO OWARIがEDMを取り入れた楽曲として印象的なのは、2015年のメジャー2ndアルバム『Tree』の収録曲「Dragon Night」だろう。この曲では、EDMのトッププロデューサー、ニッキー・ロメロが共同プロデュースを担当。歌詞では「正義と悪は簡単に決められない」という初期からあったテーマをさらに拡張し、「価値観が違う人々が一緒に踊る一夜の風景」を描いていた。この曲でEDMを取り入れたのは、おそらくそうしたテーマに寄り添ったからこそ。すでに国内で人気バンドとなっていた彼らが、サビを歌からEDMのドロップに置き換えて曲の構造を大きく変化させていく様子は、J-POPリスナーから欧米のポップミュージックを聴くリスナーまでを巻き込んで刺激的な冒険として話題となった。年末には初出場した『第65回NHK紅白歌合戦』でもこの曲を披露した。

 とはいえ、今回の「Dropout」の音楽性は、同じく「EDMサウンド」という部分では共通しながらも、「Dragon Night」とはタイプが違うものになっている。その影響源として考えられそうなのは、2019年に同時リリースした2枚のフルアルバム『Eye』と『Lip』だ。

 この2作品は様々な音楽性をちりばめた複雑な作品だったものの、大雑把に分けるなら、『Eye』はラップやポエトリーリーディング、もしくはフォークやブルース由来の歌唱を横断するFukaseのボーカルが印象的で、サウンド面でもDr. OctagonやGorillazのプロデュースで知られるヒップホップ畑のダン・ジ・オートメーターや、『Ágætis byrjun』以降のSigur Rósの3作にかかわったケン・トーマスらが参加。歌や演奏も含めてビート/リズムを追求する姿が印象的だった。一方の『Lip』は、小林武史やOwl Cityことアダム・ヤングらを迎え、カッティングギターを活かしたアーバンな楽曲からピアノやアコースティックギターの音色を大切にした楽曲まで、『Eye』よりも歌やメロディを重視した作品になっていた。

 また、そうしたタイプの違う2枚が「〈目は口ほどに物を言う〉と言いますけど、目が語るものと口が語るものは違うと思っていて。でも、自分のことを語るためには両方必要」(参考: Mikikiインディーズ「SEKAI NO OWARI 『Eye』『Lip』 目が語るものと口が語るもの、表裏一体のイメージのアルバム」)というFukaseの中にあったテーマで繋がることで、SEKAI NO OWARIの音楽性の多彩さを伝える雰囲気になっていたことが、少なくとも筆者にとってはとても印象的だったのを覚えている。今回の「Dropout」もまた、特徴的に思うのはEDMサウンドにアコースティックギターのストロークやゴスペルなどを思わせる分厚いコーラスが加わっていることで、現代的なモダンさ、未来感のようなものに加えて、どこか懐かしさのようなものが感じられる。

 また、「Dragon Night」と比べて、音数が少ない、引き算の美学が感じられるプロダクションも印象的で、これは2013年からスタートし、2017年以降リリースも本格化している海外展開のためのプロジェクト、End of the World名義での活動が大きな影響を与えているように思える。中でも一番雰囲気が近いと思うのは、Clean Banditを迎えた2019年の楽曲「Lost」で、「Dropout」のコーラスも、この曲の延長線上にある雰囲気が感じられる。

 もちろん、英語詞に関しても、End of the World名義での活動で得たものは大きかったことだろう。もともとSEKAI NO OWARI名義でも英語詞の曲は存在していたものの、このプロジェクトを通して海外の分業制のポップミュージックの仕組みを理解すると同時に、言語と音との関連性を突き詰めた経験が与えた影響は大きいはず。実際、「Dropout」の楽曲とメロディ/歌詞の自然なハマり具合を考えても、この曲は英語詞の方が楽曲の雰囲気に合っているように思う。海外でのEnd of the Worldでの経験が、国内での活動をベースにしたSEKAI NO OWARIにも反映されることで、両者の境目が極限まで近づいているような、ある部分ではその2つが互いに影響を与えながら発展しているような印象を受ける。

 とはいえ、英語詞ではあるものの、歌詞の内容はSEKAI NO OWARIのこれまでの歩みを思わせるようなものになっている。多くの人が知っている通り、SEKAI NO OWARIの10年間とは、精神疾患を経験してどん底の状態にあったFukaseが、仲間たちとバンドをはじめ、日本屈指の人気バンドになり、世界にも活動の舞台を広げるという、まるで奇跡のような出来事が起こった年月でもある。「Dropout」の制作に際しては、Fukaseが地元の街を歩きながら、その「変わった部分」と「変わらない部分」について考えながら最初のアイデアを連想したそうだが、歌詞ではバンドのこれまでの歩みも想像するように、〈I came from Dropout Boulevard〉(僕は脱落した通り/場所からやってきた)と表現されている。

 こうした楽曲の内容と、「au 三太郎」シリーズでもお馴染みの松田翔太、桐谷健太、濱田岳が演じる「マツダ」「キリタニ」「ハマダ」が「5Gを未来とか言ったのは誰だ。」と伝えるCMの内容をあわせて考えれば、今回の「Dropout」の魅力がより鮮明に感じられるのではないだろうか。当然のことながら、未来は未来だけで存在するのではなく、過去から現在、未来へと続いていく連続した時間の積み重ねの先にやってくる。そして、その中で「変わったこと」「変わらないこと」の両方が、それぞれの未来を決める大きな要素になっていく。そういう意味では、今回の「Dropout」は、自分たちが辿ってきた道のりを振り返りながら、同時に未来へと進んでいくような、10周年イヤーらしい楽曲のひとつと言えそうだ。

 もちろん、SEKAI NO OWARIにとって「Dropout」の音楽性は、今のバンドにある引き出しのひとつでしかないだろう。2020年はドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』の主題歌を含む最新シングル『umbrella』やベスト盤『SEKAI NO OWARI 2010-2019』のリリース、そして9月からの最新ツアー『DOME TOUR 2020 「Du Gara Di Du」』などが控えている。日本と海外の両軸で続けた活動の中で音楽性の幅を拡大した彼らの活動が、今年はどんなふうに広がっていくのか。ますます楽しみにしていたい。(杉山 仁)

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