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大原櫻子、BiS、NakamuraEmi、リーガルリリー……女性アーティストの最新作から読み解くメッセージ

リアルサウンド

20/2/4(火) 7:00

 現在進行形の洋楽テイストを取り入れた大原櫻子のニューアルバム、昨年“第3期”に突入し、アイドルシーン、ロックシーンの両方で激烈な存在感を発揮しているBiS。際立った才能やスタイルを持った女性アーティストの4作品から、そこに込められたメッセージを読み解く。

(関連:大原櫻子「Amazing!(Teaser)」はこちら

●大原櫻子『Passion』
 ギターロックとEDMが融合した元気いっぱいのアッパーチューン「Amazing!」、オルタナR&B、エレクトロを取り入れたトラックと自由なラインを描くメロディが印象的な「Special Lovers」、水野良樹(いきものがかり)の提供による王道のJ-POPバラード「きらきらきら」、一青窈が作詞を担当し、大切な人との別れを予感しながら、“つながっていたい”という思いを綴った「電話出て」。1年7カ月ぶりとなるオリジナルアルバム『Passion』で大原櫻子は、彼女自身の音楽的モードを反映させながら、シンガーとしてのポテンシャルをより奔放に発揮してみせた。ポジティブな手触りの楽曲だけはなく、憂いや切なさを描き出す表現力もアップ。全編から感じられる、歌うことへの情熱こそが本作の魅力であり、最大のメッセージだろう。

●BiS『LOOKiE』
 2019年8月にデビューした第3期BiSのメジャー2ndアルバム『LOOKiE』サウンドの基本は90年代のメロコア。鋭い疾走感とともに突き進むビート、激しく歪みまくったギターサウンドを全身で受け止めながら4人のメンバーは、アイドルシーンで活動を続けることへのキツさ、儚さ、素晴らしさをどこまでもエモーショナルに叩きつけている。ハードコアパンクとスカコアを融合させ、〈逃れられない/要するにだるいんだ〉と叫ぶ「TRAP」、暴れまわるピアノ、踊り倒すメロディ、“ガンガンやれ!”と本能丸出しの歌詞がぶつかり合う「KISS MY ASS」など新たなライブアンセムもたっぷり。ここまで徹底的に振り切りながら、聴き応えがめちゃくちゃポップであることにも驚かされる。

●NakamuraEmi『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』
 生々しい感情を歌に昇華し、信頼できる仲間と一緒にパッケージし、求めてくれる(または拒絶される)リスナーに届けるという音楽活動の在り方をそのまま楽曲にした「BEST」、自己嫌悪に陥った状態で東京タワーを観に行き、そこで感じたことを刻み込んだ「東京タワー」。最初の2曲でいきなりガツンと食らい、思い切り心を揺さぶられるベストアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』。女性の気持ちをリアルに歌うシンガーソングライターとして強烈な支持を得ているNakamuraEmiだが、彼女の歌に込められた感情やメッセージはジェンダーを超え、普遍的なパワーを聴く者に与えてくれる。それを担保しているのは、言葉をリズムに乗せ、豊かな音楽として届けるセンスと技術と気合い。歌詞の強さに注目が集まるが、彼女は極めて優れたシンガーであり、音楽家なのだと思う。

●リーガルリリー『bedtime story』
 1990年代のオルタナ、シューゲイザー、ブリットポップなどをルーツに持つ、儚さと鋭さを併せ持った音楽性によって徐々に評価を高めている3ピースバンド、リーガルリリーの1stフルアルバム『bedtime story』。映画『惡の華』の主題歌として制作されたシングル「ハナヒカリ」以外はすべて新曲となる本作は、これまでの集大成というよりも、今現在の表現が刻み込まれた作品となった。そのことを象徴しているのが、「1997」。メンバーのたかはしほのか(Vo/Gt/)、ゆきやま(Dr)の生まれ年を題名にしたこの曲は、〈私は私の世界の実験台 唯一許された人〉というフレーズなど、彼女たちの意思が強く刻まれている。既存の(日本の)バンドシーンに寄り添うのではなく、自分たちが出したい音、放ちたい言葉を追求し続ける姿勢は、きわめてロック的だ。(森朋之)

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