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ラグビーW杯にボールを繋いだ『ノーサイド・ゲーム』 廣瀬俊朗の選手時代を彷彿とさせた名演

リアルサウンド

19/10/5(土) 6:10

 9月に幕を下ろした池井戸潤原作のTBS日曜劇場のドラマ『ノーサイド・ゲーム』。 演出は元ラガーマンの福澤克雄、劇中のラグビーチーム「アストロズ」のメンバーも全員が経験者であり、ラグビーの試合のリアリティを追求して作られた本作は感動を呼んだ。そしてドラマの放送と入れ替わるようにして、ラグビーワールドカップ2019日本大会の幕が上がり、本日、日本とサモア戦が待ち構えている。

 各試合の中継番組視聴率は好調で、日本開催という身近さはもちろんだが、ドラマ・原作の『ノーサイド・ゲーム』からの影響も大きいだろう。ドラマで印象を残した名俳優として浮かぶのは、「アストロズ」のリーダー浜畑譲役を演じた廣瀬俊朗だ。廣瀬は、現在は選手を引退し、コーチや大会のアンバサダーなどを通し、ラグビーを普及する活動を行っている。初回登場時から、演技経験がないながらも廣瀬の表情は印象的で、最終回でのキーマンとしての活躍を見た視聴者からは大興奮の声が届いていた。

【写真】出演したラグビー選手たち

 スポーツライターの向風見也氏に、ラグビー界隈では本作がどのような盛り上がりを見せていたのか、話を聞いた。

「もともとオーディションの段階で選手が出演するという噂はあったみたいですが、実際に演技をしている姿をテレビで見たら、ファンの方も驚いたと思います。関係者の方から、ラグビーを役者に教えるより、ラグビー経験者に芝居を付けた方が、作りたい画を撮るためへのゴールが早いと聞きました。僕は演技のことはそれほど詳しくないですが、廣瀬選手は確かに回を重ねるに連れて出番が増えていったので、現場でもかなりの存在感があったんだろうと思います」

 実際、浜畑のエピソードを廣瀬自身の選手時代と重ね合わせて見ている視聴者の声も多かった。向氏は廣瀬の日本代表時代をこう振り返る。

「ラグビーワールドカップ2015で、廣瀬選手も日本代表の31名の登録メンバーに入っていましたが、31人中2人は試合の出番がなく、廣瀬選手はその1人でした。しかし、南アフリカ代表との初戦に向けて、国内リーグの選手たちから応援メッセージを集めてみんなに見せるなど、グラウンド外でチームを一つにするような動きをされていた方です。大会期間中もロッカールームやグランド周りの掃除を率先してやったり、ゲームに出ない人の中で規範的な立場にいて、チームに不満因子が生まれにくい環境を作っていた。W杯で最高成績を残すことに貢献した重要な1人でした」

 『ノーサイド・ゲーム』ではエースとしてチームを引っ張った浜畑だが、廣瀬は所属していた東芝と日本代表チーム(2012、13年)でキャプテンを務めている。向氏は当時の廣瀬の姿を「チームに影響を与えるリーダーでした」と語る。

「5年間ほど日本代表から離れていた時に、2012年に新しくヘッドコーチになったエディー・ジョーンズさんが、廣瀬選手を引き上げました。ジョーンズ監督はそれまで国内リーグの指導をしており、ライバルチームのキャプテンだった廣瀬さんのキャプテンシーを好意的に見て、指名したんです。日本代表キャプテンの時には、色んなチームから様々な国の出身の選手が集まってくる中で、チームが一つになるために取り組んでいました。例えば、試合の前日にみんなで輪になってスパイクを磨く時間を作ったり、自分以外にリーダーを決めてグラウンド外の募金活動を始めたり知恵を絞って率先して自分から動くキャプテンでした。

 廣瀬選手は、体はそんなに大きいほうではないですが、ぶつかったら強く簡単に倒れない方でした。グラウンドに立つ1人の選手でありながらグラウンド全体を俯瞰して見ているような視点を持ってプレーをしていて、ほかの14人が心地よくプレーできるためのポジショニングと声かけを徹底してやられていた選手でした」

 『ノーサイド・ゲーム』はドラマファンにラグビーの魅力を伝えたドラマでもあった。では、本作をラグビーファンが見るとどうだったのか? 向氏に、本作についての感想を聞いた。

「コンタクト(アタック、タックル)のシーンなどを本物の選手がやっているから、やはりリアリティがありましたし、迫力を感じましたね。本物仕様のラグビーのドラマは、『スクール☆ウォーズ』(TBS系、1984年~)以来ほとんどなかったと思うので、日曜劇場という大きな枠で3カ月に渡って放送されたのはラグビーを知ったり楽しむきっかけとして、すごく効果的だったと思います。この作品でラグビーを知った人は増えたと思うので、僕も含めて感謝している人は多いと思います」

 ドラマの放送は終わってしまったが、ラグビーワールドカップ2019日本大会では、スタジアムという大きな舞台で、選手たちによるリアルな物語が繰り広げられている。『ノーサイド・ゲーム』は日本ラグビーを盛り上げる要因となったスポーツドラマの一作として、記録に残る作品になったに違いない。

(大和田茉椰)

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