Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

元GANG PARADE カミヤサキ、「アイドル」から「振付師」へ 新しい道を歩み始める“覚悟”を語る

リアルサウンド

20/6/28(日) 12:00

J-POPシーンの最前線で活躍する振付師にスポットを当て、そのルーツや振付の矜持をインタビューで紐解いていく連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」。第9回となる今回は、5月22日に自身が発起人であるGANG PARADEからの脱退、そして6月上旬にWACKからの独立を発表し、フリーランスの振付師の道を進み始めたカミヤサキ。アイドルとしての7年間の活動の中で「振付師になりたい」と思った転換点、そして“ゼロからのスタート”に立つ今の心境と覚悟を聞いた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

(関連:GANG PARADE、ファンに支持される泥臭いまでの人間味 宗像明将が“負け組”からの逆転劇を追う

■連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」インデックス
第1回:s**tkingz
第2回:TAKAHIRO 前編/後編
第3回:辻本知彦
第4回:YOSHIE
第5回:リア・キム
第6回:akane
第7回:竹中夏海 前編/後編
第8回:CRE8BOY 前編/後編

「振付をコピーして踊ることがすごく好きになっていった」
ーーカミヤさんが振付師の道を進むため、GANG PARADE脱退だけでなくWACKを離れたことは大きな決断だったと思います。

カミヤサキ(以下、カミヤ):そうですね。自分が作ったGANG PARADEを抜けると決めた時に、社長(渡辺淳之介氏)からも「自分のグループを途中で投げ出すお前とは一緒に仕事がしたくない」と言われてハッとしたのですが(参照:STORYWRITER)、今後も一緒に仕事をさせてもらえるという考えは、自分としても違うと思いました。自分の今の年齢も考えて、あのままWACKに居続けてしまうと多分甘えてしまう気がしたし、自分が作ってきたGANG PARADEを脱退すると決断したのだから、お世話になったWACKを離れて、これから時間がかかるとしても、ゼロからのスタートで大変な思いをするとしても、成長したと思ってもらえる段階でまた(WACKと)一緒にお仕事ができる未来が一番理想だと思っています。

ーー1月3日にGANG PARADEの脱退を発表してから5カ月間、WACKで回るツアーや、GANG PARADEのホールツアーがコロナ禍の影響によりできなくなってしまい、カミヤさんのラストライブ開催も叶っていない状況ですが、発表後から現在までどのような思いで過ごしていましたか。

カミヤ:ファンの皆さんには本当に申し訳ないですし、当初は「来月はきっとできるだろう」と思っていましたが、だんだん「そうもいかないぞ」と。会いに行く予定だった地方の方たちには会えなくなってしまったので、とても残念でした。

ーーそんな中、5月22日に予定されていたカミヤさんの脱退ライブ開催を目指すクラウドファンディングは10日間で2000万円以上集まりました。そのスピード感と反響の大きさに驚きましたが、自身ではどう受け止めましたか。

カミヤ:本当にびっくりしましたね。このご時世もあるし、簡単ではない額だったので、正直難しいと思っていましたが、ファンの方たちが呼びかけてくれていろんな方に声が届いていたし、WACKの子たちが発信してくれたりもして、たくさんの方の力を借りて達成できたものだと思うので、本当の意味で「みんなで作るライブ」ができると思うと、いろんな思いを懸けてしっかり準備していきたいですね。

ーーでは、改めて今回は振付師・カミヤサキとしてのインタビューになるので、カミヤさんのダンスのルーツから聞かせてください。

カミヤ:一番最初は、小さい時にお母さんに連れられて、ミュージカルの音楽などに合わせて踊るリトミングのようなものを習うスクールに行ったんです。だけどまだ幼くてダンスに興味があったわけではないので、自分の意思でダンスが楽しいと思ったのは、ボーカロイドが流行り始めた時に初音ミクの「踊ってみた」のようなニコニコ動画が有名でしたが、自分も「このダンスをコピーしてみたい」と思ったのがきっかけだった気がします。

ーー中学生や高校生ぐらいでしょうか。

カミヤ:そうですね。あとは、当時テレビ番組『ココリコミラクルタイプ』で、キャラクターの“ゴリエ”が踊っていたダンスを中学校の応援団でコピーしたんです。そのぐらいから、振付をコピーして踊ることがすごく好きになっていって、テレビやボーカロイドのダンスを真似して踊っていました。

ーー学生の頃はサッカーなどのスポーツもされていたんですよね。

カミヤ:サッカーや水泳をしていました。だけど、高校生の頃はヒップホップなどを踊っていたダンス部の女の子に内心では憧れていました。楽曲や衣装、振付も自分で決めて、文化祭や新入生歓迎会で踊っているのを見て、面白そうだなと思っていたんですが、いわゆるスクールカースト上位の子が入るものだと思っていたので、自分は違うかもと思って、入りませんでした。

ーー歌や楽器はどうでしたか?

カミヤ:軽音楽部に入って、ボーカルやキーボードを演奏していました。

ーーももいろクローバーZや私立恵比寿中学が好きだったそうですが、自分がアイドルになりたいと思ったきっかけはありましたか。

カミヤ:ももいろクローバーZさんの振りコピユニットをやっていて、アイドルを好きになってからそれまでよりダンスへの興味や、踊ってみたいという気持ちが強くなりました。私は当時から割と派手な見た目で、いわゆるアイドル像とはかけ離れたイメージだったので、周りには「こういうことがしたい」とは正直に言えなかったんですよね。でも、いざ振りコピをしてみると、ステージに立つことや踊ることがすごく楽しくて、自分の中でも歌って踊りたいという気持ちが大きくなっていきました。

 その時がちょうど就職活動のタイミングとも重なったので、ラストチャンスというわけではないけど、就活に集中するためにも一度ダメ元で挑戦してみようと思って、BiSのオーディションを受けました。

「人数が多い中で、どう一体感があるグループに見せるか」
ーーご自身を「アイドル像とはかけ離れたイメージだった」と話していましたが、BiSというグループもまた、それまでとは全然違うアイドル像を提示したグループだと思います。

カミヤ:加入する前に、BiSの赤坂BLITZ(マイナビBLITZ赤坂)でのワンマンライブを見て、振付にすごく驚きました。今まで自分が好きだったアイドルのダンスとは全く違って、衝撃を受けたことを今でも覚えています。なのでBiSは、ステージパフォーマンスにおいても当時から新しかったなと改めて思います。

ーーそうですね。カミヤさんはBiSの時から振付を担当されていましたよね? グループ内でカミヤさんが振付をするようになった最初の経緯は何でしたか。

カミヤ:旧BiS(第1期)の時も、加入後の「Fly」(2013年)あたりから振付を担当させていただいていましたが、当時はわからないことが多かったですね。BiSは、“自給自足アイドル”と言っていたぐらい、どんどん挑戦させてくれるグループだったので、振付をしたいと言った時に「じゃあ次の曲でやってみる?」と言ってもらえて。特に理由があったわけではなく、当時は「ダンスが好きだから振付もしてみたいな」ぐらいの気持ちだったと思います。

ーーやはり最初に見たBiSの振付に衝撃を受けたことが大きかったのでしょうか。

カミヤ:それも大きいけど、どういうキャラクター性をグループで発揮していけばいいのか悩んでいた時期だったので、自分はキャラよりもパフォーマンス面で引っ張っていきたいという気持ちが強くなったんだと思います。今振り返ったら「何考えてんだ」と思いますけどね。

ーーそこからカミヤさんはプラニメ、POPを経てGANG PARADEに所属します。GANG PARADEはカミヤさんが引っ張っていた部分も大きいように感じますが、ご自身で振り返ってGANG PARADEの活動がもたらした変化はありますか。

カミヤ:単純に、考える分量が増えたなと思います。旧BiSの時は他人任せな部分もあったし、それこそプー・ルイが作ってきてくれたグループだったから自分もそこにいることができた。その分いらない遠慮もしていたし、それが結果的に甘えて見えてしまっていたのかもしれません。だけどやっぱりGANG PARADEになってからは、全員がこのグループに入りたいと思って入ってきてくれた子たちだったから、いろんな子の人生を背負うという責任感と、グループをダメにしたくないという気持ちがすごく強かったです。様々なことに対する劣等感をパワーにして「ここで終わってたまるか」という思いで活動していましたね。振付に対する考え方も、自分がいいと思うものだけではなくて、歌っている子が歌に感情を込めることのできる動きになっているか、とか、俯瞰的に考えるようになっていったと思います。

ーーGANG PARADEの振付の際に意識していたポイントはありますか。

カミヤ:人数が多い中で、どう一体感があるグループに見せるかというのはいつも考えていました。GANG PARADEでは「技」と言っていましたが、表題曲に必ずその「技」を入れるようにしていて。たとえば全員で手をつないで間をすり抜けたり、円になって歌っている子の周りをグルグル回ったり、全員で作り上げていることが伝わる振りは絶対に入れるようにしていました。

ーーアイドルの活動を続ける中で、振付師の道に進みたいと思ったのはいつ頃からですか。

カミヤ:自分が振付した曲に対していろんな方から「この振りめっちゃいいね」と言っていただけるうちに、自分のグループ以外の振付もしてみたいという気持ちが徐々に芽生えていきました。GANG PARADEからBiSにもう一度戻って活動させてもらった“レンタルトレード”という時期があったのですが、その時に振付した「SOCiALiSM」(2017年)は今までの自分の振付に対する概念を壊してくれた曲だと思っています。もちろんそれは自分だけの力じゃなく、みんなで試行錯誤したことがいろんな方からの評価にもつながったと思いますが、自分の自信になったし、もっと(振付を)勉強したいと思うようになっていきました。

 また、自分の中でさらに大きなきっかけになったのは、レンタルトレード中に初めて、ステージで踊るGANG PARADEをお客さんの視点で見た瞬間でした。自分の振付でこんな風にお客さんが盛り上がっていて、メンバーたちも自分が伝えた構成と振りと意味をこんな風に表現してくれるんだ、と感動したんですよね。今考えるとあの瞬間がすごく大きなきっかけだったと思います。お客さんがステージを見て楽しんで、演者がお客さんを前にして作り上げるステージの全部を客観的に見れるということが衝撃的でした。それまでは自分も演者だったから自分の振付をライブで見ることができなかったので、トレード中にGANG PARADEの作品を初めて外から見た時に、踊ってくれているメンバーにも感謝したし、すごく嬉しかったです。

ーーあのレンタルトレードが今につながっているんですね。ほかに好きな振付の曲はありますか?

カミヤ:レンタルトレードから戻ってきた時にメンバーのマイカ(キャン・GP・マイカ)と一緒に作ったGANG PARADEの「GANG 2」(2018年)も好きです。「GANG 2」はGANG PARADEに戻った時の曲だし、「SOCiALiSM」はBiSに戻った時の曲、あとPOPの「Happy Lucky Kirakira Lucky」(2015年)も無期限活動休止から戻った時の曲なのですが、そういう“戻った”時の曲は振付も好きな作品が多いですね。

ーーカミヤさんの中で様々なターニングポイントとなる瞬間に「ダンス」があったんですね。どうしてそこまでご自身が振付にのめり込んでいったのだと思いますか。

カミヤ:小さい頃から、自分でものを作ることがすごく好きで、絵を描くことも好きでしたが、絵は書き終わって自分の手から離れた瞬間に、違うものになってしまうという感覚があって。だけど、振付は自分の体でできるじゃないですか。「自分を表現する」ということに対して初めて自信が持てたものが振付でした。

 それと、今までアーティストの方のパフォーマンスを見てきた中で、もちろん音楽や歌詞にも共感や感動はたくさんあるんですが、その中でもやっぱりダンスの映像は何度も見てしまうんですよね。なので自分も、何度も見たくなると思ってもらえるダンスや、感動してもらえる作品を作っていきたいと思っています。

ーー歌詞とリンクした振付などに惹かれることが多いですか?

カミヤ:J-POPだと歌詞とリンクしているダンスが好きですね。ほかにもよく聴いているK-POPなどは、歌詞がわからなくても視覚的な情報がたくさんあって、ダンスを見てどういう曲なのかがわかるから、MVやライブパフォーマンスを見てこちらも感情的になれるし、曲の持つ世界観がよく伝わってきます。

ーーこの先、どんな方の振付をしたいと考えていますか。

カミヤ:私はやっぱりアイドル文化がすごく好きなので、自分が長く過ごしてきたアイドル業界のお仕事をいただけたら嬉しいです。もちろんたくさん勉強していかなければいけないことだらけですが、将来はアイドル以外の方々とも一緒にお仕事していきたいなと思っています。ただ今は、自分の振付がいいと思ってくださっているのか、今までの経験で声をかけてくださっているのか……と正直考えてしまう部分もありますし、自分の振付に自信と誇りを持てるかは、本当にここからの自分の頑張り次第だと思っています。

 もちろん今までの経験に助けられる部分も絶対にあるし、心から感謝していますが、今後は自分の振付をたくさんの人から認めてもらえるようになりたいです。最初は多分、「元GANG PARADEのカミヤサキが振付したダンス」に興味を持ってくれる方もいるかもしれませんが、これからお仕事でご一緒する方やそれを見てくださるファンの方に、「これって誰が振りをつけたの? カミヤサキって人なんだ」と思ってもらえるようになっていきたいです。

「作品そのものに対する声などがこれまでよりダイレクトに自分に響く」
ーーこれまでアイドルとして表舞台に立っていたカミヤさんが、裏方とも言える振付師の道を進むということに強い覚悟を感じました。

カミヤ:確かに表舞台に出ることはなくなりますが、後ろ髪を引かれる気持ちはあまりないんですよね。でもこれからは、作品そのものに対する声などがこれまでよりダイレクトに自分に響くのだろうとは覚悟しています。GANG PARADEの頃は、メンバーとして振付をしていて、それを見てくださるファンの人は温かい心を持って見てくれるし、いいねと言ってくれることもたくさんありました。だけど、これからはそんな甘えが効かなくなるからこそ、悪い評価も良い評価もそのまま返ってくると思います。そうして自分の作るものに対して自信を持てたり、反省するきっかけをもらえる環境に飛び込めたことが“嬉しい”という感覚が今は強いです。

ーーアイドルの肩書きをなくすことで、色んなフィルターを通さずに自分の振付や作品を観てもらえる。

カミヤ:そう思います。もちろん、GANG PARADEの時も振付を担当させてもらえることはすごくありがたかったし、うれしかったです。だけど心のどこかで「自分がメンバーだから」という甘えや、観ている人がWACKを好きでいてくれているからこそ、許してもらえていたのではと思うこともあり、自分の振付に絶対の自信を持ち切れない部分もありました。なので、“腹を括る”ではないですけど、振りを作ることに関して真正面に、ゼロから向かっていけるいいスタートになったと思っています。これから自分の作品が世に出たときに、たとえばライブでその曲を楽しんでくれているお客さんと、一生懸命踊ってくれる演者の方がいたら、その景色が自分にとっては最高の評価になると思います。

ーーJ-POPシーンでは、だんだんと振付師の方のクレジットが出る機会やダンスが注目される機会が増えてきました。カミヤさんも約7年間アイドルとして活躍されていましたが、J-POPにおける振付の重要性をどういうところで感じていますか。

カミヤ:最近の話で言えば、今回のコロナ禍の中で、「ダンスってすごい」と思う場面がいくつもありました。SNSのコンテンツでも、ダンスを届ける動画がたくさんあったし、それに救われた人もいると思います。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも“振付特集”を放送していたのを観て、娯楽としてダンスは絶対必要だし、音楽とは切っても切れない大事な存在なんだと改めて感じましたね。こういう事態になって、ダンスが色んな場面でフィーチャーされていることを考えると、振付に対する興味が昔よりも増えているのは間違いないし、DA PUMPさんの「U.S.A.」や三代目 J SOUL BROTHERS(from EXILE TRIBE)さんの「R.Y.U.S.E.I.」などもそうですが、SNSの普及やTikTokの流行とともに、振付やダンスの重要性はこれからも大きくなっていくのではないかと思います。(神人未稀)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む