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yonawo、okkaaa、Mom……“Z世代”新星アーティストの共通点を近作から探る

リアルサウンド

19/12/10(火) 18:00

 yonawo、okkaaa、Mom。この3組はいずれも1990年代後期から2000年代初期に生まれたいわゆる“Z世代”、かつ、幅広いジャンルを取り込み新たな音楽的アプローチに挑戦しているアーティストだ。本稿では11月に新作をリリースした彼らに注目し、音楽シーンにおけるZ世代の特徴を探る。

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 最初に紹介するアーティストはyonawo。福岡を拠点に活動する、荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)の4人による、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ソウルなどを自身の音楽に集約したミニマルなR&Bサウンドが特徴のバンドだ。先日11月15日には、ワーナーミュージック内レーベル<Atlantic Japan>よりメジャーデビューシングル曲「ミルクチョコ」をリリースした。同曲は築50年程の古民家を改修した福岡のミュージックスタンドで収録され、前作EP『SHRIMP』よりも、より楽器や歌声などの生のサウンドが前面に出たソウル、R&B色の強い楽曲となっている。特筆すべきはアコースティックギターを用いることによる柔らかなサウンドと、荒谷のソウルフルな歌声、そして最後には合唱のパートを設けるなど、生身の音により生まれる温かさだ。まさに同作がリリースされた冬の時期に聴くに心地いい作品と言える。

 先日恵比寿KATAで行われた「ミルクチョコ」のリリースパーティーでは、同曲はじめ、ライブではおなじみの「Just the two of us」を織り交ぜた「矜羯羅がる」やアリシア・キーズの「If I Ain’t Got You」など自身の楽曲以外にも、影響を受けた音楽のカバー、そして、来月12月20日リリースの新曲「Mademoiselle」を披露した。会場BGMには、チェット・ベイカー、The Strokes、エイフェックス・ツインなど、彼らの好きな幅広いジャンルのアーティストの楽曲が流れ、yonawoの音楽を彼らならではのものたらしめる背景も感じ取られた。

 続いてのアーティストはokkaaa。11月6日には「界雷都市」、20日には「想像の遊牧民」そして27日にはokkaaaがリリックを、okkaaaと同世代のアーティスト・LULUがトラックを手がけた「LIQUID」と立て続けに作品をリリースした。

 「界雷都市」は、バックで鳴るノイズやオーバーダブが社会を超個体として捉え、自我へと潜り込んでいく様を感じさせるようなローファイヒップホップ。「想像の遊牧民」は、「ゴスペル的なアプローチを取り入れたり叫び声に歪みを加えてギターっぽくしたりと、いろんな角度から自分のクリエイティブの挑戦を試みた作品」だという(okkaaa Twitterより)。また、okkaaaの哲学を文章、楽曲、映像などを交えて表現する、まるでミクストメディアのようなコンテンツ『潜世界』を展開。「界雷都市」と「想像の遊牧民」、そして12月11日リリースのシングル「印象派の夢」は同コンテンツを構成する一部としての楽曲だ。

 どの作品においても混沌とした情報社会で虚構と現実の間に生きる私たちについて考えさせられるようなリリックが綴られ、楽曲からはokkaaaの世界観や哲学観が強く垣間見える。楽曲制作以外にもライターやフォトグラファーとしても活動し、自身のメディア展開やプロモーション活動も行うなど、真にインディペンデントでZ世代を象徴した存在と言える。

 okkaaaと同様に、自身でアートワークやMV制作を手がけるアーティスト、Momにも注目したい。Momもokkaaa同様、11月6日に「マスク」、11月27日に「ハッピーニュースペーパー」と立て続けに新曲をリリースした。

 「マスク」はエネルギッシュでもの悲しげだが温かく、曲のタイトルの通り、曲調からも二面性を感じ取ることができる。ダブステップ、ソウル、ヒップホップなど、様々な要素を感じさせるそのサウンドは、まさにMomが提唱する「クラフト・ヒップホップ」そのものだ。本人のTwitterによれば、MVでは“空虚さとエナジー”を表しているという。King Gnu・井口理がTwitterや自身のラジオ番組でシェアするなど、話題の兆しが見えるMom飛躍のきっかけになる一曲だ。

 続く「ハッピーニュースペーパー」は「マスク」の心の内側のえぐるような不気味さから一転、ポップなサウンドの曲。サビの歌詞でも〈おめでとう人類 よくやったぞ人類〉と一見まるで人間への賛美歌のように思えるが、内実は、ポストトゥルース時代の社会への皮肉的な内容である。ポップなサウンドに乗せて社会への皮肉を歌うことによりさらに皮肉さを増す「ハッピーニュースペーパー」も、「マスク」と連綿と続くダークな曲といえよう。

 「マスク」、「ハッピーニュースペーパー」は曲の内容だけでなく、アートワークもMomの描いたイラストで統一されており、繋がりを持った2作品となっている。Momも「ハッピーニュースペーパー」についてTwitterで「享楽的な歌ではないし、前回の『マスク』と軸足は全く同じ。手触りが違うだけ。これからどんどん点が線になってゆくはず。このアートフォーム、まだまだ続く。skrt skrt」とこの2作品の繋がりが他の作品とともにさらに紡がれていくことを示唆しており、次作が統一されたテーマ性を持った作品になることも期待できるだろう。

 彼ら“Z世代”は、動画投稿サイトや音楽ストリーミングサービスの登場によって個人で自身の作品を発信することが容易になった。音楽やその他アートワークの制作などもDIYが可能な世代だ。また、音楽ストリーミングサービスが普及したことで時代も地域も超えた音楽によりアクセスしやすくなった。それにより幅広い音楽を取り込み、自身の音楽に昇華することが可能になった世代でもある。

 そして、彼らが音楽制作を始めた2010年代はビートミュージックの台頭や、ヴェイパーウェイブが生まれ、退廃していった音楽的歴史を持つ。ヴェイパーウェイブから派生したローファイヒップホップはネットを中心に盛り上がりをみせた。彼らは、いずれもローファイヒップホップ等、ビートミュージックやヒップホップ、R&Bの血脈を継ぐ要素を感じさせる。2010年代最後の年に注目される彼らのようなZ世代のアーティストが、2020年代という新たなディケイドの音楽シーンを形成していくのかもしれない。

(及川百合香)

※記事掲載時、一部表記に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。

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