内田雄馬が語る『Over』とアーティストとして大切にする思い「たくさんの人に挑戦を続ける姿をお届けできたら」
20/2/23(日) 18:00
声優・歌手として活躍する内田雄馬が、5枚目となるシングル『Over』を2月19日にリリースした。TVアニメ『あひるの空』のエンディングテーマに起用された表題曲「Over」は、アニメの世界観を表すようなロックを基調とした楽曲。「ロックはアーティスト・内田雄馬にとって挑戦の一つ」と語る彼に、本作で挑んだこと、内田雄馬がアーティストとして大切にしている思いなどについて聞いた。(編集部)
アーティスト・内田雄馬のテーマは、挑戦を続けること
ーー「Over」は『あひるの空』エンディングテーマとしてもオンエア中です。内田さんのシングル表題曲としてはロック色の強い、新境地と呼べる楽曲になりましたね。
内田雄馬(以下、内田):『あひるの空』はロックとの親和性が高い作品なので、その世界観を表現すべく今回は僕もロックで挑みました。『あひるの空』のためのロックと、アーティスト・内田雄馬として表現したいものを乗せた楽曲にできればと思っていたのですが、そのどちらも込められていて、バランスがよかったのが「Over」だったんです。自分としても非常にビビッときた出会いでした。
ーー内田さんは、シングル曲にこういったロックな楽曲を歌うビジョンはありましたか?
内田:アーティスト・内田雄馬のテーマは、挑戦を続けることなんです。今までロックというジャンルにあまり馴染みがなかったのですが、アーティストデビューするにあたって「どういう音楽をやっていこう?」と話し合う中で、プロデューサーさんがロックを聴かせてほしいと言ってくださって。もともと僕がEDMやR&Bといったサウンドが好きだったので、それとロックを掛け合わせた音楽を作ろうという方向性でスタートしました。だからロックはアーティスト・内田雄馬にとって挑戦の一つとしてあって、今回、5枚目という区切りのいいタイミングで改めて挑戦してみようと思ったんです。挑戦を続ける内田雄馬のスタンスと、挫折を経験しながらも自分達の好きなバスケットボールに向かっていく『あひるの空』のテーマ性が合致した楽曲になったと感じています。
ーー例えば、3枚目のシングル曲「Speechless」は優しく包み込むような歌い方ですが、今回の「Over」は力強いボーカルが印象的で、時には張り上げるような歌い方にも挑戦していますよね。
内田:そうですね。今回の楽曲は、レンジがいつもより上なので、そういった意味でもかなり挑戦でした。もともといただいていたデモからキーを下げようという話もあったのですが、このぐらいのギリギリのラインを歌うことによって新たな挑戦ができると思い、このレンジの中で表現すると決めました。本当に息つく場所がなかったり、かなり息切れを起こしながら収録させていただいたんですが、その分限界ギリギリまで攻めた表現ができたんじゃないかと思います。
ーー今までに比べると大変なレコーディングだったんですね。
内田:普段は後ろに音を抜いたり、柔らかく音を響かせてリリースするという歌い方が多いのですが、「Over」は後ろから響いて空間を広く歌うというよりは、よりギュッと音の圧を集約して真っ直ぐ届けるようなイメージで歌っていて。それが力強く我武者羅に前に突き進んでいる感じに繋がったらいいなと思っていたので、いつも使わない音圧感を作るのに苦労しました。声優の仕事では、息のコントロールや響かせる場所の変化で人間の呼吸感を変えるということをやっているのですが、歌でもそういった表現を取り入れたいと思っています。今回はキーが高いため形にこだわり過ぎると声が出なくなってしまうので、その上手い塩梅を探しながら、ちょうど歌いきれる場所を探っていくのが大変でしたね。でも、いつもの自分とは違うアプローチは楽しかったです。
ーー内田さんは『アイドルマスター SideM』や『うたの☆プリンスさまっ♪』、『KING OF PRISM』シリーズなど、様々なキャラクターソングを歌われていますが、そのような楽曲とアーティスト・内田雄馬として歌うのはどのように違いますか?
内田:アプローチの形が違いますね。キャラクターソングは、内田雄馬という枠の中からどの部分がそのキャラクターに近いかを探って、その中で枠組みを決めて表現していくんです。例えば、声質や音域、さらにそのキャラクターがどれぐらい声が出る子か、ビブラートをかけようかなど、僕の場合はそういった表現の幅を持たせています。キャラクターの声質にはある程度レンジを決めるのですが、声質をこだわるというよりは、そのキャラクターがどういう歌い方をするかを考えて、最終的にキャラクター性に沿って歌うのがキャラクターソングだと思っています。そして、その枠組みを取っ払って歌えるアーティスト・内田雄馬としては、歌い方の選択肢は無限にあるんです。それぞれのキャラクターソングで培ってきたものを全部繋ぎあわせて、新しい表現に繋げていきたいと思っています。キャラクターソングでは、技術的にも細かいことを意識していて。ブレスコントロールや息をどれぐらい入れるのか、抜くのか、響く場所は胸にするか、それとも頭の方にするか、ということでもかなり違いますし、そのアプローチの仕方が各々のキャラクターソングで変わってきます。さらにロックを歌う時もあれば、ダンスミュージック、童謡唱歌もありますし、いろいろな歌を歌わせていただくことによって、様々なパターンを組み合わせることが可能になりました。
ーーなるほど。
内田:その上で、アーティスト・内田雄馬としては、いただいた楽曲が一番映える歌い方を模索して歌うんです。一つ芯としてある伝えたいことに対して、どういったアプローチをするのかを大事にしています。表現方法、歌い方はどんな形でもありだと思っていて、少なくともキャラクターソングでやってきた様々な表現は、どれを使っても内田雄馬になる。その選択ができるのは、今までキャラクターソングを歌わせていただいてきた経験のおかげだと思います。僕の中で根付いた歌い方もありますが、それだけだともったいないなと考えていて。伝えたいことは変えずに、表現は楽曲に合わせていろいろな形を試していくのが、アーティスト・内田雄馬らしいかなと思っています。
ーー「Over」は力強いメッセージを放つ楽曲ですけど、『あひるの空』という作品を通すとより歌詞とシーンが重なっていきますよね。
内田:楽曲を制作していただいたSHOWさんはTVアニメ『この音とまれ!』第2クールエンディングテーマだった4th シングル「Rainbow」も作ってくださった方で、今回も『あひるの空』の世界観を理解しながら、内田雄馬の音楽とリンクするような歌詞を書いていただきました。1stシングル曲「NEW WORLD」からお世話になっている方で、本当によく分かっていただいているなと嬉しい気持ちです。
ーー特に内田雄馬の音楽とリンクするような歌詞は?
内田:〈君がいればどこまでだって行けるさ〉ですね。僕のアーティスト活動は、チーム内田雄馬として表現したものを受け取ってくださるみなさんがいて、そのみなさんから僕らが挑戦し続けるエネルギーをもらっているからできるというのが前提としてあるんです。実際に僕らの思いを受け取って「新しいことに挑戦できました」とか、「海外に仕事に行くことになりました」と言ってくださる方もいらっしゃって。みなさんからそういったエネルギーをもらえたからこそ、次の新しいことに挑戦しようという力が芽生えてくるんです。音楽っていくら発信しても、聴いてくれる人がいないと完成しない、聴いてくださった方の中で楽曲が入り込んで完成するものだと思っています。その完成した思いを僕らに届けてくださっていて、そういうみなさんとの相互関係で今まで頑張ってこられたと思うんです。これは『あひるの空』にも通ずる部分で、才能がないと挫折して諦めてしまった人達がバスケが好きでもう一回挑戦したいと立ち上がる物語は、観てくださる人達にも挑戦するエネルギーを届ける。受け取った、響いた人がまた別の人に返していくことで頑張っていけるという形が、この「Over」の歌詞の中では描かれていると思います。
ーー歌詞がぴったりリンクしているんですね。
内田:アーティスト・内田雄馬が頑張ろうとしている人の光になったらいいなという思いがあるので、内田雄馬はどんな時だってチャレンジをし続けるという提示をしたいと思っているんです。ゴールがどこにあるか分からないけれど、諦めずに最後までやり続けてみれば、きっとチャレンジしてよかったなと思えるところにたどり着くはず。そこに行く姿を見て、自分もチャレンジしてみようと一歩踏み出してくださるる人がいたらいいなと思っているので、この楽曲にはそんな思いが込められています。
ーーMVもバックバンドを従えたロックテイストの映像になりました。
内田:バンドのみなさんと一緒に撮るというのと、雨を降らすという2つのテーマが初めてのチャレンジでした。今までのMVではダンスを取り入れることが多かったのですが、それを一切なくしてロックの歌を届けるということで、YouTubeでいろんなロックバンドを観て研究しましたね。マイクのコードをロープみたいにしてみたり、マイクスタンドを蹴り倒してみたり、予定になかったことにチャレンジしました(笑)。
ーーサビの〈Oh oh oh oh oh〉の歌詞では、オーディエンスにマイクを預けるようなパフォーマンスをしています。
内田:その部分はみなさんでぜひ歌ってほしいという気持ちを込めています。そこに関しては、自分が歌ったカットは一回もないかもしれません(笑)。今までもみんなで歌えるアンセムと呼べるような楽曲を作っているのですが、この楽曲でもMVを見ながら一緒に歌いたいという気持ちになっていただけたらいいですね。
ーーライブの定番のパートになりそうですね。
内田:ライブでもここはぜひ歌ってほしいですね。かなりキーが高いんですけど……(笑)。女子はちょうどいいかもしれないですが、男子は全力で限界を超えて“Over”してほしいです。
僕だけのものではない“内田雄馬”という存在が見えるようになった
ーー対して、収録曲の「Loser」、「Buzzer Beater」の2曲はヒップホップ色の強い楽曲です。
内田:そうなんです。今回、実際にバスケの試合を観させていただく機会があったのですが、試合中にDJがフロアを回しているあの雰囲気がかっこよくて、せっかくならそういった楽曲を作ってみたいと思ったんです。そして、アーティスト活動の中でロックともう一つチャレンジしてきたものがラップだったのですが、「Loser」と「Buzzer Beater」ではその要素を入れていただきました。「Loser」はオフェンスを、「Buzzer Beater」はディフェンスをイメージした楽曲になっています。「Loser」は自分が歩んでいく上で挑む気持ち、「お前はLoserだ」と突きつけるような挑む姿勢を描いています。1対1のタイマンで「お前を倒すぞ」みたいな気持ちですね。ラップの部分だけでなく、BメロとCメロ、サビはメロディアスになっているので、今までの自分の楽曲をより攻撃的に発展させて作れたと思っています。ここまで攻めの姿勢で楽曲を作ったのは初めてなのですが、男の子らしい「負けねぇぞ!」みたいな強い気持ちを表現できるいい機会になりました。
ーーラップはもともと得意な分野なんですか?
内田:それが全然(笑)。ラップは声優とは真逆の表現なんです。声優は全ての言葉を立てるのが前提なのですが、ラップは全てを立てるんじゃなくて、どういう韻の踏み方をするかが大事だと感じていて。音を丁寧に置くだけじゃなくて、音を捨てて表現したりもしますし、言葉へのアプローチの仕方が違うんです。いつもの感覚で歌うと、ハキハキした滑舌のいい歌い方になってしまって。文章の中には立てどころがあって、日本語は流れとして上から落ちてくるんですね。でもラップのメロディーの中には下から上がるような流れが多少出てくるのですが、それをこの滑舌のままやっていくと非常に違和感があるんです。ここを変えるというのは、今まで声優としてやってきた技術的な部分と、この歌に対してこの言葉をどう立てていくかというアプローチとしてかなりの挑戦でしたね。
ーー面白いです。かなり分析されている。
内田:あまりしっくりこないという時に分析してしまいがちです(笑)。結果的にみなさんに気持ち良く聴いていただけるように、試行錯誤しました。音楽性、メッセージ性が立つ、楽曲が映えるアプローチを見つけていくのは大変でしたね。
ーーテレビ番組で早口言葉を披露している内田さんを観ていたのもあって、勝手にラップは得意なものだと思っていました。
内田:僕、リズム感がないんですよ。四分音符大好き人間なので、シンコペーションや裏拍などが入ってくると「あれ?」ってなってしまうんですよね(笑)。ラップは、リズムが小気味良くて、深いことを考えなくても気持ち良さを感じるといいますか、歯切れの良さで高揚感もあって聞き馴染みがいい。でも、実際には言葉を立てたり、捨てたりすることでリズムを作っていて、一朝一夕でできるものではないなと感じながらも、自分にできる手段を駆使して今回は歌っています。
ーー2月24日には1st LIVE TOURの追加公演としてパシフィコ横浜 国立大ホールにて『OVER THE HORIZON 〜&Over〜』が開催されます。改めて、ツアーを振り返るといかがでしたか?
内田:最初のライブツアーだったので、はじめましてという気持ちを持ってみなさんとお会いできたと思っています。こういう風にライブをやっていきますよというのを表現したいと思っていたので、「歌って踊ってパフォーマンスをする人」をテーマに今回は作らせていただきました。僕は三浦大知さんが大好きなのですが、歌って踊る姿は人に勇気や感動、高揚感を与えるものだと思っています。音楽は生で一緒に共有できるというのがいいところで、ライブはその最たるもの。今回のライブでは本当にたくさんの方にお越しいただけて、それだけの人数の方が内田雄馬のパフォーマンスを観て、共有して楽しんでくださるというのは、すごいことだなと思います。その場でしか感じられないエネルギーがたくさんありましたし、実際こうしたらもっと楽しめるかなという発見もありました。第一歩としては非常にいいライブが作れたんじゃないかなと思います。伝えたい気持ちも全部お届けできて、みなさんからもたくさん返していただけました。楽しかったなというのが一番ですね。
ーー追加公演はどういった内容になりそうですか?
内田:『OVER THE HORIZON』の集大成という形で制作させてもらおうと思っています。ツアーの東京公演の最後に「ピアノの弾き語りをします」ということをお話させていただいたのですが、とても緊張しています……(笑)。
ーー練習は順調ですか?
内田:現時点では全然思うように弾けないのですが、楽しいのでなんとかなると思います(笑)。どういう練習をしようかなどちゃんと考えて取り組んでいけば必ず結果は出ると、僕はそう思っているんです。それは実際に自分が経験してきて感じたことでもあって。お芝居の仕事でも悩みながら毎回の現場で試行錯誤を重ねていった結果、小さいけれどそれが身になったことがあったんです。「芝居とてもよかったです」という声もいただけて、頑張ってきたことが無駄じゃなかったんだって、教えていただきました。ピアノにチャレンジするということもそうで、練習をしたら、どんな形であれ必ず結果は出ると思うので、今は練習するのが楽しみです!
ーーその先の5月にはデビューから2周年を迎えます。
内田:デビューが3カ月前くらいじゃないかと思うほどに、あっという間過ぎてびっくりですね。アーティストデビューして本当によかったなと感じるのが、考え方が広がったことです。声優を続ける中でタイミングや縁があってデビューさせていただけることになったのですが、音楽活動をすることによって、僕だけのものではない“内田雄馬”という存在が見えるようになりました。アーティスト・内田雄馬と個人の内田雄馬は別の存在で、どうやってそれに対して向き合っていくかという目線を持ったことにより、役を演じる時も一歩俯瞰して見ることができるようになったんです。一歩俯瞰して見ることによって、いろいろな人の考えや思いを感じようと姿勢が変わってきました。たくさんの人とコミュニケーションを取って、様々な形や可能性を探っていこうと気持ちが変わっていったのは、僕にとって大きな変革でした。自分だけの視点ではなく、みんなでアーティスト・内田雄馬というものを作っていって、たくさんの人に挑戦を続ける姿をお届けできたらいいなと思っています。まずは日本全国、その先は海外の方にも届けていきたいというのが個人的な夢です。たくさんの方に聴いていただいて、挑戦して、前に進んで行く。好きなものに突き進んでいけばきっといい結果が生まれるんじゃないかと思っているので、その姿をよりたくさんの人に届けられるようにしていきたいですね。
ーー海外からのリアクションも内田さんには届いていますか?
内田:アジアだけでなく、いろいろなところから反響をいただくこともあります。アニメ文化を愛してくださっている海外の方々がたくさんいらっしゃるので、その方たちにも聴いていただけているのは嬉しいですね。言葉という壁を超えて届くのを実感させていただいていて、だからこそ、しっかりとイメージを持って海外の方にも届けていきたいですね。
ーー今は、NetflixやSpotifyといったストリーミングサービスを通してアニメ、アニメソングが届く時代ですもんね。
内田:そうですね、タイムレスに届けられるようになりました。アニメーションは日本の素晴らしい文化だと思うので、それを届けるためにも、内田雄馬をきっかけにアニメーションというものを好きになってもらえたら嬉しいです。日本のアニメがさらに盛り上がっていったらいいなと思うんですよね。
ーー最後に、アーティスト・内田雄馬が今見ているビジョン、より挑戦していきたいことを教えてください。
内田:アーティスト・内田雄馬として、第一歩を踏み出したばかりなのですが、ライブという一つの到達点、ゴールを迎えたということは、次へのスタートでもあると思うんです。次はどんなことをしようとか、また新たなことを考えていきたいと思っています。今は表に出て行って知ってもらいたい、アニメの文化を知ってもらいたいというのがあるので、いろいろなアーティストの方々と共演できるように頑張りたいなと思っています。垣根を超えて、男女問わず、いろんな世界の歌手の方と一緒に歌ったり、パフォーマンスをして、アーティスト・内田雄馬という存在を知ってもらって、そこからアニメーションという文化に触れていだたく。そんな風になれたらいいなと思っています。仲間が多いと楽しいので、そうやって楽しいことをする仲間を増やせるように、いろんなところに出て行くことができるように頑張っていきたいなと思っています。そのためには力が必要なので、常に努力を忘れずに、初心忘るべからずで頑張っていきたいです。
■リリース情報
『Over』
発売:2020年2月19日
<期間限定盤>DVD付
価格:¥1,800(税抜)
<通常盤>
価格:¥1,300(税抜)
【収録内容】
1. Over
2. Loser
3. Buzzer Beater
4. Over(off vocal ver.)
5. Loser (off vocal ver.)
6. Buzzer Beater (off vocal ver.)
【期間限定盤特典】
・「Over」MUSIC VIDEO
・MAKING
収録のDVD付き
内田雄馬 サイン入りチェキプレゼント
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