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スターチャンネル放送・配信作品、エミー賞23部門で受賞 『ある家族の肖像』マーク・ラファロのコメントも

ぴあ

『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』 (c)2020 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

9月21日(日本時間)に第72回エミー賞の受賞作品が発表された。このエミー賞において、スターチャンネルが放送・配信を手がける作品は、計23部門で受賞を獲得。また、Amazon Prime Videoチャンネル 「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で全話配信中の『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』でリミテッドシリーズ部門の主演男優賞に輝いたマーク・ラファロのインタビューコメントが公開された。

さらに、スーパーヒーローが実在する世界線を描くSFドラマ『ウォッチメン』が本シーズンで完結するリミテッドシリーズながら、前評判に違わぬ高い評価を集め、作品賞、脚本賞、主演女優賞など主要部門を含む、計11部門を受賞し、今年最多受賞となる快挙。そして、「BS10 スターチャンネル」で吹替版が11月19日(木)より放送予定の『キング・オブ・メディア2』も昨年に続き健闘を見せ、ドラマ部門の作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など計7部門受賞。

こちらも放送予定の、ドラッグやセックス、バイオレンスなどに溺れるティーンネイジャーがソーシャルメディア社会で生きる姿を描く『ユーフォリア/EUPHORIA』がリミテッドシリーズ部門で、主演のゼンデイヤが初受賞にして主演女優賞を最年少受賞。そのほかメイクアップ賞、オリジナル歌曲賞と計3部門を受賞した。

さらに、絶賛配信中で9月29日(火)放送予定の、実際の巨額横領事件の全貌を描き、ヒュー・ジャックマンが主演を務めて話題となったHBO FILMS『バッド・エデュケーション (2019)』はテレビムービー部門で作品賞を獲得。このほか、昨年劇場公開されたSTAR CHANNEL MOVIES作品『アポロ11 完全版』も、ノンフィクション部門において編集賞、音響効果賞、録音賞で3部門受賞を獲得した。

『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』で、見事主演男優賞に輝いたラファロのインタビューコメントは以下の通り(本インタビューはエミー賞受賞前に実施されたもの)。

ーーウォーリー・ラムの原作『この手のなかの真実』について

最初は知らなかった。ウォーリー・ラムと僕の著作権エージェントは同じ人でね。映像化権の取得が可能になった時に大物たちが続々と獲得に動いたんだけれど、ウォーリーが「マーク・ラファロはこの企画に興味あるかな?」と言ってくれたんだ。著作権エージェントが僕にそのことを話してくれたんだけれど、僕はその時まだ原作を読んでいなかった。週末に原作を読んでとても感動して共感を抱いたし、素晴らしいドラマになるだろうと思った。でも、ドラマ化することをウォーリーが望むかどうか分からなくてね。それで彼に会って、「素晴らしい小説だった。あなたはすごい才能の持ち主だ」と伝えてから、「映画化したら、この小説の良さを十分に活かせないと思う。連続ドラマにするべきではないか」と言ったんだ。ウォーリーが僕のアイデアに賛成してくれたので、次に「デレク・シアンフランスを監督に起用したらどうかな?」と提案してみた。ウォーリーはそのアイデアも気に入ってくれて、僕に映像化権を与えてくれた。

その後、僕はエージェントやマネージャーたちと各局にドラマ化の打診をしに行った。そのうちに僕は自分で製作を手がけてみようと思い始めたんだけれど、やれるかどうか自信が持てなくてね。僕のマネージメント・チームはとても協力的で、なかでも特にマーガレット・ライリーが強く背中を押してくれたんだ。マーガレットは「あなたはもう何年も製作をやっているんだから、今までと同じようにやればいいのよ。企画を開発したり、いろいろな人たちと共同作業をしたりして、最高の人材を雇い、自分のクリエイティブな欲求に従えばきっとうまくいくわ」とマーガレットは言ってくれた。おかげで、無事にドラマ化にこぎつけることができたよ。

ーーこの物語のどんな点に共感?

僕はイタリア系移民の子孫なんだ。僕の先祖はとても貧しく、新たな人生を始めるためにイタリアからアメリカにやって来た。祖父がアメリカで塗装業を始め、労働者階級だった一家はイタリアの伝統を捨てて必死になってアメリカ人になろうとした。彼らにとっては、家族がすべてだった。だから、家族の精神疾患とか家庭内で起きた劇的な出来事とか、家族の秘密は家庭の中だけで守り通した。

僕には弟がいて、僕たちは“イタリア人の双子”と呼ばれていたんだ。弟は僕が1歳にもなっていない時に生まれたからね。僕たち兄弟は、家族がすべてだと信じて育ってきた。家族というものは、お互いの良いところも悪いところも見ているし、素晴らしい面も醜い面も知っている。だから、僕は原作を読んだ時に「この物語に登場するのは僕が一緒に育ってきた僕の知っている人々で、彼らは僕が知っている階級の人たちだ」と思ったんだ。誰もああいう人たちの物語を語ろうとはしないけれど、彼らのような人たちこそが一般的なアメリカ人であり、アメリカの様相なんだ。この物語に共感したのは、僕も家族がすべてだと思って育ってきたし、双子同然の弟がいたからだろうね。

ーー双子の役を演じることに、やりがいと同時に不安は?

どうしようもないほどビビったよ。40代後半だった頃はめいっぱい虚勢を張って積極的に仕事に取り組んでいたけれど、52歳になる頃には役者としての自信も男としての自信も、とにかくありとあらゆる自信を失っていたからね。自信のない状態が当たり前になっていたから、うまくやり通せるかどうか以前より心配するようになっていたんだ。

ーーどうやって不安を乗り越えた?

こういう企画に取り組むうえで、デレクは最高のパートナーだった。彼は役者のそういう弱さを求める監督で、「そうか、君はそんな風に感じているんだね。よし、その感じで撮影してみよう。きっと素晴らしいものになるぞ」と言ってくれるんだ。「君が感じている通りに演じてくれ。まずはそこから始めよう。そのうち、ほかの何かが生まれるかもしれないから」ってね。基本的に、僕たちは毎日そんな感じて撮影していた。僕が不安だと言えば、彼は「トーマスも不安なんだ」と言ってくれるし、「自分が何をしているのか分からない」と僕が言えば「ドミニクも自分が何をしているのか分かってないからね」と答えてくれる。僕たちは常に、その時のリアルな感情を重視して撮影していたんだ。その時の感情に向き合うことができ、役者を的確に導いてくれるデレクのような監督がいれば、失敗することはない。山に登るのではなく、ふと気づいたら自分が山になっているような感じだね。そんなわけで、僕はドミニクとトーマスが感じているように、不安とか自分はできそこないだという思い、それに自信のなさとか、自分の感じていることをすべて役に取り入れながら演じたんだ。

ーー不安を役作りに取り入れたということ?

そうだね。

ーードミニク役を演じた後、トーマス役の肉体的な役作りをするために6週間の中休みがありましたが、その間の心境について

宙ぶらりんの状態だった。ドミニク役は演じ終えたけれど、ひるんでしまうような日々が待ち受けていたからね。ドミニク役を演じている間も、先のことが不安でたまらなかった。撮影中は監督やスタッフ、それに共演者たちとずっと一緒にいたから、その不安から逃れることができた。週末は自宅に帰ったけれど、休みは1日だけだった。金曜の夜に帰宅して、土曜は家族と一緒に過ごし、日曜の朝に撮影現場に戻って、その日に撮影するシーンの台本を20~30ページほど読んで準備をした。そんな仕事中心の禁欲的な生活が続いた後に、突然6週間も家に帰っていいことになったんだからね。僕は途方もなく気の重い毎日が待ち受けていることを知りながら家族のもとに帰ったわけだけれど、その段階でもトーマス役をどう演じればいいのか、まだ分からなかった。あれこれ考えたり試したりして役作りをしてみたけれど、やはりどうすればいいのか分からなくてね。そんな状態のまま、僕は毎日ひたすら食べ続けていた。デレクに「食べてるかい?」って聞かれたから、「おいおい、僕は52歳なんだぜ。こうやって食べ続けるなんて、いいアイデアだとは思えないね。心臓に負担がかかるだろうから」と言い返したよ。でも彼は、「いいから食べ続けて」と言ったんだ(笑)。

デレクに「トーマス役をどう演じればいいか分からない」と言ったら、彼は「食べ続けるだけでいい。あとのことは自然と何とかなるよ」と答えた。実際、その通りだったよ。僕は撮影前に、妄想型統合失調症を患っているテクニカル・コンサルタントと一緒に、数百時間、いや、数千時間を費やして、統合失調症に関するインタビューの映像を見たんだ。統合失調症についての説明や、患者の日常生活、それに様々な薬が彼らに与える影響などについて人々が語っている映像をね。僕はそのすべてを頭に入れたけれど、結局のところ統合失調症はトーマスの人格ではないんだ。それは、すでに人格を形成したひとりの人間に付加された障害に過ぎない。だから、トーマスがどういう人間なのか追求することが何よりも重要だった。トーマスとドミニクは対等で、トーマスはドミニクと対照をなす存在だ。デレクはそこをよく理解していて、そのシーンに何が必要か常に指示してくれた。僕たちはそういうプロセスと理解を共有しながらドミニクの人物像を作り上げ、観客が好きになれるような人物を作っていったんだ。

ーー撮影を経て、自分の不安や懸念を払しょくすることはできたか?

僕は今回、これまでと違う経験をしたと思う。以前は気づいていなかったけれど、僕はすべてを出し切らないようにしていたんだ。ほんの少しだけ残しておけば、失敗した時に「全部を出し切ったわけじゃないからな」と自分に言い訳をすることができるからね。自分では全部出し切っているつもりだったけれど、役者として演技をしていると自分の演技を観ることもあるし、観客が自分に何を求めているか感じ取るようになったりもする。人間はみんなそうだけれど、自分なりのやり方があるし、居心地よくいられる安全地帯もある。人は自分の安全地帯を見つけたら、そこから出ようとしない。僕もそこにとどまって、快適に過ごしてきた。でも、デレクはそれを許してはくれないし、そんなことはどうでもいいタイプなんだ。

彼は「今のはマーク・ラファロらしい素晴らしい演技だったね。私はそのマーク・ラファロらしい演技が好きだし、見ていたいと思うけれど、違うこともやってみないか。もっと掘り下げてみよう。私はダメな君も見てみたいんだ」なんてことを言うんだ。快適でいられる自分なりのやり方を使わずに演じるなんて、そんな準備はできていないから、やればやるほど期待値に達していないような気がしてしまう。だから、ある時点から自分を空っぽにして、すべてを出し切るようにした。役にどっぷり浸かれば、目指すところにたどりつける。そうすることができたのは、デレクと彼の演出のおかげだね。

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