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柔らかに輝く"あわい”の世界に魅せられて 『伊庭靖子展 まなざしのあわい』

【NEWS】質感・光・空気を描く画家、伊庭靖子。10年ぶりの大規模個展がスタート

全4回

第1回

19/7/19(金)

伊庭靖子 制作風景

画家の眼とモティーフのあわい(間)にある世界に魅せられ、モティーフの質感やそれがまとう光を描くことで、その景色を表現し続けてきた画家、伊庭靖子。美術館では10年ぶりの個展となる『伊庭靖子展 まなざしのあわい』が、7月20日(土)にスタート。10月9日(水)までの期間、東京都美術館にて開催される。

1967年、京都市生まれの伊庭は、嵯峨美術短期大学版画科を修了後、独学で油彩を学びながら、さまざまな“見る方法”と“描く方法”を試しながら制作を続けてきた。

《Untitled 2017-01》宮内正幸氏蔵 撮影:木奥惠三 Keizo Kioku Courtesy of MISA SHIN GALLERY

その制作スタイルは、果物や陶器、寝具など、日常の中にある身近な物を自ら撮影し、その写真をもとに油彩を描いていくというもの。写真というフィルターを一つ通してから描くことの意義について、伊庭は次のように語る。

「肉眼ではたくさんの物が見えています。写真はもともと好きでよく撮っていました。反射光で撮られる写真では抜け落ちるものがありますが、残されて、良いと感じた物だけを絵の中で引き上げていくと、描きたい世界が表現できます」

対象物の持つ瑞々しさ、やわらかさ、硬さなどの質感はもとより、周囲の空気や光、雰囲気までをも巧みに捉えた作品群は、彼女にしか生み出せない独特の魅力を放つ。

伊庭の作品はこれまで多くの展覧会に出展され、国内外の主要な美術館に収蔵されているが、美術館の個展としてまとまった形で見られるのは、2009年に神奈川県立近代美術館で開催された『伊庭靖子—まばゆさの在処—』以来、10年ぶりだ。

同展では、モティーフとその周囲の風景を取り込み、実体はないけれど、確実にそこに存在する光や空気を表現する作品への過渡期となる近作・新作が一堂に会する。また、そこに至る以前の作品も併せて展示することで、この10年の変化とともに伊庭の変わらない関心の核に迫っていく。

《Untitled 2018-01》eN arts collection蔵 撮影:タケミアートフォトス

注目したいのは、「新たなことに挑戦してみたい」と考えた伊庭が、建築家・前川國男が設計した東京都美術館の空間を、展示構成と作品に生かしていること。

会場となる3つのギャラリーの天井高や広さが異なることを利用して、それぞれに異なるモティーフの作品を展示。時間と作品の流れ、作家の興味の変遷が感じられる構成になっている。

最初の会場となるギャラリーCには、初期作品のクッションと陶器の絵が並ぶ。ふわふわと柔らかいクッションと、硬くてツルツルとした陶器の質感を、目を通して感じることができる。

《Untitled 2009-02》東京都現代美術館 蔵

メイン会場となるギャラリーAでは、絵画の近作・新作を展示。東京都美術館の館内にモティーフを置き、周囲の空間、中庭の景色など、独自の空間を描いた作品が複数展示される。

《Untitled 2018-02》作家蔵(協力:MA2 Gallery) 撮影:木奥惠三 Keizo Kioku

ギャラリーBでは、版画とともに、同展のために初挑戦した2本の映像を上映。いずれも「見る」こととその距離を考えさせられるもので、動画を立体視した作品では、そこに見えた何かをつかめそうな感覚を体験できるという。

《depth #2019》(ギャラリーノマルにて、2019年)©植松琢麿

「人は、目に入ってくる光によって、色や質感、形などを把握します。これらの視覚情報は 脳によって認識されますが、情報が制限された状態では、あやふやな物として見えます。ここでは、自分と対象物との距離だけで捉えた映像で、何がどう見えるのか、普段とどう違って見えたか体感してもらう新たな試みをしています」 (伊庭)

身近な物から空間、そして風景へ。少しずつ広がりをみせる伊庭のまなざしを通して映し出される世界を、五感をフル稼働させて、見て、そして感じとってほしい。“見る”ことを解体し、組み直すことで、日常の中でも新たな見方に出会えるかもしれない。


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