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エンタメ通が伝授!第41回ぴあフィルムフェスティバル特集

吉田伊知郎ー凄すぎる人たち〈諦めない男編〉

全6回

第3回

19/8/24(土)

『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』ウィリアム・フリードキン監督

前回お話頂いた招待作品部門「凄すぎる人たち〈カッコいい女編〉」に続き、連載第3回で語って頂くのは「凄すぎる人たち〈諦めない男編〉」。今回も、毎年 PFFに足繁く通う映画ライター吉田伊知郎さんがPFFディレクターの荒木啓子氏を直撃。国籍も時代背景もテーマも違う作品が揃ったそれぞれの作品の魅力に迫ります。

どうしても大スクリーンで観てほしい
『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』

『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』
(c)MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.

── 〈諦めない男編〉では、今年リバイバル上映されたウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬 オリジナル完全版』が上映されます。

荒木 これはすごく単純な理由で、私が劇場へ観に行った日から小さなスクリーンに変わっておりまして、これは絶対に大きなスクリーンで観ないとダメ~~~~~~~~~~と、その想いで今日を迎えた次第です(笑)。

── 上映前に今回のリバイバル上映の宣伝プロデューサーの方と、キングレコードの方のトークが予定されていますが。

荒木 リバイバルにあたって新たな予告編が作られたのですが、フリードキン監督は今でも細かくチェックなさるそうで、最初に作った予告編はすごく怒られたと(笑)。そのとき宣伝の岡村(尚人)さんたちは目からウロコが落ちて、自分たちがそもそも何をしたかったのか気づかされたと。いい話ですよね。そのお話をしていただこうと思っています。最初にプレゼンした予告編と、劇場にかかった予告編の両方をご覧いただき、フリードキンの衰えない情熱がそこからも伝わるんじゃないかと思っています。

── 『恐怖の報酬』は日本での初公開時は短縮版だったこともあり、正当に評価されていなかったところがあります。オリジナル完全版がDVDスルーではなく劇場公開されたことで、ようやく傑作として認知されましたね。

荒木 公開を決めた人たちは、偉い!!すごい!驚異の傑作だからこそ、どうしても大スクリーンで見せたいと思ったんです。これだけの映画を撮る俳優も監督も、関わった方々すべての体力も執念もすごくて、ほぼ気が狂ってますよね(笑)。

不条理な恐怖を物凄い
映像センスで描いた『変態村』

『変態村』
(c)2004 LA PARTI PRODUCTION, THE FILM, TARANTULA

── 『変態村』は意外なセレクトだと思いましたが。

荒木 これは監督のファブリス・ドゥ・ヴェルツのデビュー作なんです。この人は絶対、優秀な成績で映画学校を卒業していると思うんですよ。だって、ショットが物凄いですから。キマリにキマってる。本当に映画を分かってる人が撮った画ばかりなのに、この内容かよっていう。このアタマのおかしさはぜひ紹介したい(笑)。現代の社会にもつながるような嫁不足の農村で何が起こっているか。『変態村』っていうタイトルが良いかどうかはともかく、悲しい話でもあるんですよ。普通、新人監督のこんな企画通らないですよ。才能のある監督がこういう映画を撮ることが許されるベルギーやヨーロッパの豊かさは素晴らしいと思います。

── 公開時にライズXという渋谷のシネマライズの別館だった小さな映画館で観たんですが、あまり良い画質では観られなかったこともあって、今回の上映は楽しみです。おそらくこの映画を国立映画アーカイブの大きなスクリーンで観る機会は二度とない気がします。

荒木 はい。ひとのやらないことをやるのが、映画祭です(笑)。画の力で言えば、巨匠の風格があるんです。それでいて次に何が起きるか分からない、ある種ホラー映画としても素晴らしいと思います。

音楽と、狂った内容が本当にすばらしい!
『殺しが静かにやって来る』

『殺しが静かにやって来る』
(c)Adelphia / Les Films Corona / Beta Film 1968

── マカロニ・ウエスタンの『殺しが静かにやって来る』も意外な上映作です。

荒木 これはキング・レコードに『恐怖の報酬』をやらせてほしいというお話をしたときに、「そういう企画ならこれもありますよ」と言われまして(笑)。でも、監督のセルジオ・コルブッチは前からずっとやりたい、特集もいいなあと思っていたので大喜びで。『殺しが静かにやって来る』はエンニオ・モリコーネの素晴らしい音楽と、この狂った内容に更に感動です。いつもすごい武器が出てくるけど、何の役にも立たないところもたまらなく良いですね(笑)。

繰り返し上映する意味があると感じた
『東京裁判』4Kデジタルリマスター版

『東京裁判』
(C)講談社2018

── そして、小林正樹監督のドキュメンタリー『東京裁判』。これは今夏、4Kデジタルリマスター版で再公開されましたが、なぜPFFでも上映を?

荒木 再公開の試写案内が来たときから、これは絶対PFFでやろうと決めていたんです。自分が大人になって、そして巨匠小林正樹の作品を知ったあとにみると、しみじみすごかった。そもそも、戦争を起こさないために文化・芸術はあるわけで、こういう戦争をめぐる作品は露骨に繰り返し上映される世の中がいいな、と思っていますから。

── 戦後38年目に公開されたときと、戦後74年目の現在では、この作品の受け取り方も変わりそうですね。

荒木 子供の頃は気づかなかったのですが、映画の中で、これは平和をどれだけ侵害したかという裁判だって連合国軍側は言うんですけど、裁いている連合国軍側の現状を見ると、どの口が言うかみたいな(笑)。でも当時は、世界中が相次ぐ戦争に疲弊しきって二度とこういうことを起こさないと心底思ったはずなのに、今や完全に崩壊しているという。そのことが『東京裁判』を観ることで伝わる。長いけれども今こそ観てほしいですね。特別価格も設定できましたし。

作り手の楽しませたいという思いを
観客の皆さんに感じてほしい!

PFFディレクターの荒木啓子氏

── 「凄すぎる人たち」の上映作を2回に分けて語っていただきましたが、堅い内容から柔らかいものまで、あらゆる映画を肯定的に捉えようとする視点が明瞭に感じますね。

荒木 はい。映画は映画である、です。そしてどんな監督もお客さんを楽しませたいと思っているはずなんです。観客は、リラックスして映画をぜんぶ受け止める。それが映画祭というちょこっと日常から離れた空間では、やりやすいのではと思うのです。

── このところ、東京の名画座も凝ったプログラムが目立つようになり、カナザワ映画祭が池袋の新文芸坐で行われたりするなど、特集上映のプログラムに特色を出すのが以前より大変になってきているようにも思いますが?

荒木 東京にいると、これまで映画祭がやっていたようなことがどんどん劇場で展開されているので、正直言って映画祭と劇場とのボーダーはなくなりつつあります。タイムテーブルをうまく組み合わせると<ひとり映画祭>を毎日展開できる、みたいな。それは素晴らしいことだと思うんです。ただ、自分が観に行く時間がないのは辛い(笑)。でも、映画は観れば観るほどもっと観たくなるはずなので、あらゆるところで映画が観やすくなっていれば、映画を観る人が増えていくんじゃないかと、ものすごく期待していますけどね。PFFでも若い世代に映画を観てもらうために、学生は500円(一部除く)で観られるようにしています。

── 「凄すぎる人たち」は、国籍も時代背景もテーマも違う作品が集まってきているだけに、これらの作品を観ると、映画に対する視点が広がり、あらゆる映画を受け入れることが出来るようになりそうですね。目当ての作品の隣の1本を観るところから、新しい映画体験が始まると思います。

招待作品部門

凄すぎる人たち〈諦めない男編〉

上映スケジュール
9/10(火)19:00~ 『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』
9/13(金)19:00~ 『変態村』
9/19(木)13:30~ 『東京裁判』4Kデジタルリマスター版
9/19(木)19:00~ 『殺しが静かにやって来る』

テラダモケイピクチャーズがついにスクリーンに!

映画に必要なあれこれにお応えします!
PFFスペシャル講座「映画のコツ」

「第41回ぴあフィルムフェスティバル」では、映画のコツを伝えるPFFスペシャル講座「映画のコツ」を実施します。今年は、建築家でプロダクトデザイナーの寺田尚樹が生み出した紙製の1/100 建築用模型「テラダモケイ」が映画になって、PFFでスクリーン上映!そのほか、以下の企画上映を開催します。
https://pff.jp/41st/lineup/eiga-no-kotsu.html

上映スケジュール
9/7(土)13:45~ 
「テラダモケイピクチャーズがついにスクリーンに」 ゲスト:寺田尚樹

9/8(日)17:00~  
「日本のゴダール? 伝説の8ミリ作家、中山太郎傑作選」 ゲスト:松本圭二(フィルム・アーキヴィスト&詩人)

9/15(日)13:30~
「天才・木下惠介は知っている:その3」 ゲスト:原恵一監督、橋口亮輔監督


チケットの詳細はチケットぴあをチェック!

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