峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
人を平等に見ることは、冷酷でもある
毎週連載
第95回
先週みたいな話をするとさ、「峯田さんは優しいですね」とか言われるんだけど、それも全然違うのよ。「優しい」とか「優しくない」とかじゃないし、僕自身が別に優しい人になりたくて言ってることでもないんだよ。
ただ、僕は、人とできるだけ平等に接していたいっていうだけなんです。実は「人を平等に見る」っていうことは、ときにすごく冷酷なこともあるよ。
でも、その冷酷さよりも不平等とか不公平みたいなもののほうが絶対イヤだから、一部の人たちだけで盛り上がるってことが、どうもダメなんです。
人を平等に見るってことは、例えば全員で丸裸になったとき体が凹んでる奴、なんかいびつになってる奴とか全部さらけ出させるってことでもあるんです。でもさ、そこで「あなたは凹んでるから、直していきましょう」「もっとみんなで協力して丸くなるように一緒にがんばっていきましょう」「これが優しさです」みたいに言われると、もうこれも気持ち悪いです。余計なお世話だって言いたくなるよね。
僕が10代の頃にドハマリしたパンクロックは、「そのままでいいんだ」「自分は自分のままでいい」っていうメッセージだと思った。つまり、「周りがこうしてるから、合わせないといけない」みたいなものとは丸っ切り反対のことなんです。
みんな自分の考えで、それぞれの思いを持って行動をする。それに対して僕は批判もないし、100%そういう人を尊重する人間でいたいと思う。でもさ、そこで「やらない」っていう選択をした人のことも同時に尊重してほしいんですよ。
誰かが声に出して何かをすることってすごくわかりやすいけど、でも、もしかしたら黙ってる奴のほうが実は寄付したりボランティアをしていたり、貢献している場合もあるかもしれない。
それなのに、なんか「言わないと負け」「言わないと認めてもらえない」みたいな今の風潮が僕はちょっと苦手なんです。たぶん欧米の慣習がグローバリゼーションで入ってきちゃったからだと思うけど、日本人なら慎ましく謙虚にしておくことが美徳だし、品があっていいなと思うんだけど、違いますかね。「俺はこんだけやった」「俺はこんなに苦労してる」みたいにみんなに言いふらす奴より、黙ってただ黙々とやってる人のほうが僕は惹かれるんだけどなぁ。
あとね、まず自分にとってはロックが神様だし、さっき言ったみたいに「自分は自分のままでいい」と思っています。それは自由意志だから、それを誰かに押し付けるつもりもないんです。
だから、例えば僕が何かの宗教にハマることがあったとしても、これは絶対に人に言わないと思う。それを言ったら、もしかしたら銀杏BOYZのお客さんの何人かも入っちゃうかもしれないなって思うからね。そうやって誰かの意志をコントロールするってことが、僕は絶対にイヤなんです。
構成・文:松田義人(deco)
プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。