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『グランメゾン東京』木村拓哉が寛一郎に示した“本物”を生み出す覚悟 味という絆で結ばれる料理人たち

リアルサウンド

19/11/25(月) 6:00

 「トップレストラン50」ランクインを目指す尾花夏樹(木村拓哉)の前に現れたのは「gaku」のスーシェフ(副料理長)となった祥平(玉森裕太)だった。ミシュランガイド掲載の前哨戦に位置づけられる「トップレストラン50」を1か月後に控え、尾花は魚料理のリニューアルを考える。

参考:『グランメゾン東京』は日曜劇場とキムタクドラマが融合!? “一歩下がった”木村拓哉の新境地

 料理人の魂に触れるような珠玉のエピソードとなった『グランメゾン東京』(TBS系)第6話の主人公は、見習いの芹田公一(寛一郎)。第1話でアルバイト募集の告知を見てグランメゾン東京に加わった芹田だったが、思うように仕事をまかせてもらうことができず、悶々とした日々を過ごしていた。そんな芹田の内心を見透かしたかのように、gakuの経営者・江藤(手塚とおる)は報酬と引き換えにグランメゾン東京のレシピを教えるよう依頼し、芹田もその誘いに乗ってしまう。一方で、尾花たちに認めてもらいたいという思いから芹田は魚市場での修行をはじめる。

 芹田を演じるのは寛一郎。名うての役者が顔を揃えるグランメゾン東京の中で、パティシエの松井萌絵(吉谷彩子)とともにフレッシュな存在感を放っている。俳優としての寛一郎は、2017年の映画『心が叫びたがってるんだ。』でデビュー。目力のある精悍な面構えが大器の片鱗を感じさせる期待の若手だ。身一つで料理の世界に飛び込んできた芹田に、倫子(鈴木京香)は責任を持てないと躊躇するが、尾花は快く受け入れる。しかし、三ツ星を目指す料理人の道は想像以上に厳しいものだった。

 魚市場での修行の成果を見せようとした芹田は、尾花から「お前はまだうちの店のレベルじゃない」と言われ、「こんな店こっちからやめてやるよ」とエプロンを叩きつけて店を飛び出す。見境がなくなったその足で江藤の元に向かった芹田は、尾花たちが完成させた魚料理のレシピを漏らしてしまう。「俺だって一生懸命頑張っている」という芹田の切実な叫びには胸を衝かれた。

 尾花が芹田を叱ったのはわけがあった。相沢(及川光博)によれば「アクの強い野菜を切った包丁で魚を処理すると、そのアクが魚について風味を劣化させてしまう」。芹田が下ろした鰆を客として食べさせることで、自ら気づく機会を与えるのは温情のようでもあり、見ようによってはこれ以上ない厳しい教育と言える。自らの非を悟った芹田はとっさにフロアに手をつき、レシピを漏らしていたことを白状する。劇的な展開だが、本当にすごいのはここからだった。

 芹田の決死の告白に尾花たちは余裕の表情で返す。「一流のシェフはレシピが外に出ることを気にしない。自分がそれを一番美味しくできる自信があるから」と京野(沢村一樹)。料理人として味をもって教えるだけではなく一流の世界を見せる。「俺たちが本気で考えた料理を真似できるわけねえだろ」(尾花)、「真似できるもんならやってみろ」(倫子)。手加減も容赦もしないのは、芹田を本気で育てようとする意思以外の何ものでもない。「お前はどんな料理人になりたいんだ」と尾花に突き返されたエプロンを芹田はふたたび手に取る。

 自身のせいで店を窮地に陥れかねない状況で、普通なら「責任を取る」と言って消えるかもしれないが、芹田は正直にありのままを話して頭を下げた。ある意味で「わかりやすい」キャラクターとも言えるが、まっすぐに相手の懐に飛び込むことができる芹田の率直さを尾花は買ったのではないだろうか。

 「三ツ星狙うんなら自分で本物を生み出すしかない」と話す尾花は生活のほぼすべてを料理に捧げている。味という絆で結ばれるグランメゾン東京の料理人たちだが、そのことはgakuの2人も同じ。終盤で交わされた丹後と祥平の会話は料理人としての尾花のすごさを知るがゆえの決意であり、最高に魅力的なライバルが揃った。新メニューを携えて一流同士が火花を散らす「トップレストラン50」の行方は次週へ。手に汗握る展開が続く。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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