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「みなさんに届ける機会を作りたい」 満席続出の映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』監督がオンライン上映会を決断した理由

ぴあ

『なぜ君は総理大臣になれないのか』 (C)Netzgen

6月13日にポレポレ東中野で公開が始まると、6日連日完売満席が続き、わずか7館での上映ながら1カ月経たずに動員1万人を突破した話題のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』。政治の問題が相次ぐ中、大きな反響を呼ぶ同作だが、今度は劇場公開が盛況な中では異例と言えるオンライン特別上映会の開催が決定した。

そこで、オンライン特別上映会に先駆け、大島新監督にインタビュー。ここまでの作品の反響や、オンライン特別上映を決断するに至った理由など、話を聞いた。

大島新監督

まず、当初の7館から現在は全国各地で58館まで拡大上映が決定。この反響を大島監督はこう受けとめる。

「素直に、うれしいです。東京での上映から1カ月以上経って、先週末から関西での上映がスタートしたのですが、そこでも観客の方から『ほんとうに早くみたかった』とのありがたい声を多くいただきました。公開前、作品に登場している政治ジャーナリストの田崎史郎さんには『僕は面白い映画だと思うけど、誰が観るの?』と言われたんですけどね(笑)」

作品が焦点を当てるのは、現在5期目になる無所属(立憲民主党の会派)の現衆議院議員、小川淳也。現在49歳の彼は、2019年の国会で統計不正をめぐっての国会質疑で脚光を浴び、現在『news23』のキャスターを務める星浩や、先に触れた田崎にも「見どころがある」と言われる若手政治家だ。

大島監督が小川と出会ったのは、2003年10月10日、衆議院解散の日のこと。当時32歳で民主党から初出馬することになった彼にまずカメラを向けた。

「はじめは僕自身、彼に期待していました。ひじょうに誠実な人柄でまっとうな考えの持ち主。しかも優秀で、政策にしても、自らの主張にしてもきちんと自分の言葉にできて、そのひとつひとつをきちんと説明することができる。

政策など100パーセント、必ずしも一致するわけではない。でも、彼の考える未来の日本の社会の在り方や国のヴィジョンというのは、人口減少や超高齢化を見据えたとき、フィットするのではないかと思いました。そういうことを含め、日本の政治を変えていくのではないかと期待しましたね」

これは作品内で触れられていることだが、小川は「日本をよくしたいオタク」。そもそも総務省の役人から政治家へ転身しようと思ったのも、官僚のトップになっても、国の抱えている問題などを解決できないことに起因している。彼の政治姿勢であり人間性を端的に表しているのが、「51と49」という選挙の考え方だ。これはたとえ選挙を勝ったとしても、負けたとしても、自分を支持してくれた人も、支持してくれなかった人も同じようにその想いを受けとめなくてはいけないということ。「51と49」。そこに大きな差はないと小川は考えている。だから、選挙で議席を争う敵陣のことも慮る。

「甘いと言われそうですけど、いま、こういう政治家がほかにいるかなと。現在の世界的な政治の潮流でいうと、分断が主流ですよね。トランプ大統領がそうであるように、自分の反対意見には耳を貸さない。逆らう者は容赦なくこき下ろす。そういうリーダーが世界で続々と台頭している。こうした政治の潮流に入ると、小川さんのような政治家は外へ外へとはじかれてしまう。

そして、いま政治の場の言葉がすごく乱暴で汚い発言が飛び交っている。そういう中で、小川さんのような正当な発言やきちんとした説明がかきけされてしまう。これはすごく残念なことですよね」

ということからわかるように、期待はすれど事はそううまくは運ばない。小川は当選を重ねながらも、総理大臣どころか、党での発言力をもつまでにも至らない。

「映画化を決意した2016年ぐらいですかね。彼は上にいけないんじゃないかなと思いはじめました。政界という特殊な世界では、彼のようなタイプの人は認められない。しかるべきポジションを得ることができない。その現実を僕自身目の当たりにしました。

中央官庁出身で、ある県の副知事も務められた方が映画を観てくださったんですけど、『なぜ君は総理大臣になれないのか』というタイトルを見て、『なにをたわけたことをいっているんだ』と思ったと。その方いわく、いまの総理大臣には、『貴族のような特別な政治家以外はなれない』と。つまり、自民党の二世三世議員を指していて、『もはや総理のイスにはそういう人たちにしかつけない』というわけです。実際、そうなってしまっている。」

この作品が記録した小川の苦難の活動はさまざまな問いをこちらへと突きつける。いまの選挙制度はこのままでいいのか?わたしたちは選挙できちんと人となりをみて選択しているのだろうか?政治は誰のためにあるのか?メディアは政治の何を報じてきたのか?わたしたちは政治のなにに耳を傾けてきたのか?その問いは、わたしたち自身にその答えを考えさせる。

そういう意味で、検察庁法改正案の見送りやコロナへの対応など、政治への不信が募るいま、この作品が届いたことは大きい。

「まさかこんなタイミングで公開されるとは思っていなかったので、わたしも驚いています。

現政権でなにより問題なのは、嘘がまかり通ってしまうこと。これはほんとうによくない。社会のモラルを崩壊させてしまう。政治とはどうあるべきか、政治家の資質をどう見極めるのか、よく考えなければいけない。そういう時期に偶然ですけど、この作品が公開になった。それで多くの人が興味をもってくれたのかと思っています。裏を返すと、日本の政治への危機感の表れかなとも思います」

こうした劇場公開での大きな反響を得る中で、今回はオンライン特別上映会に踏み切った。ただ、これには正直悩んだという。

「悩みましたし、迷いました。スタッフと何度も議論を重ねました。

やはりひとりの映画人として、映画として作った以上、劇場でみてほしい気持ちがあります。多くのドキュメンタリー映画がそうであるように、この作品も、その瞬間起きることや小川淳也という政治家の言葉や行動を、劇場というひとつの空間で集中してきちんと受け止めて味わってほしい思いが強くある。

いまミニシアターは苦境にありますから、配信をしてしまうことで劇場へ足を運んでくれるお客さんを奪いかねない。そういう懸念もあったので悩みました。

でも最終的にはやってみようと思いました。そう踏み切った理由は、まず、このコロナ禍で、映画館に行きたくてもいけない人がたくさんいる。そういうみなさんに届ける機会を作りたいなと思いました。先日も大阪で舞台挨拶を終わったあとに、40代ぐらいの女性が声をかけてくださったんですけど、こういわれました。『実は両親と一緒に来たかったんですけど、大阪も感染者数が増えて、高齢でもあるのでちょっと今回は遠慮した』と。

それから、劇場公開を経て、配信やテレビの放送、ソフト化と作品はやがてみることはできるんですけど、ありがたいことにこの作品に関しては、『いま観たい』『早く観たい』というは声が続々届いている。わたし自身、確かにいまの政治状況にある中で観てほしい気持ちがある。

それで、配信の結果、さらに多くの人に興味を持ってもらえて、それがのちのち劇場にも波及するかもしれないと前向きに考えて配信上映を決めました」

決めた理由はもう一つある。

「バリアフリー上映をしたかったんですね。視聴覚障がいの方にもみてほしかった。あらゆる方にみていただける特別な機会になるかなと思っています」

今回のスペシャルトーク付きバリアフリー版上映イベントは、ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」および「uP!!!」を使って実施。8月1日(土)の19時からスタートする。

上映後のスペシャルトークには、小川議員と大島監督のほか、田崎史郎氏と鮫島浩氏という安倍政権に対する見解が真逆のふたりのジャーナリストが登場する。

「いくつかテーマを設定して、トークをしました。お題としては『Go Toトラベル』や秋の解散総選挙はあるのかなど。最後に小川議員が総理大臣になれるのかも聞いています。場面によってはかなりガチのトークバトルになったので、期待してください」

最後に大島監督はこう言葉を寄せる。

「団塊の世代を中心とした世代に変わって、いま45歳以下ぐらいの世代の意志が選挙に反映される時代がきたとき、求められる政治家像が違ってくるかもしれない。

その世代というのは、日本の有史以来、はじめて自分の親世代、つまりだいたい30歳以上上の世代よりも経済的に豊かになれない、はじめての世代なんですよね。

そういう世代の人たちが投票行動におけるマスになっていったときに、求められる政治家が違ってくるのではないかと、かすかに期待しています。政治に誠実さや理想、そういうことを求めないだろうかと。

小川さんの支援者は、彼よりも少し年下の40歳ぐらいの弁護士や会社社長みたいな人が多いんですよ。その世代に支持されている。それで彼らがこういうんです。『小川さんは政治家以外ならなにやっても成功したと思うんですけどね』と(笑)。

先のことはわかりませんけど、そういう人望もある彼ですから、今後もしかしたら時代の風が吹くかもしれない。

これまでいろいろとご感想をいただいているのですが、このいまの絶望的な政治状況の中で、かすかに希望をみたという人がけっこう多いです。でも、一方で、やっぱり絶望ではないかという人もいます。小川さんのような人は政治の世界では決して日の目を見ないのではないかと。

まずはみていただいて、いろいろな意見をいただければと思います」

繰り返しになるが、今回の『なぜ君は総理大臣になれないのか』のスペシャルトーク付きバリアフリー版上映イベントは、ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」および「uP!!!」で8月1日(土)の19時スタート。この機会をお見逃しなく!

『なぜ君は総理大臣になれないのか』スペシャルトーク付きバリアフリー版上映会@PLS&uP!!!

■配信スケジュール
8月1日(土)18:00開場
19:00本編上映開始 21:00本編上映終了、スペシャルトーク開始
22:00トーク終了予定
■スペシャルトーク登壇者
小川淳也議員、田崎史郎(政治ジャーナリスト)、鮫島浩(朝日新聞記者)、大島新監督

※本編はバリアフリー版での上映(日本語字幕付き、音声ガイドは「UDCast」対応)
※8月2日(日)24:00までアーカイブでの視聴可能

■配信プラットホーム
PIA LIVE STREAM:
https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/
uP!!!:https://up.auone.jp

■チケット料金1,800円(uP!!!から購入の場合、auスマートパスプレミアム会員は500円 引)
■購入サイト
PIA LIVE STREAM:https://w.pia.jp/t/nazekimi/
uP!!!:https://up.auone.jp/articles/id/80593?ref=os

■チケット販売中
●本配信イベントのチケットは日本国内からのみ購入が可能となります。
●チケット1枚につき視聴いただける端末は1台となります。第3者への譲渡・転売行為は出来ません。
●スマートフォンやデジタルカメラ等による撮影および録音は一切、禁止いたします。
●チケット御購入後は、配信延期・中止以外の理由による払い戻しは一切、いたしません。
●インターネット回線の突発的なトラブルによる配信イベントの一時中断の可能性がある旨、ご了承ください。
●お客様のインターネット環境に伴う閲覧の不具合については責任を負いかねますので、視聴前に必ず動画視聴に適した通信環境をご準備下さい。

※田崎史郎の崎はたつさきが正式表記

取材・文:水上賢治

(C)Netzgen

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