Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

yamaの歌声を目の前で聴いて 初ツアー『meaning of life』が告げた新時代のはじまり

リアルサウンド

21/3/28(日) 18:00

「最後の曲です」「ありがとうございました」

 yamaが発した言葉はたった二言。ステージのトータルタイムもほぼ60分といったところか。とはいえ、永遠にも一瞬にも感じられた60分だった。

 yama初となるライブツアー『meaning of life』。その渋谷クラブクアトロ公演の第1部へと足を運んだ事実に、終演から数時間経った今も夢見心地な気分でいる。だが、普段はイヤフォンから聴こえてくるあの歌声は、マイクとスピーカーを通して、実際この耳に飛び込んできたのだ。音楽で、時にはテレビ、PC、スマホ越しでその存在を認識していたが、今日間違いなく、yamaは私たちの目の前にいた。

yama

 yamaがステージに姿を現して「a.m.3:21」を歌い出した瞬間から始まったライブは、yama自身がツアータイトルでもある『meaning of life』=「人生の意義」を確かめるような内容であった。それを支えたALIのメンバーら参加したバックバンドの卓越した演奏にも終始惚れ惚れしたが、そんな生楽器のアンサンブルの中、yamaのボーカルが一切埋もれなかったこともぜひ伝えたい。その声を直に聴いた者として言いたいのは、「歌っている」というよりは楽器等しく「言葉とメロディを鳴らしている」、そんな表現がしっくりとくる。

 それは「bin」「優しい人」といった、今もYouTube上で聴ける楽曲が演奏されたときにも感じた。R&Bを下地にした骨太のグルーヴを、まるで撫でるかのように軽やかに乗りこなすyamaのボーカルは、むしろ楽器以上にグルーヴを生んでいた。さらに、小気味良いBPMで空間を支配する「ねむるまち」では、yamaが高低問わず、幅広い音域にて曲を形付けられることを証明。「歌が上手い」「声が魅力的」ーーそんなお決まりの感想は、yamaには通用しない。

 緩やかなピアノの前奏から始まった「麻痺」。バンドの演奏のみに意識を絞ると、疾走感溢れるロックナンバーにも聴こえる。だが、yamaが発する言葉の抑揚とメロディがまた別のエッセンスを楽曲に与える。単なるソリッドな楽曲ではない、それこそ会場全体が痺れるような臨場感が鼓膜を震わせる。

yama

 ふと思う。私たちはなぜyamaの声/曲を繰り返し聴きたくなるのか? それは名だたるボーカリスト、シンガーたちも持ち合わせる、異常なまでの“情感”がその声に宿っているからではないか。テクニックではない。言葉を、音を、音色を人の記憶や心に直接叩き込むことができる声。それは「タルト」「真っ白」といったメロウな楽曲から強く感じた。一筋縄ではいかない愛憎、時間や四季をまたいで伝えるささやかな幸福。そんな目には見えない、ひとつとして同じ答えがない感情を、yamaは一人ひとりの記憶から引っ張り出す。その声が持つ圧倒的な“情感”は、世代も性別も身分も、ましてや聴く環境すら飛び越えるのだ。

 目に見えない脅威に沈黙した世界で突如浮上してきたyamaは、まさに2020年代を象徴する1人である。これまで音楽史はディケイド=10年単位で区切られ、それぞれの時代で流行り廃りが整理されてきた。そしてその時代ごとに生まれたアーティストたちは、隣合わさる中で各々の存在に興味を示す。泣き虫☔️が手がけた「Hello/Hello」は、そんな2020年代の幕開けを物語るコラボ曲だ。淡い緑の照明を潜り抜けて届けられるyamaとバンドの音は、2010年代に別れを告げて、次なるディケイドのスタート=2021年を華々しく彩っていく。

 yamaをセンターに、その声が迷わずこちらに届くよう支えるバンドメンバーたちも、仮面の下できっと微笑んでいたのではないだろうか。アンコールで演奏された「名前のない日々へ」は、移ろいゆく季節の境目に佇む者たちを歌う。そんな心模様を歌うyamaの背中を、ギター、ベース、ドラム、キーボードは力強く押す。零れ落ちるほどの高揚感で満たされる会場、それを生み出したyamaと4人のミュージシャンは、表情は見えなくとも音楽の中で確かに笑い合っていたと思う。

 そして、これまで記してきた全てが、ライブを締め括った「春を告げる」に集約される。歌う以上に言葉とメロディを鳴らし、情感を込めて、新しい時代のはじまりを仲間たちと共に祝う。皮肉も込められた6畳半の時代のアンセムは、ネットからテレビ、そしてライブハウスを通過して、これからさらに大きな舞台で歌われていくはずだ。

 発した二言、鳴らした14曲。間違いなくyamaはこの日私たちの目の前にいた。私たちはyamaを見つけ、またyamaも私たちを見つけることができたはずだ。

■セットリスト
yama 1st LIVE TOUR『meaning of life』
2021年3月27日(土)渋谷クラブクアトロ(1部)

01. a.m.3:21
02. Downtown
03. bin
04. 優しい人
05. ねむるまち
06. 麻痺
07. あるいは映画のような
08. クローバー
09. タルト
10. 真っ白
11. Hello/Hello
12. クリーム

En1. 名前のない日々へ
En2. 春を告げる

yama Twitter
yama official site

アプリで読む