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『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』特集

まったく違うトニーとマリアがここに!『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』稽古場レポート

全5回

第4回

20/1/31(金)

ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season2特集第4弾は、いよいよ稽古場に密着取材。あの圧倒的なダンスは、心震わす歌声は、愛と哀しみのドラマはどのようにして生まれているのか。村上虹郎&宮澤エマ、森崎ウィン&田村芽実によるミニインタビューと共に創作の現場をレポートする。

宮澤の母性と、村上の狂気。ふたりが見せる怒濤の2幕

稽古場の扉を開けると、フロアには思わずたじろぐほどの大人数が揃っていた。それもそのはず。キャストだけで総勢41名。そこにバンドメンバーやスタッフなども加われば、50名以上の大所帯だ。必然的に稽古場の人口密度も濃くなる。稽古着に着替えたキャストたちがハミングしたり、和やかに談笑したり、それぞれリラックスした様子で稽古開始のときを待っていた。

その日稽古が行われたのは2幕。冒頭からラストシーンまでを場面ごとに区切りながら通していく。最初にトニーとマリアを演じたのは、村上虹郎と宮澤エマのふたり。まずは2幕の冒頭。マリアがブライダルショップの同僚たちとガールズトークを繰り広げる場面からスタートする。

トニーとの恋にすっかり夢中になっているマリアはうれしさを隠しきれない様子。思わず飛び跳ねたり、コロンを首筋に吹きかける仕草もご機嫌だ。そんなマリアの女心を、宮澤は弾けるような演技で表現する。「I Feel Pretty」を歌うその声も、鍵盤の音に合わせるように軽やかに弾む。部屋のベッドが、まるで特製のステージだ。女友達も、手を叩いて囃し立てる。

そこへ婚約者のチノが血相を変えて飛び込んでくる。震える口から知らされたのは、決闘の顛末。そして、兄・ベルナルドの死。さっきまで天国にいたはずのマリアが、一気に絶望の底へと叩き落される。弁明にやってきたトニーを、マリアは「人殺し」となじる。緊迫した空気がのしかかり、ふたりの歌声も悲痛に響く。

一瞬で状況が急転直下する振り幅の大きいシーンを、宮澤は感情豊かに見せてくれる。その小さな体のどこにそんなパワーが隠されているんだろうとため息が出るほど彼女の歌声は力強く安定感がある。だからこそ、宮澤の演じるマリアにはどこか母性が感じられる。懺悔するトニーを包み込む、温かく柔らかなマリアだ。

そんなマリアの包容力を強く感じさせたのが、その後のマリアと宮澤佐江演じるアニータのシーン。「A Boy Like That」に乗せてトニーとの恋に反対するアニータ。それに対し、マリアが「I Have a Love」を歌う。その語りかけるような歌声に、マリアの純粋な心が伝わってくる。アニータならずとも、彼女を認め、応援したいという気持ちにさせてしまう極上の歌声だ。心通わせ抱きしめ合うマリアとアニータに、自然と熱いものがこみ上げてくる。それは、マリアをただの恋に溺れただけの向こう見ずな女の子にさせなかった宮澤の力によるところが大きいだろう。

対する村上虹郎のトニーは、森崎ウィンが「危うい」と表現していたけれど、その言葉がまさしくぴったりの10代らしい青さと不安定さがむき出しになっている。見せ場は、2幕のクライマックスに訪れる暴走シーン。マリアの死を聞かされたトニーは、怒りと復讐心に燃え上がる。全身から狂気を放出し、街を駆け回るトニーには、目に映るものすべてをぶちのめすような迫力がある。もともと村上自身が繊細さとエキセントリックさを内包した雰囲気が持ち味だけれど、彼のその危険な魅力がこのトニーで開花している。ミュージカル初挑戦の村上虹郎がなぜトニーに選ばれたのか。その理由を証明するようなシーンだ。

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