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柄本佑×中野裕太『ポルトの恋人たち~時の記憶』対談 「想像がつかないことをやるのが楽しみ」

リアルサウンド

18/11/9(金) 10:00

 18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、3人の俳優がそれぞれ1人2役に挑んだ異色のラブミステリー『ポルトの恋人たち~時の記憶』が11月10日より全国公開される。日本、ポルトガル、アメリカの3か国合作となる本作は、オダギリジョー主演の日米合作映画『BIG RIVER』などを手がけた舩橋淳監督が、構想に3年かけて制作した集大成的な最新作だ。

 今回リアルサウンド映画部では、主演の柄本佑と中野裕太にインタビューを行い、ポルトガルでの撮影や、俳優としての互いの存在について話を聞いた。

【写真】柄本佑&中野裕太インタビュー写真付きページ

■柄本「想像がつかないことをやるのが楽しみ」

ーー出演オファーを受けたときのお気持ちは?

中野裕太(以下、中野):何の違和感もなく、お話をいただいた時に自分の中にすーっと入ってきた節があったんです。「この映画、やるんだろうな」と当然のように受け入れ、当然のようにポルトガルに行くんだろうなと、不思議な感覚がありました。ただ、蓋を開けてみると、ポルトガル語を勉強したりと、準備も含めて大変でした。

柄本佑(以下、柄本):僕はもう、「やったーポルトガル行ける!」でした(笑)。ポルトガルで撮影するらしいよと聞いた時に、「え、まじっすか、やります!」と即答で。ポルトガルでの撮影や衣装なども想像がつかなかったので、その想像がつかないことをやるのが楽しみでした。

中野:それはあったね、わくわく感みたいなものが。

柄本:うん。向こうに行ってどんな思いをしようと、それはひとつの経験として絶対に無駄にはならないだろうなと思っていたので。仕事に対しては、ひとかけでも気になる想像のつかなさがあったら、やってみたいなといつも思います。

ーー監督からは、本作に込めるどのような思いを感じましたか?

柄本:監督に、まず第一声で「どうですか、本は?」と言われて、「この人ちょっと外国人?」って思っていたんです(笑)。ポルトガルの映画の現場って、1日に撮る分量が少ないんです。けど、日本の感覚のスケジュールで組んでいたので、普段は1日に2、3シーンしか撮らないスタッフさんが、いきなり7、8シーン撮るとなるわけで、大変そうでした。その人たちを動かしていく監督は、「陽が落ちる! 強行突破だ!」と、現場で思いを一つひとつ確認してというより、勢いで進めていったというか。監督の思いって、具体的な言葉で言うと野暮ったいし、言葉にできないからこういうものを作っていると思うんです。出来上がった作品を観たら、監督の何かしらの思いみたいなものはしっかり映っていました。

中野:初対面の時、監督はとても汗をかかれていて。急いで入ってきたのだと思うのですけれど、僕も佑くんと同じように「どうですか?」と聞かれて、すごく変わった人だなと思いました。

柄本:あと、監督の何気ない髭って、こだわり抜いた髭なんだろうなと思います。こだわりの強い人なんだろうな。

中野:僕もそれ思ってた(笑)。こだわりが強くて、おそらく自分の頭の中では、相当色んなことが回転している人なのだろうなと感じました。何年か越しで作られた作品でもあるし、監督自身の様々な気持ちで脚本を書いたのでしょうね。

ーーポルトガルと日本の合作映画としては3作目で、日本人初監督となると、すごい作品だという印象を受けるのですが、他国との作品に携わることは、役者としてどういう気持ちですか?

柄本:今回のような機会がなければ、ポルトガルの映画作りを知ることはなかったので、このように自分が知る機会が増えていくことは、楽しみではあります。この作品で、ポルトガルのスタッフの動きを見ていて、映画作りのベースは日本も海外もそれほど変わらないんだなと知れたのが非常に良くて。むしろ今回、背中の傷を作る特殊メイクの人が、日本の特殊メイクの人に憧れて、この仕事に就いたという話を聞いて、「日本もすごいんだな」と。そういう見られ方をしていることが知れて、嬉しかったです。

中野:「合作」と言葉にすると、外から見れば大作のように聞こえるかもしれないけど、僕も同じ気持ちで。ポルトガルのスタッフさんたちと喋っていて、なんのバリアも感じませんでした。すごく気さくな方たちで、外国の人と一緒に撮影している違和感のようなものが全くなくて。すごくプロフェッショナルな熱量の高い現場でした。福岡の田舎に生まれた自分が、30歳でポルトガルでこうやって仕事をすることになるとは思ってもいませんでしたから。そういう不思議さは後から振り返ると感じますね。

■中野「呼吸と共にものづくりをしている」

ーー撮影中、「飯押し」によって監督が反省文を書いたというエピソードがあったそうですね。

中野:監督、反省文書いたの? ペニシェで撮影をしたときに、別の場所で待機しているプロデューサーのロドリゴ(・アレイアス)が監督に対して電話でかなりの勢いで怒鳴っていたところには出くわしました。

柄本:めちゃくちゃぶちぎれてました。

中野:もう、ぶちぎれ。

ーーランチをそれほど大事に?

中野:そう。朝からレストランのスタッフが準備してくれていて、ロドリゴは、そのスタッフさんたちも映画のスタッフなんだよというのを言いたかったんだと思うんです。現場の中でミスコミュニケーションがあっただけで。朝から現場に来て、ものづくりに直接関わっているわけではないけど、僕たちのために野菜を洗って切って朝の仕込みから現場の横でずっとやってくださっているわけです。美味しいご飯を提供してみんなによく仕事してもらおうとやっているのに、そのご飯は食べないとってなったのでしょうね……。

ーーほかにポルトガルでの撮影で驚いたエピソードはありますか?

柄本:そうだな~。あと、僕たちが荷物を持って広場に帰ってくるシーンで、撮影が始まる寸前に豚が逃げ出して、みんなで豚を追いかけました(笑)。

中野:中世的だったよね。豚を追いかけるなんて現代ではあまりない。

柄本:豚がまた、助監督の右足にぶつかったんですよ(笑)。バーンと飛ばされて。豚の脱走劇はすごく面白くて、忘れられないです。誰かカメラ回さないかな~って思っていました。

ーーその豚は撮影用に?

柄本:そうです。ちょうどテストが始まる「よーい」のタイミングくらいで脱走。「ブヒー!」と。すごかったんです、その時の豚の躍動感たるや、スローで覚えています。映画作り、ものづくり全般ですけど、そういう時に人間味が見えてくるのが、やっぱり面白かったです。ポルトガルの人たちはそういう時、走らないんです。こういうときだから、こうするということがない。普段のスピードと変わらずに映画の撮影にすんなりと入ってくる人たちなんです。

中野:それは確かに、いい見本でした。本当に呼吸と共にものづくりをしている。朝、歯を磨いて、顔を洗って、豚を追いかける。そのまんまで。

柄本:想像の地続きだよね。どこかで「いくぞー!」とエンジンかけて映画を作るというより、散歩をしているようなスピード感で、生活リズムの延長線上に撮影行為があるというか。だからもちろん時間はかかって当然でしたけど、日本人の監督が怒って「急げ急げ」と鞭をたたいてきた時に、そこを崩さずに同じ熱量でやっていてくれたのが、僕としては非常に楽でした。自分のリズムは確実に守って、素敵だなと。

中野:映画が文化として、芸術として根付いているヨーロッパならではなのでしょうね。日本人には、ONとOFFみたいなのがあるけど、あっちの人はずっと生活の中に政治があって宗教があって芸術もあるから。当然のようにそれがあるという感覚なのかなと感じました。

柄本:芸術に対して日常的な感覚があるのかなと思います。常に目の前にあるから、それに対して特別なものという認識ではない。映画に限らずですけど、そういうおおらかさは感じましたね。

■中野「お互いやっていて助けに」

ーー物語を2つ組み合わせて、一本の映画にしていくのは他の作品に比べると珍しい構成です。

柄本:2本の台本が1冊の中に入っている台本だったので、2本の映画を撮影しているような感覚で、これがどんな風に編集されるのかなと出来上がりが楽しみでした。あと、ポルトガルと日本は同じカメラマンの古屋さんが撮っていたので、撮影した画を観る楽しみもありました。ポルトガル編から日本編に移った時、もっと日本の土っぽい画になるのかなと思っていたら、外国人が撮った日本のようなテイストで映っていて、「おお、すげえな」って。色合わせとかもあるんでしょうけど、基本的な古屋さんの持つ何かが外国人っぽいのかなと感じました。

ーー本作で共演したお2人は、互いにどういう存在でしたか?

柄本:初対面の時から、非常にチューニングが合って、ほとんど初日からはしゃぐ感じで、撮影の時はぎゅっと集中して。そのようなベースリズムな部分は、僕たち似ているのかなと感じました。

中野:監督も焦っていたり、異文化で撮っている大変さがスタッフさんの中ではある程度はあったと思うので、僕らはスタッフさんたちが準備で大変そうなときに、ちょっと草むしりしながら話していたりして。

柄本:「そうね~」

中野:「なんか忙しそうだね~」

柄本:「大変だね~」

中野:みたいな。その後に「やるぞー! おー!」と声を掛けられて、すっと入る。そういうオフの時のチューニングが合って、ゆっくり2人でバカ話もできるみたいな雰囲気は、お互いやっていて助けになりました。

柄本:この作品に取り組む上で、たぶん中野さんじゃなかったら、僕は大変だったかもしれない。

中野:お互いね。

柄本:お互いです。マリアージュ。俺たちマリってるから。

中野:ロマンチックだね。

柄本:ロマンチックっすね(笑)。

(大和田茉椰)

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