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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

江口くんの狂ったDNAを尊重する社会に

毎週連載

第117回

前回、江口くんの話をしたけど、でも僕は別に江口くんのことをバカにしてるわけではないんだ。そういうブッ飛んだ江口くんが好きだし、そのままでいてほしいなっていう。

昔の日本はさ、日本独特の変わった文化とか風習があったでしょ。それこそ秋田のなまはげとか、宮古島のパーントゥっていう泥だらけの神様が子供に襲いかかって、悪霊払いをするとかね。あれは子供にとったら相当恐ろしいものだと思う。僕が育った山形の山辺町にも変わった儀式があって、ある時期になると牛のお化けみたいな赤べこっていう唐獅子が、1件1件の家を回ってきて、子供の頭をクワッと食べるっていう風習があった。それをやられる子供は全員ウワーッと泣いて、でも親は「良かった、良かった。これで悪霊が払える」って喜ぶっていう。

もともと赤べこって福島のものでしょ。そしてなまはげは秋田のもの。山形は福島と秋田の間にあるからさ、たぶんそういった風習に影響を受けて、山形の山辺町ではこういう赤べこの儀式になったんだと思うけど、まぁ大人になった今考えると、かなり変だよね(笑)。

あと、これは有名だけど、長野の諏訪大社の御柱祭とかね。「谷にお供えする!」ってことで大木に何人も乗っかって、崖から谷を目指してかけ落ちるっていう。6年に一度のお祭りだけど、これまでに死者も出てるし毎回メチャクチャ怪我人が出てる。「なんでそんなことするの?」って思うけど、これも古来から伝わる風習だからね。

またさ、川崎の金山神社のかなまら祭もすごいよね。チンポコを神と崇めて、巨大なチンポコが街を練り歩くっていう。家族で見たら相当気まずいだろうね。

でもさ、こういう日本独特の文化とか風習は、どれだけ変だろうが、「SDGs的にナシ」とか言われてもさ、残していったほうが良いと僕は思うんだ。みんなグローバルのほうにばかり気持ちが向いてるかもしれないけど、身近にある変なことって面白いし、実は人の気持ちを豊かにしてくれているかもしれないんだから。グローバルなものに反発するって意味ではなくて、そういう考えもあって当然だし良いと思う。でも、だからこそ、日本古来から伝わる変わった行事とかも尊重してほしいって思うんだよ。

元を辿るとさ、そもそもペリーが来て明治が始まった頃から、日本古来から伝わる面白さってどんどん排除されていってるわけ。「排仏棄釈(はいぶつきしゃく)」で「お寺を壊せ」「神社と明確に分けろ」みたいなことで。きっとペリーはもちろん、外国人から見た昔の日本って相当異様に見えたんだと思う。他の国は地続きで文化も貿易もなんとなく系譜が想像できるけど、日本って島国じゃん。その島国の中でどんなことをしているのか、海外のスタンダードから見ると気持ち悪くてしょうがないものだったんじゃないかと思う。

そうだとすると、日本の文化や風習を異様に思う人が世界中にいるのもわからなくはない。でもさ、これは日本人が楽しんでやってることだからね。外国の人たちには迷惑をかけませんから、どうか残してくれないかっていう。そういう思いが僕にはあるんです。

それで、最初の江口くんの話に戻るんだけどね。前回喋ったように江口くんは前世から脈々と続く狂ったDNAを持っているわけだから、どれだけズレていたり「バカだなぁ」と思っても僕はそんな江口くんを尊重したいし「そのままでいてほしい」と思ってるの。

だって、江口くんが妙にそつなくなんでもこなせるようになって、適度に賢くなって、スマートな人になっちゃったら面白くもなんともないでしょ。だからね、江口くんは江口くんならではのモラルを、死ぬまで貫き通してほしいと思うし、江口くんみたいに狂ってる人も尊重してあげる社会であってほしいんだ、マジの話。

江口くんを尊重できる社会になってほしいと願っています。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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