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OKAMOTO’S オカモトショウのマンガビレッジ

3大“大好きな”SFマンガの1作! 『銃夢』主人公・ガリィに惹かれること間違いなし

隔週連載

第50回

20/11/23(月)

オカモトショウが『BLAME!』『風の谷のナウシカ』とともに、「自分にとっての3大“大好き”SFマンガです」と語る『銃夢』(著:木城ゆきと)は、1990年代前半に『ビジネスジャンプ』で連載された作品。ディストピア的世界観、圧巻の格闘シーン、魂の所在を巡るストーリーなどが詰まった本作について、オカモトショウが思い入れたっぷりに紹介します。

── 今回はSFマンガの名作『銃夢』。昨年、この作品を原作とするハリウッド映画『アリ—タ:バトル・エンジェル』(監督:ロバート・ロドリゲス)が公開され、話題を集めました。

オカモトショウ(以下、ショウ) ビックリしましたね! このマンガを初めて読んだのは友達の家だったんで、「めちゃくちゃ面白い!」って思ったんです。でも、『銃夢』の話を出来る人が周りにはいなくて。ハリウッド映画になるなんて想像してなかったから、発表されたときは驚きました。俺もこのマンガはずっと好きで『BLAME!』『風の谷のナウシカ』と『銃夢』が3大“大好きな”SFマンガなんですよ。

── サイバーパンク的な雰囲気、カッコいい戦闘シーンなど、ショウさんの好きな要素が詰まってますよね。

ショウ 完全にそうですね(笑)。主人公のガリィが使う“パンツァークンスト”という格闘術もめちゃくちゃすごい。ストーリーを説明すると、舞台は空中都市の“ザレム”と、そこから捨てられる廃棄物がたまっている”クズ鉄町”。下にいる人間は空中都市に住んでいる人たちがどんな暮らしをしているか知らないし、上の人間は立場を脅かされないように、空を飛ぶ機械と銃火器を禁止している。その結果、下の街では格闘術が発達していくんです。

── 究極の格差社会ですね。

ショウ まさにディストピアですよね。主人公のガリィはゴミのなかで発見された女の子で、記憶を失っているんです。自分はどういう存在なんだ? ということを探しながら、成長していく物語ですね。ストーリー的にはほぼ戦いなんですよ。ガリィは野心がなくて、「上の都市をぶっ壊してやる!」みたいなことは思ってないんだけど、どんどん戦いに巻き込まれていく。下の街は貧しくて、健康状態も悪いから、機械の部位を体に入れてサイボーグ化してるんです。

── ザレムの人たちは脳が電子チップ、身体が生身。クズ鉄町は脳が生身で体が機械。この対比が大きなポイントですね。

ショウ これもSFの王道なんですけど、機械化された体、電子チップの脳を描きながら、“魂の在処”みたいなテーマが何度も出てくるんですよね。サイバーパンク的な感じもそうだし、ディストピアもそうなんですけど、自分にとっては、SFの基礎みたいなものを教えてくれたマンガなんですよね。SFオタク的な要素もすごくあって、武器や設定の説明が欄外にビッシリ書き込まれていたり。掘れば掘るほど面白くなる作品ですね。

── ガリィのキャラクターも『銃夢』の魅力ですよね。

ショウ とにかくピュアなんですよね。金、地位、名声、権力みたいなことにはまったく興味がなくて、もっと本質的なもの、人間の根底にあるものを信じて生きている。ストーリーに沿っていろんな敵が出てくるんですけど、みんなガリィを好きになっちゃうんです(笑)。ちょっとジブリ映画に出てくるようなキャラクターなんですよね。

── 確かにちょっとナウシカに似てる気が……。

ショウ 近いところはあるかも。おどろおどろしい現実を少女のピュアな視点で見つめているというか。絵柄もかなり違うし、ガリィには、ナウシカのような母性、包み込むような感じはあまりないですけどね。

── ガリィは武術の才能があって、どんどん強くなっていきます。彼女の成長物語という側面もあるのでは?

ショウ そうですね。大人になるというより、逞しくなるイメージですね。生きるための妥協はしないし、もちろん汚いこともしなくて、頼りがいは出てくるんだけど、ずっとピュアなままっていう。男性にも女性にも愛されるキャラクターだと思います。ガリィの周りの人たち、敵のキャラクターもすごく魅力的なんですよ。ボスキャラみたいな敵も完全な悪ではなくて、どこかチャーミングで。SFマンガに興味がない人でも読みやすいと思いますよ。

── 『銃夢』は90年代後半以降のSFマンガにもかなり影響を与えているとか。

ショウ あくまでも読者の目線ですけど、『からくりサーカス』にも通じるものがあるし、『Dr.STONE』の作者はたぶん、『銃夢』が好きなんだろうなって気がします。そういうつながりを見つめるのも楽しいですよね。『銃夢』は全9巻で完結しているのでちょうどいいボリュームだし、続編の『銃夢 LastOrder』、最終章に位置付けられてる『銃夢 火星戦記』も続いているので、ずっと楽しめると思います。

(取材・構成=森朋之)

プロフィール

オカモトショウ(OKAMOTO’S)

1990年生まれ、ニューヨーク出身。 OKAMOTO'Sのボーカル担当。
2010年3月、「S×SW2010」に日本人男性としては最年少での出演を果たす。そのまま全米6都市を廻るツアーをおこない、5月に1st.アルバム『10'S』でデビュー。
その後もオーストラリアツアーや夏フェスなどに出演。11月には2nd.アルバム『オカモトズに夢中』、翌年9月には3rd.アルバム『欲望』と、ライブを続けながらもアルバムを立て続けにリリースする。
2017年、7thアルバム『NO MORE MUSIC』を発売し、中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを成功。2019年、8thアルバム『BOY』を発表し、7月には日本武道館でのワンマンライブを成功させる。その他、2018年よりNHK教育テレビ「ムジカ・ピッコリーノ」のベルカント号・船長、ジュリオとして出演中。

Label : Sony Music Labels
HP : http://www.okamotos.net/


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