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DISH// 北村匠海、「猫」歌唱映像で示したシンガーとしての求心力 俳優業とリンクするボーカル表現

リアルサウンド

20/4/16(木) 12:00

 2008年に子役として俳優デビューし、2012年から DISH//のギターボーカルを担当している北村匠海。もともと“ダンスロックバンド”というバンドとアイドルを融合したようなスタイルでデビューしたDISH//だが、近年はメンバーの演奏力も向上し、日本武道館でライブをコンスタントに行なうなど、着実にキャリアを重ねている。

参考:新田真剣佑×北村匠海W主演映画『サヨナラまでの30分』を支える、劇中バンドECHOLLのボーカル力と存在感

 ただ、バンドとしてテレビに出演する機会はまだ少ないため、実力派としてヒット作に出演する俳優活動に比べると、音楽活動はやや見劣りしてしまう印象もある。しかし、アーティストの一発撮り歌唱映像が投稿されるYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にて、北村がDISH//の「猫」を披露し大きな話題に。彼のアーティストとしての一面にスポットが当たっている(参考:Little Glee Monster、女王蜂 アヴちゃん、秋山黄色らが繰り広げる音楽との真剣勝負 『THE FIRST TAKE』が伝える歌の力 )。

 「猫」は2017年にシングル『僕たちがやりました』のカップリング曲としてあいみょんが作詞作曲した楽曲。動画は4月10日現在で950万回再生を超えている。『THE FIRST TAKE』の投稿動画で2番目に多い再生数になった。一般的には、リード曲に比べて知名度が劣るカップリング曲としては異例の再生数である。動画投稿を伝えた公式Twitterのツイートは2000RTと9000いいねが押され、ファン以外にも広く拡散。多くの人に北村匠海の高い歌唱力を知らしめるきっかけとなった。

 再生数が伸びた理由は話題性だけが理由ではない。聴いた者を一瞬で惹きつける歌声の魅力があったからだ。透き通った声質と伸びやかな歌声。少年のような無垢さを感じるセンチメンタルな響きが胸に染みる。音を外すこともなく、音域も広い。声質だけでなく技術力もある。俳優としての姿しか知らなかった人に、ボーカリストとしてのすごみを伝えた。

 俳優としては憂いを感じる役や、感情をあまり表に出さない大人しい青年の役が多い北村匠海。大きく感情を起伏させる演技ではなく、少しずつ感情を吐露することで想いを表現する演技が特徴だ。2020年1月に公開された『サヨナラまでの30分』では、新田真剣佑とW主演を飾り、劇中バンドECHOLLのボーカリスト役を演じている。北村匠海が演じた窪田颯太は、誰もを魅了する歌声と音楽の才能を持つキャラクター。彼の歌声によってバンドメンバーが少しずつ心が動かされ、バンドとして一つになっていく物語である。つまり物語に説得力を持たせる歌声がなければ映画として成立しない配役を見事に演じきった。

 役柄に入り込み丁寧に表現する演技が、観た者の心を揺さぶり感動させる。そんな俳優としての特徴とリンクするように、歌でも楽曲の世界観に入り込み聞き手の感情を揺さぶってくる。Aメロでは優しく歌い、Bメロで少しずつ思いを乗せていき、サビでは感情を爆発させる。決して叫んで感情的に表現するわけではなく、細かな表現の歌声で惹きつけるーーそれも彼ならではの歌唱と言えるだろう。

 『THE FIRST TAKE』では、原曲とは異なるアレンジで楽曲が披露されることも醍醐味のひとつ。今回の「猫」は、この機会のためにDISH//メンバーがアコースティックアレンジで事前にレコーディングしたものだという。この“場所は違えど仲間と繋がっている優しい空気感”も、ライブや音源では感じることができない、同映像ならではの見どころとなっている。

 『THE FIRST TAKE』に新たに投稿されたDISH//の「Shape of Love」は、北村匠海が作詞を手掛けた楽曲だ。「猫」では歌詞の主人公になり歌う印象を受ける一方、自身の言葉を歌う「Shape of Love」では彼の想いがストレートに伝わってくる。〈あの日々は色褪せて僕の心(ここ)に刺さるんだ〉という後半のフレーズでは、胸に手を持っていき服を掴む。その後のサビでは拳を力強く握っている。中盤ではヘッドフォンのコードを指に巻きつけていた。本人も無意識に動いているように思うが、その仕草からも、等身大の北村匠海として、必死に歌を届けようとしていることが伝わってくる。それが、アーティストとしての北村匠海の真の姿なのだろう。

 改めて、今回の「猫」歌唱映像は、北村匠海のボーカリストとしての求心力を見せつけるものになった。おそらく、俳優としてではなく、バンドマン・北村匠海の姿を多くの人が知ることができたと思う。そして、この注目がそのままDISH//へと繋がっていけばいい。バンドメンバーと共に、無邪気に笑いながら音楽を楽しんでいる北村匠海の姿は、俳優業でも、ソロボーカル映像でも見ることができないまた違った魅力を放っているからだ。
(むらたかもめ)

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