Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

続きを読む

【おとな向け映画ガイド】

コロナなんかに負けてたまるか!『茜色に焼かれる』にこめた、石井裕也監督の力強いメッセージ。

ぴあ編集部 坂口英明
21/5/9(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(5/14〜15)に公開される映画は22本(5/7時点)。緊急事態宣言延長の影響がどのような形になるか、不確定なところがあります。ご鑑賞の際は、作品や映画館の公式サイトで上映時間などをご確認いただいたうえでお楽しみください。今回は、次週公開予定の作品から、いまだからこそおすすめしたい1本をご紹介します。

母ちゃんは負けない!
『茜色に焼かれる』



コロナ禍、この息苦しい世界にまっすぐ向き合った映画が誕生した! そう思いました。出口が見えない、やりきれない日々のなかで、もがきながら暮らしている現代人に、それでも生きていこうよ、と声をかけてくれる、そんな力のこもった映画です。

監督は石井裕也。PFFアワードグランプリからキャリアを始め、『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で、主だった映画賞を総なめにし、毎年コンスタントに野心作を発表しています。ことし37歳の石井監督。昨年の夏、「明らかに世界全体がボロボロになっているのに、そうでないフリをしていることに疲れ果て、もうしばらく映画はいいやと思っていた。そんな時、突然、どうしても撮りたい映画を思いついた」といいます。それが、母親についての物語、でした。

映画の主人公は、母ちゃんです。尾野真千子が演じる母ちゃんは、13歳になる息子の純平(和田庵)とふたりで暮らしています。ロック・ミュージシャンの夫(オダギリジョー)は7年前に理不尽な交通事故で他界。その賠償金をある理由で受け取らず、自力でカフェを営んでいたところにコロナが直撃。いま、昼はスーパー内の花屋さんでバイト、夜はこっそりピンクサロンで働いています。心が萎えてしまうようなこと、納得のできないことが、次々とふたりに襲いかかります。昔、演劇をやっていたことがあるという母ちゃんは、まるで不屈の母親役を演じているように、気丈です。その愛に応える息子も、ちょっとひ弱だけど、向かい風に立ち向かっていきます。

尾野真千子が圧倒的な力強さです。今年公開の『ヤクザと家族』でも悲劇の象徴のような女性を演じ、強く印象に残っています。2018年の『素敵なダイナマイトスキャンダル』では主人公の母、ダイナマイト自殺をとげる過激な役でした。今回も強い母ちゃんです。母は負けない。勇気りんりん茜色です。

彼女と同じ風俗に勤めるケイという25歳の女性の存在にも心打たれました。子どものころから父親の性暴力に耐え、持病の糖尿病でインスリンを欠かせない。そんなケイに押し寄せるさらなる試練。「私、くやしー」という叫びのような透明感のある声が胸をつきます。演じた片山友希の演技とともに、心にとめたい存在でした。

「これまでは恥ずかしくて避けてきましたが、今回は堂々と愛と希望をテーマにして映画を作りました」、石井裕也監督のメッセージ、ビンビン伝わります!

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)
「……生活苦から闇に落ちそうになりながらも、かろうじて淡い光りの中にとどまり続ける。タイトルの『茜色に焼かれる』はまさに、夜の闇に閉ざされる直前の夕焼けにかろうじて踏みとどまろうとする、そういう人びとの物語であることを象徴している」
https://bit.ly/3ur1Qgu

平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)
「……何より素晴らしいのは、尾野真千子だ。苦境に立たされても、決して生き方を曲げない肝っ玉母ちゃんぶりにしびれた。劇中、何度も出てくる「まぁ頑張りましょう」という言葉もいい。……」
https://bit.ly/3xUaLJh

伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……辛い話ほど人にできない、自分の話なんて面白くもない、だから笑って取り繕って、そうすると一気に重圧がかかるのに、それでも人に負担をかけない存在を選んでいく主人公……」
https://bit.ly/3tndUxR

アプリで読む