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ヤバイTシャツ屋さん こやまたくやが選ぶ、心に刺さった3曲 歌詞の“共感性”についても考える

リアルサウンド

20/4/22(水) 12:00

 アーティストの心に残っている歌詞を聞いていくインタビュー連載『あの歌詞が忘れられない』。本連載では事前に選曲してもらった楽曲の歌詞の魅力を紐解きながら、アーティストの新たな魅力を探っていく。第4回目には、ヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)のこやまたくやが登場。こやまが選曲したのは、ゴールデンボンバーの「#CDが売れないこんな世の中じゃ」、岡崎体育の「鴨川等間隔」、10-FEETの「VIBES BY VIBES」の3曲だった。こやまはこの3曲のどういったところに魅了されたのか、また、こやまが考える歌詞における独創性についても話を聞いた。(編集部)

(関連:【写真】ヤバイTシャツ屋さん・こやまたくやインタビュー模様

●ゴールデンボンバーと岡崎体育にある“共感”
ーーまずは、ゴールデンボンバー「#CDが売れないこんな世の中じゃ」を選んだ理由を教えてください。

こやま:そうですね……共感がすごい。

ーー音楽業界に携っているからこそなおさらですよね。

こやま:そうですね。あとなんやろう……人から言われそうなことを先に自分で言う手法は、僕もTwitterとか告知するときによくやります。「お前ら〇〇やろ」って人から突っ込まれへんために、自虐的に突っ込むんです。それをこの歌の中でしてはって、“あ、一緒だ”って思って。

ーー確かにこやまさんの言動とも共通するところがあると感じました。

こやま:あと、CDを売る理由を未だに考えます。この曲では〈CD売るの諦めよう〉って言ってはいるんですけど、ゴールデンボンバーってどうにかしてCDを売ろうとしてはるんですよ。最近やったら、通販限定で2000円のシングルCDを送料無料でリリースしてたりして(4月30日発売予定『CD買ったら(送料)サヨウナラ』)。僕らもそうで、毎回シングルには「くそDVD」っていう30~40分のDVDをつけたり、Blu-ray/DVDも同発なら同時購入特典をつけたりとかして、なんとかして手に取ってもらおうって考えています。音楽って別にCDじゃなくても聴けるし、「コレクターズアイテム」になってると思うんですよね。それでもCDを手に取ってほしい。それは、パッケージ含めて全部めちゃめちゃこだわってるから。曲だけじゃなくて、歌詞カードもジャケットも特典も全部含めて作品やと思ってますし、全部見て欲しいんです。でもなかなか買ってもらえないっていう葛藤はすごく感じてて。そういうところにこの曲とのシンパシーを感じます。

ーー音楽シーンならではの問題をここまでストレートに曲にすることも斬新ですよね。しかも、CDが売れない現状をテーマにしつつも、表題曲が無料ダウンロードできるQRコードも公開しましたよね(『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)2017年3月31日放送回でのパフォーマンス時に、QRコードを突如公開。同日YouTubeに投稿されたMVやCDジャケットでも公開された)。

こやま:そのアイデアもすごいですよね。『ミュージックステーション』で初披露して、そこでQRコードをバーンって出してはって。それを思いついて実現しはるのがすごいなと思います。

ーー岡崎体育さんの「鴨川等間隔」は、寄り添う恋人たちや楽しそうに戯れる男女に嫉妬している様子が描かれていて、岡崎さんのなかでも等身大な曲だと感じます。この曲を選んだ理由は?

こやま:この曲もすごく共感します。岡崎さんと僕は年齢は違うんですが、同じ中学校、同じ部活、同じ街で育ってきてるんです。地域もほとんど同じだからか、人間性もちょっと似てくるのかもしれない。〈久しぶりに服でも買うかな/一人で通りを行ったり来たり/無意識にまたネイビーブルーを/手に取り無難を求めちまうぜ〉ってところとかあるあるで。

ーーなるほど。

こやま:イケてる人たちはこの歌詞に共感しないかもしれへんけど、僕はまんまなんですよね。同じような生き方をしてる人がこういう曲を作ってんのやって、嬉しくて。曲を作ってる人の生き方とか人間性に共感できるのって、すごい嬉しい体験やと思うんです。僕は歌詞でマニアックなこととか、コアなことを歌詞にしたりするんですけど、そこに共感した人はすごい気持ちいいと感じてくれると思うんですよね。だから、そういう人に刺さる歌詞は大事にしていきたいなと思ってます。

ーーヤバTには「癒着☆NIGHT」や「ハッピーウェディング前ソング」のような男女の関係性をシニカルな視点で描いた曲もありますよね。その男女への羨ましさも感じますし、岡崎さんの歌詞とも重なります。

こやま:そうですね。下から見上げてる感じみたいな、同じ目線で書いてるって気がします。

ーーゴールデンボンバーや岡崎さんの曲を選んだ理由として「共感」を挙げていましたが、歌詞における共感性についてどのように考えていますか? なかには「曲に共感はいらない」という人もいると思うんです。

こやま:どうなんですかね。多くの人に共感される曲であればあるほど売れる曲にはなると思うんですよね。でもそこは目指してないですね。歌詞の共感性を求めれば求めるほど、ありきたりになってしまうなって思うので、一部の共感してくれる人に刺さればいいなと思ってます。それでもいろんな人に曲を届けるには、歌詞よりもリズムとかノリの良さとか、耳馴染みの良さを大事にしてますね。

ーーこやまさんのなかでは、大衆に共感されることではなく自身が感じたことを歌詞にすることが重要?

こやま:自分が思ってないことは歌詞にしないようにしてます。そうでない曲を書くと、恥ずかしくなっちゃって歌えなくなるんですよ。無理して背伸びして歌詞を書いたときに、レコーディングで「これ歌いたくない、うわうわ、嫌や、恥ずい恥ずい」ってなって、書き直す。ほんまに思ってることじゃないと歌にできない。

ーーなぜ背伸びした歌詞を書こうと思ったのでしょうか?

こやま:もう歌詞が思いつかない時って、とりあえず形だけでも完成させようとしてありふれたフレーズを入れるときがあるんです。でも結局納得いかなくて絶対書き直してて。誰かを励まそうとする曲を書いたときに、なんかしっくり来なくて、自分なりの言葉に置き換えたりすることが多いです。いいことを言うことが恥ずかしいから、ちょっとひねくれた言い方にするとか。

●オリジナリティを出すには“全員への共感を求めないこと”
ーーなるほど。では、10-FEET「VIBES BY VIBES」についても伺っていきたいと思います。こやまさんは自身のルーツとしてよく10-FEETを挙げていますよね。歌詞にも共感されてたんですか?

こやま:10-FEETは学生時代に聴いてて、勇気付けられてたことはありますね。共感できる歌詞もありますけど、それよりも勇気付けられることが多かったです。

ーー10-FEETの楽曲は、聴き手に寄り添うメッセージソングが多いですよね。メッセージソングが数多くあるバンドシーンにおいて、特に10-FEETに勇気付けられた理由は何だったのでしょうか。

こやま:10-FEETはライブがすごい楽しかったんです。初めて10-FEETのライブを観た時、1曲目が「VIBES BY VIBES」で。グッと惹きつけられました。お客さん全員笑顔だし、全員一緒にジャンプしてるし、むちゃくちゃなってるし、すげえバンドやと思って。それでこの曲はずっと印象に残ってるんです。初めはライブから入りましたけど、そこから曲を聴いていったらいろんなジャンルの曲があるし、歌詞には勇気付けられたり奮い立たせられたりとかするから、すごいバンドやなと思って。

ーーステージ上での彼らの存在自体に説得力があったことも大きいんですね。

こやま:そうですね。ライブでの存在感、説得力、かっこよさがあるから歌詞もより響いたりしますね。

ーー今回挙げていただいたゴールデンボンバー、岡崎体育さん、10-FEETから歌詞の影響は受けていますか?

こやま:歌詞の影響って誰から受けてんのかって思いつかなくて。リズム感とか言葉のチョイスとかは、マキシマム ザ ホルモンに影響を受けてると思うんです。でも内容に関しては思いつかへんくって。知らぬ間に誰かから影響受けてるはずなんですけど。不思議なんですよね。

ーーそうなんですね。ヤバTにはコミカルで皮肉的な曲も多い一方で、「サークルバンドに光を」のようなこやまさんの本音が込められたシリアスな曲もあって、様々な側面が見えるバンドだと感じます。

こやま:最近は、一見ふざけて聴こえるような曲にも、自然とメッセージ性がこもってきちゃうようになってて。昔は〈ネコ!ネコ!〉(「ネコ飼いたい」)とか〈ウェイウェイウェイ〉(「ウェイウェイ大学生」)って単純に歌ってたんですけど、大人になってきてどうしても言いたいことが増えてきたので、最近はちょっと潜ませるようにしてます。「サークルバンドに光を」みたいな真面目な曲はアルバムのなかに入れたりするようにしてますね。普段ふざけてる分、アルバムにそういう曲があると存在感を持ったりすると思うので。

ーーそう考えると最新シングル『うなぎのぼり』に収録された「創英角ポップ体」はフォントをテーマにした斬新な楽曲ですが、ヤバTの初期に近いですよね。

こやま:そうですね。この曲は本来のヤバイTシャツ屋さんやなっていう感じがしますね。ほんまにヘラヘラしながら作ってますよ。できるだけ歌い方とかアレンジも腹立つ感じにしてます(笑)。

ーーでも「創英角ポップ体」のような曲は、メッセージ性がありそうでない曲が量産されている音楽シーンに対するカウンターでもありますよね。

こやま:そこは狙ってるところですね。サビで急にメッセージある風にして歌い上げるっていうボケがあって。〈羽が生えたら どこまでいけるのかな〉とか「何が?」って感じなんですけど。それがすごい楽しくて(笑)。聴いてくれてる人にも、そういうところを楽しんでもらいたいですね。

ーーこやまさんの歌詞に関する考え方を伺ってきましたが、最後にバンドシーンのなかでオリジナリティを出すために歌詞において意識していることを聞かせてください。

こやま:今回話してて、全員への共感を求めないことちゃうんかなって気づきましたね。タイアップ曲とかリード曲となると、ヤバTの入口にするために多くの人に知ってもらわなあかんって自然と思って歌詞が刺さる対象を広げたりしちゃうんですよね。でもそうなると、ちょっとずつ個性が薄れていっちゃうので、バランスみながらやってます。そのぶん、カップリングではストッパーがないからオリジナリティが全開になる。アルバムとかカップリングを通して、全力でヤバTをやってる曲を聴いてもらいたいなって思いますね。(北村奈都樹)

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