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[Alexandros]、go!go!vanillas、Base Ball Bear……リモートセッションによって生まれた過去曲の新たな表情

リアルサウンド

20/6/22(月) 17:00

 コロナ禍はロックバンドの“当たり前”に大きな影響をもたらした。スタジオに集まり音を鳴らし合うセッションは行えず、制作活動も思うようにできない。そんな中で、過去曲をメンバーが個々の場所でアレンジし直す、リモートセッションを行ったバンドもいる。本稿では3組のバンドがリモートで制作した作品たちを紹介したい。

(関連:Base Ball Bear、最新作『C3』で提示するバンドの特別さ/異端さ 『C』シリーズを振り返りながら分析

 [Alexandros]が6月21日にリリースした、リモート制作アルバム『Bedroom Joule』は、「ベッドルームの力量」と名付けられた題の通り、就寝時にぴったりな穏やかな聴き心地だ。

 チルアウトを誘うリズムでしっとりした質感へとモデルチェンジした「Run Away」や「Adventure」、アコギの音色を纏いじっくりとメロディに浸れる「starrrrrrr」や「月色ホライズン」など、大型フェスやスタジアムライブを沸かせてきたアンセムたちが装いを新たにして収録されている。どの楽曲も川上洋平(Vo/Gt)は耳元で囁くようなボーカルを聴かせ、その歌声の魅力も再発見できる。

 無数に重なったコーラストラックで侘しさを注入した「Leaving Grapefruits」、タイトなビートメイクでダンスチューンとしての強度を高めた「Thunder」など、原曲のイメージを深める形でリビルドされた楽曲もあり、音作りのこだわりを細部まで感じることができる。踊Foot Worksのラッパー・Pecoriを客演に迎えた「city feat.Pecori」など、枠を取り払った自由なフォームも楽しめる。

 ラストを飾る新曲「rooftop」は大切な人とのビデオ通話の情景から、人と触れ合える愛しさを描き出した素朴な祈りのようなナンバーだ。すでにスターの風格を携えている彼らだが、この作品ではリラックスムードの中で素のままの言葉を紡いでいる。バンドの持つ多面性が最大限に提示された作品といえよう。

 go!go!vanillasが6月12日に配信リリースした5曲入りEP『ドントストップザミュージック』は、5月5日にYouTube上で放送されたリモートライブの音源をまとめた作品。ミックスもメンバーで行うなど、DIYで制作されたハンドメイドな楽曲集だ。

 新曲1曲のほか人気曲のアコースティックアレンジが4曲収められているが、これらはただ楽器を持ち替えて録り直しただけではない。「スタンドバイミー」は原曲の軽快なモータウン調からテンポを落とし、2本のアコギが絡み合うオーガニックな仕上がりに。原曲ではシンセが煌めく「Do You Wanna」も、艶やかな弦の音色が印象的な楽曲へとドレスアップ。「マジック」では原曲のイントロをスキャットに置き換え、跳ねるリズムを土台にカントリーテイストを強調するなど、楽曲に新たな解釈を与えるリアレンジばかりだ。

 4月5日にTwitter上で一部分が公開された表題曲「ドントストップザミュージック」は、不安に包まれるバンド、シーン、そしてリスナーを丸ごと鼓舞する楽曲だった。それに引き寄せられるようにポジティブなバイブスを放つ楽曲が選ばれたこのEPは、全編通して温かな手触りながらとてもエネルギッシュだ。怪我で休んでいた長谷川プリティ敬祐(Ba)のレコーディング復帰作「アメイジングレース」の〈僕らの未来に賭けてみよう〉という言葉が最後に歌われるのも偶然ではないはずだ。

 春から夏にかけて行う予定だったワンマンツアー全公演が中止となったBase Ball Bearが「ライブ現場以外でのライブ表現」を提示するために始動させたのが、毎週木曜0時にYouTube上で公開中の『LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~』だ。仮想ライブとしてセットリストの流れを追体験できるように、リモートで収録された演奏動画が公開されていく企画である。

 2016年から3ピースバンドとなったBase Ball Bearだが、現在ライブでは4ピース時代の楽曲も3人用に編曲してプレイしており、この企画でも新たに生まれ変わった過去曲を堪能することができる。原曲では清廉なエレピが彩る「すべては君のせいで」は3人だけの演奏でソリッドなロックナンバーに化け、「転校生」では小出祐介(Vo/Gt)が原曲よりも長尺のギターソロを披露し、現場での熱狂が目に浮かぶ仕上がりへと辿り着いている。

 メジャーデビュー曲であり人気曲の1つ「GIRL FRIEND」など、定着したナンバーも今のモード、今の美学でアレンジすることで楽曲の耐久性を高め、バンドの歩みと共振させているよう。もとよりベースとドラムがグルーヴを牽引する「どうしよう」は、そのテイストを継承しつつ、小出のギターもしなやかに絡みつき、3人が出す音の輪郭がくっきりと分かる。また、これらの演奏をじっくりと目に焼き付けられる映像編集を施してあるのもこの企画の魅力である。様々なアングルで、メンバーそれぞれのプレイを観察できる貴重な映像だ。

 アイデアを持ち寄り、この状況ならではの創造性を発揮したバンドはこの3組のほかにも多くいた。6月に入りスタジオワークも解禁され始め、徐々に通常のレコーディングも開始されるはず。このコロナ禍でより強まったはずのバンドの連帯性が、素晴らしい作品を生み出してくれることに期待が膨らむ。(月の人)

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