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『なつぞら』十勝とアニメーションが交錯する 天陽くんの生きた姿からなつが得たもの

リアルサウンド

19/9/6(金) 12:00

 優(増田光桜)の「優ちゃんこれ見たいよ!」という言葉に何かを決心したなつ(広瀬すず)は受話器を手に取る。『なつぞら』第137話では、なつが天陽(吉沢亮)の死を受け止めた上、立ち上がる姿が描かれた。

参考:『なつぞら』第138話では、なつ(広瀬すず)が仲(井浦新)に東洋動画を辞めたいと告げる

 出勤前の坂場(中川大志)にかけた電話の内容は、出発前に相談された企画、『大草原の小さな家』を自分にやらせて欲しいというもの。作画監督まで勤め上げた東洋動画を退社し、マコプロへ移籍する気持ちが固まったということだ。

 なつは「また天陽くんに答えを教えてもらった」と富士子(松嶋菜々子)に語る。思えば、今週の放送はどこかいびつな構造をしていた。本来であれば週の最後に持ってくるべき山場である“天陽の死”を、火曜日のオープニング前という序盤に配する。これまで金曜日や土曜日に山場を持ってくる傾向のあった『なつぞら』、ひいては朝ドラとしては珍しい構造だ。視聴者を悲しみに突き落としたまま突き進んできたこの4日間。第23週は、死そのものを終わりとして捉えるのではなく、残された者たちの“その後”立ち上がる姿を描く週なのだ。

 天陽の死を受けて、十勝へ帰省したなつは、靖枝(大原櫻子)、雪之助(安田顕)、弥市郎(中原丈雄)から伝え聞く天陽の生きた姿、そして生前魂を込め描き上げた絵の数々から彼が遺した言葉を受け取る。これまで通り、なつの決意をを後押しした天陽は、死後もなおなつの心に語りかけ続けるのだ。同じく十勝に帰省してきた明美(鳴海唯)に「天陽君と話して決めた」となつが語るように、その言葉はしっかりと届いている。

 そんな明美は、信哉(工藤阿須加)の後を追い、札幌の放送局で働き始めている。「女は結婚のために生きてるわけじゃないべさ。これからの時代は」と、いつしかの夕見子(福地桃子)のような物言いで、さらには「夕見姉ちゃんは結局中途半端だったわ」とも言ってのける。柴田姉妹を強く意識させる十勝の風景だ。

 一方、東京では坂場が企画書を一晩で書き上げ、麻子(貫地谷しほり)に提出する。「奥原なつが、その気になりました」と告げると、マコプロの一同は奮い立つ。なつは作品を作る上で、かけがえのない存在になっているのだ。

 天陽の絵がなつの『大草原の小さな家』に重なるように、坂場は「舞台は日本、北海道にする。北海道を舞台にしてその物語を創ってみたいんだ」と語る。ついに、なつの育った原風景とアニメーションの世界が交錯する。紙と鉛筆を武器にアニメーターたちは、開拓者の生きる姿をどのように描くのか。『なつぞら』ラストスパートへ、アクセルは踏み込まれた。

(文=安田周平)

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