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のっちはゲームがしたい! 第7回 モルガナにドッキリ! アトラスで「ペルソナ」のビジュアルとサウンドの秘密を聞いてきました

ナタリー

21/5/20(木) 19:00

左からモルガナ、のっちさん。

ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回は「ペルソナ」シリーズや「真・女神転生」シリーズなどで知られる株式会社アトラスを訪問し、キャラクターデザイナーの副島成記さん、サウンドクリエイターの目黒将司さんの仕事場を見学させてもらいました。

さらに2ページ目以降では、のっちさんがこのお二人と対談をして「ペルソナ5」の話題を中心にいろいろなお話を聞いています。Twitterで募集した副島さんと目黒さんへの質問も、皆さんに代わってのっちさんが本人たちに聞いてきましたので、最後までお見逃しなく。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 文 / 橋本尚平(取材後記は除く) スチール撮影 / 上山陽介 ヘアメイク / 大須賀昌子 題字 / のっち

目次

ドッキリ大成功!

当連載の第5回と第6回で訪問したセガのグループ会社であり、同じビルの上層階にオフィスを構えるアトラス。そのエントランスには現在、「ペルソナ5」に登場するキャラクター・モルガナの大きなぬいぐるみと、「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズでおなじみのデカラビアが飾られており、来客をお出迎えしています。

モルガナが大好きなのっちさんは「かわいい!」と喜びながら、さっそく隣で記念撮影。うれしそうにしつつ、この時点で何か言い知れない違和感を覚えていたというのっちさんでしたが……。

突然モルガナが動き出してビックリ!

思いがけない展開にのっちさんは「なんか動きそうだなって思ったの!」と爆笑しながら、満面の笑みでモルガナにハグ。「めっちゃかわいい! 大好き!」と大喜びしていました。ドッキリ大成功!

 

副島さんと目黒さんの仕事場へ

そしてのっちさんは、そのままモルガナに社内を案内してもらうことに。まずは「ペルソナ」シリーズを手がける第二プロダクションをはじめとする開発ブースにお邪魔しました。

オフィスに入ってすぐに目に入ったのは、モルガナのイラストがラッピングされたオリジナルデザインの自動販売機。このイラストが自販機だけのために描き下ろされたものだと聞いたのっちさんは「うわ! マジすか! この顔めっちゃかわいい!」「足ちっちゃくてかわいい!」と、もう「かわいい」という言葉しか発せなくなってしまいました。

自販機のすぐそばの壁には、ゲームをテストプレイするためのモニターが掛けられていました。そのモニターの前にある、モルガナのぬいぐるみがたくさん置かれたソファに腰をかけ、のっちさんは「このスペースいいなあ」とリラックス。

奥に進むと、これまでに制作された「ペルソナ」シリーズのグッズや、実際に使われた台本、出演声優の方々のサインなどが棚いっぱいに飾られています。

ズラリと並んだ何冊もの台本を見て、のっちさんは「特大ですね!」と驚きました。やはり「ペルソナ」シリーズはセリフが多いため、ほかのゲームと比べても台本はかなりのボリュームがあるようです。

そのまま進むと突き当りには、本やフィギュアなどが置かれた広い一角が。「ここは何をするスペースですか?」と言いながらのっちさんが足を踏み入れると、そこにはキャラクターデザイナーの副島成記さんがいらっしゃいました。

ここが副島さんの作業スペースだと聞いたのっちさんは「ええー! むっちゃ広い!」とビックリ。コロナ禍で自宅作業をすることも増えたそうですが、副島さんはいつもだいたいここで仕事をしているそうです。

「あっ! Perfumeの衣装本が置いてある!」と気付いたのっちさん。副島さんによるとこの「Perfume Costume Book 2005-2020」という本は、この日にのっちさんが来るから飾っておいたというわけではなく、キャラクターの衣装をデザインするうえでの資料として実際に参考にしているそうです。

デスク周りに置かれたイラスト用の資料や、飾られた私物フィギュアなどを眺めながら「今、めっちゃワクワクしてます」とのっちさんは心を弾ませます。

例えばこの写真の手前にあるドラゴンのフィギュアはファンタジーものを作るときに参考にしていたそうで、あらゆるものが副島さんのアイデアの源泉になっているようです。

続いてこちらはサウンドクリエイターの作業ブース。クリエイター1人につき1部屋ずつ個室が割り当てられていて、一番奥が目黒将司さんの部屋になっています。

ボーカル録りだけは外部のスタジオを使用していますが、それ以外は環境音の収録なども含めてほぼすべてのレコーディングをこれらの部屋の中で行っているそう。今まで訪れたゲーム会社のサウンドスタジオとは違った、個室のドアが並ぶ様子を見たのっちさんは「この光景はほかではあんまり見ないですね。カラオケ屋さんみたい」と話していました。

ノックして目黒さんの部屋のドアを開けた瞬間、のっちさんは「わ! お部屋だ!」とビックリ。コーヒーマシンなどが置かれていて、音楽スタジオというよりも一人暮らしの部屋のような生活感が漂っています。

「すごい。会社の中にこんなスペースがあるんだ。さっきまで見てたところと全然違って、人のおうちに遊びに来た感じ」と、のっちさんは興味津々。目黒さんも副島さんと同じく、コロナ禍になってからは自宅作業が増えたものの、以前までは1日ここで作業をしていたそうです。ちなみに各部屋の雰囲気はクリエイターそれぞれのカラーが出ているそうで、目黒さんは「机の置き方からしてみんな全然違いますね」と、ほかの部屋についても説明してくれました。

ラックに置かれたモニターにはPlayStation 4がつながっていて、目黒さんはこれで制作中のゲームをチェックしながら少しずつ曲を手直ししています。「サウンドクリエイターといっても、ただ好きなように音楽を作ってるわけじゃなくて、やっぱりやっていることはゲーム開発なんですね」と、のっちさんは目黒さんの仕事ぶりを聞いて感服していました。

モルガナにアテンドしてもらいながら、「ペルソナ」シリーズのキーマンである副島さんと目黒さんの仕事場を見学したのっちさん。次のページからはこのお二人にいろいろなお話を聞かせてもらいます。

画面がまぶしいって、開発スタッフからよく言われます

のっち 今日お二人の仕事場を見させていただいて、「あ、会社の中の人なんだな」って思ったんです。

目黒将司 会社員っぽいかもしれないですね、確かに。

のっち 意外でした。お二人の名前は「ペルソナ」関連で何度も目にしていたけど、社員というよりもアーティストという印象だったので、けっこう驚きました。

副島成記 普段アーティスト扱いされることは1mmもないですね(笑)。

のっち 私が「ペルソナ」シリーズをプレイしたのは「P5(ペルソナ5)」からで、それまで「メガテン(真・女神転生)」シリーズもやったことがなかったんです。でも私は声優さんが好きで、宮野真守さんや水樹奈々さんとかが声を演じられるという話を聞いて気になって。あと、ゲームやアニメが好きな周りの人たちが「P5」の発売をすっごい楽しみにしていて、「のっちも絶対やったほうがいいよ!」って薦められたんです。実際にやってみて面白いなと思ったのが、敵のボスに対して100%の嫌悪感を持って挑めるところ。最近のゲームは悪役にも“そうなってしまった理由”が設定されていて、それをわかったうえでの葛藤がありながらプレイすることが多いんですけど、ここまで本当の嫌悪感を持って敵と戦うゲームってあんまりないなと思って(笑)。プレイしていて正義感を持てるゲームで、すごかったです。

副島 確かに「P5」については正義感が強いキャラクター像だったので、敵をどれだけ腹立たしく感じるかを考えてましたね。「プレイヤーが『許せない!』って思ってくれないと困るね」みたいな話をしながら。のっちさんのように、声優さんを入口に「ペルソナ」に興味を持ってくれる方々が「P4」「P5」から増えてるのは実感としてあります。

目黒 オカルト臭がだんだん薄れていってるからかな?

副島 うん、昔は今よりもマニアックで重苦しい雰囲気だった。

のっち そうだったんだ!「P5」は楽しい学園生活!って感じで、みんなで海水浴に行ったりしたけど。

目黒 以前まではもっとドロドロしたゲームでしたね。高校生が大人になる“学園ジュブナイル”というテーマは変わらないんだけど、「1」はコックリさんをするところから物語が始まるし。

副島 「P4」から明るくなるんですよね。

目黒 でも「P4」も猟奇殺人の話ですけどね(笑)。

のっち ははは(笑)。

副島 時代によって求められているものが違うんだと思います。「1」や「2」が発売された1990年代後半は、社会的にそういう空気があったので。

のっち 作品ごとのアプローチは意識してどんどん変えているんですか?

副島 ゲームの舞台設定とかを考えてたのは主にプロデューサーを務めた橋野(桂)なんですが、そうですね。

目黒 音楽に関して言えば「P3」から曲調をおしゃれにしたんですけど、「P4」は田舎が舞台で明るい雰囲気だったので、ポップロックっぽい曲にしました。ゲーム中のキャラクターも頭が大きめなデフォルメされたデザインだったので、音楽も少しデフォルメした感じで。

副島 「P4」ではチビキャラが動いてたんですよね。今はリアル頭身ですけど。

目黒 だから「P4」は“デフォルメしたおしゃれ”に仕上げたんですけど、「P5」はキャラクターの見た目にリアリティがあるから、こっちは“ちゃんとしたおしゃれ”を目指したんですよ。

副島 キャラクターデザインに関しては、「P3」が暗くてシリアスだったので「P4」はちょっと雰囲気を変えて楽しい感じにしました。そこから「P5」が出るまで8年も経ってしまったので、あんまりのんびりした雰囲気を出すのもなと思い、リブートして勢いを付けるために、少し押しの強いイメージのイラストに仕上げました。「ペルソナ」というタイトルの通り、キャラクターにはそれぞれ表の顔と裏の顔があるので、必ず表向きの絵と裏向きの絵を描いているんです。あまりデフォルメしすぎると一辺倒なものになってしまうので、表裏をちゃんと書き分けられるように描こうというのは心がけてますね。

のっち 「P3」だったら青、「P4」は黄色、「P5」は赤、みたいにテーマカラーがあるじゃないですか。このテーマカラーを決めてるのはどのセクションですか? 副島さんですか?

副島 自分ですね。「P3」は結果的にどのイラストも青っぽくなっただけなんです。でもそれが思いのほか皆さんの記憶に残ったようで「青いゲーム」と言ってくれたので、じゃあ「P4」は楽しい感じだから明るい黄色にしてみようかなと(笑)。

のっち わ! そうなんだ!(笑)

副島 牧歌的な田舎が舞台だから「幸福の黄色いハンカチ」みたいなイメージもありつつ。あと、殺人事件の現場に張られる非常線も黄色ですし。そしたら「ペルソナ」には毎回イメージカラーがあると思われてしまって(笑)、「次は何色なの?」って聞かれるようになっちゃったんですよね。

のっち 「じゃあ今回は赤でいきます!」ってことになったんですね。

副島 もう赤しか残ってなかったので(笑)。情熱的な感じを出したいというのもあったから、自然と赤になりました。でも赤とか黄色って強い色なので、操作中の画面に使うとまぶしいから厳しいって、開発スタッフからよく言われます。

のっち そんなふうに言われるんですか!

副島 アトラスはプレイヤビリティを優先してるから、見た目優先というわけにもいかないので。でも「そこをなんとか……!」ってお願いしてます(笑)。

のっち キャラクターデザインをされるときは「この子はこういう性格で、こんな裏の顔があって」みたいな設定が先に決まっているんですか?

副島 例えば「P5」であれば「高校生たちが怪盗団になって“腐った大人”に反逆する話」ということで、まず3、4人分のキャラクターを「活躍するのはだいたいこんな連中」って感じで絵にするんですよ。で、そのイメージをもとに坂本竜司とか高巻杏のようなキャラクターを描き始めます。細かい設定とかはその後にストーリーを作り込んでいく過程で少しずつ考えてますね。主人公だけはちょっと特殊で、プレイヤー自身ということであまり設定がないので、ゲームタイトルのイメージを体現するような絵にしてます。

のっち へえ! 先にゲームの顔としてキャラクターを描くんですね。私、怪盗服が好きなんですよ。「表では優等生だけど、実はそんな願望があったんだ!」みたいな(笑)。

副島 怪盗服は最初の案では、ストリートギャングみたいな感じだったんですよ。リアルな若者っぽさを出したいと思って。でも「もうちょっとキャッチーなほうがいいかな」という話になり、いろんなアウトローっぽい衣装をかき集めて考えて、最終的にこうなりました。

のっち 怪盗服になるときは毎回ワクワクしましたね。主人公のマスクがかわいくて。まつげみたいなのが描いてあって「盛れそうだなー」って(笑)。

副島 あれ、全然正体隠れてないんですけどね(笑)。

のっち 喜多川祐介の怪盗服にしっぽが付いてるのもかわいかったです。気になってたんですけど、このしっぽって筆ですか?

副島 筆ではないです。なんなんでしょうね(笑)。

のっち そうなんだ!「画家志望だから筆なんだあ!」と思ってました(笑)。「P5」はどのキャラクターもそれぞれ大事にしてるものがあって、ゲームをプレイしてると1人ひとりに共感して全員好きになっちゃうんですよね。だから、この取材前にナタリーさんから「どのキャラクターが好きなんですか?」って聞かれて、なんて返そうかなと思ったんです。みんな好きですし。よく考えた末、モルガナかな?って。すっごくかわいいですよね。モルガナはどうしてこういうデザインになったんですか?

副島 プレイヤーにはゲームをしながらキャラクターに共感してもらいたいので、ディテールを複雑に描き込んでいるんです。でも複雑なものってなかなか覚えづらいので、パっと見てこのゲームタイトルだってわかるアイコニックなキャラクターが欲しくなったんですよ。「P4」にもクマというキャラがいましたが、そういうマスコットの存在は必須案件みたいな感じで、最初から織り込まれてました。

のっち 私、このゲームで何百時間も一緒に過ごしてるうちに、本当にモルガナが欲しくなっちゃって(笑)。結局その後に猫を飼い始めるんですけど、実際に猫と暮らしてみると、副島さんのイラストは動物のディテールがすごく細かいなって気付いたんです。例えばパンサーのお面の耳のところとか。「もしかして副島さんって猫好きなのかな?」って思ってました。

副島 僕も猫飼ってます(笑)。確かにそういうところは絵に表れてるかもしれないですね。

「ペルソナ」の音楽をおしゃれだと感じる理由はなんなんだろう?

のっち 目黒さんも先ほどおっしゃっていたように、私も「ペルソナ」の音楽ってすごくおしゃれだなって思うんですけど、前に「ゲーム音楽における“おしゃれ”って、どういうことなの?」って聞かれたことがあって、私それに全然答えられなかったんです。「私が『ペルソナ』の音楽をおしゃれだと感じる理由はなんなんだろう?」「そもそも、ダサいゲーム音楽ってどういうものなんだろう?」と悩んじゃって。目黒さんはこれについてどう思いますか?

目黒 作品のテイストに合わせて変えているところはありますが、「ペルソナ」シリーズの音楽は基本的に「主人公のような高校生の世代が『背伸びして大人の音楽を聴いている』と感じるような音楽ジャンル」を狙って作ってるんです。

のっち 例えば「P5」だったら、ジャンルで言うと何になるんですか?

目黒 アシッドジャズですね。30年くらい前に流行した音楽なので、開発当時はあまり耳にしないようなジャンルだったんですが、「P5」が発売された2016年はSuchmosがヒットした時期と丸かぶりで、タイミングよくアシッドジャズが注目されてたんですよね。

のっち へー! すごい! 私は戦闘曲が好きで、朝に仕事の準備をするときに延々ループで聴いてました。最終決戦の音楽の、正義感を掻き立てられる感じはすごいですよね。ゲーム音楽って、プレイヤーは同じ曲を何時間も繰り返し聴くことになるじゃないですか。飽きずに聴けるように意識していることはあるんですか?

目黒 ザコ戦はだいたい、ミスなくプレイすれば4、50秒くらいで終わるように調整しているんですが、その直前に曲のサビが始まるようにしてるんです。これはシリーズを通していつもやってますね。

のっち え? サビが聴けないようにしてるってことですか?

目黒 そうすると、簡単なバトルだと「ちょっと物足りなかったな」と感じるんです。逆に苦戦しているときはサビの盛り上がってる部分を聴けるという。何回も同じバトルをしてもらうために、音楽面でも工夫をしてます。

のっち サビに入るまでの秒数にこだわりがあったとは……!

目黒 その時間は毎作ちょっとずつ違ってて、「P5」はわりと短いです。開発の途中までは想定通りに進んでたのに、難易度とかを調整してバトルの時間がどんどん短くなっちゃって、「曲のタイミングがイメージしてたのと違ってる!」みたいになることもありますね(笑)。

のっち 面白い! サビのタイミング以外に戦闘曲でこだわってることは何ですか?

目黒 今までの音楽は基本的に短いフレーズのループだったんですけど、「P5」はほぼ全部、ブリッジや大サビもある4分くらいの曲を作ってるんです。プレイヤーが飲み物を取りに行ったときとかに、今まで何時間もやってるのに聴いたことがなかった3番の歌詞に初めて気付く、みたいな体験をしてもらったら面白いかなと思って。

のっち フィールド、バトル、リザルト画面でそれぞれ別の曲が流れますけど、例えばそこで変な転調をしちゃったりとか、曲のつながりが気持ち悪くならないように意識したりもしてるんですか?

目黒 調は気にしますね。フィールドからバトルに変わって、リザルトを経てまたフィールドに戻る、という循環を全部きれいに転調させていくのは難しいので、バトルを基準にしてほかの曲の調を決めてます。Dメジャーを使うことが多いですね。なぜかと言うと、Dメジャーの明るさと、平行調のBマイナーの暗さとで明暗が際立つので、印象を変えやすいんです。

のっち えっ、そんなのあるんですか? メジャーとかマイナーってDでもCでも全部一緒だと思ってた(笑)。Dを基準にするのは、「ペルソナ」に限らずどのゲームでもそうなんですか?

目黒 作品によって変えますね。「P5」はDが多いんですけど、「P4」でもかなり多用しています。

のっち 戦闘曲にボーカルが入った曲があるのも珍しかったと聞きました。

目黒 もともと「変わったことをやってみたい」というのがあって、ボーカルを入れてみたんです。キャラクターの声とぶつかってもわけがわからなくならないように、歌詞を英語にして。ゲームではボーカルの音量を少し下げてるので、発売されてるサントラはミックスのバランスを変えてるんですよ。

のっち 私は英語わかんないんですけど、口ずさんじゃいますね(笑)。こういう曲を作ってるゲームって、ほかにあんまりないんじゃないですか?

目黒 たぶんゲーム開発に携わってる音楽家は、皆さん本当はボーカル入りの曲を作ってみたいんじゃないかと思います。きっと周りの反対とかでやれなかったんじゃないかなと。でも橋野は文句を言わずに自由にやらせてくれるので。周りの人からは「大丈夫なの?」ってすごく言われますけどね。「大丈夫です!」と返してます(笑)。

家族が寝静まるのを待って、自分の部屋にこもってVRゲームを作ってます

のっち お二人は普段どんなゲームされますか?

副島 昔は1人で部屋にこもってPCでFPSとかをガンガンやってたんですけど、子供ができてからはそれやると怒られちゃうんで、最近は子供と一緒に「マリオカート」です(笑)。

目黒 同じですね。家族でNintendo Switchやってます。ちょっと前までは、VRのゲームにハマってよくやってたんですけど。

副島 VRなんて家族から怒られません? 完全に1人きりの世界だし(笑)。

目黒 みんなが寝静まるのを待って、自分の部屋にこもってやるんですよ。で、それに飽き足らずに自分で作り始めて。

のっち え? VRのゲームをですか?

目黒 そうです。例えばボクシングのゲームをやってて「ここはもうちょっとこう殴りたいな……」と感じた部分を自分で組み立てたり。

のっち そんなことできるんですか。私も「Oculus Quest」(VRヘッドセット)を持ってて、ボクシングのゲームをちょっとだけやったことがあります。

目黒 そう、その「Oculus Quest」をPCにつなげて「Unreal Engine」(Epic Gamesが開発した3Dゲームエンジン)でいろいろやるんです。あと、小学2年生のうちの子が九九の勉強をしていて、ある日「九九大学に入学したい」と言ったので、「Unreal Engine」で「九九大学入学試験ゲーム」を作って、クリアしたら入学証明書を印刷して渡しました。

のっち めっちゃいいパパ! ゲームって自宅で作れるのか。私にも振り付けを覚えるゲームとか作れるのかな(笑)。あと、さっき仕事場を見せていただいたときに、息抜きのグッズみたいなものはなかったなと思ったんですけど、お仕事に行き詰ったときにどんなことをしてリフレッシュしているんですか?

副島 車やバイクで外に行きますね。乗り物が好きなんで。

目黒 えっ? 就業時間中に?

副島 就業時間中じゃないですよ!(笑) 最近はコロナが怖いので電車に乗らずに車に乗ることが多いんですけど、車の中にいると考えごとができていいですね。同じところに座って考えていると、同じことばかり考えちゃうので。

のっち そういえばお二人とも、作業スペースにちっちゃい車が飾ってありましたね。

目黒 僕も車は好きですね。おじさん世代はしょうがないですよ(笑)。

みんなの質問、のっちが代わりに聞いてきますのコーナー!

のっち ここからはTwitterで読者から集めたお二人への質問に答えてください。まずはこちらなんですが……「ギャルソン副島」ってなんですか?(笑)

副島成記さんに質問です。「ギャルソン副島」は、ご自身をモデルにしたキャラクターですが、もし、のっちをモデルにするとしたら、どんな特徴のあるキャラクターになると思いますか?

副島 「P2」にそういうキャラクターが出てくるんですよ(笑)。武器屋の店主なんですけど、当時スタッフをゲーム内に出すのが社内で流行ってて。

目黒 ショップ店員はほぼ全員社員でしたね(笑)。

副島 僕はそれを描く役だったから、目立ちたがりの人たちに「俺も出せ」って言われて一生懸命似顔絵を描いてました(笑)。ギャルソン副島に関しては、描いてと言われたから描いたけど僕は出たかったわけじゃないんですよ。

目黒 副島さんに超似てます(笑)。

副島 のっちさんを描くとしたら、やっぱりクールでカッコいいイメージがあるので、「P5」で言えば新島真みたいな感じでしょうか。でも、のっちさんはすでにキャラクターとして完成しているので、そのまま描けばいいだけという気がします(笑)。

のっち 真みたいなのうれしいです。普段は真面目そうに見えて、怪盗服はレザーでめっちゃトゲトゲが付いてるの(笑)。

副島 のっちさんの怪盗服は、Perfumeの衣装みたいな雰囲気の特殊素材のものがよさそうですね。僕の机のそばに置いてましたけど、Perfumeの衣装本(「Perfume COSTUME BOOK 2005-2020」)は本当に参考にさせていただいてるんです。ペルソナにしろシャドウにしろベースになっているのは人の形だから、それをどれだけアレンジできるかがキャラクターデザインの肝なんですよ。だからあの本のようにいろいろなパターンを見られると参考になります。

のっち てっきり今日だけサービスで置いてくれてるんだと思ってました(笑)。しかも本に載ってるのは嘘じゃない、リアルな人間が実際に着ている服ですからね。参考にしていただいてありがとうございます! みんなにも買ってほしいです!(笑) 続きましてはこちら。

目黒さんに質問です。斬新なシステムと独特な世界観のペルソナのサウンドをつくるにあたって一番気を付けていることはなんですか?

目黒 最初はファンの方々の期待の斜め上を行くような「えっ!?」という驚きを与えつつ、何度も聴くと「なるほどね」と納得してもらえるような曲作りを目指してます。

のっち 「ペルソナ」といえばこれ!というイメージのさらに上を行くというか。

目黒 そうですね。でも一番気を付けているのは、無意識のうちにパクらないようにすることですね。震えますよ(笑)。

のっち ははは(笑)。世に出して何か言われてから気付くのでは遅いですもんね。

副島 「いいこと思い付いた!」と思ったら、前にどこかで見たものが記憶に残ってただけだった、みたいなことはありますよ(笑)。

のっち 冷や汗が出てきた(笑)。ホントに恐ろしい……。

女神転生、ペルソナシリーズ 制作にあたり、毎回お祓いをしているて聞きますが 一番ヤバかった怪現象はなんですか?

のっち お祓いって?

副島 特に「真・女神転生」シリーズは、いろんな国の神話に出てくる神様が登場するので、あんまり悪ふざけをすると怒りを買うんじゃないかってことで、スタッフ全員で神社にお祓いに行くんですよ。でも最近行ってないから、そろそろ行かないと危ないかな?(笑)

目黒 「真・女神転生」チームは今もちゃんと行ってますね。

のっち 「今も」ということは、リリース時に行くわけじゃなくて定期的に行ってるんですか?

目黒 だいたい開発が始まって半年くらい経った頃です。

のっち へー! 実際に何か怖いことがあったりとかしたんですか?

副島 僕は全然信じてないですよ?(笑) 信じてないんですけど、昔ありましたね。オフィスが神楽坂にあったときに。

目黒 あれ本当なんですか?(笑)

のっち えっ! なんかあったんですか……?

副島 何人かで夜遅くまで仕事していて、そこにいる全員がある女性社員の存在を感じてたんです。「まだ帰らないんだな」と思いながらふと見たら、その人はとっくに帰っていて誰もいなかったという……全然面白くないですね。もっと怖い話があればよかったんですけど(笑)。

のっち いやいや、不思議!

副島さんに質問です!ペルソナシリーズの主人公は猫背だなってよく思います。魅力的なキャラデザインのために意識していることを教えてください。

(※取材後にツイートが非公開になったため匿名で質問を記載いたします)

副島 前振りの意図がわからない(笑)。姿勢悪いかな? あんまり意識したことがないですけど。

のっち 自分では猫背だなと思ったことはないですか?

副島 手癖が出たときに、姿勢のパターンの1つに猫背があるってことかもしれませんね。

のっち 「魅力的なキャラクターの作り方」みたいなものは、デザイン的に何かあるんですか?

副島 ゲームのキャラクターの人気って、絵だけでは決まらないんですよ。何時間もゲームをやっていく中で思い入れが出てくるものなので。絵の果たす役割は、パッと見で興味を持ってもらうところまでで、重要なのは実際にプレイしてもらってそのキャラクターを深く知ってもらうことだと思うんです。だから、僕が「このキャラクターいいぞ!」という絵が描けたときに、皆さんの人気と合致するとうれしいんですけど、そうならないパターンもけっこうあるんですよね(笑)。

目黒さんに質問です。ペルソナシリーズでは学生パートと戦闘パートに分かれていますが、それぞれの楽曲を作る際に意識していることはありますか?

目黒 学生パートと戦闘パートは明確に分けて作ってます。さらに戦闘パートの中でも“日常”か“非日常”かで分けて考えていて、繰り返し行われる通常戦闘は彼らの中で“日常”になっているので、フィールドの音楽と系統を似せています。

のっち 言われてみたら確かに似てる! なるほど、通常戦闘までは“日常”なのか。ボス戦はギターの音がバリバリ鳴ってるロックサウンドだから、あれは“非日常”ってことですね。

副島さんに質問です キャラクターデザインをされる際にまずどの部分からデザインしていますか?(顔や髪型、体格など)

副島 これは決まってます。目からですね。「ペルソナ」はいろいろなキャラクターが主人公=プレイヤーと対話するので、「どういう目付きで自分を見てくるのか」「どんなふうに目を逸らすのか」みたいな部分に一番パーソナリティが出るんです。髪型や衣装はそれに似合う形を当ててます。目はやっぱり最初に描かないと落ち着かないですね。

のっち へえ! そういえば目だけのシーンも多いですよね。

副島 カットインですね。

のっち そうですそうです! 印象的だなと思ってました。目でそのキャラクターの性格だったり、主人公との関係性を示すんですね。

副島 そうですね。例えばちょっと上目遣いにして感情を表現したり。目の形というよりも、表情やニュアンスを描いている感じです。

のっち ちなみに目を描いたら次はどこに行くんですか?

副島 髪型ですかね。イケてる子なのかそうじゃないのか、ロックぽい髪型なのかおしゃれな感じなのか、ヘアスタイルが決まればキャラクターは半分くらいできあがると思います。ここでスタッフとの擦り合せがちゃんとできてないとシナリオライターにとって使いづらいキャラクターになってしまうんですが、そこにズレがなければ、あとはある程度は絵優先で進めてもOKになります。

のっち みんなからの質問は以上です! ありがとうございました! 今日はお二人にこうやってお話を聞けて、夢みたいな時間でした。ひと言で「ゲームを作る人」って言っても、ホントにさまざまなんだなって思いましたね。

副島 逆に、ほかの皆さんはどんなふうにゲームを作ってらっしゃるんですか?

のっち 私もこの連載でお話を聞いた人はまだ少しだけだし、あとはちょろちょろインタビューとかを読んでるだけなので想像でしかないんですけど、この開発チームはすごくファミリーっぽいなというか、すごく仲がよさそうなのが印象的でした。今日はお二人に同時にお話を聞くってことで、「仲が悪かったりしたらどうしよう」ってちょっと思ってたから安心しました(笑)。

目黒 仲よくさせていただいております(笑)。

副島 裏では本当は仲が悪かったりして……ウソですよ(笑)。信頼している仲間とこれからもいい作品を皆さんにお届けしたいですね。

のっちさんの取材後記

こんにちは、先日のPS Storeセールでは「十三機兵防衛圏」をゲットしました、のっちです。いずれやる。


今回は、アトラス様にお邪魔しました。

目黒将司(ドドン!!!)
副島成記(ズドン!!!)

え、名前のオーラすご……
私の頭の中では文字の並びから効果音が聞こえるお二人……

気難しいタイプのアーティスト気質の方達だったりしたらどうしよう、怖いよう……と、一応色んなパターンの心の準備をして行きましたが、んなもん全くの杞憂でした。
写真を見返して、お二人の柔らかい雰囲気を思い出してニヤニヤほっこりするくらい、終始優しい空気で話してくださり嬉しかったです。

本編でも少し話してましたが、「ペルソナ5」の悪人達が、ほんっとにキライです(笑)。これは愛情と尊敬を込めて言っています。悪い大人達の「他人を利用してあまい汁を吸おうとする歪んだ欲望」に相対した時に生まれる、主人公含む怪盗団の「大事なものを護りたいと自覚した本来の自分の欲望」の、なんと美しいこと!!!
「ペルソナ5」は、大人になって人を許す事を覚えた私の、忘れてた気持ち、「絶対に許せない!」というあの衝動、感覚を取り戻せる時間でした。
自分よりも、自分の大事なものを守ろうと戦う、みんなが大好きです。

訪問させていただき、スタジオもお話も目から鱗なことばかりで、夢のような時間でした。楽しかった!!!
目黒さん副島さん、案内してくれたモナちゃん、ありがとうございました!!!


ところで。

本連載でも訪問させて頂いた、スマホゲーム「FGO」の期間限定イベントにて“マスP”としてアイドルをプロデュースしました。
制作陣が知ってか知らずかアイドルグループの結成の仕方に、わたくし非常に身に覚えがあり(勿論全然違うエピソードではあるけど)、章のタイトルに様々なアイドル達の曲名があてられる中、ストーリー終盤の超エモエモエモな場面の章のタイトルにPerfumeの曲名「無限未来」が使われていたりして、勝手に個人的に喜び震えてました。めっちゃスクショ撮った。

身に纏う衣装によって輝く、アイドルと衣装製作者の関係性の物語でもあって大共感でした。嬉しかった。
そして終盤のバトル。アイドル同士助け合ってステージを作りながらも、互いに攻撃の手は緩めない演出……エモでした!!! 全力のパフォーマンスでぶつかるサーヴァント達の姿は最高にアイドルでした。めっっちゃよかった!
アイドルってエモだああああああ。
皆の志は受け取った!! おれが次に繋ぐ!!!

はあ気が済んだ(笑)


いやあ。“シャニ”の方のアイドルのマスターの実況も見たりするけど、最近のゲーム内のアイドルの解像度というか質感エグすぎ。……ってことだけ言いたかった。


まだ喋りたいですが終わります。
ではみなさん。今回もここまで読んでくれてありがとう。



次回、緊張します(冷や汗とよだれ)

次回予告

副島さんと目黒さんに会いに来たら、大好きなモルガナとの思わぬ触れ合いも楽しめたのっちさん。次回は4月に発売されたばかりの「ニーア レプリカント ver.1.22474487139...」の開発に携わった、プロデューサーの齊藤陽介さん(株式会社スクウェア・エニックス)、クリエイティブディレクターのヨコオタロウさん(株式会社ブッコロ)、ディレクターの伊藤佐樹さん(株式会社トイロジック)からいろいろなお話を聞かせていただく予定です。かねてから「ニーア」シリーズの大ファンを公言していたのっちさんが、関係者の皆さんとどんな話をするのかお楽しみに。

この連載では、訪問相手に聞いてみたいことをTwitterで募集中。ハッシュタグ「#のっちはゲームがしたい」を付けてツイートされた「ニーア」シリーズ開発スタッフへの質問を、のっちさんが代わりに聞いてくれるかもしれません。ぜひ質問をツイートしてください。

募集期限は5月30日(日)まで。1つのツイートに書き込む質問は1つだけにするようにお願いいたします。

Perfume最新情報

東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)のこけら落とし公演として開催されたPerfumeのライブ「Reframe 2019」を収録した映画「Reframe THEATER EXPERIENCE with you」と、昨年9月21日に行われたオンラインフェス「"P.O.P" Festival(Perfume Online Present Festival)」でのパフォーマンス「Perfume Imaginary Museum "Time Warp"」の2作品を、現在それぞれNetflixにて独占配信中。また、Perfume Closet第5弾の新作アイテムを載せたファッショントラックの移動店舗が全国を巡回しています。

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