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原作ファン必見! 舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』インタビュー【前編】 演出・中屋敷法仁「最大風速の強い演劇に期待して」

ぴあ

21/4/12(月) 7:00

中屋敷法仁 撮影:杉映貴子

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舞台『文豪ストレイドッグス』(通称、文ステ)シリーズ第5弾となる舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』。2018年3月に劇場版として公開された映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』の舞台化となる今作は、異能力を持つ探偵集団「武装探偵社」の中島敦、太宰治、泉鏡花ら、ヨコハマの裏社会に巣食う「ポートマフィア」の芥川龍之介、中原中也ら、地下組織の盗賊団「死の家の鼠」の頭目であるフョードル・D、今作の鍵を握る謎に包まれた異能力者・澁澤龍彦といった7人のキャラクターにスポットを当て物語が描かれる。

しかし、実は今作は映画の内容をそのまま舞台化するわけではなく、舞台脚本も原作者の朝霧カフカの書き下ろし! 今後の『文豪ストレイドッグス』の世界にも影響する!? 原作ファン必見のその内容とは……? 4月16日からの開幕を前に、演出を手掛ける中屋敷法仁に話を聞いた。

映画にはない、舞台版だけのオリジナルエピソードも

――今作は、映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』を元にしたお話になっているそうですが。

今回は、3年前に劇場公開された映画の舞台版なのですが、3年前には明かされていなかった新しいエピソードや新しい側面がふんだんに盛り込まれていて、映画の内容を踏襲しつつ、また違った毛色の作品になっているんじゃないかなと思います。

――え! それは原作ファンも必見の内容になっているのでは!?

そうですね。脚本も原作者の朝霧カフカ先生が全力で書いてくださったので。この3年間で『文豪ストレイドッグス』という作品群が成長していく中で、単純に3年前のものをやるのではなく、今だからこそできるものがあるんじゃないかということで、この舞台で初めて出る情報もあったりもします。

――書き下ろしの新しいオリジナルエピソードのような形になるということですか?

完全に新しいエピソードもたくさん入っています。とても重要な話になっていますし、これまで2.5次元舞台ということで、アニメや漫画のものをどう舞台化するか、というところでやってきたのですが、逆にこれから舞台を出発点としてアニメや漫画などの世界観に影響が出るような大きな話がいくつか入っているシナリオになっています。

――それは特にどのキャラクターに関わるエピソードになっているのでしょう?

全員ですが(笑)、特に芥川龍之介や中原中也ですかね。元々、映画は登場人物が多かったところを、今回の舞台版ではメインのキャラクターを7名に絞り込んでいるんです。なので、おのずと7人にフォーカスが強く当たり、深く掘り下げられているんじゃないかなという気がします。

――では、今回の舞台を観ると、今後の原作の展開がさらに楽しめるようになる、と?

そうだと思います。今回の舞台でやるエピソードは、もしかしたら原作やアニメなどで描かれない可能性もあるスペシャルなことが多い気がするので、ぜひ観ていただきたいですし、今作を観ることによって『文豪ストレイドッグス』の世界がさらに奥深く感じられるんじゃないかな、と思います。

――映画そのままの舞台化だと思っていたので、今の中屋敷さんのお話に衝撃を受けています(笑)。

僕も演出を担当していますが、かなり衝撃を受ける部分が多くて、今回は単純な映画の舞台化ではないな、という気がしています。

「美しく不気味」というテーマの難しさ

――映画ではド派手なシーンも多いですが、舞台ではどんな表現を考えているのでしょうか?

映画は映像も本当に素晴らしい演出がたくさん施されていたんですけど、演劇は人間でしか描けないので、映画の映像や演出効果などを見て憧れながらも、最後は俳優の肉体に落ち着くようなものを目指しているというのが、今考えていることです。やっぱりどんなに素晴らしい映像や音楽があっても、舞台では俳優さんひとりには敵わないし、俳優さんがどれだけ死力を尽くしてやっているか、本当に生きている俳優さんという生き物以上のものはないと思っているので、そこをどう昇華しようかなと考えています。

また今回、美しく不気味にすることがテーマとしてあります。原作にも骸骨が出てきたり霧に覆われたりするので、ダークだったりスタイリッシュな部分があるのですが、輪郭がぼやけているというのが意外と難しいんですよね……。例えば敵キャラで言うと、めちゃくちゃ強くて悪いやつだと輪郭はハッキリするんですけど、今回の敵は輪郭がハッキリしていないんです。謎めいているし、動機もわからないみたいなところもあったりして。その輪郭がハッキリしていない、ぼんやりしたところの美しさみたいなものが見せられると、「文ステ」がまた違ったステージに行けるんじゃないかな、という気がしています。

――「文ステ」は戦闘シーンやアクションシーンも多いですが、普通の会話のシーンですらとても運動量が多い作品だなと感じます。

それはやっぱり原作からそういったイメージを受けるので、そうなってしまうんです。たくさん動こうとか、たくさん踊ろうとしているわけではなくて、原作の言葉一つひとつに込められている想いだったり、凝縮されている物語というものを表現しようとすると、あまり魂のこもっていない身体だと耐えられないな、という思いはありました。それくらい、本当に原作のシナリオの密度が濃いものなので、それを舞台化すると、ああいった動きの多い表現になっていくんです。

『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』メインビジュアル

――特に「文ステ」はミュージカルでもないのにダンスがここまで多いところも珍しいですし、面白いですよね。なぜ、キャラクターをダンスで表現しようと思われたのですか?

春河先生の原作イラストを拝見したときに、棒立ちのキャラクターがいないんですよね。朝霧先生のシナリオが彩り豊かなこともさることながら、春河先生の絵やコマの送りというのも色々なバリエーションを持っていて。あと、キャラクターたちの衣装や髪型なども非常に動きのある、躍動感溢れるものだったんです。なので、舞台でそれを表現するとなると普通に踊っちゃうんですよね(笑)。それくらい、『文豪ストレイドッグス』のキャラクターたちって生き生きしているし、個性豊かな身体性を漫画の中ですでに持っているので。だから、特に「こういう動きをしよう!」と決めたわけではなく、キャラクターを表現しようと思ったら、おのずとそうなったんだと思います。

――例えば、君沢ユウキさんが演じていたフランシス・Fなども、あんなに尺を取って踊るんだ!?と、原作を見ている人は驚いたのではないかなと思いました(笑)。

それぞれ、あのキャラクターはどういう動きをするのか? という手前に、どんな想いを持っているのか、どういう気持ちで向かい合っているのか、相手に対して威圧感を与えるのか、恐怖心を与えるのか、といった効果みたいな部分も考えて稽古場では振り付けチームと作っていっています。

俳優さんたちは僕が圧倒されるくらいのアイデアマン

――こういう動きやダンスにしよう、とキャストさん本人とも話し合われるのですか?

話し合います。振付師のスズキ拓朗さんとも話しますが、見え方というよりは、感じ方で考えていきますね。つまり、どんな存在なのか。先程も言ったように“威圧感を与える”、“恐怖心を与える”、“何か不可思議な不気味さを与える”とか、そういった効果的に見えるにはどうしたらいいだろう? ということを考えながらやっています。

『文豪ストレイドッグス』のキャラクターは非常に効果的に描かれているところが多くて。ちゃんとそこに一つひとつラインが引かれていたり、きちんと繋がるようになっている。無造作に面白いキャラクターが出ているだけじゃないんですよね。必ずいろんなキャラクターの繋がる部分と繋がらない部分が明確で、そういった部分を意識しながら振り付けを作っています。

――キャストさん側から提案してもらう部分も多いのですか?

例えば、バスケットボールやバレーボールとか、みんなが見たことのあるものはイメージがつきますよね。でも、異能力って一番イメージがしづらいので、異能力を題材にした「文ステ」の現場は一番コンセンサスをとるのが大変かな? と僕は思っていたんですけど、逆に「文ステ」が一番コンセンサスをとらなくていいかなと今は思っていて、かなり俳優さんに自由にやってもらっています。異能力とか、まったく見たことのないものを表現しなくてはならないんですけど、俳優さんは別に異能力がどう動くかではなくて、自分の感情がどうなっているかや自分が今何を目的に舞台上に生きているのか、みたいなことを的確に掴んでくれる方が多いので、俳優さん側からの提案がどんどん出てきますね。僕が圧倒されるくらいみんなアイデアマンです。

――では、中島敦のイメージは、演じられている鳥越裕貴さんの中であのブレイクダンスのような印象を持っていたのでしょうか?

それもやっぱりアニメの五十嵐監督の作画を見ていて、こんなにちょこまか動くんだ! と感じて、自然とそうなったみたいなところがあります。

――「文ステ」の演出全体で心がけていることを教えてください。

ワクワクすることですね。やっぱり異能力なんて誰も見たことがないんですよ。これが異能力表現だ! という完成形みたいなものを僕が持っている必要はなくて、むしろお客様と一緒に「あ、こんな異能力の表現もありなんだ」とか、「こんな驚きもありなんだ」みたいなことを見つけていくことが大切だと考えています。原作もそうなんですけど、本当にいつも驚きに満ちていて、話が進むにつれて驚きの種類が変わってくるんですよね。そこがとても大事で、これは異能力アクションバトル漫画・アニメと言いながらも、異能力というものは常に驚きと新鮮味と発見を持って感じていくものなので、驚きを忘れないようにしています。

稽古場では俳優の皆さんに驚かせてもらいながら、僕も驚きながら、そしてみんなを驚かせながらみたいな、化かし合いが続いている感じがすごく楽しいなと思っています。

植田圭輔くんがカッコよすぎてどうしていいかわからない

――稽古序盤の今(取材は3月中旬)、苦労している部分はどんなところでしょうか?

今は、(中原中也を演じる)植田圭輔くんがカッコよすぎて、本編の内容が頭に入ってこないというのが一番どうしていいかわからないですね。ストーリーが追えなくなっちゃう危険性があるなあ、とか。苦労というか、僕も『文豪ストレイドッグス』が好きなので、僕自身が面白すぎて少し落ち着かなきゃなという感じです(笑)

――シリーズを通してやってきて、主演の鳥越さんの変化や成長は感じますか?

感じますね。でも、鳥越くん自身だけじゃなくて、鳥越くんがみんなを成長させているところが多くて。みんなが成長しているから鳥越くんも成長している、みたいな相互作用がすごくあるなと思っていつも見ていました。「文ステ」はすごく手練れも多くて舞台経験豊富なキャストが揃っているんですけど、この現場だからこそ、何かプラス1個、特別な異能力を身に着けて本番で出来るんじゃないかなと思います。みんな「文ステ」だからできる演技のスタイルとか、本当に異能力に近い特殊な表現を見つけてくれるな、と思っています。

――芥川龍之介役の橋本祥平さんと中原中也役の植田圭輔さんにもインタビューさせていただくのですが、今作のおふたりについても教えてください。

原作の映画よりもふたりの出番が増えているんです。特にふたりが演じる芥川と中也というのは、映画が公開されてからのこの3年間で小説、漫画で一気にいろんな情報が出てきたんですね。映画公開時にはわかっていなかった話が、この3年間でどんどん出てきてキャラクターの厚みが増し、さらに今回の舞台版でまた新しい情報が出てきている。祥平くんとうえちゃんの俳優としての成長以上に、キャラクターのバックボーンや設定などの物語がこの3年間でとてつもなく増えたので、「文ステ」の初演からそれを今読みこなして自分の演技の蓄えにしていると思うと、「すごくずるいな~」と思って見ています(笑)。きっと見え方やキャラクターの捉え方も変わっているので、あのふたりは今一番楽しいんじゃないかなと思います。

――映画の中ではふたりが絡むシーンはそこまで多くなかったのですが、舞台版では増えているのですか?

そうなんです。この3年間積み上げてきたものが原作にあった中で、今作の舞台でも“芥川と中也”という新しいラインのものが見られるんじゃないかな、という気がしますね。マフィアであるふたりのオリジナルのシーンは見どころかなと思います。

『文豪ストレイドッグス』は価値観が更新されていくところが面白い

――中屋敷さんがずっと「文ステ」に携わってきて、『文豪ストレイドッグス』の魅力はどんなところだと思いますか?

少し先程の話の繰り返しになってしまいますが、漫画も小説もアニメも、価値観が更新されていくところが好きですね。やっぱり友情が一番だ! みたいなことにはならないですから(笑)。マフィアは絶対悪なのか? とか、人の命を守るというのはどういうことなのか? など、常に疑問符を抱えながら先へ進んでいったり、解決できない問題が解決できないまま進んでいって、自分の中の価値観が変わっていくところ。善悪や勝ち負けみたいな、簡単な二元論のぶつけ合いにならないんですよね。二元論にならないところの揺らいでる部分というのが非常に面白いところだと思っているので、『文豪ストレイドッグス』は味わい深いですよ。本当に何度観ても面白いし、何度観ても新しい発見がある作品だと思っています。

――ちなみに、中屋敷さんの原作での推しキャラはいるのでしょうか?

僕は結構脇役が好きです。ポートマフィアの広津柳浪とか、あとゴーゴリとか。「ここをもうちょっとやってほしいな、この人どうなってるんだろうな?」みたいな枝葉が残っているキャラクターが好きですね。基本的に僕は考察が好きなので、余白があるキャラクターを見ると、何かあるんじゃないか? と疑いの目を向けるので、それで好きなのかもしれないです。

――では最後に舞台を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

僕は『文豪ストレイドッグス』ってあまり留まることがないと思っていて、原作の漫画も小説も本当に驚くような展開で常に加速し続けていると思うんです。「文ステ」もいよいよその加速にやっと追いついた気がしていて、これまでアニメのものをどう舞台にするのか? というところから、昨年はアニメ化されていない小説の舞台化をやらせてもらいましたし、さらに今回は舞台から新しいエピソードがこぼれてくる、という展開になっています。今、『文豪ストレイドッグス』全体の物語が加速していく中で、舞台もそれに負けず劣らず、すごいスピードで新展開しようと思っておりますので、最大風速がとても強い演劇が観られると思ってご期待いただければと思います。

インタビュー後編、橋本祥平さん・植田圭輔さんの対談は近日公開!


取材・文:能一ナオ 撮影:杉映貴子



公演情報
舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』
http://bungo-stage.com/
脚本:朝霧カフカ
脚本協力:内田裕基
演出:中屋敷法仁
協力:春河35
音楽:岩崎琢
振付:スズキ拓朗
出演:鳥越裕貴 / 桑江咲菜 / 橋本祥平 / 植田圭輔 / 田淵累生 / 岸本勇太 / 村田充 / 他

【大阪公演】
2021年4月16日(金)~2021年4月18日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

【東京公演】
2021年4月23日(金)~2021年5月5日(水・祝)
会場:日本青年館ホール

【ライブ配信】
東京公演 全16公演
プラットフォーム:PIA LIVE STREAM

チケット情報 https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170150

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