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和田彩花の「アートに夢中!」

『ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス』

毎月連載

第63回

今回、和田さんが紹介するのはBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス』。和田さんはポーラ美術館に大切な思い出があるそうで……。

色づかいやタッチなど画家の個性が見えてくる

この展覧会は、箱根にあるポーラ美術館が持つ西洋美術のコレクションのなかから、特に19世紀から20世紀にかけてフランスで活躍した画家28名の作品を集めた展覧会です。これがもう、最初から最後まで全部素晴らしくて! 真剣に見ていたらあっという間に90分くらい経っていました。

展示の流れは印象派が生まれてから、ポスト印象派、フォービスム、エコール・ド・パリと時系列ごとに紹介していくものです。その流れがとてもわかりやすくて、たのしく鑑賞しました。特にうれしかったのは有名な画家の上質な作品を複数枚陳列していたこと。同じ作家の作品を複数見ていくうちに、筆の使い方など各作品から共通点を見つけることができて、そこをきっかけにして、画家の個性が見えてくるんですよ。

ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》1891年
Photo:Yuya Furukawa

たとえばルノワール。《レースの帽子の少女》を見てみるとよくわかるのですが、描く線が長くてなめらかなんです。髪の毛なども1本ずつ長く軽やかに描いている。会場で見比べてみると、同時代のモネやピサロは、短めのストロークで細かく刻んで描いていることがわかるかと思います。

あと、この作品は少女が手首に身につけている腕輪がかわいいです。会場でこの作品を見たとき、腕輪が光り輝いているように見えました。ルノワールは女性が身につける細かいアクセサリーなどもファッションに気を使っていることも、作品を複数見ていくうちにわかってきましたね。

ピエール・ボナール《ミモザのある階段》1946年頃

このごろボナールも気になっていて、この展覧会では《ミモザのある階段》という作品が良かったです。ボナールは、ナビ派と呼ばれているグループに分類されている画家です。神秘的な題材で装飾性に富んでいるのが特徴ですが、この作品に関しては、色使いが鮮やかで印象主義的な感じもします。また、階段が続いていて、その奥にミモザが咲いているなど、具体的な描写なんですよね。でも、対象を忠実に描いたというわけではなく、ボナール独自の目線というか感覚で彩られている。すごく美しいなと思います。

アンリ・マティス《襟巻の女》1936年 Photo:Yuya Furukawa

マティスの《襟巻の女》も印象に残りました。マティスの人物画は、人物を描いているけれど、色彩や構図がメインで人物の印象がそこまで強くないものもあるんですが、この作品は女性の個性が際立っています。目とか眉毛がきりっとしていて、肩幅もしっかりしていて力強い印象を受けます。直線がきわだつ背景やスカートと、スカーフの曲線の対比が素敵です。自立したしっかりした女性像ですね。

第1章「都市と自然」展示風景 Photo:Yuya Furukawa

そして、テーマ構成も面白かったです。全4章仕立てだったのですが、とくに第1章「都市と自然」は興味深かった。モネやピサロなど、印象派の画家たちは、鉄道網が発達しち、活動範囲が拡がったため郊外で写生することが多かったんですよ。けれど、私が好きなマネは、都市の暮らしや風俗を描くことが多かった。印象派の画家たちより少しだけ前に生まれただけなのに、マネと印象派の画家たちとでは、取り上げる題材や、ものの見方が異なっているんだなと感じました。

デュフィの《パリ》とポーラ美術館の思い出

ラウル・デュフィ《パリ》 1937年 Photo:Yuya Furukawa

そして、デュフィの《パリ》は、いろいろなことを思い出させてくれました。実は、ポーラ美術館は、ファンクラブ主催のバスツアーでも訪れた、とても思い出深い場所なんです。この作品も、バスツアーでポーラ美術館に行ったときに見た作品のひとつです。当時、箱根の展示室で「この作品いいよね」ってファンの皆さんと語り合ったんですよ。京都の町を描いた「洛中洛外図」のように、パリ全体を空から見ている独特の視点が好きです。ポーラ美術館といえば、デュフィのこの作品だよなって、いつも思います。

ポーラ美術館にはほかにもいろいろな思い出があります。主にバスツアーでのファンのみなさんとの思い出なんですが、ピカソの絵の前でこの絵は何を描いたものだろうか? と、参加者のみなさんと感想を語り合ったりしました。フランスの風景画の前では、現地を訪れたことがある方が、絵の描かれている場所が実際にはこんな雰囲気だって教えてくれたり。一人で作品を見る以上に勉強になるし、思い出に残ることが多いんですね。

そんな箱根のポーラ美術館にも先日、行ってきたんですよ。SNSを見ていたら、偶然ポーラ美術館の展示の様子が流れてきたんです。Bunkamuraでポーラ美術館展を見る前に、これは箱根の方にも行かなくちゃって思って。現代美術のアーティスト、ロニ・ホーンの展覧会を見てきたのですが、これが素晴らしくよかったです。作品自体はシンプルで、語らずに静かにそこにあるものなんですが、周囲に見えるものや自然と関わり合っていて、それがすごくよいんです。屋外展示もよかったですね。森の中に半透明なガラスの作品があるんですけれども、それが太陽の光でとても神秘的な雰囲気でした。

ロニ・ホーン《鳥葬(箱根、日本)》2017-2018年 ポーラ美術館
Photo: Koroda Takeru © Roni Horn

Bunkamuraザ・ミュージアムで、「ポーラ美術館のコレクションがすごい、いったいどんな美術館なんだろう?」って思った方は、ぜひ箱根のポーラ美術館にも足を運んでほしいと思います。

※『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』は、9月18日(土) ~ 2022年3月30日(水)、箱根のポーラ美術館にて開催中。

https://www.polamuseum.or.jp/sp/roni-horn/

構成・文:浦島茂世 撮影(和田彩花)源賀津己

開催情報

『ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス』
2021年9月18日(土) ~ 11月23日(火・祝)
Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_pola/

ポーラ美術館のコレクションから、モネ、ルノワール、マティス、シャガールなど、印象派からエコール・ド・パリの時代に至るまで、フランスで活躍した人気画家の絵画74点を厳選。「時代を映す、輝く女性像」、「画家たちが愛したパリ」、「フランス各地への旅」という3つのテーマに基づき、時系列に沿って4章仕立てで紹介する。

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー! プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー! プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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